リコール・セーブ

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3:テエル:2016/05/30(月) 23:07 ID:Udo

2.目覚め
真っ暗闇。
何もない。
立っているのか、寝ているのか、浮いているのか、わからない。感覚がない。
「聞こえますか、お嬢さん。」
不意に知らない男の声がする。
「聞こえます、あなたは誰ですか。」
なぜだかはわからないが、私はひどく冷静でいた。
「君は死ぬはずだった。」
「死ぬはずだったってことは私はまだ生きているってことですよね。」
「そのとおり。僕が助けた。」
「なぜ助けたのですか。」
状況がさっぱりわからない。どういうことなのか。あの状況でどうやって私を助けたのか。私は生きているのか、ここはどこなのか。さっぱりわからない。
「まあまあ、順を追って説明するよ。まず僕の名前はどうでもいい。これは後の説明でわかることさ。僕はいわゆる超能力者だ。特殊能力者のほうがいい気がするけどね。」
何を言っているんだこいつは。
「超能力?」
「そう、自分の目の前で人が死ぬと時間を巻き戻す能力さ。しかしこれが厄介でね。自分で制御するのがどれくらい前まで巻き戻るのかしか制御できないんだ。」
つまり私が死ぬあの時、彼は時を戻して私を助けたというのだろうか。
「そしてもう一つ、これは呪いのようなものだろう。自分の目の前で人が死ぬという状況がかなり起きやすい呪いなんだ。これは時間を戻す能力…僕はリコールと呼んでいる、それを持つものが受ける呪い、いわば副作用だ。」
なぜこいつはその能力の話を私にするのだろうか。恩を売りたいつもりなのか?
「それを私に伝えてどうしようというのですか?感謝はしてますし、お礼もしたいとは思いますけどそこまで恩を押し売られると逆に迷惑です。」
「この呪いは死ぬまで絶対に解けないらしい。生涯付きまとう呪いだ。しかしそれが嫌だからと自殺するのも嫌だ、僕だって生きていたいからね。しかしついに解放される時が来たようだ。」
解放される…?
「それってつまり、あなたは死んだと?」
私を助けるために死んだのか?
「そういうことです、そしてさらにこの呪い厄介なことに、リコールを使って人を助けるときに自分が死んでしまうと、助けた対象に呪いが移ってしまうんだ。」
…は?
「じゃあ、今その呪いが私に!?」
「リコールと一緒にね。」
なんてこった。そんな厄介な。
「そうして最後に、この呪いが移るときに、その呪いを受けていた人は存在が抹消される。いわば僕はなかったことになるね。」
「そんな…!?」
「あぁ、忘れていた、リコールの能力はその人を助けることを諦めれば能力を発動させないこともできるんだ。その場合、人を目の前で見殺しにすることになるけどね。」
彼は自分の存在が消えてしまってでも私を助けたというのか。
「なぜ自分の存在を犠牲に私を…!?」
「なんていうか、疲れたんだ。人を助けるのも、見殺しにするのも。だからいい機会だった。誰かに能力と呪いを映したかったんだ。最低野郎だろ?そうこう話しているうちに時間が来てしまったよ、僕の存在もこれまでだ。次に気が付いた時には君はさっきの道で友達と一緒さ。リコール使いとしての人生を応援しているよ。」
「まっ…話は終わってない!!」
そう言い終わる前に私は意識が飛んだ。


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