【plorogue end -shut down- 始まりの価値観】
「さて、と...」
まず、勝負がついたことでますます熱気が強くなっているここから脱出するのが先決だろう。
下手したら外より暑苦しいように錯覚するほどの空間だ。早く外に出ないと熱中症になりそうだ。
...だと言うのに。
俺がさっき放った言葉がよっぽどショックだったのか、或いは予想だにしてなかった言葉を掛けられて驚いているのか、彼女は未だ呆然としたままだった。まずこれをなんとかしなくちゃいけない。このまま彼女を放っていったら取り巻きに質問攻めされそう。最悪俺の評判関わりそうだしとにかく連れていかなければ。
しかしだからと言ってさっき入り口に入った直後の時と同じように意識を戻させるのにはまた数分は掛かる。あまり時間は掛けたくない。となると...。
...ええい、ままよ。後々こいつらに何かしら言われても気にするもんかってんだ。
そう決意し、半ば強引に彼女の手を引き、外へと押し出た。
「ふぅ...良かった、囲まれる前に出られた...大丈夫か?」
出入口から少し離れた場所まで逃げ、彼女に尋ねた。
しかし、その尋ねた相手である本人は質問に答えようとせず、先程の膠着とはまた違う意味を宿しているような、そんな顔でこれまた呆然としていた。
「...? どうした? さっきの熱気に当てられてどっか悪くしたとか...じゃねぇよな」
俺が心配して近付くと、彼女は氷が溶けたかの様に突然動いた。
「へっ!? あぁ、いや、何でもない、何でもないから!?」
...何故疑問形。本当にどうかしてしまったんじゃないかと思ったが、その考えは続けられた言葉で一蹴された。
「ま、まぁ今回はボロ負けだったけど、別にあのジャンル以外だったら絶対にあんたを打ち負かせるんだから、今度こそじゃ覚悟しておきなさいよ!!」
そんな負けて尚変わらない態度に俺は苦笑しつつ、
「あぁ、まぁ精々覚悟しとくよ」
と、その改めて行われた宣戦布告を真っ正面から受けてたち、俺達はそれぞれ逆の方向へと帰路を辿った。
...待った。
また今度?
まさかまたあの部室に押し掛けにくるつもりなのか?
と、疑問を抱いた俺に、去り際の彼女は更なる追い討ちを掛けてきた。
· · · · · · · · · · · · · ·
「それじゃ、また明日宜しくね、七ッ木光介君」
「..................は?」
振り返った時には彼女は駆け出していて、その姿はもう声は届かないであろう場所まで離れていた。
...ちょっとまて。一回情報を整理しよう。
彼女が俺の話を聞いたのはこのゲーセンのはず。
そしてここの輩は誰一人として俺の本名は知らない。ここまでは確定だ。
ならば。
何故彼女が俺の名前を知っているのか。
一体何を思ってあんな言葉を掛けたのか。
...となるとだ。
「マジかよ...」
あぁ、そう言うことだろう。
「は、ははは...」
渇いた笑い声を上げ、虚空を見上げる。
天気は快晴。照りつける太陽が忌々しくこちらを睨んでいる、一点の曇りもない青空が広がっていた。
...2016年、8月4日。
この日俺は、一人の少女と出会い、これから巻き起こる出来事も知らずに、一つの物語へと繋がる歯車を動かし始めたのだった。
plorogue fin.
And,go to the next episode now.
あ……連レスすいません。
「plorogue」じゃなくて「prologue」だったような希ガス………。