沈黙が走る…、なんて大人なことは私には出来ず、
「誰ですか!不審者ですか!」
と、しっかり聞いてしまった。
好奇心には、やっぱり負けてしまう。
土下座した状態の私と、そこから去ろうとした状態の彼。
彼はキョロキョロと回りを見渡してから、靴をコツコツ響かせながら私に近づいてきた。
「…ピンポンダッシュしてみた悪趣味な男です。
これ、誰にも言っちゃだめですよ。」
しゃがんで私に目線を合わせた不審者さん。ふわっと良い香りがした。
「秘密、ね。ここに僕がいたのも、ここで話したことも内容も。」
そう言って、何事も無かったように立ち、一瞬私を見つめたあと、廊下を歩いて行ってしまった。
冷たいオーラなのに、話口調が暖かいから、
少し変な感じがした。