リコール・セーブ

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2:テエル:2016/05/30(月) 23:06 ID:Udo

1.リコール
 春も過ぎ、気温が上昇し、もうそろそろ半袖でもいいんじゃないかと思い始めた6月初めの頃。
 その日は午前中から雨が降っていた。
 今日はバイトもないから学校帰りにリズムゲームでもやって帰ろうかな。
 そう思いながら私は小学校の頃からの友人、山本愛理沙と自転車で走っていた。
 学校からゲームセンターに向かう道は狭い裏道が多く、時々車が通るので少し危ない。
 住宅街のようになっているから特に子どもなんかが危ないだろう。ここ近辺の親御さんにはきっちりと教育しておいてもらいたい。
 大体7割くらいのところまで来ただろうか、私は奇妙な感覚――しかしながら生きているとたまにある感覚に襲われた。
「なんか、今と全く同じ状況でここを愛理沙と走ってた気がする。」
前とほぼ同じ状況を走っていたのだろうか。いや、この道を愛理沙と2人だけで走るのは初めてのはず。
「それって、いわゆるデジャブ?デジャビュ?ってやつ?」
 デジャヴ。日本語では既視感ともいうのかな。一度も見たこのがないものをすでに一度見た気がする、というようなものである。
「まぁ、気のせいだろうし特に問題もないから早くゲーセンいこう!」
そういいながらペダルを強く踏み、加速しようとしたとき。
「うわっと!」
私は滑ってバランスを崩した。どうにか転びはしなかったが大きく右に動いてしまった。
「あっぶない…」
そう呟いて前を見たとき。
「えっ」
 すでに前方わずか2、3メートル先に、全長は10mほどあるだろうか、重さは10t近くあるだろうか。鉄やらアルミやらの金属の大きな塊が減速しきれずに目前まで迫ってくる。
 そうして私は何も見えない真っ暗闇に閉じ込められた。


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