そろりそろりと玄関の方に寄っていき、ちっちゃい穴から外を覗いてみた。
じーっと見て、まだ来ていないなと胸を撫で下ろす。
8月10日、夏休み真っ只中の今日。
親友と遊ぶ約束をしてたけど、見事に寝坊。10時約束なのに今がもう10時半。どうにもならなくて笑うしかない感じ。
準備が早いわけでもない私は、ご飯を適当に作ってもぐもぐする。
インターフォンが鳴った瞬間に走って開けて、土下座する!
そして親友さまを家へ招きいれる!
が、今のミッションのため、食べながら神経をピンポーンに集中させる。
中途半端に準備して外に待たせてる方が怒るもんね、絶対。
もぐもぐ
もぐもぐ
もぐもぐ
もぐ 『 ピンポーン 』
半端じゃない速さで走って、ドアの鍵をパパッと開けて玄関も開けて、
「ごめんなさいッ!!」
と、しっかり土下座した。
運動神経だけは何とか学年でも良い方で良かったーと、安心していても、
一向に、親友の…、世那(せな)の声が聞こえない。
「しーの、やっぱ起きてなかったね」
とかいう呆れた声色が響かない。
「……いや、なんか、…は?」
顔をあげると、
ニット帽、マスク、伊達眼鏡の、
夏に合わなすぎる不審者が、
こっちを見て絶句していた。