そもそものところ、ここは普通に見えて、普通であってはいけない場所なのだ。
――というのも、まず、私たちが普通ではないことから話さなければ始まらない。
「三鼓 紹々里」、この名前は数年前まではそれなりの知名度を誇る俗にいう「お嬢様学校」に、名を連ねていた。
交友関係、学業成績ともに良好。
共働きの父と母はよく耳にするような企業のそれなりの階級で、まあ少し、他より裕福だったのだ。
よくいる生徒の1人に過ぎなかった私には、ただ一つ、「運」が足りなかった。
運、と言っても別に、傘のない日に限って雨に降られた、だとか、体育祭で一緒に走る子が学年で1番足が速い、だとか。
そういう「不運」とは別の次元で。
あえて他の言葉で言わせてもらうなら、私はいい「カモ」だったのだ。
あまり子に興味ない親。
表だけのペラペラな友情と、物を強く言えない性格。
そして――、たまたま隣だった席。
それが、今の私を作った「材料」だった。
「容疑者である同じ中学校に通う女子生徒(14)は調べに対し容疑を認めているということです。警察では暴行に至った経緯、また暴行に使った凶器などの事情を聴き、詳しい調べを進めています。次のニュースです」
淡々と読まれたニュースの文に、嘘に塗れた画像、テロップ。
別室で聞かされた事件の内容と、そのシナリオ。
私はようやくそこで、自分は捨て駒にされたのだと気がついた。
どこの世界でもある。上の者のミスは、下が尻拭いしなければならない、摂理。
シナリオを話したその人は、刑期の間が服役という名目で「施設」に入るのだと言ったが、その後どうなるのかなんて、分かったものじゃない。
外に漏れたらまずい、そんなスキャンダルをわざわざ世に放つわけがあるだろうか。
万が一、出られたところで若いだけの前科持ち、世に必要あるのだろうか。
私の目の前は、底のない深い海の底に沈んでいった。