外に出よう――と言ったものの、この格好はまずい。
着心地の良いダボっとした灰色のトレーナーだ。
適当に服がないか見回してみると、壁にハンガーで学ランがかけてある。
現実世界の俺は、中学校からYシャツだから、学ランを着たことがない。
何かの小説で読んだが、確か卒業する際に意中の女性に第二ボタンをあげるだとか。
「さーて、どうすっかな」
学ランに着替え、どこに行こうか考えていた時だった。
――カッカッ
軽くドアをノックする音が数回。
ここの家の持ち主だろうか。
ドアを開けると、キイィと軋む音がする。
「……はい……」
そしてドアの向こう――そこには一人の少年がいた。
「よっ!大丈夫か?」
栗色のくせっ毛の髪。
童顔……というよりかは、女顔と言ったほうが近いだろうか。
「……どちら様?」
俺は見たこともないその少年に、戸惑っていた。