カラリ、と乾いた音を鳴らして、教室に踏み込む。
___が、入った途端に後ろから「邪魔」と声がかかった。
「・・・邪魔はないんじゃない?陽介」
後ろを振り返ると僕より少し小柄な、市原 陽介(イチハラ ヨウスケ)が立っていた。
「ん、はよ」と陽介は返す。
陽介はこのクラスのいわゆる裏ボス的存在だ。
なんといっても『眼力』がすごい。
バスケのときなんか、相手と目を合わせると
例え相手がボールを持っていても体が固まり、その隙にボールをとる___…
と言う、まるで異能力並の眼力を出す。
そのため、裏では『陽介様』なんて呼ばれている。
「あ、陽介夏祭りのポスター見た?」
「ん、あぁ見た見た」
「一緒に行こう」
「親に聞いとく」
・・・なんて他愛もない話をしながら、用意を整えていく。
「今年は女子も呼ぶか…」と陽介が呟く。
女子・・・か。美冬・・・さん、誘おうかな。