7.昔のコヨ
「コヨって、小さいの小に、時代の代って書くの?」
「いきなり呼び捨てか。わたしも呼び捨てで呼んでみよう、真美」
溜めなくていいから、さっさと答えてよね。
今日のうちに何回にらんだんだろ。
真美は、コヨをにらんだ。
「そうよ、小代よ。どうせ、真美の祖母の幼なじみの生まれ変わりって言うんでしょ」
何で分かるんだろ。
ちょっと疑問の目でコヨを見る。
コヨは笑いながら、戸を閉めた。
聞かれたくない、話かな。
「わたし、両親に虐待受けてて、養護施設行ったの。本名は和江。だけど、小さい時だったから、名前も変えられたの。本当の俣野コヨさんが亡くなった生まれ変わりって」
コヨ、大変なんだ。
真美、勝手に悪いヤツって決めつけてた。
ごめんなさい、コヨ。
きっと、自分を本当に育てたいと思って引き取ったかもしれないけど。
記憶がないっていうのを利用してコヨにされた恨み、ちょっとはありそ。
「わたし、和江で生きたい。コヨはイヤだ」
本当の自分で、生きたいよね。
真美だって、いきなりコヨになれって言われてもイヤだもん。
「おばあちゃんに相談して、家来る?絶対楽しいよ」
「イヤだ。わたしは真美の敵。敵の家なんかイヤだ」
敵っ?
真美は、いきなりコヨが話しかけてきた時のことを思い出した。
「今回の用は何よ」
「別に。じゃ」
そう言い残して、コヨは真美の家を去っていった。