俺は転入早々、気になっている生徒がいる。
気になっている、と言っても俗に言う恋愛感情とかではなく、興味を持っている、ということだ。
「2年の冬休みが終わりましたが、皆さんなにか事故などはありませんでしたか?えー、残念ながら一人、事件に巻き込まれた生徒が……います」
若い男の先生は、俺の隣の空席を困った顔で見据えていた。
「えー……石堂さんが冬休み中へ海外へ旅行へ行ったところ、スパイの疑惑があるとして今現地にいるそうです。まだ大使館から詳しい情報は入ってきていません。皆さんも旅行にはくれぐれも気をつけてください」
もちろん、周りはざわつく。
「石堂さんがスパイ疑惑!?うそでしょ!?」
「マジかよ」
俺は隣の空席を見つめ、ため息をつく。
一体どうしたらスパイ疑惑なんかかけられるのだろうか――……
石堂女神……!
同時刻、どこかの国で――……
「No!I`m not!(私ではありません)」
「Don`t tell a lie!(嘘をつくな!)」
はぁ、最悪だあぁっ!
小説のネタを得るために海外まで行ったらスパイの容疑をかけられてるなんてえぇー!
私はただ困っていた人がいたから助けようとしただけなのにいぃーっ!
それのどこがスパイだというの!?
怖そうなおじさんに牢屋へぶち込まれ、私に次々と問い詰めてくるけれど、全く聞き取れない。
通訳を紹介してもらったけど、まだ来ない。
あぁ、どうしよ、私死刑とかにされちゃうかもおぉー!