❥第1話「人狼ゲーム」
これは狭くて小さな檻にいた、私の短い青春の話。
これを今はもう戻れない、あの頃に捧ぐ。
「初日の朝を迎えました。残念なことに【三鼓】さんが無残な死体で発見されました」
ホームルームの始まる20分前、午前8時10分ごろ。
私たちは1つの机を囲んでゲームに興じていた。
「いや、おかしくない? GM(ゲームマスター)抜いて3人しかいないのに何で初日に犠牲者だしちゃったの? 何ですでにゲーム終わっちゃうの?」
「いや、まさか私を襲うなんて……」
「ってかまず!3人なのに初日噛みがあってサイコパスいるとかいうのがおかしいだろ!!」
最近流行っているのは人狼ゲームだ。
村の中で人狼か村人か、お互いがお互いを疑い合って村から人狼を排除するゲームだ。
『処刑』という方法を行使して。
今回の振り分けとしては、私……つまるところの【三鼓】が人狼、【二見】がサイコパス、そして、【四十万】が市民だったのだろう。
「ゲーム終了です。勝者は【妖狐】です」
「嘘でしょ、四十万妖狐だったの?! というか真面目にやってよGM!!」
そもそも市民陣営が皆無なこのゲーム、人狼ゲームといってもいいのだろうか。
1ゲーム――といっても配役を決めただけのゲームだったが――を終えて、一度教室を見渡す。
無機質な空間はどれも作られたてを象徴するように白かった。
木目は付いているもののその表面をつるりとした机が4つ、部屋にただ並んでいるだけの光景はシンプルで、無機質だ。
窓から見える景色は、石畳が木々の隙間からチラチラと見え、『学校』というよりかは『森』に近い印象をもたされる。
GMを代わりにやってくれる携帯端末ひとつろくに持ち込めないこの空間。
窓の外はあんなにも広いのに。ここは広くて狭い窮屈な空間だと、私は大きく深呼吸した。