文才とかないですけど、
見てくださったら嬉しいです。
『ここは明確スイーツ研究部!1』
人物紹介
多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。明確ゼミナールに通う。
坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う少年6年生。
真美が好き。
矢本 拓斗
野球少年。明確ゼミナールに通う少年6年生。
隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
『ここは明確スイーツ研究部!』
1.昔のわたし
目立ちたくない…
意識して生きてきたはずなのに…
なのにぃっ!
パチパチパチパチパチパチパチパチ
めっちゃ拍手されてるんですけど!
わたし、どれだけ避けてきたか、あなた分かっておられます?
どうして拍手を浴びているのか…
「唯一、100点だった子がいます!真美ちゃんでーす!」
難しい学力テスト、わたしは100点だった。
みんな100は取れなくて…
余計浴びちゃってるんだよお。
「真美、100点取れたんだね。すっごおい!」
わたしの名前は、多田本真美。
彦宮学園初等部6年生です!
明確ゼミナールっていう塾に通っていて、国語が大のト・ク・イ!!!
「真美、すっごいじゃん!」
さっきも隣でほめてくれた、晴奈ちゃんーーー幼なじみは、笑ってほめ続けてくれる。
わたしの大切な友達。
「陽茉理と由里歌も思うよね!」
晴奈ちゃんの他、陽茉理ちゃんも由里歌ちゃんも仲良くしてくれる。
6年生になってできたーーー昨日できた友達なんだ!
「うん。真美すごい!わたし絶対無理だもぉん。ねえ、由里歌」
「由里歌、真美みたいに頭よくないもんなあ。羨ましいぃ」
陽茉理ちゃんと由里歌ちゃんは、顔を見合わせて、「ねえ」「ねえ」と言い合っている。
「ねえ」「ねえ」「ねえ」
亜子ちゃんの声がかすかに聞こえる。
「ね〜え、ま〜みちゃん!」
「あこちゃん。どうかした?」
5年生のときの親友、あこちゃん。
人懐っこくて、可愛い。
「あこ、まみちゃんの真似することにしたんだあ。まみちゃん、部活何入ってるの?あこも移動する!」
あこちゃんが仲良くしてくれるのは嬉しかった。
でも………ベッタリかも…
そんなことは言えず…
「バトミントン部。あこちゃんと一緒にできて、わたし嬉しいなあ♪」
あこちゃんとハイタッチしたあの手の冷たさ。
今でも忘れることはできない。
「みゆ、かんな、さとこ。いいよ!」
同じバトミントン部の仲間。
みゆさん。かんなさん。さとこさん。
この3人に、悪口を言われた。
仕組んだのは…あこちゃんだった。
翌日
「ねえ」「ねえ」「ねえ」
あこちゃんとみゆさん、かんなさん、さとこさんに遠目で見られた。
クラスのみんなも、クスクス笑って。
その中に、……幼なじみの晴奈ちゃんも、、、入っていたんだ。
(でも、晴奈ちゃんのこと、信じてる。わたしのこと…そう思っていないってこと。)
2.明確ゼミナール
家に帰り、明確ゼミのカバンを持って明確ゼミに向かう。
あこちゃん、みゆさん、かんなさん、さとこさんとは、みんなクラスが違うけど、近寄らないようにしてる。
また大騒ぎになったら、……考えただけでぞくぞくするっ!
下駄箱に靴を入れて、明確ゼミの、わたしのクラスに向かう。
そのときにっ!
バンッ
「ひゃっ!」
思わず走っていたものだから、人にぶつかっちゃった。
「ごめんね。怪我はない?」
立ち上がって手を差し出してくれた男の子ーーー誰!?
知ってる人じゃあないし…
一体誰なのよう!
「ごめんなさい。失礼します」
急いでクラスに入るけど、誰も声をかけてくれる人はいない。
あこちゃんみたいな子だったら、こわくて話せないもの。
ひとりで地味に生きた方が、得すること、多いんじゃないの!?
フゥ
やっと授業終わった。
算数なんて長いとしか感じない。
ああ、めんどくさいめんどくさい。
塾なんてとっととやめちゃいたいよ。
「失礼します!ええっと…多田本真美ちゃんいますか?」
うわっ、さっきの男の子だ!
身を隠していくしかない…
切ります。
「キャー、キャーキャー!」
近くの女の子が騒ぎだした。
何?何?何なのっ!
「隅木田先輩がいるわよ!」
スミキダセンパイ!?
「ねえ、ところで、真美って誰よ」
「さあ、分かんない」
ますます通りづらくなってきたよ〜
どうしよう、どうしたらいいの?
隅木田先輩は、教室に入ってきて、ガッチリわたしの腕を掴んだ。
「あのお、何か御用ですか?」
「ちょっと、談話室に来てくれる?」
談話室…
明確ゼミナール一角の小さな談話室。
入ったことがないけど、ものすごく人気って評判。
「さあ、行こう」
え?……
わたしひとりで行くんじゃないの?
隅木田先輩と一緒だったら…
みんなに痛い目で見られてしまう!?
隅木田先輩は、わたしと手を繋いでえええええええっ!
談話室に向かったのであった。
3.イケメンあらわる
談話室につくと、隅木田先輩は、謎の男の子が座っているところに座った。
謎の男の子ーーールービックキューブをずっと回している。
わたし、この子たちと話す勇気ないんですけど〜
「おい、坂宮。矢本はまだか」
いや、まだいるわけ?
わたし、無理なんだよお、多いの。
「矢本です!あぁ、坂宮。隅木田」
誰か男の子来ちゃったよっ!
「みんな、自己紹介しよう。真美ちゃんもね」
「は、はい…」
坂宮君?が、手をあげた。
何、この子。
空気読めないのかなあ?
「お前、誰?どこから来た?」
わたしのことですか!?
礼儀正しく、しっかりした自己紹介をしてみせるから、よく見てなさいよ。
「こんにちは。わたしの名前は、多田本真美です。国語が得意な小学6年生です。よろしくお願いします」
隅木田先輩は、拍手してくれた。
う、嬉しい。
またほめられたよ。
「真美ちゃん。さっきはぶつかってごめんね。僕、隅木田優斗。中学2年生だよ。よろしくね」
中学生なんですか〜!?
すると、矢本君?が自己紹介した。
「俺は、矢本拓斗。中学3年生。これからよろしくね〜♪真美ちゃん」
何っ!
今、ドキッっとしたんだけど!
まあ、いいか。
空気読めない男の子ーーールービックキューブを置いて、自己紹介した。
誰よこの人ぉぉぉっ!
「俺、坂宮陽都。小学6年生。よろしくな」
だから、どうしてみんな、よろしくを言うわけ!?
普通言うけど、矢本君なんて『これから』がついてたんだよ〜
この人たち、カッコいい…
クラスの野郎と違って、とても。
空気読めないっていうのは置いといて、隅木田先輩も坂宮君も矢本君も。
どうしてわたしの前に現れたの〜?
人物紹介で、みんな小6でしたが、
↑に変えさせていただきます。
本当に申し訳ありませんでした。
4.スイーツ作りに参加
「真美ちゃん。僕たち、明確ゼミの受付の先生、船水先生がやめる話、聞いちゃったんだ。ちょっとでもいい思い出残してほしくて、」
隅木田先輩の途中で、坂宮君が口をはさんだ。
「俺、サッカー行っていい?練習遅れると、監督に怒られる。ワリィな」
いいよ、坂宮君がいなくたって!
空気読めないんだから。
「なんだよ、真美。そんな顔するなって。も〜」
いやいやいやいや、名前で呼ばないでってば!
坂宮君に、名前で呼ばれたくないよ。
「とっとと行けよ。大事な話中」
そうそう、早く行きなさいよ!
いい話中、勝手に出てきなさいよ!
「さあ、続きを話そうか。残してほしくて、スイーツ作って渡そうかって思ってるんだ。女の子がいた方が楽しいと思うし、ぶつかったのも、何かの縁だと思って。真美ちゃん選んだんだ」
隅木田先輩、そんな選び方してくれたんですか!
すごく嬉しい。
「矢本も真美ちゃん認めてるし。真美ちゃん、ぜひ一緒にやらない?」
「ハミーちゃん、やろうよ♪」
矢本君…
「わたし、やりたいです!スイーツ、一緒に作りたいです!」
「よかった。じゃあ、明日またここに来てくれる?今の時間に」
「はい!」
スイーツ…頑張って作ろう!
5.話しかけにくい?
翌日、学校に行くと、いつも通り晴奈ちゃんがとんできた。
「おはよう。真美ちゃん」
「おはよう」
陽茉理ちゃんと由里歌ちゃんにもあいさつする。
すると、陽茉理ちゃんが渋々言った。
「晴奈ちゃん。あそこで、実柚乃が呼んでたよ」
いいムードだったからか、陽茉理ちゃんは渋々だった。
晴奈ちゃんは、実柚乃さんのところへ走っていった。
「陽茉理ちゃん、由里歌ちゃん。わたしに、気軽に話していいからね。わたしの昔を知っているからか分からないけど、話しづらそうだから」
「真美ちゃん。すごいね。わたし、真美ちゃんと晴奈ちゃんに少し話しかけにくくて」
由里歌ちゃんが下を見て言った。
でも、わたしは落ち込まない。
悲しまない。
そう思っているなら、仕方ない。
でも、これから思わないように、言えばいい。
そう思ってたのを、取り返すことは不可能。
取り替えることは可能なはず!
「これからはみんな気軽に話せる、楽しいチームにしようね」
「うん」「イェイ!」
わたしたち、作りたてのチームだけど、仲良しさは、作りたてじゃないはずだよねっ!
6.明確スイーツ研究部!?
「失礼します。多田本真美です」
ウキウキした気分で談話室に入る。
陽茉理ちゃんたちのこと、スイーツの話のこと。
今日はドキドキでいっぱいだよ!
あれ、誰もいない。
一番だったのかな?
時間とか、間違えていないよね?
談話室のドアが開くと、入ってきたのは坂宮君だった。
「真美。一番ノリだったんだな」
フン、だから何なのよ!
「へ〜、真美って結構かわいいんだね〜クラスの女子と違う」
はっ?
いきなりなんなのよ!
でも…ちょっと嬉しい、かな。
って、どういうつもり!?
「俺、真美ってタイプかも。よーし、決めた!俺、真美好きになった!」
はあああああっ!?
一体何言ってんのよ!
「矢本で〜す」
「失礼します。隅木田です」
矢本君に隅木田先輩!?
やっと、坂宮君とふたりだけにならなくて済むよ〜
「真美ちゃん、坂宮。僕たち、スイーツ作るの、グループ名を決めたんだ。その名は、『明確スイーツ研究部!』クックパッドで調べるんじゃない。自分たちで研究するんだ!」
おおお、明確スイーツ研究部!
「俺と隅木田と話し合ったんだ。学校でな。いいだろ」
同じ学校に通っているのかな?
「明確スイーツ研究部!略して明スイでいいと思う人、挙手」
4人ともみんなあげて、明確スイーツ研究部!略して明スイに決まった。
「さあ、何作る?」
矢本君の一声に、う〜ん?と悩む。
やめるんだから、それなりの物を作らないといけない気がするし…
「ねえ、ケーキはどう?チョコレートプレートに、ありがとうってかく」
う〜ん、いいと思うけど。
チョコレートプレート、ありがとうだけじゃあ、ねえ。
「じゃあ、クッキーにしたらどうかな?ひとつひとつデコレーションして」
クッキーもかわいいなあ。
「ケーキにクッキー付けたらどう?」
お〜、いいねえ。
「矢本君に賛成します!」
わたしが言うと、隅木田先輩も矢本君に賛成した。
ええっと、ケーキって、相当普通に渡す人いないし…
あ、そうだ!
パーティにしたらいいんじゃないの?
そうしたら、思い出づくりも完璧!
「ねえ、ケーキ渡すの、パーティにしたらどうかな?」
「いいねえ。じゃあ、みんなで食べる用と、船水先生に渡す用に分けたらどうかな?」
おお、隅木田先輩、ナイスアイデア!
「おおお!なら、明確ゼミの人みんな呼ぼうぜ」
矢本君の案も、ものすごくいい!
絶対、船水先生を楽しませてあげるんだから!
7.豪邸!?
翌日も、談話室に集まった。
「ケーキ作りとクッキー作りって、練習いるんじゃねえの?」
矢本君の一言に、練習無しに作る作り方を考えた。
でも、考えられない。
確かに、練習必要だよね。
研究する時間もいるのかもしれない!
あと、みんなを誘う時間も!
チラシ配るのはどうだろう。
なら、チラシも作らなきゃいけないじゃん!
「まだ、やることたくさんあるよ」
みんなうなずいて、考え始めた。
わたしは、研究の時間をどう取るのか考えた。
「お、大きい」
矢本君の家の大きさ。
豪邸としか言えない大きさ!
わたし、入ったことないよ。こんな大きな家。
矢本君の家に来たのは、理由がある。
あのときーーー
「俺んちで練習しねえ?」
矢本君が誘ってくれた。
隅木田先輩も利用に賛成してくれて、坂宮君も矢本君の家に来ることにした。
「ね〜え〜、拓斗〜。あれ?カッコいいイケメン君がいるじゃん!」
矢本君の家から来たのは、わたしと同い年くらいの女の子。
「おい、香音。来るな」
「え〜、いいじゃ〜ん!サッカーの坂宮君がいるも〜ん」
香音さんは、坂宮君が好きみたいで、坂宮君に付きまとっている。
どんどんくっついていいよ!
「おい、やめろよお」
坂宮君、ーーー坂宮は、香音さんに対して嫌がり始めた。
かわいそう…
8.梨歩佳さん
坂宮は、香音さんを振り払った。
「お前、邪魔って言ってんの聞こえねえの?」
坂宮、そんな言わないであげて。
矢本君も坂宮と香音さんを見ている。
止めなくていいの?
わたしの考えはお構いなしに、どんどん坂宮は言っていく。
「俺、香音っていうの?香音に興味ねえから。俺、真美が好きなの」
また言うの?
しかもここで?
坂宮何言ってんのよ!バカァ!
「坂宮君、わたしのこと邪魔って思ってるのね。なら、思わない女の子になれるように、頑張る!」
坂宮、頑張ってね…
香音さん、あきらめないで坂宮とくっついていいんだよ。
トコトン遊んでね♪
「ここが俺のキッチン」
オ・レ・の?
自分のキッチンがあるってこと?
さすが…お金持ち…
「俺、一生矢本の家来たくねぇ」
いいや、坂宮。
一生通うことになるよ。
「ケーキ作りは梨歩佳、クッキー作りは梨萌佳がいる」
梨歩佳(りほか)さんに梨萌佳(りめか)さん?
「梨歩佳と梨萌佳は、妹で、中1。ハミーちゃんの年上だね」
ちょっと、矢本君。
ハミーちゃん呼び何なの?
「どっちから作る?作る方によって、補助が変わるから」
梨歩佳さんと梨萌佳さん、補助なんだね。
妹が補助に付いてくれる。
なんて優しい妹なんだろう。
双子さんなんだよね、きっと。
「ケーキが元だし、ケーキからでいいんじゃない?」
確かに、ケーキがなきゃ、クッキー焼いても意味ないもんね。
ケーキ作りの補助、梨歩佳さんが来てくれた。
「梨歩佳さん!わたし、多田本真美です!今日はよろしくお願いします」
「真美ちゃん、よろしくね。小6なんでしょ?拓斗兄から聞いたわ。かわいい女の子って。かわいいわ〜」
か、かわいいって紹介したの!?
て、照れる…
「わたし中1だけど、ため口で話してほしいな♪」
「ありがとう!!!梨歩佳さん、よろしくね♪」
やった、梨歩佳さんと仲良く話せちゃったよ!
「さあ、ケーキ作り始めるよ!研究って聞いたけど、どんな工夫するの?」
あ、工夫のこと、全く考えてなかったよ…
「梨歩佳、決めてねえ」
「拓斗兄!言ったよねえ!?スイーツ作るなら、準備くらいしときなさいよって」
梨歩佳さん、すごい。
坂宮はドンビキしてる…
よ〜し、準備と工夫、頑張るぞお!
9.難しいケーキ作り
「ケーキ作り、頑張るわよお!まず、わたしが振り分けるわね。坂宮君は、拓斗兄とスポンジ作り。わたしと真美ちゃんと隅木田君は、ケーキの生クリーム作りね。いい?」
「はい!」
あれ、思いきり返事したけど、みんな返事しないの?
「俺、真美とやりたかった〜」
坂宮、うるさい!
矢本君とできたんだから、いいじゃないの。
矢本君に失礼よ!
「あの、隅木田先輩。よろしくお願いします!」
「隅木田でいいよ。学校では先輩呼びだけど」
学校では?
学校、隅木田…君と違いますよね?
同じは…同じぃぃ?
わたしが通う学校は、初等部から高等部まである。
同じ学校も、おおいにありうるけど。
矢本君や隅木田君みたいな目立つ男の子がいたら、わたしでも知ってると思うんだけど。
知らないから違うんじゃないかな?
と、こと話は置いといて。
「生クリーム作り、頑張ろうね。まずは、工夫したこと、覚えてる?ここのレシピを、チョコレートに変えるんだよね?つまり、ここがチョコレートに変わる。分かる?」
チーズだけど、チョコレートに差し替えると言うこと。
なるほどなるほど。
「チョコレートを、こことは別で溶かし、溶かしたチョコレートをここに入れるの。そうすると、チョコレートの小さな塊プラス、チョコレートの本ができるわけ。分かるかな?」
つまり、チョコレートを溶かした物をスポンジに馴染ませると、チョコレート味のケーキになる。
そこに、チョコレートの小さな塊をプラスすると、噛みごたえもあって美味しいってこと。
「工夫であったことだから分かると思うけど、スポンジができたら、すぐチョコレートを溶かした物を馴染ませていくから、準備するよ」
梨歩佳さん、ときどき難しい言葉を使うけど、頑張ろうと思える。
わたしの周りには、梨歩佳さん、隅木田君がいるんだから。
10.
「おい、梨歩佳。準備してあるか?」
「もちろんよ。わたしだってボケーっとしてるだけじゃないんだからね」
梨歩佳さんは、チョコレートを溶かした物を矢本君に渡した。
甘い香り。
いい匂い。
すみません。
10.ケーキボロボロ
です!
「よ〜し。で〜きた!」
オーブンを開けたとたん、いい香りに包まれる。
「真美ちゃん、坂宮君、隅木田君、拓斗兄。よくできてるわぁ」
(梨歩佳さんのおかげですよ!)
ずっと梨歩佳さんは褒めてくれて、嬉しかった。
坂宮がケーキを取り出して、机に運ぼうとした、そのとき。
「あ。ニャーミちゃん。来ちゃいましたか!かわいい〜」
ニャーミちゃん?
「わたしの猫よ。かわいいでしょ〜ニャーミちゃ〜ん」
「猫か!来るな!近づくな!」
坂宮、何言ってるのよ!
梨歩佳さんは気分を悪くしたようで、ニャーミちゃんを抱きしめた。
「坂宮君、大嫌い。香音に言わなきゃいけないわね。坂宮君はやめてって」
(あちゃ〜やっちゃった)
坂宮君が持っていたケーキ、気づかないうちに真っ逆さまになって崩れているし。
それに、梨歩佳さんも出ていっちゃったし。
「最悪だよ、もう。坂宮バカ!坂宮のせいで、梨歩佳さん行っちゃったじゃないの!わたし帰る!」
もう、絶対ここ来ないんだからね!
11.消えた時間
つまらない…
迫力足りなさすぎるし…
明確スイーツ研究部って、そんなに大きかったんだ。
「晴奈ちゃん。遊ぼう、今日。陽茉理ちゃんと由里歌ちゃん、部活あるもんね」
「いつの間に知ってるの?わたしと陽茉理が部活始めたこと」
フフフ、調べておいたんだ〜
陽茉理ちゃんは吹奏楽部。
由里歌ちゃんはバレー部。
わたし、仲良くなりたくて調べたんだよね〜
明確ゼミへ向かっても、誰も話してこない。
この、、、孤独さ。
わたし、明スイやめてやるもんね。
隅木田君に謝って、明スイやめるって言おうっと。
でも…つまらなくなってきた…
わたし、明スイ好きなんだなあって、すごく感じちゃったもの。
やっぱり、坂宮にも謝ろうかな。
モヤモヤが隠しきれず歩いていると、梨歩佳さんがいた。
「あの!梨歩佳さんですか?」
声をかけると、梨歩佳さんは振り向いてくれた。
ニャーミちゃんは、わたしは悪くないから、優しく気軽に話してくれた。
「真美ちゃん。ごめんね、急に暴走したりして。あと、割り振りもわたしがしちゃって」
「割り振り、もとすごく楽にできました!梨歩佳さんありがとう!あと、坂宮が悪いんだから。わたしも、坂宮とあのあと喧嘩…といいますか、をしましたから」
昨日のあのことを思い出す。
坂宮にバカって言っちゃったこと。
それに、やめるような発言をしてしまったこと。
ずっとあれから後悔してる。
やっぱり、わたし入り直したい。
明スイに入ったままがいい!
「梨歩佳さん、失礼します」
12.〆切迫る!
坂宮たちに謝る決心をして、談話室に行ってみた。
クラスは知らなかったし、もし知っていたとしても、呼び出せないから。
「失礼します。多田本真美です」
談話室は、シーンと静まり返っていたから、なんとなく怖かった。
誰か来て…
動けないから、動きたくないから。怖いから。
「失礼〜坂宮です〜って。真美がいるんだけど!どして?」
このとき、言おうって決めた。
絶対今言うしかない。
「ごめんなさい。昨日。坂宮が嫌な思いするって分かってたのに」
「いいんだよ。梨歩佳さん?の気に入りから逃げたんだから。ったく、アレルギーだから仕方ねえだろ」
アレルギーだったの。
あら、早く言えばよかったのに。
「隅木田、矢本。真美がいる」
「ハミーちゃん。帰ってきたんだね。俺、待ってたからね♪」
矢本君…
「真美ちゃんが来てくれて嬉しい。昨日、捜せなくてごめんね。捜したけど見つからなくて」
隅木田君…
「真美、ありがとうな」
坂宮…
やっぱり、明スイのメンバーでいたいって、心から思える。
「さあ、真美ちゃんも座って。先生を呼ぶ方法を考えてみよう」
船水先生を呼ぶ方法…
招待状じゃ、ダメかなあ?
「あのぉ、招待状って普通すぎ?」
わたしが小さい声で言うと、坂宮が賛成してくれた。
隅木田君も矢本君も賛成してくれて、船水先生には招待状を書くことに決まった。
「ねえ、船水先生、明日やめるんだってね。信じらんない」
明日!?
「そうそう。早すぎー」
明日ぅ!
みんな、サッっと顔色が曇る。
ヤバーーーーーーイ!
陽茉理と由里歌の話し方少し変わっててごめんなさい。
これからは、始めに合わせて書きます。
13.協力して
「ちょっと。君たち。船水先生、明日やめるのかい?」
「あら、矢本先輩。船水先生、明日やめられるって。残念よねえ」
明日やめられる…
〆切明日までってことじゃんか!
「矢本、坂宮、真美ちゃん。明確ゼミは休もう。みんなを誘わないと」
こうしちゃいられない。
パーティー会場も予約しないと。
みんなも呼ばなきゃいけないじゃん!
「まず、明確生に招待状を渡そう。船水先生のとは違う物をね」
「会場、俺んちじゃダメか?」
矢本君の家…もちろん!
「失礼します。矢本梨歩佳です」
梨歩佳さん?
「ちょっと!坂宮君。昨日のこと、しっかり教えてもらおうじゃないの!?」
「梨歩佳さん!わたしが言います。みんな、進めてて」
談話室を出ると、梨歩佳さんは振り向いた。
「どうして真美ちゃんが言うのよ」
「坂宮、猫アレルギーなんです。ビックリしちゃったみたいで、わたしも矢本君の家で怒ったんですけど、本当のことを知って、謝りました」
梨歩佳さんは、すっかり自分が悪いと反省したのか、談話室に入った。
「坂宮君、本当にごめんなさい」
梨歩佳さん…
坂宮君も、にっこり笑って席の隣を進めた。
「梨歩佳も一緒にやるのかよ」
矢本君だけが反対していたけど…
人手が足りないんだもんね!
「よ〜し、みんなのケーキ作るよ!みんなのケーキはチーズケーキだったよね?」
「うん!」
梨歩佳さんとわたしとふたりで、チーズケーキーーーみんなで食べるケーキ本番を作っている。
坂宮、矢本君、隅木田君は、招待状を作って、渡してから来るそうだ。
「まず、チョコレートケーキみたいに塊を作っていくよ!」
チーズを小さくしていって、あとから溶かした物に入れる。
美味しそうな香りが引き立つの。
「梨歩佳さんの兄弟って、何人いるんですか?」
「ええっと、1、2、3、4、5、6、7、8人」
えええええええっ!
「拓斗兄、拓哉兄、わたし、双子の妹の梨萌佳、香音、陽茉理、大地、大斗だよ」
陽茉理ちゃん?
「あの、香音さんと陽茉理さんって」
「香音と陽茉理は双子。香音が百合千学園、陽茉理は彦宮学園だよ」
陽茉理ちゃんって、矢本君の妹ってことなの〜?
「また、陽茉理さんに会いたいです。多分、学校で遊んでる子ですから」
梨歩佳さんはちょっと笑って、梨萌佳さんを呼んだ。
「イェ〜イ、矢本梨萌佳だよ〜」
梨萌佳さん。
「梨歩佳さんと梨萌佳さんとわたしと作るってことですか?」
「イェス!もちろん。真美ちゃんよろしくね〜」
梨萌佳さん、梨歩佳さんとタイプが全然違う。
「急いで作ろ作ろ!」
梨萌佳さんの掛け声で、チーズケーキ作りが再開された。
14.6人で
「お〜い、真美〜陽都だよ〜」
「坂宮、ハミーちゃんにそうやってくっつくの、やめた方がいいよ」
矢本君、当たりっ!
「拓斗兄、早くやるよ!真美ちゃんごめんね。いっつも拓斗兄があ」
梨萌佳さん…全然いいのに。
矢本君は気を悪くして、フンッってしている。
時計を見ると、9:30!
「みんな、急いでよ。時間ヤバいんだからね!」
あ、ママとパパ、きっと心配してる。
明確ゼミ、9:00に終わるから。
「真美ちゃん、気にしないで。お母さんとお父さんには、しっかり電話しておいたからね。勉強会するので、今日は真美さんの友達の梨歩佳さんの家に泊まるってね」
「ありがとうございます!」
隅木田君、すごく気が利く!
「変なこと話してる場合じゃない!早く作んねえと、本当に時間ねえんだからな!」
あああああっ!急げー!
15.誰かの悲鳴
「あとは、オーブンに任せるだけだ!よ〜し、梨萌佳頑張るよ〜」
クッキー作りに取りかかる頃、若い綺麗な女の人がキッチンに来た。
「拓斗、梨歩佳、梨萌佳。お友達さんたち。朝ごはんを持ってきたわよ。フレンチトーストだけど、嫌いな方いらっしゃる?」
みんな首を横に振るので、女の人はにっこりして、キッチンの机にフレンチトーストを置いた。
「切りがついたら召し上がれ」
誰だろう、お母さんかな?
女の人がキッチンから出ていくと、矢本君がフレンチトーストを食べた。
坂宮も、隅木田君も食べていく。
「あれ、梨萌佳のママだよ」
やっぱりお母さんだったんだね。
「キャーーー!」
誰なの、この悲鳴っ!
矢本君と梨歩佳さん、梨萌佳さんは、顔を見合わせてどこか走り出した。
「ねえ、待ってよ!ちょっと!」
「真美ちゃん。きっと、親族の人だ。無理に動かない方がいい」
でも…
隅木田君に止められた…でも…
黙っていられない。
「すみません。わたし、行きます。わたしのお母さん、看護師なんです。電話しましょうか?それとも…」
「真美ちゃん!ダメだよ!」
隅木田君っ。
そっか、やっぱりダメか…
「すみません」
フレンチトーストを食べながら帰りを待っていると、ふと明確ゼミが頭を横切る。
ちょっと待って!
明確ゼミ、授業しないで抜けてきたわけだよね?
電話するの忘れてた!
隅木田君を見ると、うなずいた。
なんだか、とっても機械みたい。
人の心を読んで、実行してくれる。
待ってってってってって!
船水先生のパーティーするのはいいんだけど…場所はっ?
「坂宮、真美ちゃん。僕たちだけで、クッキー作り進めてみよう。これが本番だから。クックパッドを真似するしかない。間違えることは許されないからな」
本番は一度きり。
失敗してもやり直せないことは知っているから。
フォローしてやっていくしかないってこと、知ってるんだから!
「早く作るよ!」
一発で作るのは難しい。
練習をしていないから。
でも、時間は取り戻せないから。
頑張って今をやるしかないんだ!
16.坂宮も一緒に
隅木田君のスマホ。
クックパッドを真似してクッキー作りをしている。
「ねえ、みんなで食べるケーキと船水先生にプレゼントするクッキーの工夫の違い、どうする?」
う〜ん?
確かに、味はチョコレートケーキに、バニラクッキー、チョコレートクッキーがいいのかなあ?
普通すぎちゃうのかなあ?
「とりあえず、今はチーズケーキの、チーズクッキーとバニラクッキー作るしかないんだ!」
坂宮の言葉に、チーズクッキー作りにまた専念する。
「ごめんな。ハミーちゃん。坂宮。隅木田。って、エッ?」
矢本君が来た2秒くらい前に完成したチーズケーキにチーズクッキーを付けた、その名は『明確チーズケーキ』。
梨歩佳さんと梨萌佳さんも褒めてくれた。
クックパッド通りに作って、ダメかもだけど、感情こもってるもんね。
「さあ、船水先生にプレゼントするチョコレートケーキ作るよ!」
「梨萌佳、クッキー担当だから、クッキー作りとケーキ作りに分担したい!真美ちゃんと一緒にやりた〜い♪」
梨萌佳さん…
さっきの駆け出した時とはうってかわって、いつもの調子に戻った。
「そっちの方が早いです。きっと」
確かに、分担したら早くできそう。
「でも、クッキーが早く焼けたら冷めちゃうよね?どうするの?」
「オーブンに入れっぱなし」
オーブンに入れたままなら、冷たくならないものね。
「梨萌佳と真美ちゃんがクッキー。残りはケーキでいい?」
「俺、真美とやる〜」
坂宮とやりたくな…やってもいいよね、別に。
「いいよ。坂宮。一緒にやろ」
「ヤッタ〜」
わたし、坂宮がイヤなこと言ってしまったり、思ったりしてた。
でも、もうやめる!
うん、やめよう!
17.わたしのせい
「クッキー、焼き始めたよ。あとはケーキに付けるだけ」
わたしが言うと、ケーキのスポンジに生クリームを馴染ませていた矢本君が振り返った。
すると、スポンジが真っ二つに割れてしまった。
「「「「「「あああっ!」」」」」」
スポンジがみるみるうちに倒れ、元に戻そうとも戻せそうにない。
「拓斗兄何やってんのよ!ちゃんと集中してって言ったよね?」
「梨歩佳さん、怒らないであげてください!わたしが悪いのだから」
意を決してわたしはキッチンにこだまする大きな声で言った。
「わたし…わたしが、ケーキに付けるだけって、焦らしたから。わたし、スイーツ作るの、むいてないのかな」
悲しいけど、自分に言い聞かせるようにそう言った。
むいていないのに、参加したからいけなかったんだ。
わたしがいなければ…
そう思うと、涙があふれてきた。
「わかひがやりょうちょおもわなきぇればあ。あぁぁぁ」
(訳:わたしがやろうと思わなければ。あぁぁぁ)
もう、わたしやめた方がいいのかな?
18.改善方法
梨歩佳さんは、優しく声をかけてくれた。
「真美ちゃん。拓斗兄がちゃんと見ていないからダメだったのよ。真美ちゃんは悪くないわ。気にしないの!」
梨歩佳さんの言うこと、今回ばかりは間違っているよ。
間逆なんだから。
ねえ、聞いていますか?梨歩佳さん。
「真美ちゃんっ!!!」
梨歩佳さんが急に大声で言ったので、わたしはもちろん、隅木田君も、矢本君も梨萌佳さんもビックリしていた。
「真美ちゃん。やってしまったの。時間を取り戻す方法があるの?ないから苦労するのよ。さあ、改善方法を考えてごらん」
改善方法…
時間を取り戻すことはできない…
切れたケーキ、小さなケーキ、食べやすいケーキ、ミニケーキ…
ショートケーキ!!!
「梨歩佳さん、ありがとうございます!ショートケーキに変更しても良さそうですか?」
「ええ。いけるわよ」
やったー!
ショートケーキに決まりー!
で、いい?
チロッっと後ろを振り向くと、みんなうなずいてくれていた。
わたしを認めてくれるように見える。
ここにいれて、とても嬉しい。
「あの…わたしは入ったままでいいのかな?」
「「「もちろん!!!」」」
19.運命のパーティー
「船水先生に、入場して頂きたいと思います。船水先生、お願いします!」
隅木田君の司会の中、梨歩佳さんと梨萌佳さんの美人姉妹が誘導していた。
パーティー会場は人でいっぱい。
『明確スイーツ研究部!』でやっていったから…
「真美。時間が空いたら、家空けとけよ。俺が真美の父さんと母さんに挨拶に行くからな」
はああっ!?
「父さんと母さんによろしく言っといてくれよな」
えええええええええええっ!!!
坂宮君、本気だったの〜!?
(つづく)
あとがき
モンブラン
こんにちは。
明確スイーツ研究部!作者のモンブランです!
略して明スイ、いかがでしたか?
今回は、いろいろなシリーズをお手本に書かせていただいたので、似ていたりしませんでしたか?
次回からは、明スイらしく、頑張りたいと思いますので、応援のほど、よろしくお願い致します。
さてさて、皆さんは明スイ、キャラクターは誰が好きですか?
坂宮が絶対!
隅木田君カッコいい!
矢本君チャラくていい!
梨歩佳さんカッコいい!
いろいろな方がいると思います。
もしよろしければ、書き込んでくださると強みになります!
挨拶などでいっぱいになってしまいましたが、実はこれがデビュー作です。
誤字等たくさんあると思いますが、優しく受け流してください。
次回の明スイは、新たな強い女の子グループが出てきます。
真美ちゃんは耐えきれるのか?
次回もよろしくお願いします。
モンブランからメッセージ
こんにちは。
明スイ作者のモンブランです。
2巻を書かせていただく前に、言いたいことがあります。
1巻は、「完結をうまく」ということを意識していました。
ですが、今回は面白いいい作品を書くことを意識して書かせていただくので、読んでいただけると嬉しいです。
では、読んでください。
『明確スイーツ研究部!2』
人物紹介
多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。明確ゼミナールに通う。
坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う少年6年生。
真美が好き。
矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。
隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。
1.新しい部活
「由里歌、テニス部入りた〜い」
「わたしはバトミントンやってみたいな〜」
「わたしは美術部に入りたい!」
春のひざしが心地よい春の日、部活を変えてもいい時期がきた。
わたしたちの通う、彦宮学園は、選手並みの人は変えられないけど、大会に出ない人は部活を変えられるーーー部活変更委員会が現れるの。
部活変更委員会って言うのは、4、5、6年生の中で4人代表で委員になるんだ。
部活の変更は、部活変更委員会に紙を書かなくちゃいけない。
わたし、多田本真美も、幼なじみ、晴奈ちゃんも、陽茉理ちゃんも、由里歌ちゃんも変更できるんだ。
「どうしよう、どうしよう、どうしよう!」
いきなり廊下を走ってきた女の子にぶつかった。
あぁ、いた〜い。
それより、女の子は大丈夫かな?
女の子は、スカートについたゴミをていねいにはらい落としながら、わたしに言った。
「ごめんなさい。わたしがしっかり見ていたら良かったのに」
その子は初等部5年のバッジをつけていた。
わたしが先に謝る立場じゃん!
高学年なんだから、いいお手本を…
「では、急いでいますので。失礼します。本当にごめんなさい」
すると、また女の子は走っていってしまった。
「あ〜あ、せっかく真美が言う機会だったのにぃ〜」
晴奈ちゃんが女の子を見つめてつぶやいた。
彦宮学園には、初等部、中等部、高等部がある。
わたしは初等部で、来年中等部に入るんだ!
まだまだだけどね。
「本当。真美ちゃんの話も聞きなさいって感じ!」
「走ってぶつかったのに、まだ走るつもり!?」
みんな口々に怒鳴った。
まあまあ、みんな、わたしたちが迷惑しちゃうと、大変だよ?
書き込み失礼します。
名前のネーミングセンスに惹かれました(*^^*)
2.変なわたし
「真美。部分的に国語で聞きたいとこあるの。明日教えてくれない?」
「いいよ。陽茉理ちゃんのためになるなら、何でもするから!」
陽茉理ちゃんは算数が得意で、わたしとは大違い。
でも、国語は苦手なんだ。
明日は土曜日だし、明スイの集合もかかっていない。
明スイって言うのは、明確ゼミナールに通う、わたし、坂宮、矢本君、隅木田君の4人でやっている。
明確スイーツ研究部!の略し。
スイーツの中身を工夫する、研究部なんだ。
誰が集合をかけるのかも決まっていないし、初めの船水先生のパーティーの後、続けることを誓いあったけど。
どう続けていいのか分からないし…
「真美?真美?」
「フェッ?」
「昼休み終わっちゃうよ。早く食べないと」
気づけば、ボッっとしてて、学食のご飯ーーーオムライスが残ったままだ。
「も〜う、ちゃんとしてよね!」
陽茉理ちゃんが背中を叩いた。
晴奈ちゃんも由里歌ちゃんも笑っている。
この空間が好き。
ここにいていいって素直に思えるからかな。
「ちょっと、真美?本当に大丈夫?ケチャップじゃなくて、七味だよ?ケチャップたくさんかけてあるじゃん!」
ああ。
って、ど〜してこんなになっちゃうのよ〜
>>30
ありがとうございます。
初めてこのシリーズで褒めていただきました。
読んでいただいた?かは分かりませんが、名前も見てくださってとても嬉しいです!
ありがとうございました。
ちなみに、誰が好きですか?
読んでいなかったら分からないかもしれませんが、どうですか?
>>32おおっ返信が速いヽ(・∀・)ノ
あ、読んでますよ!楽しみにしてますん。
もちろん(と言うべきか)
主人公ちゃんですね〜。
友達になりたくなるタイプですよ。
自分の回りはもっとヤバいやつが多いので笑
自分もここで何か書きたいなーと実は思ってるんですが
なんせ内容が重いのでね。
あ、あと何を作ろうかとか考えてるところが可愛らしいですよね(*^^*)
もっと見たいなあとか思ったり♪(/ω\*)
>>33-34
アテナさん、ありがとうございます!
とても嬉しいです。
返信遅れてすみません!
アテナさんも書こうと思ってます?
では、今から作る、ここに来てください!
[モンブランとアテナのリレー小説]
ここで、ふたりでリレー小説しませんか?
ここでは、感想くらいにしておいて。
いかがですか?
イヤだったらいいですよ。
返信いただいたら、スレ作るかどうか決めようと思います!
真美ちゃんのこと、褒めていただいてありがとうございます!
アテナさんは男の子の中で誰が好きですか?
3.彦宮学園名物時計
「由里歌、部活の仮入部の紙を出しちゃったの。悪いけど、部活行くね」
「行ってら〜」
「ファイトだ由里歌!」
「頑張ってね!」
由里歌ちゃんは仮入部の部活に行き、残ったわたし、晴奈ちゃん、陽茉理ちゃんと帰ることになった。
「ねえねえ、明明後日(しあさって)、彦宮学園名物の時計が生まれた日だったよね?」
突然陽茉理ちゃんが切り出した。
彦宮学園名物の時計ーーー彦宮時計は、その名の通り、彦宮学園の名物の時計なんだ。
伝説的に伝わっている話によると、時計職人が、100年かけて作ったんだって。
世代、世代、世代…
と、いろいろな人が作った時計が完成した日が明明後日なの。
「あぁ〜、すっかり忘れてたよ。で、彦宮時計がどうしたのさ」
晴奈ちゃんがすぐさま反応する。
陽茉理ちゃんは、胸を張って彦宮時計の話を始めた。
「わたしのお姉ちゃん、梨歩佳姉と、梨萌佳姉の話によるとだよ?」
うんうん。
「彦宮時計が一度盗まれたことがあるらしいの」
へ〜、ふむふむ。
「怪盗でね、一応戻ってきたらしいけど、加工されていたらしいの。そんな時計には、怪盗の涙がついていたって言ってた」
涙がついていたの?
「その涙で、調べた結果、怪盗日本(ジャパン)ということが分かったそうよ。その涙、かなり貴重で、より貴重な時計になったそうよ」
彦宮時計に、そんな歴史があっただなんて。
「陽茉理、それ、ジャパンが仕掛けてくるんでしょ?明明後日」
「晴奈ちゃん、よく分かったよね。明明後日に盗むと、ジャパンから予告状が届いているみたいよ」
晴奈ちゃんも、情報早〜い
陽茉理ちゃんも、怪盗日本なんて、情報得るの早いな〜
「わたしこっちだから。バイバイ」
「バイバイ」「バイバイ」
陽茉理ちゃんと方向が別れて、すぐ晴奈ちゃんとも別れた。
家に向かって歩いていくと、大きな黒の車がわたしの隣に停まった。
4.怒れること
「あら?真美ちゃんじゃないの。ひとりぼっちなのね。晴奈たちは?」
「え?」
この人は、彦宮美華(ヒコミヤ ミカ)ちゃん。
お金持ちで、毎日送り迎えがある。
クラスの女子リーダーで、お祖父さんが彦宮学園の校長先生なのだ。
先生すら、美華ちゃんに逆らうことはできない。
とても大きい存在なのだ。
「あらぁ〜?もしかして嫌われた?ごめぇ〜ん、こんなこと聞いてぇ〜」
美華ちゃん、悪口にしか聞こえないんだけど、やっぱり悪口なの?
すると、美華ちゃんは薄い笑みを浮かべた。
「彦宮学園の名物、彦宮時計。真美ちゃんに差し上げましょうか?わたしが持っているのよ。どう、いる?」
美華ちゃんが車の中から言うと、車の中に乗っている人が言う。
「美華お嬢様、おやめください。こんなブスなお方とお話するとは、なんということを。彦宮時計も差し上げてはなりませぬぞ」
ブスとはなんだ、ブスとは!!!
「あら、じい。もちろんよ。彦宮時計を渡す相手が真美ちゃんですって?差し上げるわけないではないか」
ちょっと、美華ちゃん!?
ヒドイ、ヒドすぎるから。
「あの、彦宮時計なんていりません。失礼ですが、わたし帰ります!」
もう、なんなのよ!?!?
5.明スイ活躍
「あらぁ〜、はいはい。今帰ってきたところですぅ」
ママが電話相手にキラキラした顔で話している。
わたしは、明確ゼミのカバンを持って、明確ゼミに向かおうとした。
すると、急いでママが呼び止めた。
「真美にこんな友達がいたのねぇ」
美華ちゃんじゃないよね!?
一体誰なのよ。
「もしもし。真美ですが」
「真美ぃ!!!」
って!坂宮かぁ!!!
「一体何の用なのよ。明確ゼミ行かなきゃならないの。後にして」
わたしが電話を切ろうとすると、坂宮が大きな声を出して止めた。
もう、用件は何なのよ!
「隅木田から集合がかかった。放課後談話室な」
明スイの集合がかかったのね!
なんなら、早く言えばいいのにさ!
「失礼します。多田本真美です」
談話室に入ると、いつもの席にみんなが座っていた。
ここの談話室、中学生の棟にあるから遠いんだよね。
坂宮、なのに早いなあ。
「今日集めた理由は、明スイの活躍があんまりないということだ。あれから、やってください!と依頼がたくさん来ている」
依頼まで来ているのね!
矢本くんが続ける。
「依頼を、ひとつひとつ数えてみても、全てできる量ではない」
明スイは信頼されてるのね。
いいことだ。うんうん。
「どうすべきかということで集まってもらったんだ」
そういうことだったのね。
すると、坂宮が手を挙げる。
「俺に教えてくれねえか?その依頼」
「わたしも見てみたい」
隅木田くんの小さなメモ帳を取り出した。
メモ帳に書いたのかな?
「真美ちゃんと見てみて」
ええっと…
名前:尾崎 桃音 オザキ モモネ
友達の夏那の誕生日パーティーがしたい。
名前:尾崎 桃乃 オザキ モモノ
おばあちゃんの死んでしまった日に、天国のおばあちゃんにケーキを渡したい。
(超たくさんあって…)
名前:宝雨 姫子 タカラウ ヒメコ
誕生日パーティー(自分)の大きいケーキが食べたい。
すご〜い、たくさん!
6.聡日ちゃん
「たくさんの方が書いてくださっていますね」
わたしが呟くと、隅木田くんが小さな紙を取り出した。
「この紙が、坂宮の学校の子だよね?雲野聡日(クモノ サトカ)ちゃん」
すると、坂宮は目をそらした。
あんまりいい関係じゃないのかな?
隅木田くんも矢本くんも気付いたのか、黙って紙を見つめる。
少し時間が経って、坂宮は紙を取り上げた。
「聡日の依頼は断れ」
「どうして断るんだよ。聡日ちゃんも平等な依頼人だろ?」
そうだよ、坂宮は何でも勝手すぎ。
ちゃんと言わないもの。
「俺の幼なじみなんだ、聡日」
かわいい名前。
幼なじみなのに断るなんて。
「今日、喧嘩したんだよ。内容は…俺のサッカーの立ち位置が変わったからなんだ!」
えええ!?
そんなことで喧嘩!?
「俺の立ち位置、聡日気に入ってて、変わったら許さないって」
強い気持ちだね。
でも、どうして許さないんだろ?
別に変わったくらい、大きいことじゃないのに。
「お前らには関係ないだろ。聡日は入れるな、頼む」
坂宮が頭を下げる。
ちょっとかわいそうに見えて、隅木田くんと矢本くんと目を合わせて、今回は坂宮の通りにすることにした。
7.美華の暴走
「晴奈ちゃん。仮入部何にしたの?」
今日は仮入部の入部届を出す最終日。
提出忘れは、部分的に苦手な勉強会になってしまうのだ。
休んでいた人は別だけど。
「わたしは、由里歌とテニスやることにする!!!」
晴奈ちゃんも由里歌ちゃんもテニス部かぁ。
わたしと陽茉理ちゃんは、まだ決まっていない。
晴奈ちゃんはさっき提出してきて、仮入部がテニス部に決まった。
「真美と陽茉理だけ決まってない。早く決めないといけないよ!?」
うん…そうだけど。
今日は土曜日。
でも、学校に来ています。
どうしてかというと…
「彦宮学園生徒に連絡します。生徒会の会議により、明日は学校に来てください。月曜日、彦宮時計を守るためです。月曜日は休みとなります。
児童会長 杉田 ふみ」
「ねえ、真美〜。ふみ会長からメール入ってるわ。明日学校って」
え〜〜!?
ふみ会長、どうしてなの〜?
って!彦宮時計のためか!
なら、仕方ない。学校行くか。
ってことで。
「真美。今日は無理だから、国語また今度教えてね」
「うん、いいよいいよ」
勉強会は後でもいいもんね。
それにしても、本当に彦宮時計いいのかなあ?
「ちょっと、ふみ!」
美華ちゃんがふみ会長を突き飛ばしている。
ふみ会長は、学食の扉にあたり、しりもちをつく。
い、痛そうだよ…
「ねえ、どうして今日学校にするのよ!ねえ!!!」
美華ちゃん、メール見ていないの?
ふみ会長がかわいそう。
でも…
足がふるえる。
どうしよう、どうしようっ!
「わたし、初等部には送ったはずよ。みんな来てるもの。彦宮先生も知っているはずよ」
ふみ会長、わたしは何になれる?
会長!
「わたし、お母様に行きなさいって言われたから来ているの。来る理由なんて聞いていないわよ」
すかさず美華ちゃんが言う。
でも、ふみ会長はひるまない。
「でも、こうして来ているからいいのよ。月曜日はお休みだから」
すると、美華ちゃんの後ろにいる、ユウちゃんこと優佳ちゃん、ほのこと穂乃果ちゃんも言い返す。
「どうして美華に言い返すのよ!ねえほの。そうよねえ!?」
「ええ。美華に言い返すなんて、どういう頭してるのよ!ねえ、ユウ」
美華ちゃんも優佳ちゃんも穂乃果ちゃんもふみ会長に言い返す。
これじゃ言い返し合ってるだけ。
「彦宮時計のためだから」
ふみ会長はそう言い残すと、学食から出ていった。
美華ちゃんたちも、学食のおばさんたちから隠れて出ていった。
「嵐の吹き回しだよね」
「本当に」
「ねえ」
晴奈ちゃんたちも言う。
本当。
嵐の吹き回しだよ。
8.怪盗日本からの予告状
「皆さんに連絡します。ただいま、怪盗日本から予告状がきました。皆さんは多目的ホールに集まりましょう」
ふみ会長のアナウンスが入る。
怪盗日本…
多目的ホールに急がなきゃ!
「早く行こう!晴奈ちゃん、陽茉理ちゃん、由里歌ちゃん」
わたしが声をかけると、みんなノートに向ける手を止めて、多目的ホールに向かって走った。
ふみ会長の言葉に、初等部、中等部、高等部が一斉に動く。
初等部と高等部の生徒会長さん、活動が少ないらしいからなあ。
「ちょっと、真美!急いで」
う、うん!
さすがに美華ちゃんもしつこく言ってこないで、多目的ホールに向かって走っていた。
ふみ会長も放送室から出てくる。
「ふみ会長。怪盗日本から予告状がきたって、詳しくどういうこと?」
陽茉理ちゃんが聞くと、ふみ会長はいつものキッっとした顔で言った。
「多目的ホールに集めた理由を考えてごらんなさい。みんなに話すためよ」
陽茉理ちゃんはふみ会長に頭を下げ、多目的ホールに向かってラストスパートを走った。
「初等部児童会長、杉田ふみ」
「中等部生徒会長、森小路なお(モリコウジ)」
「高等部生徒会長、船水琉水(ルミ)」
多目的ホールにこだまする声。
ふみ会長、森小路先輩、船水先輩が前に立つ。
「怪盗日本から予告状がきました。皆さんは多目的ホールで待ちましょう。彦宮時計はここにあります!なので、怪盗日本が引くまで、ここで待機となります」
え、ということは…
100年怪盗日本がここにいたら、100年多目的ホールで過ごすってこと!?
どんどんブーイングの声が大きくなっていく。
「静かに!!!」
船水先輩の声がかかると、急に静かになる。
「食べ物も、漫画も、小説も、何でもありますので、自由に過ごしてください」
ふみ会長が言うと、みんな自由に動き始めた。
漫画を読みまくる子。
小説を読んではジュースを飲む子。
お菓子を食べ散らかす人。
ちゃんばらを始める子。
「これからどうなるんだろうね」
「由里歌、怖い〜」
「わたしも怖いよ〜」
もう、一体どうなるの〜?
9.矢本兄弟
「ねえ、ふみ〜!もう飽きてきたんだけど」
美華ちゃん、飽きるの早すぎる。
もうちょっと何かないのかな?
「暇つぶしになることないの〜?ふみって会長でしょ?できることあるはずでしょ?」
あるわけないでしょ!
ああ、また足が動かないよ!
わたしって本当に弱いよね…
「真美ちゃん。ちょっと」
誰?誰が呼んだの?
あちこち見回したけど、正体は分からない。
幻覚じゃあないよね?
「真美ちゃん、上を見て」
そのまま上を見上げると、隅木田くんと矢本くんがいた。
なんでこのふたりがいるの?
隅木田くんと矢本くんは、多目的ホールの二階にいた。
すぐ階段で降りてきて、わたしの目の前に降り立った。
「隅木田くんと矢本くん?」
「それ以下誰が考えられる?」
「隅木田と矢本だよ」
このふたりって、彦宮学園に通っていたの〜?
え、絶対目立つのに、気付かなかっただなんて…
「あれ、拓斗兄。真美、こっち」
「陽茉理か?」
あ、そっか。
矢本くんと陽茉理ちゃんは兄弟だもんね。
「ねえ、矢本くん。梨歩佳さんと梨萌佳さんも彦宮学園にいる?」
「もちろん」
矢本兄弟、彦宮学園にいたんだ…
全く気付かなかったな…
すっごく面白いです!入っても良いですか?これからも感想書かせて頂きたいのですが・・・
44:モンブラン:2017/02/17(金) 22:02 >>43
すっごく嬉しいです!
ありがとうございます!
もちろん、入ってください!
感想書いてくださるんですか!?
改めまして、モンブランです。
あと、返信遅れてすみません。
10.わたしにできること
「真美ちゃん、ちょっと」
隅木田くんに呼ばれて、二階に上がる。一階よりは狭いけど、ホールっぽい空間。
「明スイで、できることないかな?」
「キッチンもないけどね」
ホールなんて、スイーツ作る場所じゃないもんね〜
「中等部2,3年生、高等部の皆さん。隣のホールを空けました。移動してください。お願いします」
隅木田くんも矢本くんも行くよね…
「出入り可能にするから。できたら、こっちに来るよ」
「ありがとうございます」
「ハル、お腹空かない?」
晴奈ちゃんが反応する。
さっき決めたニックネーム。
「え、ヒマお腹空いたの?」
ヒマもお腹空いたんだ。
って!ハルはお腹空かないの!?
「ユリもお腹空いてきたよ〜!!!」
お菓子は空っぽ。
食べられる物なんてちっともない。
わたし、ずっと我慢してるんだよ!
「会長、まだ怪盗日本来ないの!?」
美華ちゃんが暴走しちゃう!
ふみ会長、手がまわらないよ!
わたしでできるかなっ?
「美、美華ちゃんっ!」
「何よ」
「怪盗日本、来ていないから待ってるんだよ。もうちょっと我慢しなきゃ。美華ちゃんの生活で有り得ないと思うけど」
ふみ会長は、目を見張っている。
やっぱり、こんなわたしだもんね…
「わ、分かってるわよ。もう!」
美華ちゃん、伝わったのかもっ。
「マミやるじゃん!」
「言ったね〜」
「これからも言ってやんなよ!」
ハルとヒマ、ユリが背中を叩いた。
エヘヘ、美華ちゃんに伝わった!
「多田本さん。ありがとう」
「いいえっ!いつも助けてもらってるもんね。ありがとう」
なんか…照れくさいっ!
11.明スイ始動!
「真美ちゃん!」
あ、隅木田くんと矢本くんだ!
進歩できたのかも!?
「マミ、行ってらっしゃい。隅木田先輩が呼んでるよ」
ハル…
行ってこよっと!
「行ってきます!!!」
隅木田くんの方に走っていくと、ふたりとも満面の笑みで言った。
「俺んち、彦宮学園にたっぷり金出してんだよ。キッチン空けてもらって、ガードマン付けてもらった」
お金出してるの?
さすが大きい家のお金持ち。
お坊っちゃまだもんね〜
「坂宮は学校違うから、梨歩佳さんと梨萌佳さんも含めて作ることになったんだけど」
「もちろんやります!」
さあ、何を作るのか決めないとね。
キッチンの冷蔵庫の中は自由でしょ。
材料は問題ないでしょ。
作るもの決めたら作れるね。
「でも、打ち合わせ無しの、研究でいくからね」
打ち合わせ無し…
だけど研究ってことは忘れずに…
「たくさん作れるものがいいよね」
「梨歩佳さんと梨萌佳さん、先に呼ぼうよ」
わたしが言って、矢本くんが呼びに向かった。
お坊っちゃまが、お嬢様を呼びに…
「真美ちゃん。何がいいと思う?」
改めて聞かれると…う〜ん???
思い浮かばないなあ。
「僕の案は、クッキーだけど」
クッキーかあ。
少し時間かかりそうだよねえ。
シュークリームイヤかなあ?
わたしが食べたいだけなんだけど。
「連れてきたよ。梨歩佳と梨萌佳」
「これ、チョーキツいね。早く作ろ。ガードマン呼んできて」
早速キッチンに行くのか!
「わたし、パン作りたいな〜」
「俺はマドレーヌ食べたい」
「僕の案はクッキーだよ」
「わたしはシュークリームがいいと思ったけど」
「わたし、絶対ムースがいい!」
みんなバラバラだよ!
どうしよう、決まんないじゃん!
「マドレーヌ抜きでいいよ、もう!」
「僕のクッキーもいいよ、抜きで」
「わたしのシュークリームも」
明スイメンバーが退いた。
後はお嬢様ふたりだけ。
「パンがいいと思うわ」
「いいえ、梨歩佳。ムースよ!」
パンの方が簡単にできそうだなあ。
「俺は梨歩佳派」
「僕は梨萌佳さん派かな」
「さあ、真美ちゃん/ハニーちゃんはどっち!?」
梨歩佳さん派だけどぉ!
言いにくいよね!?
ふたつ作ればいいんじゃないの?
いやいや、時間が足りないよね。
う〜ん。
ど〜しよ〜う!
12.合体案
「わたしの案はシュークリーム。隅木田くんの案はクッキー。矢本くんの案はマドレーヌですよね?そして、梨歩佳さんと梨萌佳さんの、パンとムースの案が出ています」
うぅ、ちょっと緊張しちゃう!
「全て作ることは、できないのかと思ったんですが」
シュークリーム、クッキー、マドレーヌ、パン、ムース。
これをどうするのか。
だけど…
「いいと思うわ。シュークリームの中に、クッキーのチッコイの入れればいいじゃん!」
「わたしも賛成。マドレーヌの中に、ムースの生地を入れれば問題ないわ。パンはどうしましょう?」
「シュークッキー、マドレムースって名前でいいよね?」
「パンはパンでよくない?」
うん!バッチリじゃん!
「シュークッキーのクッキー、梨萌佳取って」
「はい、拓斗兄」
わたしの担当は、マドレムース。
ムースの生地を作る仕事。
「真美ちゃん。そこのストロベリーの生地取ってくれる?」
「はい。チョコレートの生地取ってもらってもいいですか?」
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
マドレムースのムースの味は、ストロベリー、チョコレート、チーズの三種類。
わたしはストロベリーの生地を作っていたんだ。
「隅木田先輩。チョコレートの生地できましたか?」
梨歩佳さんがマドレーヌを作る手を止める。
「もうちょっと待ってもらってもいいかな?」
「はい!…あと真美ちゃん。真美ちゃんのストロベリーの生地は、梨萌佳に渡してね」
「はい、分かりました!」
ストロベリー、美味しいものにしないとね。
「梨歩佳さん、チョコレートの生地」
「ありがとうございます!…あとさん付けじゃない呼び方で呼んでもらってもいいですか?」
「いいよ。じゃあ、梨歩佳ちゃんで」
梨歩佳さんは赤くなって、マドレーヌ作りに戻った。
13.謎の音
「完成したね〜」
梨萌佳さんがマドレムースの生地をしっかり入れると、全てが完成した。
やった、できた!
「じゃあ、多目的ホールに持っていこう。僕と矢本は高等部側。真美ちゃんと梨歩佳ちゃん、梨萌佳ちゃんは初等部側に持っていこう」
あとはちゃんと運ぶだけだね。
わたしは、シュークッキーを持って、梨歩佳さんはパンを持って、梨萌佳さんはマドレムースを持って行くことにした。
わたしがお盆を持った瞬間っ!
ブーッブーッブーッ
な、何の音なの?
「みんな、お盆を置いて机の下に!」
隅木田くんが言って、机にお盆を置いて、机の下に隠れた。
多目的ホールから、悲鳴が聞こえる。
初等部一年生だろう。
これ、何なの〜!?
あ〜読んでるとお腹が空いてきたぁ〜
50:モンブラン:2017/02/19(日) 07:09 シフォンさん、読んでくださってありがとうございます。
それに、深夜ですからね。
お腹空いたなら、何か食べてください!シフォンさんの好きなキャラクターは誰ですか?
14.怪盗日本あらわる
しばらくしてから、放送が入った。
「ただいま、怪盗日本が見えました。怪盗日本から、呼び出されている人がいます。矢本梨歩佳さん。矢本陽茉理さん。多目的ホール前にふたりで来てください」
呼び出しかかってるの、梨歩佳さんとヒマ!?
何されちゃうの、ふたりとも。
「梨歩佳。絶対怪盗日本の言いなりになるなよ!」
「分かってるって。先、多目的ホールに持っていって。みんな待ってる」
矢本くん…妹だもんね。
梨歩佳さん、ヒマ、帰ってきてね。
「じゃあ、行ってきます」
梨歩佳さんを送り出したところで、作ったものを多目的ホールに運んだ。
「あら。真美ちゃん、スイーツ作ってたの?気楽でいいわねぇ」
「美華ちゃんたちが食べるためなんだから。気楽とか言わないで!」
舞台上にスイーツを持っていって、ふみ会長に言ってもらった。
「皆さん。この多田本真美さん、矢本梨萌佳さん、その他たくさんの人が、スイーツを作ってくれました。ありがたくいただきましょう」
まわりからは、歓声が聞こえる。
作れてよかった…
「梨萌佳さん。よかったですね」
「ええ。高等部の方は大丈夫かしら」
ああ…隅木田くんと矢本くん。
「マミ!」
「ハル!ユリ!…あの、友達来たので、先行きますね。梨萌佳さんも友達のところ行っていいですよ」
わたしがハルとユリの方に行くと、梨萌佳さんが動いたのが見えた。
悲しい目をしていた気もした。
気のせいかな?
15.怪盗日本が来た!
「マミたちが作ったスイーツ美味しいよ。シュークッキーとか!」
「ユリ、パンが好き〜♪」
わたしが作ったマドレムース美味しいかな?
ちょっと不安な気持ちでいると、小さな女の子グループが来た。
「お姉ちゃんって、スイーツ作った人だよねえ?マドレムース美味しかったよぉ!シュークッキーもパンも今から食べるんだ〜」
気に入ってくれたんだ!
「ありがとう、ありがとうね。たくさんあるから、どんどん食べてね」
わたしがにっこり笑うと、女の子グループたちはニカッっと笑った。
「イヤーーー!」
「キャーーーーーー!」
「大人しくしろ!」
か、怪盗日本!?
梨歩佳さんとヒマの悲鳴?
「お姉ちゃん、お姉ちゃん。怖い…。会長さんに言ってよ」
「分かった。じゃあ、このお姉ちゃんたちといてね」
女の子グループをハルとユリに預けると、急いでふみ会長に言った。
「皆さんは、ホールの椅子の下に隠れましょう」
ふみ会長が言って、みんなが椅子の取り合いになった。
とりあえず、近くの椅子の下に隠れれた。
「うわぁ〜ん、うわぁ〜ん!」
誰!?
椅子から顔をあげると、わたしに話しかけてきた女の子がいた。
軽く女の子を手招きして、わたしと一緒に椅子の下に隠れた。
シーンと静まり返っている。
「お姉ちゃん。真美っていう名前なの?わたしは、子日向」
子日向ちゃん(コヒナタ)…
「お姉ちゃんは、真美だよ。多田本、真美」
子日向ちゃんは、わたしを見て、またニカッっと笑った。
するとっ!
「ここが多目的ホールかあ。んんん?誰もいないじゃねえか!」
怪盗日本が多目的ホールに来た!
見えないけど…
「お姉ちゃん、何?」
「シーッ。ちょっと静かにしててくれるかな?」
子日向ちゃんはコクンとうなずく。
「もうひとつ多目的ホールがあるはずだ!案内しろ」
高等部の方に行っちゃった!
隅木田くん、矢本くん、逃げて!
高等部からは、まだ声が聞こえるから!しばらくすると、高等部の方から悲鳴が聞こえる。
「もう、いいの?」
「ダメだよ。お姉ちゃんが、いいって言うまで」
子日向ちゃん、ごめんね。
もうちょっと待ってね。
わたし、高等部の方に行ってくる!
16.戦闘少女3人組
「か、か、怪盗日本っ!」
多目的ホールに入って叫ぶように言うと、怪盗日本が振り向いた。
ん?どこかで見たことがあるような顔だな〜。
「マミ、来ないで!お願い!」
「真美ちゃんっ!どこかへ行きなさいよ!早くっ!」
ヒマ…梨歩佳さん…
でも!わたしは逃げない。
すぐ近くの椅子の下に、中等部の制服の女の子が見える。
この人たちを犠牲にしちゃダメ!
どうにかできる物はないかな?
「ちょっと!怪盗日本、待ちなさい」
え、ふみ会長に美華ちゃん?
美華ちゃん、どうしてここにいるの?
「真美ちゃん、ひとりで行くとか、死ぬ気?死にたいならいいけど、一応…友達でしょう?」
「美華ちゃんっ!」
いつもの、ふみ会長のキッっとした顔が見える。
お、怒られちゃう…
「ふみ会長。美華ちゃん。怪盗日本を追い出そう!」
なんか、戦闘っぽいけど、女の子だからってなめんなよ!?
わたし、空手習ってんだからね!?
ふみ会長柔道やってるし、美華ちゃんはレスリング趣味だもんね♪
合わないけど、戦闘少女3人組って呼ばれてるんだから!
「さあ。かかってきなさいよ!」
怪盗日本はきれて、わたしに襲いかかってきた。
するとっ!
ピーポーピーポーピーポー
この音って、もしかして!
17.ハッピーエンド
「こちら、警察ですが」
ケーサツさんキターーーー!
怪盗日本は、あっさり見つかった。
多目的ホールで鬼ごっこしてたんだけど、これまたあっさりふみ会長に捕まった。
「彦宮時計、守れたね」
わたしが言うと、ふみ会長はあっさりした顔で笑っていた?
ふみ会長、いつも強気だもんな。
美華ちゃんは、校長先生に今のことを話していて…
わたしたち、いいことしたかも。
「お姉ちゃん。わたしを助けてくれてありがとう!お姉ちゃんかっこよかったよ!」
子日向ちゃんに、見られてたんだ。
ハルとユリに見られなくてよかった!
空手、わたしがやってたらビックリするもんね。
もうちょっと延ばそっと。
「いたたたた。マミ、ありがとう」
ヒマが小さな声で言った。
「わたしとヒマの秘密ね。怪盗日本と闘ったこと。わたし、空手やってるから。幼なじみのハルも知らないの」
ヒマはビックリした。
やっぱりビックリするよね〜。
ゆびきりげんまんをして、ハルたちと会話に戻った。
「真美ちゃん!」
「隅木田くんですか?」
また上を見上げると、隅木田くんがいた。
「また作り直そう。食べれる状態じゃないよ」
「はい!」
わたしの髪の毛が揺れる。
わたし、スイーツ作りの才能あったりするかも?
「真美ちゃん。美味しいスイーツ、待ってるから。…ほら、早くしなさいよ!待ってる人がいるのよ!」
美華ちゃん…
「ありがとう!!!」
多目的ホールから解放されたわたしたち。
明確スイーツ研究部、学校でも人気になっちゃったりして?
(つづく)
あとがき
モンブラン
皆さんこんにちは。
明確スイーツ研究部!略して明スイの作者、モンブランです。
今回の2巻、いかがでしたか?
怪盗日本という怪盗を作ってみました。作者のわたしも、ぞくぞくして…
怪盗日本怖いな〜
皆さんは、友達関係うまくいっていますか?
わたしは絶好調!
今度の明スイ、友達関係が関わるので、いろんな友達関係など、友達に関わること教えてほしいです。
読んでくれた皆さんありがとう!
明スイ3巻でもよろしくお願いします。引き続き明スイを読んでください。
明確スイーツ研究部!
〜次回予告〜
真美の友達関係は崩れちゃう?
ハルとわたし、ヒマとユリ!?
どうして分裂しちゃうわけ!?
『明確スイーツ研究部!3』
人物紹介
多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。明確ゼミナールに通う。
坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。
矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。
隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。
『明確スイーツ研究部!3』
1.恐怖!ジェットコースター
ハル、ヒマ、ユリと来ているここは!
サマーサマーパーク!
夏限定の遊園地で、小さな子から大人まで、いろんな人が来ている。
「ねえねえ。あのジェットコースター乗ろうよ!思いきって!」
ユリが指差したジェットコースター。
それは…
サマーサマーパーク一番大きいジェットコースターじゃん!
めちゃくちゃ怖いよお。
わたし、多田本真美。
サマーサマーパーク初入場です!
「思いきって…ジェットコースター行ってみますか!」
ハルまで〜。
ユリとハルが、スキップしながらジェットコースターに向かった。
ヒマと顔を見合わせる。
「プッ!」「ワハッ!」
ふたりとも吹き出したりして。
本当、楽しい。
ヒマと一緒に、ジェットコースターに向かうと、ハルとユリはまだスキップしていた。
その場でだよ?
「マミ、ヒマ。これ、二人乗りなの。わたし、ユリと乗っていい?」
「ユリも、ハルと乗りたい!」
ジェットコースター好き同士、意気投合しちゃってる…
ああ、どんどん前に進むよ〜。
ジェットコースターに近づく〜。
「マミって、好き?嫌い?」
「何が?」
「あぁ。ジェットコースター」
好きか嫌いかと言われると…
苦手だけど…怖いから。
でも、それが醍醐味(だいごみ)だから好きな人は…
「わたしは、苦手なだけ」
「ヒマも?わたしも苦手なだけ」
ヒマと似てるとこ、多いなあ。
「お次のおふたり、どうぞ」
「行ってきます!」
あぁ、ハルとユリ行っちゃった!
次がわたしたちだぁ。
すると、ハルの叫び声が聞こえた。
「ヒマ。ハルの叫び声すごいね」
「ホント」
ふたりでクスクス笑っていると、わたしたちが乗るジェットコースターが戻ってきた。
「お次のおふたり、どうぞ」
うぅ、乗らなきゃ…
足がブルブル震える…
「マミ、乗って。わたし乗ったよ」
ヒマ、乗るのが早いよ…
わたしが震えながら乗ると、スタッフの人のアナウンスが聞こえ、ジェットコースターが動き出した。
「ヒマ、ヒマ、ヒマ、ヒマ〜〜〜!」
「イヤァァァーーー!」
ジェットコースターから出てくると、わたしとヒマはフラフラだった。
「マミ、ヒマ。大丈夫?」
「大丈夫じゃない」
「わたしは大丈夫」
ヒマ、本当に大丈夫なの?
わたしはもういいけど…
「まあ!ヒマの好きな昼ごはん!」
あ、ヒマが楽しみにしていた昼ごはんじゃん!
気を取り直したのか、ヒマはスキップして昼ごはんを買いに行った。
2.サマーサマーパフェ
「う〜ん、美味しい!美味美味!」
ヒマ、急に笑顔が戻った。
「さあ。毎回恒例にしたいと思っている、陽茉理の食レポコーナー!」
ハルがコーナーを作る。
ヒマも初耳だったみたいで、ヒマが買った、サマーサマーパフェの食レポをするよう、うながす。
ヒマ、アナウンサーになりたいんだもんね。
「ん〜。このチョコレートがとても濃厚で、バニラと混じるんですよね。口の中で、パチパチ弾けるストロベリー、とっても美味しいです!」
「はい、カット!」
ハルがカットをかける。
食レポうまいな〜。
「食べたくなってきたよ!さすがヒマだね。買ってくる!」
ハルが、サマーサマーパフェを買いに行った。
ユリも、サマーサマーパフェを後からハルを追いかけて買いに行った。
「マミは買わないの?」
「わたし、パフェって苦手なの」
「マミ!このパフェ、他のパフェと違うんだから!明スイの参考になるから食べてみて!」
ヒマがそんなに言うなら…
わたしもんハルとユリを追いかけてパフェを買いに行くと、美華ちゃんみたいな人を見かけた。
あの子、美華ちゃんとは別人だ。
友達と一緒に来ているようで、名前が出ることを待つ。
早く名前呼んで!
「聡日はさぁ。陽都くんより思いが強いと思うよ」
聡日さん?陽都くん?
もしかして、坂宮くんのこと?
聡日さんって、幼なじみの聡日さん?
「斬新〜!」
イマドキの子って、すごい格好してるんだ。
「マミ?マミ?」
「ふぇい?」
「本当に大丈夫なの?」
笑ってごまかすと、ハルの微妙な笑みが見えた。
ハル、こういうとき怖い〜。
3.聡日ちゃんと美華ちゃん
「ねえ。マミ。このコーヒーカップ乗らない?わたしとユリが乗りたい乗り物乗ったし。マミとヒマの乗りたい乗り物乗ろうよ」
ハルが提案して、近くのコーヒーカップに乗ることにした。
ハル、覚えててくれたんだ。
わたしがコーヒーカップ大好きって。
さすが幼なじみ!
「4人乗りだからちょうどいいね」
う〜、楽しみっ!
サマーサマーパークって初めて来たけど、こんなに面白そうなコーヒーカップがあるなんて!
乗らなきゃ損だよね。
「はい、お次の方どうぞ」
やった、入れる入れる〜!
コーヒーカップは8台あるね。
わたしの好きな色は、この中では薄いあのピンクかな。
「とりゃあーーーー!っと、取った!薄ピンク取ったーーー!」
ハルたちも、後からついてくる。
ああ、ひとりで暴走しちゃった。
「マミの以外な一面だから。ちゃんと覚えておくといいよ」
ハルったら〜!
「では、動きます。スタート」
スタッフの人のアナウンスで、コーヒーカップの床が動く。
わたしたちも、コーヒーカップを思いっきり回す。
やっぱりコーヒーカップ面白い!
「マミが回すと怖いよ…ヒマが回してみたら?」
ハンドルがヒマのところにいくと、もっとビュンビュンになった。
「楽しかった〜!ねえ、ハル。ヒマ。ユリ」
みんなを見回すと、あいまいな感じでうなずいている。
ちょ、ちょっと〜!
楽しくなかったって言うの!?
「聡日、何乗る?」
「え?何でもいいわ。美華選んで」
美、美華?
「じゃあ、久しぶりにメリーゴーランドで」
美華ちゃん…
着いてく!
スゴく面白いですね!!
62:モンブラン:2017/02/24(金) 19:20 みか、ありがとう。
これからも頑張って書く!
4.消えたユリ
っと、その前に。
「みんな、メリーゴーランド行こ!楽しそうだもん」
みんな賛成してくれて、メリーゴーランドに向かった。
もちろん、人通りが少ない道じゃなくて、美華ちゃんと聡日さんに着いて行って。
「ねえマミ。こんな道選ばないでよ!人が多い道を!」
「後から理由を話すから!」
やっとメリーゴーランドのところに行くと、ハル、ヒマ、ユリがいない!
わたしが早く行きすぎたからだ!
「ちょっと、マミ!ユリがいないじゃんよ!」
「ごめん。探してくる!」
あぁ、わたしってなんでこんなことしちゃったんだろう。
「ユリー!ユリー!ユリー!」
メリーゴーランドに行くって言ったから、ユリも来てるかも?
でも、人通りが多い道を選んだし。
「ちょっとマミ!わたし、ユリと一緒にいて、学んだことたくさんあるの!その時間、失いたくないの!だからマミって嫌なのよ!」
えっ!
ヒマ、わたしが嫌?
「ねえ。わたし、まみちゃんといて、利益はないのよ。それに楽しくもないし。本当。」
え?あこちゃん?
わたしのせい。
わたしがどうにかしなきゃ。
もう!
「いやーーーーーー!」
5.突然の絶交
「うわっ!あ、マミ!」
ん…あ、ユリ!
「ユリっ!ごめんね、本当にごめんね」涙目のユリは、一欠片も怒りを抱いていないようだった。
「気にしないで。それより、ずっと迷子にならなくてよかった」
人通りが少ない道に来ると、ユリはヒマとガッチリ手を繋いでいた。
「マミ。どうして早く行ったのか、教えてもらってもいい?」
「わたし、聡日って子を知ってるの。その子と美華ちゃんが一緒にいたから秘密を探りたくて」
「人の秘密なんて探ろうとしないで!マミの秘密、わたしが探っていい?隠したくないの?それに人のこと考えないなんて許せない」
そうだよ。
そうだよね。
ヒマの言う通りだ。
わたしなんて、友だちじゃない。
人のことを考えなかったんだから。
「ヒマ。でも、もう見つかったことだし、反省してるし、これからだよ」
ハルの言うことも一理…
「マミの味方するんだ。もういいわ。わたしはユリと一緒にいる!ハルとマミのふたりでいて!絶交よ!」
「ぜ、絶交!?」「絶交…」「ヒマ?」
6.思い出カレー
「ごめんね、晴奈ちゃん」
「いや。わたしも、陽茉理の考え方に反対だし」
晴奈ちゃん…
わたしたち、ニックネームで呼びあっていたけど、4人合わせてだから、名前で呼ぶことにしたの。
「真美、何にする?わたし、久しぶりにカレー食べようかな」
「じゃあ、わたしもカレー」
ここは学食。
カレーなんて本当に久しぶり。
確か、陽茉理ちゃんたちと遊び始めた日も、カレーだったなあ。
「いいですか?キャンプは、4人グループなので。今から4人グループを作ろうと思います」
はぁ〜、キャンプかぁ〜。
6年の始めにある、キャンプ。
わたしは、いつも晴奈ちゃんとふたりで遊んでたから…。
「ねえねえ!陽茉理と由里歌もふたりだよ!あのふたりと組もう!」
晴奈ちゃんの提案でできたグループ。
キーンコーンカーンコーン
「あぁ。時間になってしまいました!ここで終わります。決まったグループは来てください!」
担任の清水先生が言う。
「これで終わります。礼」
あぁ、お腹空いた。
「えっと、晴奈さん。真美さん。陽茉理さん。由里歌さんね。次」
今日は何食べようかな〜?
学食へ向かう足をなんとか止めようとしていると、陽茉理ちゃんが提案した。一緒に食べようって。
「みんなでカレー食べない?」
由里歌ちゃんもカレー屋さんを指さして提案する。
あ〜、あのときのカレー美味しかったなあ〜。
また食べたい。
でも…。
わたしが自分でなくしたんだから。
7.児童会室に呼び出し
「ごめん。晴奈ちゃん。陽茉理ちゃんと由里歌ちゃんと遊び始めた日もカレーだった。今日はカレー食べたくないかな」
あいまいな顔でわたしが言うと、晴奈ちゃんもカレー屋さんの列から退く。
晴奈ちゃんも、早く忘れたいのかな?
ピーンポーンパーンポーン
「お呼び出しを申し上げます。真美さん晴奈さん。児童会室に来てください。繰り返し連絡します……」
え?わたしたち?
「ねえ。何か頼んでからにしない?」
「うん。わたし、和食にするね」
「じゃあわたしも」
和食の列に並んでいると、向こうから坂宮がひとりで入ってきた。
「真美じゃん!呼び出されてんのに。俺が並んでやる。何なんだ?」
「いいの?坂宮」
「もちろん」
「晴奈ちゃんのもよろしくね。わたしは和食定食。晴奈ちゃんは、焼き魚定食ね。よろしく」
学食を出てきたところで、晴奈ちゃんが肩をバシンと叩いた。
「真美の未来のご主人様、優しい〜」
「今日、すごい優しかった」
晴奈ちゃん、坂宮のこと気に入ったのかな?
気に入ったなら、坂宮がくっつくの晴奈ちゃんにしちゃえばいいのに。
「真美。ノックして」
トントン
「失礼します。多田本真美です」
児童会室を開けると、腕を組んだ陽茉理ちゃんと、縮こまっている由里歌ちゃんがいた。
8.関わらない
「ふみ会長。お願い」
陽茉理ちゃん、何をやってくるの?
ふみ会長は、軽く咳払いして陽茉理ちゃんの肩に手をのせる。
「わたし、あなたたちが仲良くしないの、どうしてかって陽茉理ちゃんに聞いてみたの。喧嘩したらしいわね。真美ちゃんと呼ぶわ。真美ちゃんが原因でね」
「でも真美も反省してるし」
「晴奈ちゃん!わたしが悪いんだからダメだよ。否定しちゃ」
そう、そうだよ。
わたしに原因という袋が覆い被さっているんだから。
これを脱ぐことは、今できないの!
「あなた…真美ちゃんの配慮が足りないのも、陽茉理ちゃんの強すぎる意思も良くないわ」
ふみ会長の言う通りかも。
わたしはやっぱり配慮が足りなかったみたいだし。
「お互い仲良くやっていきなさいよ。卒業生なんだから。まだ6月だけど」
「わたしたち、行きます。あと、真美さん。お兄ちゃんとお姉ちゃんと関わらないでほしいわ」
「えっ!陽茉理ちゃ…」
え、行かないでよ。
あと、真美さんって呼び方…。
お兄ちゃんとお姉ちゃんと関わらないでって!
明スイやめてってこと!?
「失礼しました」
…って、えええええええっ!!!
坂宮って、彦宮学園生徒だっけ?
だって、学食でお願いしたもんね。
怪盗日本(ジャパン)のときいたっけ?
「おっ!真美ちゃん!梨歩佳だよ〜♪なんか久しぶりな気がする!」
梨、歩佳さん…、、、とも、関わっちゃダメだよね。
遠くで陽茉理ちゃんが見ていたら…。
「梨歩佳先輩、急いでるので失礼します!すみません!」
「ねえ、真美ちゃん!」
ごめんなさい!
梨歩佳先…輩…。
わたし、もう関われません。
モンブランやっぱりスゴいね!見やすくすき間とか開けた方が良いと思うよ!
例
「やっぱりそう思った?」
○○はニッコリしてとても嬉しい表情をしていた。
フフ…かわいい♪
みたい感じかな。私小説下手だけど意味がわかればいいんだけど
みか、ありがとう!
アドバイスを生かして書いてみます!
本当にありがとう!
9.キツい言葉
「真美。坂宮くんのところ行こう」
ああ、学食で並んでたんだ。
梨歩佳さんに心の中で謝りつつ、学食へ向かう足を早くする。
「ねえ。真美。ちょっと」
「由里歌ちゃん?ど、どうしたの?」
急に腕を引っ張られて、2-3のクラスに入っていた。
「ごめんなさい。あの、陽茉理ちゃんが、ふみ会長に言えば味方になってくれるって言うから」
「大丈夫だよ。初めから、悪いのはわたしなんだから」
由里歌ちゃんは、頭を下げたまま動かない。
二年生の先輩も、由里歌ちゃんを遠目に見て避けている。
「でも、陽茉理ちゃんといるべきだから、わたしと一緒にいちゃダメだよ。お願い。陽茉理ちゃんといて」
「でも、わたしは、4人で一緒に」
「お願い!わたしが悪いのは分かっているの!でも、今はふさわしくない!陽茉理ちゃんといることがふさわしいことだよ!」
あ、あ、由里歌、ちゃん…。
わたし、由里歌ちゃんを…。
「いいんだよ。真美。真美が言ったこと間違ってないから。行こ」
由里歌ちゃんごめんなさい。
でも、本当にわたしは一緒にいられないから。
10.あのふたり
「はぁっ、はぁっ、はぁっ!」
休憩所のドアを開けると、坂宮、矢本くん、隅木田くんがいた。
今日は、明スイで集合がかかったの。
でも、矢本くんと関わらない方がいいっていうか…。
明スイ抜けた方がいいのかな…。
「じゃあ、始めよう。最近、依頼をほったらかしにしているから、依頼に対応しよう」
「聡日の依頼はやめろよ!」
あ、聡日さん。
美華ちゃんといて、どうなったんだろう。
「ねえ。尾崎姉妹あったよね?ふたりとも同時に対応は無理かな?」
矢本くんが提案する。
隅木田くんは、スマホを取り出して、メモのアプリに書き込んでいる。
尾崎姉妹、ねえ。
「これが尾崎姉妹の依頼」
えっと、桃乃さんと桃音さん。
ふたりの性格、すごく違いそうだな。
わたしに合えばいいんだけど。
「ねえ。あの彦宮学園のお嬢様が来るってウワサよ」
「ええ。そのお母様とお父様離婚されたけど、お母様に着いていった美華様も、お父様に着いていった聡日様も来るらしいわ」
美華ちゃんと聡日さん、姉妹!?
なのに、別れちゃったんだ。
でも、明確ゼミで会うことになる。
このふたり、会うほど仲良しなんだ。
「明スイで、尾崎姉妹をやる話に戻っていいよね?」
「あ、いいです」
「作る物とかじゃなくて、場所とか考えよう。どこがいいかな?」
それなりに広いところがいいよね…。
わたしの家は狭いし、人とかたくさん入れないし、うるさいし!
いいところなんてないじゃん!
「俺んちのパーティー会場使う?」
矢本くんの家のパーティー会場!?
11.初電話
「さあ、美華様。聡日様」
あ、この人、この前の爺だ!
ブスって言った人だ!
何が美華様よ!
何が聡日様よぉ!!!
「へ〜、清潔なのね。あら?真美ちゃん?ここに通ってたの?成績伸びていないのに」
「そんなことないよ!」
美華ちゃん、みんなの前で言わないでほしかったよ!
成績伸びてないとか!
「爺。ここはなしよ。真美ちゃん、伸びてないもの。伸びなきゃ意味がないわ。聡日もやめたら?」
「いや。ここにする。陽都がいる」
聡日さんの目当てそこ!?
でも、坂宮がベッタリしてこないと思えば、楽になれるかも?
「明スイに戻るよ。真美ちゃん」
「すみません!」
「じゃあ、尾崎姉妹でいいね?」
「はい!」
みんな尾崎桃音さん、桃乃さんの依頼を対応することに賛成して、みんなスマホを取り出した。
メモアプリを開いて書き込んでいる。
わたし、スマホ持ってないや。
恥ずかしい気持ちで、メモ帳にメモしていく準備をした。
「えっと、桃音さんが、夏那さんの誕生日を祝いたい。桃音さんの依頼は、ケーキでいいかな?桃乃さんは、亡くなったおばあさんの誕生日だね。これは、ケーキでいいんだよね」
「あの。携帯電話の番号書いてあるじゃん。だから、それ見て電話かけてみたらどう?」
尾崎姉妹に電話するってことだね。
誕生日は、ケーキでいいか。
おばあさんの誕生日のは、何がいいのか。
おばあさんの誕生日はいつなのか。
とかだよね?
「真美ちゃん、女の子と話すんだから真美ちゃんが話したら?」
「わたしですか!?」
「うん。やってごらん」
ん、うん。
わたし、同級生に電話したの、初めてかもしれない。
何て話せばいいのか。
「頑張って。はい」
隅木田くんのスマホを借りて、尾崎姉妹の桃音さんに電話をかける。
プルルルルプルルルル ピッ
「もしもし。尾崎桃音です。誰?」
12.大きなお菓子の家
「明スイメンバーの多田本真美です。依頼ありがとうございます」
「明スイ?依頼?わぁ!」
あぁ〜、緊張して声がふるえるかも。
っていうか、もうふるえてる?
「で?で?わたしの依頼通ったの?」
「は、はい。夏那さんの誕生日をお祝いしたいということで」
「やった〜!明確スイーツ研究部って最高だよぉ!」
「ありがとうございます。誕生日ってケーキでいいんですか?」
「悪いけど、お菓子の家ってできる?わたしたちが、お菓子の家に入るの」
えええええっ!
13.針本早弥花さん
桃音さん、難しい依頼を…
ピッ
電話が切れて、緊張の糸が切れた。
「真美ちゃん、どうだった?」
「桃音さん。お菓子の家を作ってほしいそうです」
みんな、じっと考える。
この…難しい課題をどうしたらいいか。
時間がだんだん過ぎていく。
休憩所の中には、女の子たちの声が聞こえる。
いい案が浮かばない。
お菓子の家なんて作れない。って。
「君たち、明確スイーツ研究部?」
「はい。そうですが」
「私、早弥花って言うの。あなたたちに依頼したわ」
「はい。ありがとうございます。針本早弥花さんですね」
針本早弥花さん。
ああ、マカロンをたくさん食べたいって依頼の人だ❗
たくさんってどれくらい?って覚えてたんだ。
で、針本早弥花さんが何の用?
14.ジャンルわけ
「針本早弥花さん。何の用ですか?」
隅木田くんが聞いて、早弥花さんはちょっとうつむく。
耳まで真っ赤。
隅木田くんファンかな?
「わたし、マカロンお願いしましたよね?どうなりましたか?」
「すみません。日付が限られている依頼がありまして。その後でもいいですか?」
「はい!」
早弥花さんは、返事して軽い足どりで帰っていった。
早弥花さんなんだったんだろ。
さあ、戻んなきゃ。
「お菓子の家なら、今まできた依頼を全部引き受けたらどう?聡日以外」
坂宮、ひどい!
聡日さんかわいそうだよ!
「聡日さんは、別でやる?」
「それがいいと思います!聡日さんだけは別で!」
坂宮は、そういうことじゃないと言いたそうだけど。
聡日さんも幸せになるし、いいもんね。
「じゃあ、ひとつひとつ書いてみようか。それぞれ願いが違うけどいい?」
確かに違う。
誕生日のケーキ。
おばあちゃんが亡くなって。
自分が楽しみたくて。
これをひとつにまとめるのは無理がある。
「ジャンルわけして、ジャンルごとに会を開いたらどうですか?」
わたしが言うと、隅木田くんは賛成してくれた。
矢本くんもうなずく。
多数決的にも、ジャンルわけすることに決まった。
「ケーキ。誕生日。楽しむ。お別れ。誕生日。ケーキ。ケーキ」
うぅ、ジャンルわけ、キツい。
誕生日が多すぎる。
はぁ。頑張るぞっ!
15.メンバーを大切にする心
「ねえ。多田本」
それは、ハニーちゃんとか、ハミーちゃんって呼んでくる矢本くんが、多田本って呼び方をしてきた。
矢本くんに近づいちゃダメ。
陽茉理ちゃんに言われたんだもの。
「何?」
「ど、どうしてそんなに冷たいの?」
「冷たくないですよ」
冷たくしてたけど、ダメ!
ダメだよ、真美。
矢本くんとなるべく話さない!
そう言い聞かせて、矢本くんの逆の方を見た。
まるで、わたしの大切な物を失っていくみたい。
なんというか、自分で捨てているような感じ。
心がムズムズする。
「真美ちゃん。ちょっと」
隅木田くんに言われて、休憩室を出る。何を言われるんだろう。
隅木田くん鋭いから、矢本くんのこと避けてることバレてる?
ちょっと行ったところの廊下で、隅木田くんは止まった。
「真美ちゃん、明スイがキライ?」
え?
わたしが明スイをキライがどうか。
これは、みんな知っているはず。
もちろん、大好き。
なのに、大好きに見えないかな。
「明スイのこと、大切に思ってくれてるかな?」
「もちろんです!大好きです!」
「ははは。嬉しいよ」
なんだろう。
隅木田くんの心から笑っていない笑い方。
全然嬉しそうじゃないし。
なんか、隅木田くん変。
「どうしてですか?」
わたしが聞くと、隅木田くんは天井を見上げた。
わたしも、天井を見てみる。
何もない。
何も起こらない。
「真美ちゃん、メンバーを大切にする心がない気がする」
「そんなことありません!」
メンバーを大切にする心?
絶対あるよ!
晴奈ちゃんだって、ずっと大切な友達と思ってるし。
みんな友達としてっ!
…陽茉理ちゃんと由里歌ちゃんはどうだろう。
仲間と言う意識、ないもの。
もう、敵のよう。
これが大切にしていないのかもしれない。
陽茉理ちゃんに言われたから矢本くんから避けている。
矢本くんに申し訳ない。
わたし、ダメだ!
自分らしく生きなきゃ!
16.昔のサイフ
「確かに、メンバーを大切にする心、今のわたしにはありません。今から、その心を取り入れます」
隅木田くんはにっこり笑って、休憩室に戻っていった。
後に残されたわたしは、ポケットがチャリチャリいうのに気付いた。
さっきから、うるさい。
いい話だったのに。
ポケットを手で探ってみると、サイフが入っていた。
どうしてだろう。
あ、もしかして!
「まみちゃん。美味しいね」
「うん。もう最高に美味しい!」
ここはクレープ屋さん。
あこちゃんとふたりで来たの。
このチョコレートバナナクレープ、美味しい!
「おサイフ、ポケットに入れておけばいいよ。邪魔でしょ」
あこちゃんに言われて入れたサイフ。
確かに、クレープ食べるのに邪魔だしポケットの中に…。
あのときから入れっぱなし、かあ。
サイフを開けると、そのときのレシートとおつり、プリクラの写真が入っていた。
ああ、なつかしい。
でも、もう戻りたくない。
後に悔いが残るだけだから。
あれから、このズボン一回もはかなかったんだもんね。
洗濯、サイフも一気に洗ったのかな?
サイフ、すごくいい匂いだし。
「おい、真美!早く戻れよ」
「はい。今行く」
今楽しいことは明スイ。
あこちゃんたちのことは、早く忘れちゃおう。
いい例がないんだから。
17.預かる
「真美ちゃん。これ、もう終わったからさ」
隅木田くんが依頼書をわたしの前に出してくる。
綺麗な字で、誕生日、お祝い…。
などと、ふせんで表してある。
「これ、真美ちゃん持っててくれる?僕、いろいろ持ってるの大変で」
隅木田くんは、さっきのことがなかったみたいに接してくる。
何でだろう。
わたし、接し方迷ってたのに。
まあ、楽だからいいけど。
「わ、分かりました。持っておきますね。えっと、いつまで持ってたらいいですか?」
「僕が言うまでいい?」
「はい」
「ただいま」
家に帰ると、ママとパパの声が大音量で聞こえた。
も、もう。
うるさいなあ。
そう思いながら、ふと目にとまった人形を手に取ってみる。
古びていて、茶色のシミがたくさん付いていた。
わたし、使い方よくなかったかな?
ちょっと悲しくなって、人形を抱きしめる。
ひとりっこのわたしが使っただけだもの、わたしの使い方が荒いとしか思えない。
プルルルルプルルルル
「真美ぃ〜、電話出てぇ」
ママ、めっちゃ酔っぱらってる気がするんですけど!
「もしもし多田本です」
「もしもし。僕は隅木田優斗です。多田本真美さんいますか?」
あ、隅木田くん。
…って、わたし、いつみんなに電話番号教えたっけ?
「真美ですが」
「真美ちゃんだったんだ。あのさ。僕たち、みんなで話し合ったんだけど」
18.お泊まり!?
「何を話し合ったんですか?」
「みんなの会は次回。尾崎桃乃さんの依頼を先にしよう。天国のおばあさんの誕生日、明後日だから」
明後日!?
何をすればいいのっ?
尾崎桃乃さんーーー天国のおばあさんの誕生日にケーキを渡したいだった。
誕生日が、、、明後日。
「今から、俺たちは試しで作ってみるんだ。矢本の家で。真美ちゃん来れそうかな?」
時計を見上げると、短い針が8に近づいていた。
何て言えば通じるんだろう。
勉強?お泊まり?明スイのこと言う?
「ちょっとお母さんに代わってくれる?いるかな?」
「はい、代わります」
ママに電話を代わって、また時計を見上げてみる。
短い針が8。
長い針が12になった。
ちょっきり、20時。
「本当にありがとうね。隅木田くん。真美、きっと成績伸びるわ。じゃあ、お泊まりお願いしますね」
お、お泊まりっ!?
矢本くんの家で寝るの!?
ママが電話を切って、こちらを振り返った。
「真美。お泊まりの用意しなさい」
えええええ!
本当にお泊まりなの!?
でも、明スイの活動に参加できてよかった。
ありがと、隅木田くん。
お泊まりの用意をしていると、部屋を誰かがノックしてきた。
扉を開けると、そこには陽茉理ちゃんがいた。
19.仲直り
「真美ちゃん。ごめんなさい」
手を止めて、陽茉理ちゃんと向き合ってふたりで話す。
その時思ったこと。
ああ、どうして今日はこんなに刺激があるの?
「夜遅くにごめんなさい。私、由里歌といて学んだことあるわ。でも、同じくらい、真美ちゃんと晴奈ちゃんといて学んだことあるの」
陽茉理ちゃんも、由里歌ちゃんと同じくらい学んだことあるんだ。
わたしと一緒。
まるで、今まで学んだことが、ケムリみたいにどこかに消えるの。
ポッカリなくなっていて、周りには何も残っていない。
「ヒドイわたしだけど、やり直すことはできるかなっ?」
「わたしもっ!わたしもやり直したいよ。陽茉理ちゃん」
なぜか、自然に涙が出てくる。
きっと、仲直りできないって思っていたわたし。
弱いよね、わたし。
そう思っているから、前に進めないんだもの。
陽茉理ちゃんと仲直りするため、動いたことはない。
わたしこそ、本当にヒドイ人だね。
でも、そんなわたしを受け入れてくれた陽茉理ちゃん。
「さあ。陽茉理ちゃん、帰ろう。わたしも、今から陽茉理ちゃんの家に行くから」
「拓斗兄たちと明スイ?」
「うん!」
陽茉理ちゃんと笑いあって、泣きあっている今。
なんか、とっても嬉しいよ!
20.試作品作り
わたし、坂宮、矢本くん、隅木田くんに、梨歩佳さんと梨萌佳さん、いきなり参加の陽茉理ちゃんの7人で作ることにした。
お、お菓子の家。
尾崎さん、すごい依頼だなぁ。
これも、ボランティアみたいな感じだから、報酬もなしなんだよね。
あ!報酬ならある。
仲良くなれるし、人の本当の笑顔が見られる!
「床のクッキー担当は、梨萌佳ひとりでできるな?壁一面は、多田本と陽茉理のふたり。陽茉理は普段作ってるだろ。がんばれ!家の中の細かなお菓子を、俺たち3人。梨歩佳はサポート」
矢本くんがうまく振り分けて、お菓子の家の試し作りが始まった。
これ、あくまでも試しだからなぁ。
試作品ってことだ。
「マミ、わたしたちの友情みたいに、うまく壁一面を作ろうね」
「ヒマ、頑張ろうね!」
わたしたち、本当にいいグループだったのかもしれない。
わたしの勝手な行動が、大きな存在を呼んだんだから。
「真美ちゃん、陽茉理、できそう?」
「梨歩佳姉は向こうで待ってて。わたしたちだけでやりたいの」
陽茉理ちゃん、必死だ。
梨歩佳さんは、呆れて違う方のサポートに行った。
「壁一面、完成〜!焼いてる間に作ってたもう一枚の壁も、焼くだけだ!」
「ヒマ、やったね!壁一面完成しちゃったよ!」
き、き、奇跡かもぉ〜〜〜!!!
隅木田くんも、振り返って褒めてくれた。
なかなかの出来映えだよね、これ。
「多田本。陽茉理。ボーっとするな!次は細かなお菓子だ!坂宮と隅木田、壁作りに移動!」
矢本くん、手際いい!
この調子なら、本番もうまくいくかも?
21.報酬
「全体完成したね〜!すごい!」
梨萌佳さんが、スマホで写真をたくさん撮っている。
小学生と中学生だけだから、かなりすごいと思う、これ!
「おい、これを使ってもいいんじゃないか?本番で」
矢本くんがふとした顔で言う。
確かに、こんなにうまくできたのに、二回目を作る必要ないじゃん!
「拓斗兄。これをホールに運びましょうよ」
陽茉理ちゃんが言って、みんなでお菓子の家をホールに運んだ。
一番近い、矢本くんのホールに。
「皆さん、本当にありがとうございました。おばあちゃんの額縁です。ここに置いてもいいですか?」
矢本くんがうなずいて、お菓子の家の前に、桃乃さんのおばあさんの額縁を置く。
溶けないよう、うまくしまった。
このお菓子の家はすごいよ!
「明スイ、本当にありがとう!おばあちゃんも喜んでいるはずよ!」
きっと今、みんな報酬をもらったと思うな。
桃乃さんの、本当の笑顔。
続く
あとがき
モンブラン
こんにちは!
ここは明確スイーツ研究部!略して明スイ作者のモンブランです!
ついに3巻に来ましたね!
ここまで、無事書けていること、とても嬉しく思います。
ありがとうございました!
さてさて。
今回の明スイいかがでしたか?
陽茉理ちゃんたちと喧嘩してしまいましたね。
でも、新の友達みたいに仲直りできましたね。
みんなは、こんな経験ないですか?
わたしは、微妙に似ています。
こんな経験味わったな〜。
思い出しながら書きました!
それから、みんなに謝りたいことが!
誤字等ございましたらごめんなさい!
そして、>>73の、桃乃さんは、夏那さんではありません!
そして、陽茉理ちゃんが、自分のことをわたしと言っていますが、漢字で私となっているところがありました!
本当にごめんなさい!
以後もっと気を付けて書きます!
次回はですね。
また4人で仲良くしますよ。
明スイは、みんなの会が開かれますので、楽しみにしていてください!
もし、感想等書いてくださったら嬉しいです。
最後になりましたが、明スイとわたしのこと、応援よろしくお願いします。
追伸
昨日、小学校を卒業しました。
無事に卒業できて幸いです。
短編小説板にたてました。
『莉愛の短編集』
ここではモンブランですが、莉愛という名前でやりたいと思います。
明スイの短編も書く予定です。
ぜひ読んでください。
『ここは明確スイーツ研究部!4』
人物紹介
多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。
明確ゼミナールに通う。
坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う少年6年生。
真美が好き。
矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。
隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。
1.学食戦争
グ〜
お、お腹空いたよ〜!
っていうか、めっちゃ暑いし!
7月まっただ中。
本ッ当に暑いんだよぉ!
わたしは多田本真美。
暑いの大嫌いですぅ!!!
「学食学食!」
ヒマが言いながら学食に走る。
あぁ、ヒマお得意の食レポかぁ。
将来の夢がアナウンサーのヒマは、たまに食レポを披露してくれる。
このテンションは、きっと食レポ披露間違いなしだ。
「ねえねえ。わたしたちが遊び始めた日さぁ、カレー食べたじゃん?今日、シチュー食べない?」
シチューっ!
カレーの姉妹、シチュー。
汗だくだくになるけど、美味しいからいいもんねっ!
「わたし、ヒマに賛成っ!」
わたしがヒマに賛成すると、ハルもユリも賛成する。
やった!
またヒマの食レポが見れるし、みんな一緒だし!
この前わたしたちはケンカして、絶交までしたほどだった。
なのに、こうしてまた仲良くできる。
あっさり仲直りしたんだよね。
「シチュー4つね。お金ちょうだい。600円。席取りしといて。」
ハルがみんなのお金を回収して、ひとりで並ぶ。
わたし、ヒマ、ユリは、席取りをするんだ。
自分で持ってきたお弁当を食べる子、わたしたちみたいに学食で買う子。
たくさんの子が学食を使う。
とても広いけど、初等部、中等部、高等部の全員で使う場所だから。
「マミ、ユリ、ボーっとしないの!」
はっ!
席取られちゃうじゃん!
「マミ、ユリ。目指すはあそこ。走るよ。…よ〜いっどんっ!」
いつも座っていた24の机。
急げ、急げ、急げ〜!!!
「取った〜!」
「みんな、取りましたよ。」
あれ?
24の机、ヒマともうひとり、誰かも取ってるじゃん!
ここの席以外空いてないよ!
ここが無理なら、屋上の学食スペースに移動するしかないっ!
「あの、どちらが先でしょうか?」
この子、優しそうでも、譲れなさそうな瞳。
こんなに暑いのに屋上!?
絶対イヤだよ〜!!!
2.屋上の日向でランチ
あ、でも、屋上も空いてなかったら、校庭に机出すんだよね。
教室とかじゃ食べちゃダメだし。
校庭に机出すの、いやだな〜。
だって、重たいし、めんどくさいし。
あと、外って暑いもん!!!
外に置く机は、余分に100個くらいあるから、絶対あるんだ。
「どうする?みんな」
ああ、あの子、本当に譲らない気だ。
学食はクーラー効いてるし。
とても気持ちがいいし。
「あの、あなたたち何年ですか?」
「初等部6年よ。あなたたちは?」
「初等部5年です」
わたしたちの勝ちだ!
あの子たちは、帰ろうとしている。
偉いよ、君たち。
ちゃんとあきらめようとするから。
「あの。君たち、ここ使いなよ。わたしたち屋上行くから」
ヒマァァァ!!!
どうして暑いところ行くの!?
女の子たちは、みんなで見つめあって一言。
「ありがとうございます!」
え、いいんですか?とかないの!?
この子たち、礼儀知らないのかな?
かわいそうかも。
お母さん、どんな教育してるんだろ。
まあ、いいか。
カンカン照り。
暑すぎるよ。
これでシチューなんて無理かも。
「良かったね。屋上の席空いてて」
「でも、日向だよ。暑いじゃん」
「机出すよりいいでしょ」
ユリ、いい子だなあ。
わたし、ちっともそうは思わない。
思わないって言うより、思えない。
絶対にいやなんだもん!
「それにしても、美味しいですよね。この暑い日にシチュー。まるで、シチューが太陽を呼んでいるようです」
あ、始まった。
ヒマの食レポ。
さあ、今日の食レポはどんなのかな?
楽しみっ!
3.地獄の算数
「ただいま〜」
「お帰り、真美」
プルルルルプルルルル
「真美、出てくれる?」
「はいは〜い。もしもし、多田本です」
「もしもし隅木田ですけど、真美ちゃんいますか?」
「真美です。隅木田くん、どうしたんですか?」
ちょっと沈黙があって、隅木田くんは話し始めた。
今日、談話室で集合とのこと。
荷物はノートということ。
今日は家に帰るのが遅くなるとのこと。
「ママに、どうやって言えばいいと思いますか?遅れるって」
隅木田くんは、クスッっと笑った。
え、何が笑えるの?
「真美ちゃん、お母さんに代わって」
渋々ママに電話を代わって、ちょっと時間が経つと、ママはすぐに電話を切った。
ちょっと!
わたし、電話中だったでしょ!
それに応えるように、ママはニコッっと笑って言った。
「将来、隅木田くんと結婚しなさい。あの子すごいわ。真美が算数苦手だから、仲良くしてくれているお礼で算数教えてくれるって」
隅木田くん、そんなこと言ったの?
遅くてもいいことはいいけど…。
結婚とか、本当にないからね!
まあ、クラスの野郎と比べて魅力的だし素敵だけど。
結婚とか早すぎだし!
はぁ〜、算数長かった。
永遠に続くみたいで怖かったな〜。
「これで終わります!」
算数の先生ーーー高橋先生が立つ。
みんな立ち上がって、礼をする。
よし、これで終わりだ。
あとは、明スイの集まりだけだね。
ワクワクするし、楽しい。
算数のこの時間が挽回できるんだよね。
4.書記の仕事
「失礼します。多田本です」
談話室は静かで、落ち着く。
たまに声がうるさい子も来るけど、だいたいがおしとやかだ。
「真美ちゃん、こっち」
隅木田くんが手を挙げたいつもの席には、もうみんなが揃っていた。
わたし、ベリだ…。
「さあ。今回はみんなでパーティだ!頑張ってやっていこう」
パーティパーティ!
みんなの依頼を一気に受けとる。
ケーキや誕生日、パーティなどなど。
たくさんのジャンル分けしたもんね!
「真美ちゃん、紙お願い」
紙は、依頼書のこと。
明スイの集合がかかったら、絶対に持っていくんだ。
「ありがとう。ケーキ担当の、坂宮と真美ちゃん。誕生日担当の、矢本。その他担当の僕と、補助の梨歩佳さんと梨萌佳さん」
隅木田くん、振り分けもしたんだ。
頭の回転速いな〜
っていうか、梨歩佳さんと梨萌佳さんやってくれるんだ。
どうせなら、明スイ入ればいいのに。
「じゃあ、真美ちゃん、ノートに書いてくれる?」
よし、わたしの出番だ!
で、でも、どうしてわたしがノートに書いていくの?
別にいいんだけどね。
「ケーキ担当からその他担当まで書いてくれる?」
えっと、ケーキが坂宮とわたし。
誕生日が矢本くん。
その他が隅木田くん。
カッコの中に、梨歩佳さんと梨萌佳さんでいいのかなっ?
「うん、さすが真美ちゃん。すごく見やすいね」
あぁ、そういうことか。
わたしはこの時、初めて気づいた。
どうしてわたしが書記なのか。
隅木田くんも、明スイのみんなが彦宮学園だから、わたしが拍手に包まれたの知ってるんだ。
隅木田くん、周りをすごく見ているから、頭の回転も速いのかもしれない。
わたしも、もっと周りを見よっと。
「じゃあ、各自その決められた仕事がうまくいくようにね。決めたら、僕か真美ちゃんに連絡ね」
またわたしぃぃ!?
5.ママが倒れた!?
家に帰ると、ママが苦しそうな顔でフラフラしていた。
何してるんだろ。
酔ったのかな?
ママ、そういうの飲まないのに。
パパは帰ってきてないし、ひとりであんまり飲まないよね。
すると、バタッっと倒れた。
酔いすぎ?
いやいや、全然動かないけど!
さっき苦しそうだったし…。
パパに電話だ!
プルルルルプルルルル ピッ
「もしもし」
「パパ?わたし!真美!」
「どうしたんだ、急いで」
パパ、もっと焦ってよ!
わたしだけに焦りを押し付けないで!
「ママがっ!ママが倒れた!」
「すぐ帰る。お母さんに電話して、それから病院に電話しなさい」
お母さんーーーおばあちゃんと病院。
パパが電話を切ってから、すぐ病院に電話した。
「もしもし」
「もしもし多田本と言います。今塾から帰ってきたら、母が倒れました」
「住所をお願いします」
病院の人にもいろいろ行って、すぐ来てもらうようにした。
おばあちゃんに電話しなきゃ!
プルルルルプルルルルプルルルル
おばあちゃん、なかなかでないっ!
早く出てよお!
「もしもし。どちら様?」
「多田本真美だよ!おばあちゃん!」
「あら、真美ちゃん。どうしたの?」
「ママが倒れたの!わたしの家に来てくれる?パパと病院の人も来てくれるの!お願い」
「今から行くわね」
おばあちゃんが電話を切ると、救急車の音が聞こえてきた。
パパ、おばあちゃん、早くっ!
6.ママを信じて
赤いランプが消える。
ここは、病院。
静かな感じと、薬品の匂い。
ママ、大丈夫かなっ?
「お父さん。ちょっと」
パパ、行っちゃうの?
どうして?
ママの何かがひどいから?
それとも、死んでしまってないよね?
「真美ちゃん。こっちにおいで」
おばあちゃんが手招きしてくれる。
でも、足も、何も動かない。
口すら。
だから、物を伝えられない。
じっとしていると、おばあちゃんがこっちに来てくれた。
おばあちゃんが、私の肩に触る。
暖かい。
ママのママだから、温もりが似てる。
「真美ちゃん。心配だけど、菜和のこと信じてくれる?」
菜和というのは、ママの名前。
わたしが、ママを信じる。
そう考えると、ママと一対一で話した日が思い浮かぶ。
テストの点が悪くて泣いたとき。
ママは、「真美は伸びる子だから。いつか伸びるわよ。今は、飛ぶための準備中よ。ママを信じて。ママは真美を信じてるわ」って言った。
あのあと、わたしはいい点とれた!
ママを信じたから。
ママもわたしを信じてるし、今回もママを信じよう!
病室から、パパが出てきた。
目頭が熱くなってくる。
パパの顔が、妙だったから。
いつも温厚なパパは、こんな顔しない。
「優樹さん、どうだったんですか?菜和は、大丈夫ですか!?」
パパの名前は優樹。
パパの目からも、涙がこぼれている。
おばあちゃんも、どんどん顔が赤くなって…
涙があふれてきていた。
7.おばあちゃんがママ!?
「菜和は、妊娠してるらしいんです。ですが、その子が大きくなりすぎていて、苦しくなりやすいって」
に、妊娠してるの!?
わたしに、弟か妹ができるの!?
でも…ママが苦しくなるかわりに、赤ちゃんが産まれるんだ。
「真美。ママは、赤ちゃんが産まれるまで病院にいるんだ。塾は、一旦やめなさい」
明スイの活動も、できないよね。
パパが、家のいろいろをするの?
ものすごく忙しいのに?
わたし、家事ならできる。
でも、明スイはスイーツだし、ご飯の準備は難しいかも。
「優樹さん。空き部屋ありますか?家に。なければ、菜和の部屋空けれますかね?」
おばあちゃん、何を言い出すの?
空き部屋、あったっけ?
「菜和の部屋なら空けれます」
「ありがとう。じゃあ、菜和が退院するまで、わたしがお母さんでもいいですか?真美ちゃんにも、塾へ行かせてあげてください。お願いします」
おばあちゃん、お母さんになるの?
パパもビックリしたみたいで、口は開けているのに何も話していない。
「わたしがお母さんじゃ、足りないと思います。ですが、真美ちゃんにも、優樹さんにも、健康に過ごしてほしいじゃないですか」
おばあちゃん…。
おばあちゃんと結婚したおじいちゃんは、今天国にいるから、おばあちゃんはひとりぐらし。
だから、家を空けることはできる。
でも…
「お母さん、疲れますよ。大丈夫ですよ!僕がやります!」
「いいえっ!わたしがやります!」
ああ、もうどうなってくんだか。
8.隅木田くんと下校!?
「真美ちゃ〜ん!ご飯よ!」
おばあちゃんの声が、家中にこだまする。
わたしの家ーーー多田本家に、おばあちゃんがママとして来た。
急いで制服に着替える。
彦宮学園は制服登校だから、毎日制服を着る。
公立は、ジャージで登校するって聞いたけど。
制服の方が涼しいよねっ!
「おはよう、おばあちゃん。パパはいないの?」
「優樹さん?今日は早いらしいから、ちょっと早めに行ったわ。さあ、朝ごはんよ」
おばあちゃんのご飯、久しぶり。
トーストに目玉焼き、サラダとみかんが置いてあった。
ん〜、いい香り。
「いただきます」
勢いよくトーストを食べる。
なんか、いつものトーストより美味しい気がする。
やっぱり、おばあちゃんは昔、喫茶店でモーニングやってたからかなあ。
焼き方にも、工夫があるのかな?
「真美ちゃん、美味しい?」
「うん。とっても!これなら、元気よく登校できそうだよ!ありがとう」
おばあちゃんはにっこりして、わたしの前で一緒に朝ごはんを食べてくれた。
もうそろそろ行く時間かな。
「おばあちゃん、行ってきます」
「元気に登校するのよ。行ってらっしゃいな」
ドアを開けると、家の前でブツブツ何かを言いながらウロウロしている人がいた。
誰よこの人。
不気味でならないよ。
おばあちゃんよりわたしの方が強いはずだし、追い払おう!
「あの、すみません!ここの家に何か御用ですか?ここの家の娘、多田本真美です!」
「ちょっと、真美ちゃん。どうしたの?さあ、行こう」
え、隅木田くん!?
行こうって、わたしひとりで行くんだよ!
だって、地味に生きてこそがわたしなんだもん!
明スイ楽しいけど、目立つところがキズだよね。
「真美ちゃん。パーティだけど、日付が決まったよ。1学期の終業式の日に決まった。この辺りは、私立も公立も終業式の日は同じだから」
終業式の日ね。
パーティ…明スイの大イベント。
みんなの依頼を一気に解決!ねえ。
「で、僕がいろいろ家でしたいんだ。紙をもらってもいい?帰りでいいよ」
「では、帰る前に来てください」
「真美ちゃんと一緒に帰るよ。今日は全校下校だろ?」
隅木田くんと一緒に帰るの!?
無理に決まってますよ!
すごく目立つじゃないですかぁ!
9.ユリのあいさつ
「じゃあね。今日は急がなきゃいけないから」
やっと別れれる。
このまま校門なんて行けないよ。
隅木田くん大好きさんの目が怖いもんね。
ただでさえ目立ってきてるんだから。
「おはようございます!」
校門のところに、ふみ会長が立ってあいさつしている。
今日は、全校あいさつ大作戦日か。
児童会で決めたあいさつ運動。
児童会にあいさつしないと、校内にも入れないんだ。
「おはようございます!」
「多田本さんいいわよ」
やった、一発で通過!
後ろで、ふみ会長があいさつを大きな声でしているのが聞こえる。
何度も、何度も。
本当に必死にやってるな〜。
「矢本さん合格よ」
「マミ〜!合格したよ!」
ヒマ!
校門からヒマがダッシュしてくる。
この前みたいな楽しさ。
喧嘩したの、バカみたいだよね。
「ユリがふみ会長と対決してる」
「ユリ〜!頑張って!」
わたしがユリを応援すると、ユリはものすごく大きく息を吸って…
『おはようございますーーー!』
「あああ…。利等万さん合格!」
ユ、ユリの声、すごい…。
この日、彦宮学園新聞部が、利等万由里歌、あいさつフルパワーという記事を出した。
10.柚礼菜衣子
「マミ、ヒマ、ユリ!学食行こ!」
やっと算数終わった〜!
四時間目が算数って多いな〜。
お腹が空いて無理だよ。
得意な国語にしてくれたらいいのに。
カンカン照りの日…。
学食の席が取られちゃう!
「ちょっと、マミ?」
「ああ、ごめん。本当に暑いなって思って。席取られちゃう!」
みんなで学食へ走っていく。
結構な子たちが座っている。
四人用の席、四人用の席……。
「見っけ!行こ行こ行こ行こ!」
わたしが席ーーーいつものじゃないけどねっ!に走る。
昨日のヒマみたいに!
「ここの席取った!」
「みんな、また取れちゃったよ!」
き、昨日の譲れない子たちだ!
ヒマと目があって、会釈しあって、目で何かを話しているみたい。
お願い、今日は勝ってよ!
「じゃあね、バイバイ」
えええっ!
ヒマ譲ったの?
それとも負けたの?
「あの子、柚礼菜衣子ってニックネーム付いてるのよ」
ユズレナイコ!?
何その正直ピッタリなニックネーム。
「本当の名前は鍵野愛菜って子」
かぎのあいなちゃん。
どうしてそんなニックネーム付いちゃったの?
なんか可哀想。
心の中で思ったさっきの、取り消したいよ!
「美華ちゃんと調べたのよ。あの子のこと」
あぁ、美華ちゃんっていうのは、ここの彦宮学園校長の孫。
学園内のことは、美華ちゃんならほぼ知っている。
「辛かったのよ。あの時間。まあ、得られたものは名前とニックネームだけだけどね」
でも、柚礼菜衣子可哀想だよ。
何か隠れてる気がする!
こういうとき、隠れてないで出てきてほしいんだよ!
「でも、どうしてヒマは譲ってばかりなの?暑いのに」
ユリがヒマに聞く。
「昨日は、またああなったらわたしたちが譲ってもらえると思ったから。先にわたしたちが我慢したらいいって思ったの。今日は、鍵野さん、悲しそうだったのよね」
悲しそうだった?
わたし、そんな気しなかったけど。
11.おばあちゃんの気遣い
今日はみんな悲しいのかな?
ヒマは、新しい学食メニュー、彦宮限定焼きそばが入って喜んでたけど。
「ただいま」
「お帰り。真美ちゃん。菜和から電話があって、塾にはお弁当持っていってもいいって?持っていったこともあるのよね?でも、家で食べましょう。間に合うんでしょう?」
「うん。間に合うよ」
おばあちゃんはにっこり笑って、またキッチンに戻って行った。
家事を頑張ろうとしてくれているおばあちゃん。
塾とか、難しくて分からないと思うんだけどな。
「真美ちゃん。今日は塾の日でしょう?お休みの日は何曜日?」
「日曜日と水曜日だよ」
「今日は火曜日だから、明日はお休みなのね。明日はゆっくり食事しましょうね」
おばあちゃん、わたしの健康第一に考えてくれてる。
これだ!
これが明スイの考えるべきポイント!
下校の時…
「隅木田先輩〜!どうしてその子と帰るんですか〜」
隅木田くん大好きさんがすごかったのに、どんどん進んでくもん。
坂宮も怒ってたな〜。
「今取ってきますね!」
おばあちゃんも聞こえないくらい猛スピードで二階にかけ上がる。
紙を取って、また聞こえないくらい早く隅木田くんに渡す。
目立つから、一刻も早く帰ってほしいんだから!
ごめんね、隅木田くん。
「真美ちゃん。宿題あったでしょう?早めにやっておきなさいな」
なぜかママが言うと、はいはい、分かってる。って思うのに。
おばあちゃんが言うとは〜い。って思うのはなぜ?
11.グレードアップ
「真美ちゃん、待って待って!送っていくわよ。遅れちゃったら大変!」
おばあちゃん、自分が凝ったご飯作ったから?
ママ、絶対歩いて行かせたのに。
歩いて15分でしょう?行きなさい。って。
「歩いて行けるよ!おばあちゃん疲れちゃう。おばあちゃんも倒れちゃったらわたしヤダ!」
「真美ちゃん?大丈夫よ。おばあちゃん強いんだから。運転くらい簡単よ。さあ、乗って」
おばあちゃんの車に乗って明確ゼミに行くのは、5分くらいで着いた。
安全運転だし、話しかけてくれるし、楽だし。
おばあちゃんがママなのもいいね。
やっぱり、ママのママだもんね。
「お母さんは、自慢よ。誰よりもすごいんだから。ママの憧れ」
そうママはいつも言ってた。
おばあちゃんのことを、憧れとも言っていた。
わたしは、ママもおばあちゃんも、憧れかな。
強い、優しいおばあちゃん。
いつでも見守ってくれてたママ。
わたしの一番の憧れは、このふたりなのかもしれない。
そんなことを考えながら、明確ゼミに入っていった。
「真美さん。ちょっと」
国語の立花先生が呼んだ。
わたし、国語下がっちゃった!?
どうしよう、どうしよう!
「おめでとう、真美さん。今のクラスからグレードアップ!」
クラスが上がるってこと!?
どうしよう、嬉しさが込み上げてきちゃう!
「立花先生のおかげですよ!本当にありがとうございます!」
「これからは渋谷先生ね。今まで本当にありがとう」
立花先生から受け取ったプリントを見ながら教室に向かった。
あ、このこと、おばあちゃんに教えてあげよっと。
ママとパパにも!
ママには、お見舞いか手紙で知らせてあげよう!
毎日手紙を書いたらどうかな?
明日レターセットを買おう!
明日から手紙を書くんだ!
そう考えるとウキウキして、次の算数の時間も楽しく受けることができた。
お久しぶりです!返事遅れてすみません(*´-`)
私は主人公ちゃんが好きですね〜
そういえば私も小説書いてるのでよかったら今度見てください(≧∀≦)駄作だけど・・・
題名は『世間知らずな私の初恋!?』です
新体操をやってる主人公のお話です〜
題名に初恋ってある割には恋愛要素は
まだまだ先ですね(笑)
シフォンさんお久しぶり!
読んで見ます!
あと、ありがとうございます!
12.海のびんせん
今日は明スイ、集合かかってない。
いつも通り歩いて帰ろうとすると、明確ゼミの狭い駐車場におばあちゃんの車が停めてあった。
「真美ちゃん。こっちよ、こっちこっち!」
おばあちゃんが、車の側から手を振っている。
急ぎ足でおばあちゃんの所に行く。
「お帰り、真美ちゃん」
「ただいま、おばあちゃん」
「今、家に陽子さんがいるの。優樹さんとふたりで話しているわ」
陽子さんは、パパのママ。
ばあばって呼んでる。
きっと、ママの話だよね。
「ちょっと、時間潰しましょう。どこか行かなきゃいけない所、ある?」
「おばあちゃん。ママに手紙を書きたいから、文房具屋に行きたい」
おばあちゃんはにっこり笑って、車にわたしを乗せてくれた。
「真美ちゃんは本当に優しいねぇ。菜和は幸せ者だわ〜」
運転しながらおばあちゃんが言う。
確かに、ママは幸せ者なのかもしれない。
パパと仲良くて、いつも笑ってるし。
新しい子も産まれるんだし。
…わたしのことはどうだろう?
幸せって思ってくれてるのかな?
「手紙セットが欲しいのよね。菜和はどんなデザインが好きかしら?」
「季節に合わせて、海のびんせんあるかな?」
「真美ちゃんはセンスもあるのね」
センス…。
わたしってセンスあるんだ!
「ここの文房具屋でいい?」
わたしはにっこり笑って大きくうなずいた。
本当は明日買うつもりだったのに、今日連れてきてくれて、それに大きな文房具屋に。
「海のデザインあるといいけど。さあ、おばあちゃんも探すから」
レターセットコーナーに行って、海のびんせんを探した。
う〜ん、浮き輪は違うよね。
スイカ、虹!?
すごくキレイだな!
「真美ちゃん、あったわよ!」
「え、ありがとう!どこどこ?」
おばあちゃんが指差していたレターセットは、淡い海のびんせん。
「これ!これがいい!」
13.明後日!?
『大好きなママへ』
新しい海のびんせんに書く。
やっぱり、『大好きな』が付けたい。
「真美ちゃんどう?書けてる?おばあちゃん特製の紅茶を持ってきたわ」
「ありがとう、おばあちゃん」
紅茶を一口飲むと、口の中に広がるこの味。
おばあちゃんの紅茶、本当に美味しいんだよね。
ママの入れる紅茶より美味しい。
おばあちゃん、紅茶を専門にしているわけじゃないのに。
プルルルルプルルルルプルルルル
「電話だ。出なきゃ出なきゃ」
おばあちゃんが急いでリビングのすぐ横の廊下の電話機を取る音が聞こえる。
「真美ちゃん!隅木田くんって子から電話よ〜」
「隅木田くん!?」
わたしも急いで電話機に向かって走っていく。
電話機を握ると、隅木田くんが荒い声をあげた。
「パーティが急遽明後日になった!」
「えええっ!」
「俺たちはまた、矢本の家で作ってみることにした。真美ちゃん来れる?」
「行きます!」
電話を切って、おばあちゃんに軽く事情を話した。
「おばあちゃんが送るわ」
矢本くん家、遠いって言ったからかな?
14.ヤバイ!
「おばあちゃん、じゃあね」
ここは矢本くんの家。
おばあちゃんは矢本くんの家の人にあいさつするらしい。
いつもの方に行こうとしたら、矢本くんにグイッっと手首をつかまれた。
矢本くんは、なぜか家の前にいて、わたしの手首をつかんで奥に歩いていくんだよ。
ちょっと、何してくれるの!?
「今日は、俺と香音、梨歩佳、梨萌佳の屋敷だ。というか、これからそっちになる。ちゃんと来いよな」
矢本くんと久しぶりに聞いた香音さんと、梨歩佳さん梨萌佳さんの屋敷!?
「こんばんは、真美ちゃん。急にごめんね」
「いえいえ。いいんです。ところで、隅木田くん。どうして明後日になったんですか?」
「ああ。全員に声を掛けたら、明後日しか空かなくなった。もう夏休みに入るからね」
そっか。
明スイより大事だよね。
家族の方が。
「で、個数などが決まってきた」
急に坂宮が言った。
みんなの視線は、隅木田くんから坂宮に変わる。
坂宮は胸を張って言った。
「作るもの1。大きなケーキ5つ」
ひいぃっ!
「ショートケーキ27つ」
ひいぃひいぃっ!
「クッキー300枚。オリジナルパンケーキ260枚」
ひゃーーーーーー!
「最後に、オリジナルトリュフ」
ひゃ〜〜〜〜〜〜〜!!!
何その数と物!
大きなケーキ5つって何よ!
クッキー300枚ってどーゆーこと!?
「やるからにはやるしかない。これも試しはなしでいくしかないか」
隅木田くんが下を向きながら言う。
お試しやりたかったけど、無理だったらしょうがないよね。
「この前のチーム分けはなしとする。ここに、梨歩佳と梨萌佳が補助で入ってくれることとなった」
ケーキのこと、坂宮と話してないや。
どうしよう。
急にこうなると思ってなかったから。
しょうがない?
いやいや、明スイメンバーとしてダメだよね。
「じゃあ、振り分けわたしがしてもいいかしら?拓斗兄、ひとりでオリジナルパンケーキね。坂宮くん、梨萌佳とクッキーお願いね。隅木田先輩は、真美ちゃんとわたしとトリュフでいいですよね?」
梨歩佳さんの振り分けで、わたしはトリュフを作ることになった。
15.ケーキ作り
「隅木田くん、ちょっとその…ありがとうございます」
「あとは、ここの指示に従うだけですぐできます。ここの味を工夫するだけですが、隅木田先輩できますか?」
「梨歩佳さんと真美ちゃんは別のことやるの?」
「ええ。時間的にそうしようかと」
「いいよ」
「ありがとうございます!真美ちゃんやろう!大きなケーキ作り」
「はい!」
こうして、梨歩佳さんとケーキ作りをすることになった。
えっと、チョコレート味。
工夫するところは牛乳を入れるところでチョコレートの溶かしたものも入れるんだね。
チョコレートの味が増すってこと。
「真美ちゃん。チョコレート溶かしてくれる?」
「はい!」
梨歩佳さんと、初めより距離が縮まっている気がする!
「さあ。ここは焼くだけ。真美ちゃんどう?進んでる?」
「はい。記事が出来ました。今からチョコレートを溶かします」
梨歩佳さんはにっこり笑って、「チョコレート溶かすから、新しいストロベリー味の生地作ってくれる?」と言ってくれた。
「ストロベリー、ストロベリー!」
ストロベリー味は、わたしの大好物。
ついついつまみ食いしちゃいそう。
「真美。一緒に作ろうぜ。今手が飽いてるから。クッキー焼き中」
「ありがとう、坂宮。じゃあ、ストロベリー味の生地作ってくれる?わたしはストロベリーの溶かさなきゃいけないから」
「いいよ。あと、ひとつ。坂宮って呼ぶのやめて」
え…?
坂宮だけ『くん』が付いてなくてイヤだったとか?
「俺、言ったよね?真美のこと好きって。俺のこと嫌いでも、ちょっとくらい聞いてくれてもいいだろ」
「何を?」
『俺のこと、名字じゃなくて名前で呼べって』
な、名前で呼ぶの?
陽都くん?って?
それとも、呼び捨てで陽都?
男の子の名前を呼び捨ては無理っ!
周りもシーンとなる。
『ハルトって呼べばいい話じゃん。おい、作業戻れよ』
は!?
いきなり言って何よ!
ハルトって呼ぶの!?
無理無理!
坂宮に限って、無理だから!
ハルトに限らなくても!
…って、心の中じゃ、ハルトって言ってるよね?
まあ、いいや。
ハルト。
16.おばあちゃんの心配
「坂宮だけずるくない?」
「俺も、矢本くんって呼ばれてるんだぜ。」
は!?
隅木田くんと矢本くんまで何言い出すわけ!?
呼び方なんてどうでもいいし。
「ピーンポーン。真美ちゃん!」
「おばあちゃん?」
「真美ちゃんいつまでいる気なの?ご迷惑がかかるでしょう?それに、もうお風呂入らなきゃ」
お風呂?
ああ、この前は隅木田くんの勉強会って説得だったもんね。
おばあちゃんに明スイのこと話したけど、おばあちゃん心配性だから?
「大丈夫だよ。急がなくちゃいけないものだし」
「体調崩したら大変でしょう?みんなも家に帰って休んだ方がいいわ。明日があるでしょう?学校があるけど、また集まればいいじゃない?」
おばあちゃん…。
確かにおばあちゃんの言う通り。
でも、明日は明スイがあるし。
「とりあえず、真美ちゃんは帰りなよ。おやすみ、真美ちゃん」
「真美、おやすみ」
「多田本、明日な」
「みんな、おやすみなさい」
矢本くんたちの屋敷を出て、またちょっと歩いて駐車場に戻った。
普通に車に乗って、ちょっとおしゃべりしながら帰った。
「真美ちゃん。もうこんなに長くかかるのやめなさいね。いくら何でも遅すぎるわ」
「ごめんなさい。もう二度とこんなに遅くならないようにします」
「分かればいいのよ。明日も学校あるんだし、ゆっくり休まないと。ね?」
そうだね。
おばあちゃんの方がよく分かっているよ。
本当に。
「ところで真美ちゃん。明明後日お見舞いに行きましょう。それまでに手紙を書くなら書いておきなさいね」
「はい」
お風呂の準備に部屋に行ってお風呂に入って、今日はもう休むことにした。
はぁ。
今日はいろいろあったな…。
もう眠たいや。
今日はもうすぐ寝よう。
モンブラン、遅れたけど100おめでとう!1000レス行くまで応援してるね!モンブランも小説面白いからはまる!
107:モンブラン:2017/03/26(日) 21:53 17.久しぶりブランコ
「行ってきます」
「真美ちゃん。昨日しっかり寝たから張り切って学校行けるでしょ?行ってらっしゃい」
「おばあちゃん、昨日は声をかけてくれてありがとう。じゃあ行ってくる」
家を出て、学校を目指して歩く。
今日もいい天気。
暑いけど、太陽がバッチリ見えてて、夏!って感じがする。
夏なんだけどねっ!
「マミおはよう。今日はあいさついないみたいだね」
「ハル、おはよう!ユリのスクープは今日ないね」
ああ、叫ぶようなあいさつね。
なんか、昨日のこととかよみがえってきた。
何だろう、この気持ち。
明スイの活動を出てきたわたし。
みんな怒ってないよね?
昨日のこととか、ハルト…に聞いてみよっと。
「ハルとマミ、おはよう!」
「ヒマとユリ!おはよう」
「おはよう!」
またいつもの4人で歩く。
校門を4人でくぐる。
やっぱりわたし、この4人でいるときが一番好きかも。
明スイかな?
一番好きな時間。
まあ、同じくらい好きかな。
ああ、楽しかった国語終わった。
せっかくの楽しい時間って本当に短いよね。
「みんな。久しぶりにみんなでブランコしない?」
急にヒマが提案する。
ブランコ。
中等部へ行ってもできるけど、恥ずかしくてできないブランコ。
今ここで楽しんでおく。ってことだよね?
「もちろん!」
「ヒマに賛成!」
「わたしももちろん!」
みんな初等部用の制服を着ていて、バッヂは6年のバッヂ。
でも、小さいから目立たないよね。
恥ずかしいとも思わないよね。
「さあ、ブランコで楽しむよ!」
ハルが言って、みんなで声を合わせてブランコを漕ぎ始めた。
>>106
みかぜありがとう!
ここでもコメントありがとね。
頑張って書くよ!
18.解散!?
今日は、なぜか流れるように一日が終わった。
申し訳ない気持ちが大きいのかな?とも思った。
でも、早く帰って悪い気持ちはない。
わたしは早く帰るんだもの。
人に決められることじゃないしね。
「ただいま」
「お帰り。真美ちゃん。今日は気分よく学校行けたでしょう?」
うんって言うしかないよね。
心の中でモヤモヤがあったけど。
作り笑いで、おばあちゃんに向けてうなずいた。
すぐにリビングを出て、部屋にある明確ゼミのスクールカバンを取る。
「おばあちゃん。今日は授業早いから弁当持っていくね」
「うん。行ってらっしゃい」
「行ってきます」
ちょっと急ぎめで家を出ると、家の前を通っていた梨歩佳さんに会った。
う、会いたくない。
でも、そんな願いは叶わない。
「真美ちゃん。明スイの、もう終わったから」
「ありがとうございます。すみません。続きからいなくなって」
「別にいいわよ。どうせ明スイも解散だしね。とりあえず、明後日のパーティには参加してもらうって」
カイサン?
カイサンって、解散?
みんなバラバラになっちゃうの?
「真美ちゃん。パーティではよろしくね。ドレスは、わたしの家の使っていいから。パーティの前にわたしの家に来てね」
「ちょっと待ってください!」
梨歩佳さんが行こうとしていたのを、わたしは本気で止めた。
だって、解散だなんて。
「どうして解散するんですか!?」
「依頼来てないでしょ?もう活動する意味がないのよ。そう言っていたわ。拓斗兄が」
嘘…。
矢本くんが言ったの!?
19.重い荷物
パーティ当日。
最後になるものかと思いながら、おばあちゃんに送ってもらって矢本くんの家に行く。
「こんにちは。真美ちゃん。今日もこっちの屋敷で着替えるわよ」
「今日はよろしくお願いします」
この前は矢本くんの棟だったけど、今日は梨歩佳さんの棟に案内された。
ちょっと歩いて、ひとつの部屋に入っていく。
「ここがドレスルーム。あんまり引きずるドレスはやめてね。これくらいのドレスにして」
梨歩佳さんが手で示したのは、だいたい膝くらいのドレス。
わたし、ドレスなんて普段着ないからこのドレスも…。
「さっさと決めてね。真美ちゃんの係は案内なんだから」
「案内ですか?」
「そう。わたしが、ここの屋敷の隣、母屋の屋敷の方から案内するから、ここの屋敷の、パーティ会場の案内をすることが真美ちゃんの仕事」
そんなの聞いていない。
反論しようとしたけど、わたしはふと思った。
ハルトも隅木田くんも矢本くんも、梨歩佳さんも梨萌佳さんも。
みんな学校を休んでいたこと。
きっと、明スイの活動をしていたってこと。
でも、その話題は話せなかった。
自分がメンバーと感じなくなって。
梨歩佳さんと梨萌佳さんは、正式メンバーじゃないのに活動してくれている。なのに、正式メンバーのわたしは活動していない。
自分のことしか考えていない自分が、何だかとても憎い気がしてきた。
屋敷の前にセットされた椅子に座る。
これが、最後の明スイになるんだ。
そう考えると、胸がムズムズした。
やっぱり、みんなに言うべき?
解散はよくないって。
でも、自分勝手なわたしのこと、みんなは聞いてくれる?
聞いてくれるわけない。
きっと、わたしのこと憎いもんね。
「真美ちゃん。お客様が来たら、この紙を渡して案内して」
「分かりました。…あの!昨日はすみませんでした」
隅木田くんにも謝ると、ちょっと笑った気がした。
「梨歩佳さんから聞いたかもしれないけど、解散するから関係ないよ」
「で、でも」
「間にあったんだし、重い荷物まで背負いたくないよ」
重い、荷物…。
わたしが重い荷物ってこと?
20.パーティスタート
「皆さん。今日はお集まりいただき、ありがとうございました。急な日付変更に関わらず、皆様がお集まりできたことは、とても嬉しいことです。では、ただいまから始めさせていただきます、明確スイーツ研究部、最初であり最後のパーティを始めます」
梨歩佳さんの司会で、周りがザワザワしてきた。
きっと、最初であり最後であるってことだよね。
「まず、ここにスイーツを用意したわたしたちの紹介をします」
さっきのザワザワから、歓声に変わった。
楽しみにしてくれてて嬉しい。
この笑顔は、もう見られないのかな?
「まず、隅木田優斗さん。多くのことをまとめ、オリジナルトリュフを作りました」
『キャーーーーーー!』
『トリュフ食べた〜い!』
女の子たちの間で歓声が最高潮だ。
「ふたり目。矢本拓斗さんです。オリジナルパンケーキ大きなケーキを作りました」
『オリジナルパンケーキ!』
『わたしがたくさん食べるわ〜!』
「次に、坂宮陽都さん。クッキー作りと大きなケーキ作りをしました」
『クッキーのところ、ずっといたいくらいだわ!』
『ケーキ超絶食べて見せる!』
「次に、多田本真美さんです。オリジナルトリュフ、大きなケーキ、ショートケーキを作りました」
辺りはシーンとなる。
こんなに目立つ人たちの中の、地味なわたしだもんね。
これでいいけど、ちょっと傷つく、かな。
もっと頑張るべきだけどね。
「次に、矢本梨歩佳。矢本梨萌佳です。クッキー作り、オリジナルトリュフ作り、大きなケーキ作り、ショートケーキ作りをしました」
『梨歩佳先輩と梨萌佳先輩すごい!』
『どれも素敵ね!』
最後のパーティも、わたしが重たい荷物背負ってるみたい。
期待外れだよね、わたし。
もう、来たくなかったよ。
21.隅木田くんの気持ち
ワイワイ、ガヤガヤ。
パーティー会場は大盛り上がり。
今、報酬をもらい中。
「真美ちゃん。解散することだけど」
「明スイの活動は最後なんですよね?わたしはもう関係ないんですよね?」
ちょっとキツい言い方で隅木田くんに言っちゃった。
こういうところ、ダメだよね。
ダメじゃなくて、最低だよね。
「解散のことどう思う?」
隅木田くんは、イヤな顔ひとつ見せずににっこり笑って言った。
「解散したくないですよ。みんなの幸せそうな時間、もっと作りたいです。わたしたちの力で」
「僕もそう思うよ。矢本はもうやめるって言っていた。梨歩佳さんと、梨萌佳さんもやめるって」
「梨歩佳さんと梨萌佳さんは手伝ってくれてましたから、問題はありませんが、矢本くん、何か明スイイヤなことがあったんでしょうか?」
隅木田くんも考え込むように椅子に座った。
わたしも隣に座る。
梨歩佳さんは後輩と、梨萌佳さんは友達と話している。
手伝ってくれていたから、ありがとうございました。なんだけど。
「矢本は、イヤなんじゃなくて、やって意味があると思っていないのかもしれないね」
「そうですか」
え?!どうなっちゃうの?!
114:モンブラン:2017/03/27(月) 11:09 22.お見舞い
ガラッ
ゆっくり、ゆっくり、歩いていく。
海のびんせんを持って。
また、ゆっくりカーテンを開ける。
笑顔で横になっていたのはママ。
「久しぶり、菜和」
「ママ、会いたかったよっ!」
何となく、笑っていたら目頭が熱くなってくる。
なんか、ママがいない生活が考えられない自分がいた。
わたしは、ママに助けられてきたんだ。改めて、ママの大きな存在に気付かされる。
わたしって、明スイのことも大きな存在なんだよね。
矢本くんは、明スイってどんな存在なんだろう。
わたしみたいに、大きな存在?
それとも、ホコリみたいな小さい存在?どうしたら、明スイを存続されられるんだろう。
「真美ちゃん。海のびんせん」
「あぁ。ママ、手紙」
手紙を渡すとき、ママと手が触れた。
このママの温もりが忘れられない。
温かい、ママが抱き締めてくれる時の温もり。
「真美、本当にありがとう」
「頑張って、元気な姿で赤ちゃん産んで、ママとパパとわたしと、赤ちゃんとおばあちゃんとお出掛けしようね」
「もちろんよ。楽しみにしててね」
まだまだこの生活が続きそうだけど、わたしももっと頑張るもんね!
(つづく)
あとがき
モンブラン
皆様こんにちは。
ここは明確スイーツ研究部!略して明スイ作者のモンブランです!
今回の明スイ4巻、いかがでしたか?
今回の明スイは、最高のパーティーにしたい真美ちゃん。
ですが、ママーーー菜和(なお)が倒れてしまう。
そこにおばあちゃんが来る。
そして、パーティーでは解散!?ということでしたね。
今回も、作者でありながらドキドキビクビク震えております。
何となく、真美ちゃんがラプンツェルに感じてきました!(笑)
今は皆さん春休みでしょうか。
宿題もなく満喫していると思いますが、時間があれば、明スイを読んでくださると嬉しいです。
わたしも、春休みを満喫しながらも、着々と中学校の準備をしています!
次回の明スイはですね。
矢本くんと梨歩佳さん、梨萌佳さんがいない状態で、聡日さんの依頼をすることになります!
さあ、どうなるのでしょうか!
お礼のコーナーです。
いつも読んでくれる方々、本当にありがとうございます!
コメントをくれた、シフォンさんと、みかぜさん!
このふたりには、いつも元気付けられます!
本当にありがとう!
次回の明スイも、よろしくお願いします!
追伸
明スイに関して質問コーナーを開きたいと思います。
キャラクターの誕生日など、いろんな質問待ってます!
創作板に建てました。
『莉愛の小説を一番早く!』
モンブラン=莉愛。
明スイの短編載せてます。
ぜひ読んでください!
お久しぶりです!
春休みを満喫しておりました。
ですが、今から新刊書きます!
『ここは明確スイーツ研究部!5』
人物紹介
多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。明確ゼミナールに通う。
坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。
矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。
隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。
1.楽しい夏休み!
「あ〜と10分だねっ!」
ヒマがリズムに乗って言う。
ハルもユリも、もちろんわたしも!
ウキウキ気分で並んでいる。
ここは、最近新しくできた遊園地。
「ヒマヒマっ!キャラクターが門の前で待ってるよっ!」
「えっ?どこどこ!?」
確か、ハッピーサマーランドって遊園地だったかな。
この前4人で行ったサマーサマーパークだったっけ?
サマーサマーランド?
まあ、どっちだったか忘れたけど、その前に行った遊園地の姉妹遊園地。
ここにはサマーサマーの方と違って、キャラクターがいる。
小さいディズニーみたいだって。
えっと、わたしは多田本真美。
記憶が薄れてきてるけど、思い出として残ってるからねっ!
ハルとヒマは、背伸びしながらキャラクターを見ている。
わたしは身長が小さいから、背伸びしてもどうせ見えないし。
まあ、諦めてるって感じ。
『皆様、大変お待たせしました。ただいまから、ハッピーサマーランドを開演致します』
アナウンスが入ると、ハルとヒマはぴょんぴょん跳び跳ねる。
ハッピーサマーランド、ずっと計画してきたから。
『では、押さないよう、ゆっくり園内にお入りください』
「やっと入れる〜!」
「2時間並んで良かったね!」
ハルとヒマは、スキップしながら園内に入っていった。
ユリと、目を見合わせる。
「わたしたちも、思いきり遊ぼう!」
「そうだね。今日は宿題も部活も忘れて遊ぼうか!」
わたしたちも、ユリとスキップしながら園内に入っていった。
2.恐怖!インコップコースター
「まずはプラン通り、インコップコースターだよっ!ここで、わたしとユリでベストリアムシューティングの券を取りに行くよ!」
インコップコースター!
ハッピーサマーランドのメインジェットコースター。
ベストリアムシューティングは、ハッピーサマーランドの主人公。
ディズニーでいうとミッキーにあたるキャラクターのシューティングゲームの券ーーー並ばなくても乗れる券を取りに行った。
「マミ、わたしたちはそのまま並ぶんだから、早く行くよ!」
「うん!」
わたしたちが並ぶと、前にインコップコースターが動くのが見えた。
それにあたり、わたしたちも前に進む。ちょっとすると、インコップコースターが見えなくなってっ!
『キャーーーーー!』
『もームリィーーーーーーー!』
『ギョエーーーーーー!』
さ、叫び声ひどくない?
背筋がぁ!
「マミ、本当にこのアトラクション楽しそうだね!マジ楽しみ!」
「ヒマは楽しみでもわたしはぁっ!」
ヒマは、苦笑いしながら前を見た。
また、前が進む。
ということは?
「インコップコースター動いた!」
ヒマが言って上を見ると、インコップコースターが落ちていった。
『もー止めてぇぇーーー!』
『キャーーーーーー!』
『死ぬーーーーーーーーーー!』
うううっ!
怖すぎるよ!
後ろを振り返ると、楽しそうなウキウキした顔の人たちがズラリ!
もう、イヤーー!
「ただいま!…マ、マミ?」
ハルたちが帰ってきたのも知らない。
もう、そっちのことなんて考えられない。
インコップコースター…!
乗るの無理ーーー!
3.出発夜の旅
「はい。ではお乗りください」
案内されちゃったよぉ。
ん〜、怖すぎて死にそう、気絶しそうだよ〜!
「ヒマ、隣に乗らない?」
え、ユリ、ヒマを誘った!?
どうしてどうしてっ!
「も、もちろん。って、ユリどうしたわけ?ジェットコースター好きになったりとか?」
「いや。ただヒマと乗りたかったの」
はぁ。
ユリにジェットコースターのレベル抜かれた〜。
「じゃあ、ハル。隣で乗ろう」
「うん!マミと乗るの、久しぶりだから楽しみだな!」
確かに、ハルと乗るのは、ディズニー依頼かな?
四年生くらいにハルと私と家族たちと行ったから。
「皆さん、ご乗車いただきありがとうございました。インコップコースターでは、360度しますので、安全ベルト、忘れないよう心がけましょう」
さ、サンビャクロクジュウド!?
キイテナイゾ!
「360度するんだ!益々楽しみになってきたよ!」
ハル、そういう発言は求めてない。
とりあえず早く終わってっ!
「では、インコップコースター、恐怖の夜の旅を、お楽しみください!行ってらっしゃい!」
うわ、見送られた。
本当に楽しい夜の旅に、なるかなぁ?
面白い!これからも読ませてくださいッ!
真美ちゃん、大好き!
玲葉さん、ありがとうございます!
自信なくしていたところでした!
ぜひ読んでください!
よろしくお願いします!
では、続き書きます!
4.天国への道
うぅ、どんどん上がっていく…。
天国への階段みたいだよぉ。
怖すぎるぅ。
「マミ、落ちるよ!落ちる、落ちる!キャーーーーーーーー!」
「もうダメだ〜!」
ヒマとユリも叫んでいる。
もちろん、ハルも私も。
すると、グルンッ!
さ、サンビャクロクジュウドシタ!
ワタシマワリマシタ!
ああ…。
怖すぎて…声…すら…出…ない…ッ!
どうし、よお…ッ!
お…ッ!
終わったゾ〜!
インコップコースター乗った!
私は凄いぞ!
「マミとユリ、お疲れ様」
「うん。ユリも、お疲れ様だね」
本当にお疲れだよ。
こんな疲れるの、考えられないよ。
「大丈夫!マミもお疲れだよね。まだベストリアムの時間じゃないから、ハルハルパークに移動しない?」
ハルハルパークーーーここは、ハッピーサマーランドの真ん中、ハッピーハッピーパーク。
ここのハッピーハッピーパークの右がハルハルパーク。
「いいねえ。ハルハルパークは、写真館があるでしょ?ベストリアムと写真撮らない?」
「賛成!でも、並んでる間にベストリアムのシューティングゲームの時間が来ちゃいそうだし」
「ハル、ヒマ。その問題はないよ。お母さんに言ったら、ベストリアムの写真館は行くだろう。ということで、前売券買ってもらったから。1グループ一枚だから大丈夫!」
ユリ、気が利く!
どうして思い付かなかったんだろ。
ユリはすごいよ!
「ユリ。それ、いつでも使えるの?」
「今日の間ならいつでも使えるわ」
「よかった。じゃあ、写真は避けよ。マミの顔が青っぽいし」
え…。
私の顔が青っぽい!?
ウッソー!
5.マフィン作り
久しぶりの遊園地も終わり、普通の日常に戻った。
今は、スイーツを作ってるところ。
きっと、矢本くん戻ってきてくれるし、たとえ戻って来れなかったとしても、わたしたちの活動は終わらないはずだから。
「真美ちゃん、本当に手伝わなくていいの?ちょっと心配よ」
おばあちゃんは、心配そうにわたしを見つめる。
手を出してくれるけど、ひとりでやるから、いいよ。って言ってるし。
わたしだって、きっとひとりでできるはずだから!
「おばあちゃんはゆっくりしてて。ずっと動いてちゃダメだよ」
「そんなことないわ。真美ちゃんが作るところ、見ていたいもの」
そう言って、おばあちゃんはカウンター越しにわたしを見ている。
また、マフィン作りを再開する。
夏休み、今までの恩ということで、おばあちゃんと、ハル、ヒマ、ユリにマフィンをプレゼントすることにした。
その練習用。
出来たら、おばあちゃんにはあげないつもり。
完成形しか食べてほしくないし。
「スイーツ作ってる真美ちゃんが、とても生き生きして見えるわ」
おばあちゃんがふとつぶやく。
生き生きして、見える?
私の生き生きした顔ってどんな顔だろう?
「とっても輝いて見えるわ。真美ちゃんの姿、菜和に見せてあげたい」
菜和ーーーわたしのママ。
今入院しているの。
妊娠しているから。
でも、おばあちゃんはスマホじゃなくてガラケーだから、写真送れないよ。
「カメラで撮るわ。菜和が、赤ちゃんを抱いて帰ってきたら、カメラを見せてあげるの」
おばあちゃんのこの顔、生き生きしているのかも。
まるで、夢ではない、遥かかなた、すぐそこじゃない遠くを見つめる顔。
未来を、想像している。
「おばあちゃん、楽しい?」
「おばあちゃん?楽しいわ」
おばあちゃんも楽しいんだ。
私と同じ、楽しいかな?
6.秘密の真由ちゃん
ピヨピヨ ピヨピヨ
か、カワイイッ!
マフィンを焼いている最中。
暇なので、お庭に出て気晴らしって感じで休憩に来た。
「真美ちゃん、雀ちゃんが好きなの」
ふふふ。
この子は、普通の雀ちゃんじゃない。
わたしが…秘密で飼っている雀ちゃんなのだから。
名前もあるんだ。
「真由ちゃんって言うの。わたしがつけてあげた名前だよ!」
そう、真由ちゃん。
わたしの名前をつけるとき、真由と迷ったんだって。
この雀ちゃん、わたし第二号って感じで真由ちゃんにしたの。
真美って名前だと、同じで紛らわしいしね。
「そうか。真由ちゃんねえ」
おばあちゃんは、なぜか黙りこむ。
どうしたんだろう。
お腹でも痛いのかな?
心配しているのに気付いたのか、笑って部屋の中に入っていった。
「真由ちゃん。お散歩でも行ってきたら?そうしたら、おやつをあげる」
真由ちゃんは答えたのか、どこかへ飛びたって行った。
「真美ちゃん。菜和から電話よ」
「え、ママから電話!?」
おばあちゃんは笑って、電話機を渡してくれた。
ママからってことは、病院からかけてるんだよね。
わたしと話すために、わざわざ。
「あの、もしもし」
ちょっと緊張ぎみに言うと、ママの、やんわりした声が聞こえてきた。
「もしもし。久しぶりね、真美ちゃん。夏休みは、どう?」
「夏休み?え、楽しいよ!この前も、遊園地に行ったの。ハルたちと」
少しの沈黙があって、ママが言う。
「楽しかったみたいね。きっと真美ちゃん笑ってるわ。真由ちゃんは?」
真由ちゃん?
雀ちゃんだよね。
ママに、真由ちゃんの話したことないのに。
すると、電話の向こうでクスッっと笑い声が聞こえた。
「真由ちゃんは雀でしょ?真美ちゃんが夢中になってることくらい、ママも知っているわよ」
ウソ!
真由ちゃんのこと知ってたの!?
さ、さ、さすが、ママ!
名前変えました。
元モンブランです!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
7.真由ちゃん小屋
そう言えば、この前に、矢本くんがやめようとする前。
明スイクッキーをママにプレゼントした時のこと。
明スイのこと話したことないのに、ママは明スイを知ってた。
「真美ちゃんが夢中になることくらい、ママも知ってるわよ」
そう言ってた。
わたしがママになっても、ママみたいになれるのかな?
「真美ちゃんの声が聞けて嬉しいわ。もうそろそろ切るわね。じゃあね」
「うん。バイバイ」
わたしがそう言って切ると、ママの笑顔が思い浮かぶ。
いつもニコニコしていて、周りを笑顔にさせてくれる。
辛いときも、苦しいときも、いつも、笑って過ごしている。
「真美ちゃん。真由ちゃんが帰ってきたわ。おやつあげましょう」
「おばあちゃんに、真由ちゃん飼ってること言ってないよ?」
ママと同じで、おばあちゃんも気付いていたの?
短い期間だったのに?
ま、まさかぁ。
「おやつ、真美ちゃんの部屋を掃除していたら見付けたの。雀用って、真由ちゃんしかいないでしょ?」
おばあちゃん…。
さすがだね。
真由ちゃんのおやつ見付けるなんて。
難しいところに隠したつもりなのに。
ママとおばあちゃんには、全てお見通しなのだ。
隠してもすぐバレるだろう。
「おやつ、あげにいきましょう」
「うん!」
暖かいひざし。
見えないけど、青い風。
澄み渡っている空。
そして、かわいい真由ちゃん。
「真由ちゃん、こっちこっち!」
わたしが声をかけると、チュンチュンと泣いて、おやつを食べに来た。
手のひらから、肩へ移動させる。
完全に、飼ってるっぽいし!
「おばあちゃん!雀の小屋って、いくらするかな?」
「真美ちゃんが作ってあげたら?おばあちゃんも手伝うから」
わたしが、真由ちゃんの小屋を作る?
そんな、無理無理。
器用じゃないし、真由ちゃんかわいそうだもん。
それに、おばあちゃん頼りすぎだし。
そのとき!
ピーッピーッピーッピーッ
「マフィン焼けた!」
「真由ちゃん。ここにおやつ置いとくから、食べ終わったらここで待っててね。真由ちゃんが食べれるサイズのマフィン持ってくるから!」
そう言い残して、キッチンに戻った。
8.砂糖と塩を…
うぅ、美味しそう。
ふっくらしていて、香りもよし!
これなら、あげられるレベルに達しているかな?
「真由ちゃん!これこれ!マフィン!はい、どうぞ」
マフィンの小さいのを、真由ちゃんの前に置く。
トントンしながら、ちょっとずつ、ちょっとずつ食べる真由ちゃん。
かわいい。
「真美ちゃん?おばあちゃんも食べていい?」
「おばあちゃんはダ〜メ!」
なんってったって、おばあちゃんにはプレゼントだからね。
これは、ただの試作品。
本番じゃないんだから!
「まあ、また作ったら食べさせてね。とっても美味しそうなのに」
うふふ。
でも、ごめんね、おばあちゃん。
わたし、サプライズしたうから。
「真由ちゃん、美味しいかい?」
おばあちゃんが、真由ちゃんの顔を覗き込む。
それに答えるように、真由ちゃんはチュンチュンと鳴いた。
さあ、わたしも食べてみよっと。
「いただきま〜す!」
一口。
んんん?
ちょっと辛いんだけど。
「ゲホッゲホッゲホッ!」
「真美ちゃん!?大丈夫!?」
「ん、ゲホッゲホッ!大丈夫ゲホッ!気にしないでゲホッゲホッ!」
多分、多分だよ?
このときだと思う。
この問題が起きたの。
「甘めにしよっかな。砂糖たっぷり入れよっと!」
そう言いながら、倍の量の砂糖を入れたつもりだった。
でも、わたしは多分塩と間違えた。
塩をたっぷり入れたせいで、辛くて咳き込むのだ。
「ゲホッゲホッゲホッ!」
「うがいよくしておいで。これからは間違えないわよ。失敗は成功のモト!いいのよ」
そうだよね!
失敗は成功のモト!だよね!
次からは気を付けよう!
9.転校っ!
カーテンを開くと、満月の月が見え、ん?
私の家の前に、男の子がいる。
誰だろう。
パジャマのままだけど、パーカー着てけばいいよね。
お気に入りのパーカーを羽織り、家を出る。
「あ、真美ちゃん。」
「す、隅木田くん?何かあったんですか?」
多いなカバンを提げ、わたしの部屋辺りをジッっと見つめる。
な、何だろう。
「矢本がね、転校することを言いに来ただけ。お父さんと矢本のふたりで暮らすんだって。明スイ、そんなに嫌だったのかな。」
ふたり暮らし!
明スイで、依頼を一気にパパっとやったからいけなかったのかなっ?
「まずは、聡日さんの依頼をやろう。尾崎桃乃さんと尾崎桃音さんいただろ?ふたりが、お礼したいから、明日、明確ゼミのカフェ集合ね。じゃ。」
え、それだけのために?
私の家に、電話をかければ。
そう考えていると、街灯の光に照らされた隅木田くんは、見えなくなっていた。
カーテンを閉め、パーカーを脱ぐ。
明日、明確ゼミでは、全国テストがあるんだ。
勉強はずっとしてきたし、いいよね。
「真美ちゃん、マフィンは、明日の朝作るってことでいい?」
ドアの向こうで、おばあちゃんが言う。マフィンの、本番だよね。
「いいよ。マフィン作り終わったら、配りに行く。ママには、明後日にしようかな」
「そうね。じゃあ、明日はいろいろあるから、早く寝るといいわね。おやすみなさい」
「ん、おやすみなさい」
10.ファンっ!
カーテンを開ける。
明るい日射し。
外には真由ちゃんがいるだけ。
今日は全国テストかぁ。
そして、マフィン作り。
パジャマから私服に着替え、顔を洗ってリビングへ行く。
「おはよう。おばあちゃん。パパ」
本来なら、おはよう。おばあちゃん。なんだけど、今日パパがいた。
仕事かと思った。
「おはよう、真美。今日は全国テストだな。頑張れよ。あと、真美宛に手紙がきていた」
わたし宛?
手紙なんて、まともにもらった記憶ないな。
久しぶりにもらうかも。
「これだ」
パパから受け取り、差出人の欄を見てみる。
すると、多田本真美様。
矢本拓斗より。とあった。
矢本くんから手紙っ!
急いで出して読んでみる。
『多田本真美様
今まで、明確スイーツ研究部、ありがとう。俺は、引っ越します。多田本真美さんと仲良くなれたこと、誇りに思います。さようなら。
by矢本拓斗』
それは、筆ペンで書かれており、短くまとめてあり、かっこよかった。
byってところとか。
でも、昨日聞いたけど、本当に引っ越すことが明らかになってしまった。
「真美も、返事書いたらどうだ?お母さんと一緒に、便箋買いに行ったんだろ?」
あ、お母さんっていうのは、おばあちゃんのこと。
パパは、おばあちゃんのことをお母さんって呼ぶから。
「うん。そうする」
「そうね。じゃあ、朝ごはんにしましょうか」
そう言って、おばあちゃんはトーストが乗ったお盆を持ってきた。
う〜ん、いい香り。
「いただきまーす!」
朝のわたしの発声で、おばあちゃんは席につき、パパま新聞紙を閉じて席についた。
飛ばないように気を付けなきゃ。
今は、マフィン作り中。
特別にだけど、パパにもあげることにしたんだ〜。
「おばあちゃんとパパは見ないで!」
そう言いながら、グイグイ押す。
リビングのソファーに座らせて、キッチンに戻る。
「わたしが、わたしなりに、わたしだけで作るの。だから、見ないで」
言い、またかき混ぜる。
絶対美味しいマフィンにするんだ。
矢本くんにも、渡せたらいいな。
今日は、カフェに来るって言ってたから、その時手紙に添えて。
もちろん、明スイメンバーにも、尾崎姉妹にもねっ!
カバンを提げ、ドアを閉める。
う〜、緊張する。
全国テストと、マフィンを渡すことが。受け取ってくれなかったらどうしようってね。
矢本くんに言われたら、すごくきついよね、うん。
カバンに、マフィンが数通り入っていることを確認して歩く。
明確ゼミへ行く足取りが、重い。
いつもは、行って秀才になれて、行って明スイができて、嬉しいのに。
「あ、明スイメンバーだ。あたし、春山ひかりです。この前のパーティー、出席しました〜!本当に良かったですよ!あたし、明スイの中で、真美さんファンです!ネットで、明スイ話題になってますし、メンバーのファンクラブあるんですよ!あたし、真美さんのファンクラブ副会長です!」
え、嘘!
明スイのファンクラブ!?
それに、メンバーのファンクラブ!?
わたしのファンクラブ!?
ネットで話題!?
ついに、わたしにも話題になる時期が来たのかも!
「ありがとうございます!春山ひかりさんですね。初めまして、多田本真美です。よろしく」
ちょっと気取って言ってみる。
すると、ひかりさんはスマホを取り出した。
何するんだろ。
「メアド教えてください。あと、写真いいですか?」
メアド…。
それって、メールアドレスの略しだよね。
スマホ持ってないー。
「すみません。スマホ持ってなくて。写真は、いいですよ!」
「スマホ持ってないんですね。それくらい明スイに打ち込んでて。素敵〜!では、写真お願いしま〜す!」
う〜!
夢だ〜!
11.今日は忙しい
「では、お願いしま〜す」
ひかりさんが写真を撮ると、キャーッっと言いながらスマホをしまう。
これで、良かったかな。
「ありがとうございましたぁ!」
そう言って、ひかりさんは走っていってしまった。
何か、気持ちいい。
芸能人って、こんな気分なんだ〜。
…って、明確ゼミ行かないと!
めちゃくちゃ走って、何とか15分前には着いた。
「ねえ、真美ちゃんだ〜!」
「写真撮る〜!」
「真美ちゃん、こっち向いて〜!」
本当にファンクラブ出来てるのかも!
マジで!?
こっち向いてって言ってくれた子の方を見ると、写真を連続で撮っている。
確か、レンシャってやつ。
「ありがとうございます。通してくれますか?放課後、用事を済ませたらでいいでしょうか?」
「は〜い、いいで〜す!」
この感覚、めっちゃ夢だわ!
どうして言うこと聞いてくれるの!?
みんな通してくれるし。
教室に入っても、いつもぼっちだったのにみんなが寄ってくるし。
わたしが夢見てる暮らしはこれだ!
「真美ちゃんって呼んでいいですか?筆箱にサインしてください!」
「真美さん、全国テスト頑張りましょうね〜!」
「また今度空いてますか?」
そんなにわたしのファンがいてくれてるなんて!
マフィンたくさん持ってきたら良かったよ、本当に。
明日、もっと作って持ってこよ!
「後で受け答えします。みんなで全国テスト頑張りましょう!」
そう言うと、教室中が活気づいた。
よ〜し、国語、数字、理科、地理、歴史、英語。
頑張るぞー!
お、終わった〜!
と同時に、教室の子達が集まってきた。
「筆箱にサインお願いします!」
「依頼してもいいですか?」
「また今度出かけませんかー?」
よーし!
受け答えるぞ!
「サインの筆箱どれですか?出してください。依頼お待ちしてます!いつですか?空いてたら出かけましょう」
飛び交う言葉。
わたしのために。
「この筆箱です〜!」
「はい、サインです、どうぞ」
よし、一人目終わり!
ネクスト!
次は、空いてるか空いてないか?
「明日どうですか?」
「明日は予定あります。明後日はどうでしょう?」
「はい!ぜひ!」
明後日、この人と出かける。
忘れないようにしないと。
「すみません。今から予定あるので、これで終わりにします。失礼します」
今日は忙しい!
マフィン作り、ひかりさんの受け答え、ファンの子達の受け答え、全国テスト、ファンの子達の受け答え、明スイ、ファンの子達の受け答え。
ネクスト、明スイ!
12.良かった
初めてカフェに行くので、今は軽い足取りで行く。
真ん中辺りの席にいたんだけど、ファンの子達がいっぱい!
「真美ちゃんも来た〜!」
「明スイ揃ったらカッコいい〜!」
超目立ってるじゃん。
わたしって、目立つの苦手なのに。
こんなに受け答え可能なんて。
「ちょっといいかな?俺たち、集まる時間もできないから、今はいいかな?この用事が済んだらでいい?」
隅木田くんが言うと、ファンの子は笑顔で去っていった。
受け答え、長くなりそう。
「ファンクラブ出来ててビックリだ。本当に」
坂宮がつぶやき、明スイメンバーは軽くうなずく。
尾崎姉妹は、笑いながらうなずく。
「あ、桃乃さん、桃音さん、どうぞ。マフィン作ってきました。坂宮と隅木田くんと矢本くんも」
みんなにマフィンを配る。
顔色をうかがいながら。
尾崎姉妹は、にっこにこ。
坂宮と隅木田くんも。
矢本くんは、無表情で受けとる。
「ありがとうございます!」
「サンキュー、真美」
「ありがとね、真美ちゃん」
良かった、うまく渡せて。
すると、尾崎姉妹が切り出す。
「今日は、パーティーのお礼をしたいと思ってきました!」
何だろう、楽しみっ!
13.矢本くんの笑顔
「パーティーを企画してくださった明スイの方々ですが、手紙を書きましたので、どうぞ」
桃乃さんが言い、手紙を4人全員に配ってくれた。
それに、2枚も。
今日だけで、3枚ももらってる。
「あと、真美ちゃんが配ってて、わたし達の何か、ちっこいのですけど、クッキーを焼いてきました。どうぞ」
クッキー!
明スイで作るクッキー以外、食べるの久しぶりだな〜。
いっつも、試食品だし。
「今、食べてください。感想聞きたいので」
目の前で食べられるんだ〜!
嬉しい。
「ん〜。美味しいです。クッキーの甘みが口の中いっぱいに広がって、後味が残るときも、甘みが残ってて素晴らしいです!」
わたしが、ヒマを真似してグルメリポートのように食リポをしてみる。
すると、尾崎姉妹、坂宮、隅木田くんは笑ってくれたけど、矢本くんも笑ってくれたのだ。
明スイの楽しさ、思い出したかな?
まだ、思い出せてないかな?
「ファンの子が待ってるので、わたし達はこれくらいでいいですよ」
あ、いいんだ。
尾崎姉妹って、控えめな印象なかったけど、しっかり周りが見れるいい子達かもしれない。
「今日はありがとね。僕、これを通してこの4人で明スイ頑張ろうって思えたよ。ねえ、みんな」
わたしは、にっこり笑って大きくうなずいた。
でも、矢本くんの反応が気になったんだ。
矢本くんに視線を流すと、矢本くんまでもが笑ってうなずいていた。
明スイ、続けてくれるかな。
「じゃあ、これで失礼」
坂宮が気取って言い、みんなでカフェをあとにした。
矢本くんに話しかけたい。
明スイをどうしていきたいのか知りたいから。
なのに…。
話しかけられない。
この空気を読み、隅木田くんが矢本くんに話しかけた。
「手紙サンキュー、矢本。でも、本当に引っ越すのか?」
「…」
矢本くんは、答えない。
沈黙が広がり、この場に居づらい。
「矢本は、明スイを抜けたいのか」
「いや。引っ越すのも、今日ので心、撃たれたから」
やっぱり、尾崎姉妹の企画、嬉しかったんだね。
それで心を撃たれ、明スイを続ける気になったかな。
「明スイメンバー来た〜!」
ん、いいとこなのにー!
でも、ファンサービスって感じで。
ってわたし、めっちゃ気取ってる!
14.わたしのまま
「真美ちゃん、こっちこっち!」
さっきのファンの子達だ。
カフェに来てた。
「真美ちゃ〜ん!さっき約束しましたよね〜?来てくださ〜い!」
「わたしたちも約束しましたよ!」
ファン同士の喧嘩!?
わたしが止められたら…。
隅木田くんをチラッっと見ると、うなずいている。
強そうな瞳で。
よし、わたしが!
「あ、…」
い、言えない。
せっかくファンができたのに、嫌われたらって考えて。
どうしよう。
「真美ちゃん困ってるよ。ファンの子達、やめてあげて」
矢本くん…。
ありがとう、ございます。
ヒマ。
ヒマのお兄ちゃん優しいね。
ひとりっこ…お姉ちゃんになるわたしには、この気持ちまだ分からない。
でも、きっと分かるようになるよね。
「ごめんなさい。真美ちゃん」
ファンの子達、謝ってる。
本当にいい子だね。
…って!
ファンサービス慣れてないから、めんどくさいとしか思えんっ!
ため息をついてドアを開ける。
家の匂いが落ち着かせてくれる。
はぁ〜。
「真美ちゃんおかえり。インターネット開いてたら、真美ちゃんの写真とかコメントがいっぱい。どうして?明スイで?」
「そうなの。だから、明確ゼミでも、前が見てないくらい大勢のファンの子が…」
下を向きながら言うと、おばあちゃんはクスッっと笑った。
「今までの真美ちゃんが好きなのよ。ファンの子は。だから、真美ちゃんは真美ちゃんのままでいないと」
わたしは、わたしのまま?
それって、いつものわたしでいるってことだよね。
…こういうことかな?
いつものわたしのファンだから、何かを変えず、いつものわたしでいる。
ってことは、矢本くんのファンも、抜けることはもちろん。
笑っていたらそれでいいんじゃないのかな。
15.忘れ物?
バスタオルを肩に、部屋で久しぶりに漫画を読んでいる。
最近は、明スイの活動がないけど、時々集合をかけてくれる隅木田くんだけど…。
ちょっと辛いの、かな。
「真美、電話だ。隅木田くんからだ。塾に忘れ物があったらしいぞ!」
忘れ物!?
え、わたし、カフェに忘れ物したのかな?
いやいや、忘れてない忘れてない。
「真美?起きてないのか?」
「あ、起きてる起きてる」
階段をかけ降りながら、パパが握っていた電話機を受け取る。
耳にあてると、隅木田くんの声が聞こえた。
「真美ちゃん、忘れ物してるよ。明スイのこと、考える暇がなかったとか?大丈夫?」
「へ?」
ど、どういうこと?
明スイのことを考える?
忘れ物?
頭の中が空っぽになって、何も考えられなくなった。
「明スイで、依頼がたくさん来た。その中に、ひとつだけやっていない依頼がある」
「聡日さんですよね?」
「アタリ。聡日さんの依頼だけ、明スイみんなで出ないことは差別だ。矢本も納得している」
確かに、差別だよね。
きっと、坂宮も納得したはずだし。
「でね、聡日さんの依頼は、変えてほしいそうだ。どうしてわたしはパーティーに出られなかったのって言われたから、もっと多くしてって」
そのことについても、差別だよね。
止めなかったわたしは、ひどい。
わたしのバカバカ、バカッ!
「明日、朝10時から夕方5時まで、聡日さんのスイーツについてを決めるんだ。だから、矢本の家に来てほしい。来れる?」
…わたし、ママのお見舞い行かなきゃいけないよね。
マフィンも冷めちゃうし。
「用事ある?用事済ませてからでも、真美ちゃんの力が必要だから、来てほしい」
「えっと、お母さんのお見舞いに行くんですけど、その後でもいいですか?お見舞いは、おばあちゃんの時間に合わせるので」
「そっか。いいよ。待ってる。じゃあね、おやすみなさい」
ピッっと音がする。
ピーッピーッピーッピーッ。
ピーッピーッピーッピーッ
今日は早く起きようと思って、目覚まし時計をセットした。
久しぶりに聞いた。
っていうか、昨日の電話が切れたのと音が似てる!
最近夏は夏でも薄いパジャマに変えたから、そのパジャマを着ていると涼しい。
カーテンを開けると、あいにくの雨。
心も晴れない。
「お母さん、今日、菜和のお見舞いいくんですか?」
「ええ。真美ちゃんがマフィンを作ったから、あげたいと」
一階で、おばあちゃんとパパがしゃべっている。
もし、わたしが寝てたとして、(起きてるけど)わたしが起きたらどうするつもりっ!
「僕も行っていいですか?」
「もちろんです。きっと菜和も喜ぶに違いないわあ」
確かに、ママは大勢で自分のために何かしてくれると、すごく喜ぶもんな。
わたしより、やっぱりおばあちゃんの方がママのこと知ってるのかも。
そんなことを考えながら着替えると、服の間に紙が挟まっていた。
16.由来とは?
この服、本当に久しぶりだなあ。
黄色のワンピースの先に、ママアレンジの花の刺繍がある。
ポケットの中の紙を開くと、ママの字で手紙かな(?)が書いてあった。
真美ちゃんへ
ママは、真美ちゃんを産むとき、名前をたくさん考えました。
ママは、菜が付く名前って。
パパは、美が付く名前って。
おばあちゃんは、和が付く名前って。
みんなたくさん考えたのよ。
ふと思い当たった事件で、ママは数々の真実を知ることになった。
辛いことや嬉しいこと、たくさん。
それでママは、真美ちゃんにも、辛いことや嬉しいことを受け入れ、知り、優しい、いい子に育ってほしかった。
だから、『真美』にしました。
気に入らない名前って思ったこと、あるかもしれない。
でも、しっかり真実を受け止めて、自分らしく頑張ってください。
ママ・菜和より
わたしの由来、知らなかった。
パパに、周りも見ることは大切って言われてたけど、付け足しで自分らしくって言われてきた。
わたしは、やっぱり、わたしらしく。
昨日おばあちゃんも言ってたよね。
真美ちゃんらしく生きなさいみたいなこと。
わたしのファンは、今のわたしのファンだからって。
ママ、どうしてこのワンピースに挟んだの?
どうして手紙なの?
謎が深まるなか、手紙を引き出しにしまい、一階に降りた。
「おはよう」
「おはよう、真美」
「真美ちゃんおはよう」
パパは新聞を読み。
おばあちゃんはパンを焼き。
わたしはボーッっと立ち。
「真美ちゃん、手紙、準備した?」
「うん。海の便箋に書いた。マフィンも、袋詰めしたよ。あと、パパとおばあちゃんにも、どうぞ」
袋詰めしてあるマフィンを、パパに。
そして、おばあちゃんにあげた。
反応は…?
「ありがとう。真美」
笑顔を思いっきりパパに向ける。
おばあちゃんの方を見ると、にっこり笑って、「美味しそう、ありがと」と言ってくれた。
そいえば、学校でのテスト、夏休み明けにあるよね。
わたし、塾の勉強しかしてない。
はぁ〜。
彦宮学園は、一学期のテストは、単元テストのみ。
だけど、二学期から急激にテスト量が増える。
勉強しないと。
夏休み明け彦宮テストってやつ。
順位も出るし!
ううううー!
嫌っ!
17.意外な繋がり
パパの車から降り、病院の自動ドアを通り、予防のシュッシュッってやるやつをする。
ママの部屋を開けると、本を読みながら寝ていた。
「マ〜マ!久しぶり!」
「あ、真美ちゃん」
わたしは、ママのベッドの側にあった椅子に座る。
おばあちゃんとパパも、同じように椅子に座った。
すると、隣のベッドで寝ていた人が言った。
「菜和さん、お見舞い?いいわねえ。何ちゃん?」
「多田本真美です」
「そうかいそうかい。わたしはねえ、夢花見すみれ。ずいぶん歳だけど、菜和さんが仲良くしてくれてるのよ」
夢花見すみれさんは、おばあちゃんくらいだろうか。
おばあちゃんのような笑みを見せ、シワを作って笑った。
むはなみすみれさん。
むはなみすみれさん。
むはなみすみれさん。
どこかで聞いたことがあるような、ないような?
夢花見さん、夢花見さん…。
あ!
「夢花見すみれさん。もしかして、夢花見京香さんの親戚ですか?」
「京ちゃん?京ちゃんの祖母だけど」
やっぱり。
「京香ちゃん、わたしと同じクラスなんですよ。仲良くしてます」
本当よ、本当。
たまにだけど、話すもん。
京香ちゃんって、いつも琴乃ちゃんといるもんな。
「京ちゃん、琴ちゃんと仲良かったらしいけどねえ。真美ちゃんとも仲良くなれたなんて。素敵」
夢花見すみれさんとも話ながら、ママとも話ながら。
そして、夢花見すみれさんが診察室に移動したら、手紙とマフィンをあげたんだ。
「まあ。ありがとう、真美ちゃん。夢花見さんと食べるわね」
と、おしゃべりして、しゃべることがなくなったから、病院を出た。
…さあ、今からは明スイだ!
「パパ、今から言う通りに行って。友達の家に行くから!」
18.ふたつの出来事
ピンポーン
矢本くんの家の向こうの屋敷のドアフォンを押す。
「だからぁ!違うって言ってるだろ!どうして分からないんだ!美帆子、聞いてたか!?」
「嫌よ!あなたのことなんか聞かないわ。拓斗は、家で暮らすの!」
矢本くんの話でケンカ!?
この流れ、絶対言い争いだけど。
「美帆子のバカっ!拓斗の話を聞いてやれよ。もっといい学校行きたいって言ってんだよ、行かせてやれよ」
「残り1年くらい彦宮学園でいいじゃないの!引っ越すなんて、拓斗は絶対認めないから!」
勉強で引っ越すの?
明スイが嫌なんじゃないの?
あれ?
「真美ちゃん、いいよ。矢本の階の、キッチン来て」
あ、隅木田くんいるんだ。
わたし、遅いかも。
門を開けて、屋敷に入ろうとすると、母屋から梨歩佳さんが来た。
な、泣きながら。
「あ、真美ちゃん。あの時は、キツい言い方してごめんなさい。ちゃんと、反省したの。本当にごめんね」
「い、いえいえ。あの、どうして泣いてるんですか?」
梨歩佳さんは、ちゃんと戸惑い、振っ切るように上を見上げた。
まるで、選択を試みているかのよう。
「ちょっと、梨萌佳とケンカしたの。仲良くしたかったから、ショックが募るばかりで」
梨歩佳さん、嘘ついてる。
絶対、美帆子さん(?)と男の人のことに違いない。
「美帆子!」
「いやーーー!」
え!?
すると、梨歩佳さんが立ち止まって、母屋に向かって走った。
すると、途中で振り返り、ウインクした。
「梨萌佳と男友達と美帆子がケンカしてるんだわ。ごめんなさい」
いいや。
大人だと思う。
お母さんの声に似てるもん。
こっそり着いていって、真実を突き止めてやる!
19.真実は
梨歩佳さんが行って10秒後くらいに着いていく。
ドアを開ける音がした。
正面玄関は使ってないと思うから、ここのドアかな?
梨歩佳さんが入ったと思われるドアを開けると、大理石が敷き詰められたキッチンだった。
さすが矢本くんの家!
大理石って、すごい〜!
「ママ、パパ!辞めてよ。拓斗兄の好きにしてあげればいいじゃん!」
梨歩佳さんの声だ!
や、やっぱり両親なんだね。
ヒマと香音ちゃん、梨萌佳さんもいるのかな?
「お姉ちゃん、拓斗兄呼んで来て!しっかり話し合えばいいじゃん!」
ヒマの声だ!
すると、梨歩佳さんがこっちに走ってくる。
あわわわわ。
靴は持ってるから…。
隠れるしかない!
冷蔵庫とキッチン棚の間に身を潜める。梨歩佳さんは、気付かずに出ていった。
内心焦った〜!
「わたし、出てるね。ちょっと、紅茶出してくる」
ヒマの声がして、泣いているヒマが、キッチンに来た。
確か、紅茶出してくるって言ってたよね。
冷蔵庫も、キッチン棚も、来るんじゃないのっ!
「………ひっ!誰かいるわ〜!」
ヒマ、わたしに気付いたのかなっ!
どうしよう。
とりあえず、わたしってバレてでもいいから、悲鳴を押さえるしか…!
「って、マミ!?どうしてここに?」
「梨歩佳さんと会って、すごい音がしたから、どうしたのかと思って来ちゃったの。ごめんなさい」
「まあ。とりあえず出て。紅茶出したら、屋敷の、わたしの階へ案内するから。外で待ってて」
ヒマ…ありがとう。
怒らないでくれたし、招待してくれたし。
ヒマの階は、初めてだなあ。
黙って、ヒマの階への階段を上る。
ひとつの部屋の前でヒマは止まり、ドアを開けた。
「どうぞ。ここがわたしの部屋」
「ヒマの部屋、綺麗だね!」
「そんなことないよ。…で、ママとパパのことだけど」
あ…。
聞いちゃったんだもんね。
ごめんなさいだよ。
「拓斗兄が、パパとふたりで暮らすってことを、パパがママに言ったの。そしたら、ママは嫌って言った。そりゃあそうだよね。拓斗兄、何でもできるもん」
そうだったんだ。
…って、わたし聞いていいの!?
駄目な気がしなくもない。
「まあ、忘れてね。忘れられないと言われても、わたしたちのことだから。じゃあ、もうこの話は終わり。明スイでしょ?拓斗兄の階行きなよ。じゃあ、また夏休み明けに」
その時のヒマの顔は、悲しげだった。
20.抜けたいのか
「ああ、真美ちゃん。遅かったね。どうしたの?」
「いいえ。何でもありません。聡日さんのこと、何か決まりましたか?」
トートバッグから、明スイノートを取り出す。
しっかり書き留めてきたノート。
そこの新しいページのタイトルに、聡日さんの明スイ活動と書き込む。
「聡日さんには、マフィンをあげようと思ってるんだ。真美ちゃんが作ってくれたマフィン、美味しかったから。で、これはパーティーにしなくていいって言ってたから、聡日さんの家に行って渡す。って感じ」
パーティーしないんだ。
っていうか、またマフィン作るなら、もっと美味しくできそう!
楽しみだなあ。
すると、ドアが開いて、矢本くんが帰ってきた。
「矢本、ってことで、マフィン作ってみよう。渡すのは、明明後日でいいかな?」
みんながうなずいて、マフィン作りの練習が始まった。
わたしは、矢本くんと生地を作る仕事になった。
「よろしくね、矢本くん」
「うん。多田本、悪いけどそこのボウル取ってくれる?」
「うん。はい、どうぞ」
そう言えば、ちょっと前からハニーちゃんとか、ハミーちゃん呼びなくなったんだよね。
多田本って呼ばれてるし。
どうしてだろう。
「多田本、ごめんな。明スイ抜けるなんて言って」
「いいよ。矢本くんがやめたいなら、やめてもいいよ。やりたくないのにやってても、いいスイーツは作れないから」
「そうだな」
ああ、沈黙が広がっちゃった。
ごめんなさい。
でも、矢本くん、明スイ続けたいんじゃないのかな。
21.言っちゃった…!
「完成したな!うまそっ!」
すると、矢本くんが作ったマフィンをひっくり返した。
どうしてっ!
「おい、矢本!」
「ごめん。俺、ちょっと行くわ」
「矢本くん!」
ぐちゃぐちゃになったマフィン。
味見もしていないのに、これでいいかなんて分からない。
完成したばっかりなのに。
「矢本の家にいたら、ここの材料を使うことになる。俺の家に来て、作ろうぜ。さ、行こ」
そうだよね。
もう一度作り直すしかないよね。
でも、坂宮の家に行くなんて楽しみ!
「じゃあ、掃除して行くか」
隅木田くんが行って、ぞうきんやモップを借りて掃除する。
あれから、矢本くんは戻ってこないし、ちっとも気配がない。
どうしてひっくり返したんだろう。
「僕が返してくる。荷物まとめてて」
隅木田くんがぞうきんとモップを持ってキッチンを出る。
すると、矢本くんがキッチンに入ってきた。
「俺、マジで明スイ抜けるわ。じゃ、また会ったら」
「矢本くん、どういうこと?」
「さようならってこと」
え?
バイバイってことでしょ。
会ったらって。
会う気ないじゃん!
「矢本くん、ふざけないでよ!マフィンひっくり返して、抜けるだなんて!そういう人がいると、迷惑なんだよ!はっきり言いなよ!」
あああ、、、。
言ってしまった…。
「もう言ったよ。もう帰れ」
「もう帰りますよ!!!坂宮、行くよ」
隅木田くんは、キッチンの隅でわたしたちを眺め、帰るときに荷物を持って一緒に出た。
22.報酬ゲット
ピンポーン
「明確スイーツ研究部です。聡日さんいらっしゃいますか?」
ここは聡日さんの家。
坂宮の家の前。
大きい家で素敵。
「ありがとう。美味しそうなマフィンだ〜!後で食べるね」
報酬ゲット!
聡日さんの笑顔。
家も素敵だけど、聡日さんの笑顔も素敵っ!
聡日さんにマフィンを渡し終わると、坂宮の家でくつろぐことにした。
マンションで、和室がない洋室のみの部屋だ。
「おじゃまします」
坂宮の部屋に案内してもらい、矢本くんのことについて話し合う。
「真美、よく言ったよな。女って尊敬する」
「矢本も、グッっと来たと思う。ナイスだよ」
「いえいえ。本当に良かったんでしょうか」
ちょっと、心配。
思ったこと言っちゃったけど、矢本くん嫌味言われたようにしか聞こえてないよね。
わたしの言い方からして。
「大丈夫。…ところで、これからの明スイ活動どうする?」
「また今度、8月に夜店あるよな。明スイで出してみないか?」
坂宮が言い、隅木田くんもいいと言ってくれた。
もちろん、わたしも。
屋台出せるなんて、夢みたい。
初めての、本当の報酬だ!
「やってみるか」
うん!
矢本くんも、真実をしっかりして、受け止める。
それがわたしの由来だよね。
出来たら、帰ってきてほしいけど。
ねっ!
(つづく)
あとがき
絵菜
こんにちは!
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイ作者の、元モンブランの絵菜です。
ついに5巻!
ここまでこれて嬉しいです。
夏休みに入った真美ちゃん。
矢本くんに言ってしまい、いなくなってしまい、ショックを受ける。
そんな中の明スイ活動。
わたしも、ドキドキしっぱなしです!
皆さん、梅雨ですがいかがですか?
雨で、外に出られないので、ぜひ明スイを楽しんでいただけたら嬉しいと思います!
自信をなくしていた中、コメントしてくださった玲葉さん!
ありがとうございました。
昨日、期末テストが終わりました!
あまり出来なかったと思うので、また頑張っていきます!
と、ここで雑談は終わりにして。
次回の6巻は、矢本くんが帰ってくるのか、帰ってこないのか!
これは言えませんが、屋台を出しますよ!
新しい新キャラクターも出ます!
では次回会いましょう。
『ここは明確スイーツ研究部!6』
登場人物
多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。明確ゼミナールに通う。
坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。
矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。
隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。
1.お出掛け
暑い日射しがキツい夏の朝。
おばあちゃんが庭の花のお手入れをしていた。
花、喜んでるだろうな〜。
おばあちゃんのお手入れは優しく、気持ちいいと思う。
こんな暑い日も負けないだろう。
「今日から8月、皆さんも頑張っていきましょう。では、また明日!」
アナウンサーの七井さんが手を振り、朝のニュースが終わった。
わたし、七井アナウンサー、ファンなんだよね。
食レポも上手いし、声高いし。
わたしは、多田本真美。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
ただいま夏休み真っ只中。
夏休みは、部活があるのもある。
わたしの部活はないけど、明確スイーツ研究部っていう、スイーツを作ってプレゼントする組織はやってるよ。
七井アナウンサー、かっこいいな。
髪の毛をいつもアレンジしていて、化粧も濃すぎない。
美貌っていうのだよ。
「真美、今日は晴奈ちゃんと遊ぶんだよな。気を付けて行ってこいよ」
「うん。久しぶりにふたりで遊ぶの。いつも一緒にいるヒマは旅行中、ユリは家族でプールだって」
パパは、今日も仕事で忙しい。
ママも、妊娠中で入院してるからいないんだ。
おばあちゃんと出掛けることはあるんだけど、パパとママも一緒に行きたいけど…夏休み中は無理そうかな。
「今日は何をして遊ぶんだ?」
「今日はねぇ。ふたりで昼ごはんを作ってみるの。ハルの家で。で、一緒に隣の町のショッピングモール行くの」
「迷惑かけないようにしろよ。…ショッピングモールか。ママと赤ちゃんとパパとおばあちゃんと真美で行きたいな」
うん!
そこのショッピングモールは、他の県からも来る人がいて人気。
オソロイの物を買ったり、プリクラ撮ったりするんだ!
「じゃあ、そろそろ行ってくるね。行ってきます!」
スニーカーを履き、お気に入りのカチューシャをして、自転車に飛び乗って家を飛び出した。
2.オムライス作り
ハルの家まで行き、ドアフォンを押す。ハルっていうのは、緑川晴奈。
わたしの幼なじみ。
わたしがヒマーーー矢本陽茉理とケンカしたときも、味方でいてくれた。
「あ、真美ちゃん?ちょっと待ってくれる?」
わぁ、ハルのお母さんの声だ〜。
ハルのお母さんは、新聞を配達する仕事についている。
どうして知っているかと言えば、ママも昔そこで働いていたから。
「マミ!入って入って!」
ハルがドアを開けてくれて、ハルの家に入る。
久しぶりに来たな。
6年生になって来てないから…。
何ヵ月ぶりだろ。
「おじゃましま〜す」
ハルの匂いだ。
何となくだけど、花園の匂いがして、すごくいい匂いがするんだ。
「マミ、荷物そこ置いて。今日作るのは、オムライスだよね」
「うん!」
そう。
今日のメニューはオムライス。
ふんわり卵を使って、ケチャップのチャーハンに乗っかった卵…。
美味しくできるかなっ?
「じゃあ、作ってみるか」
時計を見上げると、11時を回ったところだった。
1時間あれば出来るはずだし。
「エプロンして。早く作ろ〜!」
そうだね!
オムライス早く食べて、ショッピングモールへ早く行きましょ〜!
3.憧れのスマホ
「真美ぃ、やってぇ。できなぁい」
ハルったら〜!
玉ねぎを刻んでいたら、ボロボロと涙で崩れたハル。
プッ!
顔がおかしくて笑っちゃった!
「ちょっとぉ!何がおかしいのよぉ」
「なんでもないなんでもない。やるから、ハルは休んでていいよ」
「ホント?ありがとう!」
ハル、本気で休む気か…。
「いいや、いいよ。わたしも何か…」って言わないのかい!
まあ、いいけどね。
ハルの家でやらせていただいてるんだもの。
「ねえ、真美。ちょっとお姉ちゃん呼んでもいい?」
「いいよ!…久しぶりだなぁ。すっごく楽しみ!」
ハルのお姉ちゃんーーー緑川愛奈ちゃん。公立の紅北中学校1年生。
紅北中学校は、わたしが小学校も中学校も受験しなかったら通うところ。
つまり、地区の中学校。
愛奈ちゃんは、受験しなかったみたいだから、紅北中学校にいるんだ。
「お姉ちゃ〜ん!」
2階へ向かって、ハルが声をかける。
すると、スマホを握った愛奈ちゃんが来た。
「愛奈ちゃん久しぶり!わぁ、スマホカッコいい〜!」
「真美ちゃん!お久しぶり〜。スマホねぇ、春休みに買ったの〜」
スマホの裏側は、デコストーンでデコしてある。
まさに、中学生女子。って感じ。
可愛いな〜。
わたしもスマホ欲しい〜。
私立彦宮学園ーーーわたしが受験した学校で、小学校、中学校、高校とあるんだ。
そこでは、スマホの利用はOK。
授業以外は学校で使ってもいいんだ。
ヒマは持ってるけど、わたし、ハル、ユリは持っていない。
だから、ヒマに憧れるんだ〜。
「真美ちゃん、バイバイ。わたし、朝練今からだから。じゃね」
「バイバ〜イ!」
スマホ、ママに頼んでみよっと。
4.デビュー!
「いっただっきま〜すっ!」
ハルと声を合わせて手を合わせ、オムライスへスプーンをのばす。
とろけるようなふわふわ卵。
ケチャップがよく聞いたチャーハン。
「ん〜!美味しい。卵、さすがだね!ハルのお母さん、ありがとうございました!」
「いえいえ」
ハルのお母さんは、ニコリと笑って、2階へ上がっていった。
もう、ホンットうまい!
また今度、ママに作ってあげよっと。
「マミマミ!これ美味しいねぇ!」
「うんうん!早く食べて、ショッピングモール行こっ!」
「いくいく!」
スプーンを握りしめて、オムライスにスプーンをガツガツ入れるのでした。
ふぅ。
お、大きい…。
「ここがショッピングモールかぁ。お姉ちゃんも来てたよぉ」
へぇ。
大きな入口に立ち尽くしていて、め、迷惑かもっ!
「とりあえずハル、入ろっ!」
うんうん。
そうだよそうだよ!
ハルも大きくうなずいて、『ショッピングモールin友達と』デビューした。
5.しょっちちゃん
ハルと、まずは文房具屋を見た。
ペンや鉛筆、ハサミ、キャップに消しゴムまで…。
たくさんの種類があるけど。
「マミ、あの子だよ!この前、わたしが通ってるギター教室の子!」
ハルが指差した方には、楽しそうにワイワイしている女の子達がいた。
ハルは、ギターを習っている。
ちなみに、英語も。
ハルの将来の夢が看護師だから、英語を勉強してるんだって。
ギターは、ハルのお母さんの勧めって聞いたけど。
「お〜い、しょっち!」
ハルが声をかけると、女の子達が振り向いた。
その中でも、ひときわ目立つ女の子が近寄ってきた。
「ああ〜!はるるんじゃ〜ん。となりの子と来たの?」
「うん!この子、マミってゆーの」
ハル、何となく人柄変わったっ?
女の子は、小さな紙を渡してくれた。
「ハロー!マイネームイズ、沼野…潮河ちよみ〜!よろしく!」
潮河ちよみちゃんは、名刺みたいなのを配っていたみたい。
名前、潮河ちよみデェス!。
年齢、11歳小6ダヨっ!
ヨロピクピク〜!
と書いてあった。
「初めまして。多田本真美です。ハルの幼なじみです」
ちよみちゃんは、「潮河の『し』ちよみの『ちよ』で『しょっち』って呼ばれてんの!よろね、じゃ」
しょっちちゃんは、手を振りながら友達の輪に戻っていった。
「マミ、せっかくだし、このショッピングモール限定の友情お守り買ってかない?」
「いいね。このピンクの友情お守りにしよっかな〜」
「わたしは、好きなオレンジで!じゃあ、さっさと会計済ませて遊ぼ!」
ちょっと思ってた以上に高かったけどね、わたし達の友情、そんなに安いものじゃないよ!
っていうか、買えないよっ!
6.彦宮道の夜店
結局、友情お守りに加えて、ボールペン、コンパクトな、小さなハサミも買った。
「オソロイで学校行くの楽しみだね!わたし、明日からある部活も頑張れるかも!」
ハルは、バドミントン部。
わたしは、あこちゃんとのことがあって、バドミントン部をやめた。
つまり、元バドミントン部なんだ。
今は、華道部ーーー花を活ける部活だよ!華道部は、夏休みに部活がないって理由で入ったんだけど、楽しいんだ!
「マミが活けてくれた花、キッチンに飾ってあったけど見た?」
「え、あったっけ?」
わたしが、一番始めに生けた花、スミレとバラの、タイトルは『犬と猫』。
ハルにあげたんだぁ。
「せっかく飾ったのにぃ」
「ごめぇん」
「ん、いいよいいよ!分かりにくいとこに、正式に言えば隠したんだもん」
なら、分かるわけないでしょ!?
文房具屋の前でおしゃべりしていたことに気付いて、ちょっと後ずさりしながら休憩スペースへ移動した。
「こんなに大きい声が出てると思ってなかったよっ!」
ハルが言い、一番近い休憩スペースに腰をおろす。
自動販売機でカルピスを買い、飲みながらまたおしゃべりを続ける。
「ねえねえ!再来週さ、彦宮道で夜店あるでしょ?それ、わたしとマミ、ヒマ、ユリで行かない?」
「いいね!みんなで浴衣来たらどうかな?」
「浴衣っ!いいね〜!」
彦宮道とは、わたしたちが通っている彦宮学園を囲う道のこと。
毎年1回ずつ行われるのだ。
「4人で夜店、楽しみ〜!あ、あそこに浴衣のお店あるよ!ちょっと見に行ってみよ!」
カルピスをカバンに入れて、カチューシャをし直して。
ハルと一緒に浴衣屋へ走った。
7.女の子
「真美ちゃん、ファンの子がちょっと減ったみたいだねえ。明スイ」
おばあちゃんがインターネットを開きながらつぶやいた。
ファンの子、減っちゃったんだ。
わたし、坂宮、隅木田くん、矢本くんで活動している、明確スイーツ研究部は、解散するところだった。
でも、何とか食い止めたものの、矢本くんが抜けかけている。
何とかして止めなくてはならないのに、わたしは怒ってしまった。
…反省してるんだけど。
矢本くん、インターネットでブログ書いてるらしくて、それで明スイのこと書いてるらしいんだよね。
それで、矢本くんのファンがいなくなっちゃったのかな。
「真美ちゃんのファンもいるでしょ?すごいじゃないの」
そう。
明スイメンバーのわたしも、目立ちたくないのに、気付いたら目立ってた。
ちょっと慣れてきたけど。
「真美ちゃん、そう言えば、菜和から電話があったのよ」
ママからっ?
菜和とは、ママのこと。
妊婦さんだから、入院してるんだ。
「電話かけるね」
病院に電話して、看護師さんに要件を伝えて、ママに代わってもらう。
「もしもし」
「もしもしっ!真美だよ!マフィン、夢花見すみれさん、何て言ってた?」
夢花見すみれさんーーークラスメイト、夢花見京香ちゃんの祖母。
ママとベッドが隣なんだ。
この前マフィンをあげたときも、夢花見すみれさんと食べるって言ってて。
「喜んでたわよ。でも、一昨日退院したの。クラスメイトの京香ちゃんに、おめでとうって言ってあげたら?」
そうだね。
京ちゃんこと京香ちゃんは、同じ華道部だし、部活の時に言おっと。
「何の用だったの?」
「ああ。赤ちゃんの性別が分かったのよ。女の子だった」
女の子!
じゃあ、借りては返し、借りては返しを繰り返していた男の子の名前の本は返そう。
女の子の本を中心に、また借り直してみるか。
「お母さんから聞いたわ。真美ちゃんが、赤ちゃんのこと考えてくれてるって。ありがとう」
「うんん。妹が出来るんだもの」
ママは笑って、就寝時間ということで電話を切った。
8.ばあばの喫茶店
翌日。
カーテンを開けると、久しぶりの雨だった。
バドミントン部は、中部も外部もあるから、ハル、大丈夫かなぁ?
さっと着替えて、トートバッグに、女の子、男の子の本を入れる。
そして、カッパを着て、自転車に飛び乗った。
今日だけはおばあちゃんも用事があるし、パパは仕事で帰ってこられなかったから、ひとりだった。
そのまま図書館へ向かう。
元から、トートバッグにはサイフを入れてあるため、図書館のカードはしっかり入っている。
「お願いします。あと、女の子の名前の本、もう一度借りるのでいいですか?」
係りの人のOKをいただいて、女の子の名前のコーナーへ行く。
実は昨日、ママとの電話が終わると、隅木田くんから電話がかかってきた。
今日、朝8時30分から明スイ活動とのことだった。
それまでに、図書館、朝食を済ませなければならない。
朝食は、家ではなく、パパのお母さんの方が経営している喫茶店だ。
図書館のとなりに位置するので、鍵を持っていて、母屋で喫茶で出すものをもらうのだ。
こっちのおばあちゃんは、ばあばと呼ぶの。
本をさっと選び、借り、喫茶店へ自転車を走らせた。
何となく、大雨が涙に感じて、ママのことが頭をよぎった。
赤ちゃんの性別が分かったってことはだよ?
相当大きくなったってことでしょ?
ママの体調が悪化するのが比例したらどうしよう!
母屋のドアを開けると、ばあばとじいじはいなかった。
もう仕事をしているのだろう。
「ばあば〜」
「真美ちゃんかい?」
ばあばの声が聞こえる方へ進む。
久しぶりに会ったな〜。
「ばあば!久しぶり!」
「久しぶりだねぇ。もうこんなに大きくなって。ここにトーストがあるからお食べ」
ダイニングの机に乗っているトーストは、こんがり焼けていて、マーガリンが溶けかかっている。
ん〜、美味しそう!
「いっただっきます!」
喫茶店に広がるトーストの匂いに混じって、わたしの大きな声も響いた。
9.どうするか
「じゃあね、ばあば」
ばあばの喫茶店を出て、ちょっと遠いけど、坂宮の家まで雨の中走る。
車がどんどん走っていくけど、自転車でゆっくり進んでいて、疲れる。
目の前で車が走ってるからかな。
ピンポーン
ドアフォンを押して、坂宮の家におじゃまする。
「おじゃまします」
坂宮の家に来るのは、これで2回目。
まだ、隅木田くんは来ていないらしく、坂宮の家の客間へ通してくれた。
坂宮の家はマンションなんだけど、客間付きなんてすごいよね。
ちょっとすると隅木田くんも来て、相変わらず矢本くんは来ずに始まる。
「僕的に、彦宮道祭りにしたらと思うんだ。どう?」
彦宮道祭り…!
ハルと約束した日でもある…。
ど、どうしよう。
「で、お店の名前だけど、明確スイーツ研究部。そのままでいいと思う」
うん。
それに関してはいいと思う。
それで集まってくれるかもしれないしね。
「それから、メニューはこれから考えるとして。彦宮道祭り、店名に意見等ある人」
わたしは、手を挙げざるを得なかったんだ。
だって、先に約束したのはハルだし、彦宮道祭りって聞いてなかったし。
隅木田くんに指名されて、立つ。
「彦宮道祭りは、幼なじみの緑川晴奈って子、矢本くんの妹の、矢本陽茉理って子、その子と一緒にいた、利等万由里歌って子と、夜店に行かないかって話してて」
先に明スイで屋台出すって決めてたのに、怒られるに決まってる。
勝手に決めつけてたけど、ふたりとも怒らずにいいよって言ってくれた。
う、嬉しい。
こんなことになるとは、思ってなかったから。
「そこの屋台が無理だと、隣町の屋台しかないかな。でも、遠いんだよな。どうする?屋台出す?」
「すみません。わたしのせいでこんなことになってしまって」
隅木田くんは、首を横に振り、また対策案を考えてくれている。
わたしも考えないと。
「出すのは決まりだよ。絶対出すぞ」
坂宮、意志強い、偉いっ!
でも…どうすればいいの〜?
10.一緒に
「…ああああ!!」
これだ、これだ〜!
やっと見つけたぞ〜!
解決案、わたしが見つけたぁ!
「どうしたの?真美ちゃん」
「思い付きました。これですよ!わたしと行く、晴奈ちゃん、陽茉理ちゃん、由里歌ちゃんも一緒に屋台出すのはどうですか?」
隅木田くんと坂宮は、はあっ!っと、喜んだ顔をしたけど、またがっかりしな顔になった。
え?
どうして?
何か、不備でもあるかな?
「真美ちゃん、迷惑かかっちゃうし。無理だよ」
「いいえ。晴奈ちゃんは、料理が好きですし、陽茉理ちゃんは、食レポが上手いんですよ!味見なら持ってこいですから。由里歌ちゃんは、ずっと料理部入ってたんですよ?いいじゃないですか!」
ちょっと語尾を強調して言う。
すると、坂宮の目には活気が戻ってきたんだ。
「真美、ナイスアイデア!」
隅木田くんも賛成らしく、拍手してくれた。
わぁ〜、良かった〜!
でも、問題はこの先。
ハル達がOKしてくれるかどうか。というところ。
OKしてくれなかったら無意味だし。
でも…隅木田くんの言う通り迷惑だったら…。
いやいや、きっといいって言ってくれる…かな。
お願いします、いいって言って…ください!
絵菜→まいに変えました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
11.メニューとは
そのあと、一緒にハル、ヒマ、ユリに電話をかけて聞いていった。
たまたま、ヒマの電話番号を明スイメンバーであるわたしたちが知っていて、そこでユリの電話番号を聞いたと言うわけ。
「そう。うん、ん。ありがとう、じゃあ、夏休み明けね、うん」
最後の、ユリとの電話を切る。
最高の会話だったよ!
ユリ、テニスの試合で優勝したんだってね!
すっご〜い!
さっすがユリ!
「で、利等万さんどう?」
「OKでしたっ!」
満面の笑みで言うと、ふたりともすごく喜んでくれた。
良かった〜!
ハルの意見で、わたしを含めて女の子4人は、浴衣を着てやることになったんだ。
それには賛成してくれたわけで。
楽しくなりそうだな〜。
「じゃあ、メニュー決めよっか。僕の意見は、怪盗日本が来たときの合わせたのみたいにすること」
あああ。
怪盗日本ーーー怪盗日本(ジャパン)は、彦宮学園の名物の時計だ。
彦宮時計と言う。
これの時、避難してたんだけど、どうしようもなく騒がしくて。
どうにかして食べ物の補給ということで、明スイメンバーで作ったんだ。
マドレーヌとムースを合わせてマドレムースにしたりとか。
美味しかったな、あれ。
今回は、シュークリームとカップケーキを合わせてシューカップみたいなの作ってみたいなぁ。
「どう?」
「い、いいと思います!」
手を挙げながら言い、坂宮の方を見ると、坂宮もニヤッっと笑ってOKサインを出す。
よ〜し!
この前より進化した美味しいスイーツ作るんだから!
絶対売り切れまで持ち込むぞ!
坂宮は、ノートを取り出して、ペンに『彦宮道祭り』と書く。
隅木田くんに回して、____+____=_______と書いていた。
シュークリーム+カップケーキ=シューカップ!
あ!
わたしが作ったマフィン、これはそのままで売りたいな〜!
いや。
売るんじゃなくて、買ってくれたらおまけにしよう。
我ながらいいアイデアだ!
挙手して当てられると、シューカップの話、マフィンの話をして、にっこり笑ってうなずいた。
12.虹を探して
トートバッグの中に、ちょっと濡れてるカッパの袋、寄り道して100円ショップで買ったノート。
そして、女の子の名前の本がたくさん入っている。
虹が綺麗。
小さい時に考えたっけ。
そいえば、こんなことあったような、ないような…。
ママが虹を作ってくれる。
シャワーから虹が出てる〜!
幼なじみであるはるなちゃんと虹を見て喜んだ。
すると、本物の虹が空高くを架かっているのが見えた。
「まぁみちゃん。虹、追いかけよぉ」
「いいよ、はるなちゃん!虹の上に上ってダンス踊ろう!」
そう言って、ママが車で運転してくれて虹を追いかけた。
でも、先が分からなかった。って。
あのとき、どうして虹を探したんだろう。
…産まれてくる赤ちゃんに、虹を探そうとしてたら聞いてみよ!
きっと、同じこと考える…はず!
自転車を停めて、カッパも干して、家のドアを開ける。
まだ誰もいない。
鍵を内からかけて、部屋へ入る。
わたし、何か大きな忘れ物してる気がするんだよね。
普通に、夏休みを満喫中。
満喫中ーーー遊び中ーーー遊びーーー。
。。。、、、…。。。…!!!
「ぎょえーーーーーーーーーー!」
き、近所迷惑だっ!
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイッ!
何となく、明スイのことが頭にいっぱいでぇ!
「宿題やるの忘れてた〜!」
13.名付け親
プリント終わりっ!
ふ〜!
算数って、やっぱり時間かかるぅ〜!
ヒマが羨ましいな、本当。
「ただいま〜」
あっ、おばあちゃんだ!
再来週の彦宮道祭りのこと、話さないと。
一階へ降りると、おばあちゃんのとなりにママもいた。
「えええっ?ママっ!?」
ママはにっこり笑って、わたしを抱きしめてくれた。
もちろん、優しく。
いつもよりも。
赤ちゃんがつぶれちゃうものね。
「久しぶりかしら。真美ちゃん、いつも赤ちゃんのこと考えてくれてありがとう」
「うんん。名前のことくらいしか考えてないけど」
ママはクスクス笑って、おばあちゃんと、わたしと。
リビングに入って、ゆっくり話すことにした。
「赤ちゃんの名付け親は、真美ちゃんかしらねえ」
この子の名付け親がっ!
わたしになるの?
「菜和、里尾家の伝統を守りなさい。真美ちゃん、里尾家はね、名前を書いた紙を草舟に乗せて、一番速くゴールに着いた名前に決まるのよ。真美ちゃんが子供を産むときも守ってね。これを続けていくのよ。その家族、祖母祖父が参加するの」
へえ。
ってことは、わたしもぉっ!
おばあちゃんの方を向くと、にっこり笑ってうなずいた。
わたしの名前が採用されるかもっ?
「わたしは、七海ちゃんだよ」
おばあちゃんが言う。
七海ちゃんかあ。
かわいい名前だなあ。
由来は、誰にでも優しく、広い心を持ってほしいから。だそうだ。
「ママは、特に決めてないわ」
ふうん。
わたしもぉ、決めてないけど。
かわいい名前がぁ、いいかなぁ。
14.みんなで作ってみる
「初めましてかな。僕は隅木田優斗。よろしくね」
「俺は知ってるだろ」
何よ、坂宮。
改めて自己紹介したらいいのに。
今日は、屋台に出すものを作ってみるんだ。
ハル、ヒマ、ユリも一緒に。
「初めまして。わたしは緑川晴奈っていいます。よろしくお願いします」
「こんにちは。お兄ちゃんがお世話になってたと思います。矢本陽茉理です。よろしくお願いします」
「初めまして、こんにちは。利等万由里歌です」
みんなが自己紹介し終わり、みんながみんなの名前を覚えると、役割分担をすることになった。
「まず、味が重要なシューカップは、僕と矢本さんね」
ああ、食レポのヒマか。
で、次は何?
「カップケーキを、おまけで作るのは、真美ちゃんひとりで。この間作ったのをアレンジしてみて」
はい!
ひとりで作るのは寂しいけど、みんながいるし…いいよねっ!
あとの、ハル、ユリ、坂宮は?
「で、利等万さんは、一番難しいクレースをお願い」
クレース?
後から隅木田くんに聞いてみた結果、クレース=クレープ+ムースだそうだ。そこに補助で、わたしが入ると。
そういうことね。
「で、緑川さんと坂宮で、チュロス。作ってみて」
まだまだ、これでメニューは全部じゃない。
ここは、ヒマの家。
広いキッチンーーーヒマの階を使わせていただいている。
「じゃあ開始っ!」
隅木田くんの号令で、みんなが手を動かし始める。
今日は、8時集合にしたんだけど、終わる予定は6時。
遅い…。
「ユリ、頑張って作るよ!」
「うん!クレープの生地は、部活で習ったから、アレンジ方法とか考えたり作ったりしてて。助けがいるなら、わたし手伝うから!」
ありがとう!
そういう目でうなずき、アレンジ方法を考える。
ハルと坂宮も、仲良くヒマのスマホを見ながらチュロスの作り方を調べている。
よーし!
作ってみるぞ!
15.妙な気持ち
よーし!
この前マフィンを作ったときは、そのままで作った。
でも今回は、板チョコを小さくして、それをそのまま焼く。
ちょっと溶けて、そこをデコレーションチョコレートで可愛くしたら!
きっと人気になる…かな!
「陽茉理ちゃん、ナイス!これでいこうか」
隅木田くんの声が聞こえた。
さっきまで矢本さんって呼んでたのに、陽茉理ちゃんって呼ばれてた。
…何、わたし!
何て呼ぼうが関係ないでしょ!?
うんうん。
そうよそうよ。
「どうしたの真美。ヒマの方ばっかり見て。どうかした?」
ユリ、するどい!
ちょっと見てただけなのにぃ。
ユリは、ニヤッっと笑う。
って!
恋愛とかって想像してるでしょ!
違う違う、全然違うーっ!
もーう!
ユリったらーっ!
ちょっと笑みを混ぜてユリをにらむと、ユリは凶悪の苦笑いをしていた。
「よし!」
そう言って、一応この前作ったのと同じように作っていく。
あ、生地は、ストロベリー味も準備したんだ!
チョコレート味も!
この3種類を作る予定だよっ!
「晴奈、スマホ取って」
坂宮はハルのこと呼び捨てかあ。
別に、坂宮は何とも思わないけど。
名前でハルが呼ばれてても、ふうん。そうですか。って感じ。
これって、何っ?
16.エスカレートする気持ち
「ユリ、ちょっといい?」
ストロベリーの生地、チョコレートの生地が同時に出来たので、ユリに手伝ってもらう。
ヒマのキッチンに、この前とは違うマフィンの匂いが香りたつ。
「いい匂い。さすが真美ちゃん」
「い、いえいえ」
隅木田くんが言ってくれると、何となくポッっと顔が赤くなった?
ちょっと、今のどういうこと?
「マミ、体調悪い?顔が赤いよ」
ユリっ!
お願い、ウソって言って〜!
「いえいえ、大丈夫です」って、言えないんだけどーっ!
「真美ちゃん大丈夫?陽茉理ちゃん、どこか、休めるところある?」
「はい。わたしのお部屋で良ければ」
うわーっ!
わたしが体調悪いってことで話しちゃってるーっ!
違うって言わなきゃなのに言えないよーっ!
どうしてどうして!
「僕が付き添うよ。陽茉理ちゃんは、シュークリームが焼けるのを待ってていいから。真美ちゃん、行こ」
「隅木田さん。わたしが付き添いますから。わたしのお部屋、やっぱりわたしがいないのに入るのは…」
「そうだね」
隅木田さん呼び!?
先輩じゃない〜!?
わたし、どうかしちゃってるよ!
「ヒマ、わたし、大丈夫〜!」
「いやいや、休んで」
「いいいいいいい、いいですぅ!」
あああーっっっ!
もう、どういうことなのっ?
17.恋っ!?
ヒマは、ちょっとため息をついて、隅木田くんと一緒にまた作り始めた。
羨ましいよ〜!
やっぱりわたし、変?
どうしてそんなこと思うの?
え〜?
どうしてなの〜?
「マミ、ちょっと」
ユリに呼ばれて、キッチンの隅に移動する。
何となくだけど、ユリはニマリと笑っている。
ちょっと、何か仕組んだ!?
「マミさぁ、隅木田先輩のこと好きなの?やっぱり」
「はぁぁん!?」
ヤバイ、大きな声出ちゃった!
あわてて口を押さえて、ユリの方を向き直す。
だって、どうして、何でっ?
「すっごく、隅木田先輩の方見てるから。それに、恥ずかしそうに顔を赤らめて」
「…えええ!?」
「わたし、応援してるからっ!」
ちょっ、ユリっ!
わたしはねえ、隅木田くんが好きじゃないの!
…いやいや、好きだよ。
友達とし、て…ね?
…。
本当にそうだよ、ね?
「真美ちゃん、ちょっとそこにあるノート取ってくれる?」
隅木田くんのことを考えていると、隅木田くんが話しかけてきて驚いた。
ノ、ノート持ってきてってっ?
「はい、今行きます」
隅木田くんのノートには、『明スイノート 隅木田優斗』と書いてある。
ちょっと触っただけなのに、幸せ。
何となく嬉しい。
「マミ、ファイト!」
そうだね!
もしかしたら、恋か、、、な!
「うん!」
隅木田くんのノートを手に、隅木田くんのところへ行く。
ちょっとずつ、隅木田くんに近づいていってるっ!
鼓動がぁっ!
ドクドクドクドクドクドク!
「はいぃぃ!ど、どおぞぉぉぅっ!」
「ありがとう、真美ちゃん」
隅木田くんがにっこり笑うと、わたしの心にハートの矢が刺さった。
18.ヒマもっ?
「じゃあ、晴奈ちゃん、陽茉理ちゃん、由里歌ちゃんありがとう。さようなら」
みんな、名前でちゃん付けっ!
ちょっとヤキモチかな。
「あ、由里歌ちゃん、ひとりでクレープ、どうもありがとう」
「いえいえ。気を付けてお帰りください」
そう。
わたしたちは、残って女子会しながら夜ご飯をいただく。
そして、ヒマの家の車で帰らせていただくというシステム。
「隅木田くんっ!坂宮、バイバイ!」
わたしが思いきって言ってみると、隅木田くんは笑って手を振ってくれた。
ん〜!
カッコいい〜!
勉強も出来て、かっこよくて、優しくて紳士っ!
完璧じゃないの!
ふたりが帰ると、キッチンを片付け、掃除し、となりのヒマの部屋での女子会だ。
「さあ!ハル、マミ、ユリ!恋バナしよう!恋バナ恋バナっ!」
す、隅木田くんのこと話さなきゃいけないのかなっ?
いやいやいやいや、いやです〜!
「まずは、ハルの好きな人から!」
ヒマの司会で、みんなの視線がハルへ集まる。
ハルは、戸惑いつつも、前かがみにして、小さな声で言った。
「ふ、じ、も、と、せ、ん、せ、い」
ふ、藤本先生〜!
それは、学年主任の40代の先生。
ま、まあ、優しいし、か、カッコいいのかなあ?
「何かさぁ、笑顔がかわいくってさ、英語習ってるから、英語どんどん発言出来るでしょ?当てるときがかっこいくって!」
ハル、乙女だぁ。
わたしは、隅木田くんの時も乙女にならないと思うけど、ハルが乙女になるときは見たことない。
「じゃあヒマは誰なのよっ!」
「えへへ、わたしはねえ…。隅木田さん!」
ええ…!
隅木田くんなのっ!?
19.ユリは
「さっきぃ、優しく教えてくれたし、一目惚れしちゃったぁ。でも、彼女がいるんだって」
か、彼女いるの!?
聞いたことなかった!
「ちょっと残念だったけど、あきらめずに隅木田さんを好きでいるよ!」
ヒマも、恋したんだ。
わたしは、今日恋って気付いたのに。
ヒマは素早いな〜。
「マミは誰なの?」
ヒマに聞かれて、一瞬戸惑った。
この環境で、いないなんて言えない。
でも、隅木田くんとも言えない。
「マミ〜?聞いてるぅ?」
「き、聞いてるよ、聞いてるよ!」
「隅木田先輩」
えっ?
ユリ、今言った?
ちょっと、本当に言ったの?
「マミの好きな人は、隅木田先輩。ヒマと一緒だよ」
「ユリ…、どうして言ったの…!」
ちょっと声が震えながら聞いてみる。
すると、ユリはサラッっと言う。
「聞かれてたから、質問に代わりに答えてあげたの。そうでしょ?」
…。
ヒマは、黙ってジッっとしている。
ハルとわたしは、冷や汗を流しながらユリを見る。
「で、隅木田先輩が好きなんだって」
うん…。
そうだけどね。
ユリって、こんなにはっきり言う子だったっけ?
まあ…いいや。
「そういうユリの…好きな人は…誰…なの…?」
「被ってごめんなさい。隅木田先輩。わたしが…隅木田先輩の彼女」
はあっ?
20.失恋か
ハル以外が、隅木田先輩なの?
そんな…!
それに、ユリは彼女だなんて。
ずっとお芝居してたのかな?
会ったときとか。
…はぁ。
「わたし、失恋。もうあきらめよっ!ユリを応援するよ」
ヒマっ!
あきらめるのっ?
可愛くて、優しくて、おっとりしていて、控えめなユリこと利等万由里歌。
はっきりしているところもあって、一途で、秀才なヒマこと矢本陽茉理。
それに、国語が得意で、明スイに入っている普通なマミこと多田本真美。
隅木田くんは、わたしのことは選ばないから、失恋かな。
恋って分かった瞬間に。
「もう…恋バナやめよう。うーん?そうだ!中学校の話は?」
気の利くハルは、話を変えてくれた。
すると、ユリもヒマもわたしも!
顔が急に変わった。
「わたし、彦宮に残ることにしたの」
ユリが言い、ヒマも口を開ける。
良かった。
ちょっとは雰囲気が和らいだ。
「わたし、私立慶美音学園希望。双子の香音とふたりで行こって約束しているから」
ヒマ、私立慶美音学園なんだ!
彦宮学園は、そこそこ偏差値は高いし、ヒマは秀才だからだから行けるだろう。
わたしは…無理かも…。
「わたしは、彦宮に残ることにした」
ハルも残るんだ。
はぁ〜。
ママたちと…相談するか。
訂正
ハルが恋している藤本先生→副学年主任でした。すみません。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
21.ふたつの中学校
その夜、おばあちゃんにこの前話せなかった夜店のこと。
中学校のことを話した。
「そうだねえ。菜和にも相談してみるといいよ。でも、おばあちゃんも考えないとねえ」
うーん。
夜店のことはともかくとして、中学校だよねー。
中学校を決めるのは、10月の初めだからねぇ。
もう決まってる子、いるし。
「夜店は、いいよ。頑張っておいで。中学校のことは、おばあちゃんよく分からないけど、彦宮学園に残ってもいいし、受験し直してもいいし。そのことは、真美ちゃんがどうしたいか。じゃないの?」
わたしがどうしたいか?
別にどうしても…。
そろそろ、それくらいのことはわたしだけでも決められるようにならないとだよね。
頼ってばかりはよくない。
受験するかしないかくらいは、決めないとだよね。
彦宮に残るか、他へ行くか。
「お金かかるかもだけど、受験したいかな」
「うん。そう言うのが大事よ。もしかしたらだけど…パンフレットってこれかしら?」
それは、担任の先生にもらったパンフレットだった。
おばあちゃん、どうして!?
「菜和のクローゼットを整理してたら見つけたんだよ」
パンフレットを開いて、偏差値、学校の制服、部活、費用を見る。
偏差値は、今のよりちょっと上を見ていく。
最後まで見て引っ掛かるのは、ふたつある。
ひとつ目は、私立青山野学園。
偏差値はまあまあ、制服が可愛くて、華道部もある。
費用はそこそこ高いかな。
ふたつ目は、私立降羽田女学院。
女子高で、偏差値、制服は完璧!
交通費がちょっと…。
それで、部活はまあまあ。
費用も同じようにかかりまくるっ!
「何々?私立青山野学園、私立降羽田女学院ねえ。どちらでもいいと思うわ。菜和に相談してみたら?」
うん!
このどちらかにしようかな!
22.青山野に決まり!
「今日は夜店の日ねぇ。おばあちゃんも、行きたいけどねえ」
おばあちゃんは、ひとりで夜店に行きにくいそうだ。
おじいちゃんが亡くなったから、ふたりでも行けないし。
実家の方に友達はいるけれど、ここから遠いし。
若い子ばかりで行きにくいって。
ママは、症状が悪化しちゃったみたいだし、パパも出張でイタリアへ…。
「菜和に電話して、中学校のこと相談してごらん。きっといいこと言ってくれるから」
おばあちゃんが言うと、ほぼ同時に電話機がなる。
プルルルルプルルルル
おばあちゃんが手に取ると、ピッっと音を鳴らした。
ちょっと話してから、電話機はわたしの手の中へ!?
「菜和からよ」
マ、ママから電話!?
あわてて電話機を持ち直して、耳に当てる。
何も聞こえない。
…。
すると、何かを落とした音が聞こえたんだ。
「ママっ?」
「はぁい。今、ちょっと、ガラスのコップを落としてしまったの」
「そう…」
ちょっとの間、看護師さん(?)とのやりとりがかすかに聞こえ、ママの声がそのまま耳に入ってきた。
「ごめんなさいね。お母さんから、真美ちゃんが中学校のことを考えてるって電話が来て…」
おばあちゃん…。
そんなことしてくれたのね。
嬉しいよっ!
どうもありがとうっ!
「それで、私立を受験したいらしいわね。ママ、応援するから、自信持って受けなさい。ただし!軽い気持ちで受けないように」
うん。
それは承知ですっ!
本気で受けて、本気で取り組んで、行きたいんだっ!
「明確ゼミも、クラスを増やすこと。いいわね?」
「もちろん」
「ん。私立青山野学園と、私立降羽田女学院ね。ママのおすすめは、青山野よ。男の子と接する機会が減ると、後々大変なことになるんだから」
へ〜、そうなんだ。
やっぱり、ママに相談してよかった!よーし!
青山野に決定だぁ〜!
「私立青山野学園に受験してもいいですか!」
「頑張りなさい。明確ゼミは、月曜日と金曜日と土曜日だけだけど、火曜日と水曜日プラスコース、木曜日と日曜日プラスコースのどちらかを選びなさい。どちらにするの?」
「火曜日と水曜日プラスコース」
「うん。明確ゼミに連絡しておくわ。じゃあ、診察あるから。ありがとね。バイバイ」
うん、バイバイ!
電話が切れると、なぜかやる気で満ち溢れてきた。
わたしなら出来る。
青山野に受かる!
そういう勢いで、部屋へと階段をかけ上がった。
23.夜店を楽しもう!
「由里歌ちゃん、クレープ急いで!」
「真美、会計頼む!」
「ハル、そこのチョコレートソース取って!」
「ヒマ、悪いけどカップケーキ渡してくれる?」
隅木田くんとユリが書いてくれた、一際目立つ屋台。
彦宮道は、いつもよりにぎやか。
わたしの浴衣は、花火。
ハルは、金魚。
ヒマは、ハートマーク。
ユリは、スイカ。
みんなの浴衣もかわいい!
「はいはい、これこれ!」
「ありがとうございます!隅木田先輩!またのご来店、お待ちしておりますのでっ!」
ユリ、気合い入ってる〜!
ハルも、さっき藤本先生を見つけて、目がハートになってるし。
お客様は、予想通り行列。
お金は100000くらいはたまってる。
すっごーい!
「女の子たち、休憩してきていいよ!お買い物楽しんできて」
隅木田くんが言って、わたし、ヒマ、ハル、ユリの順番で屋台を出る。
「もう、4人では無理かもだし、目一杯遊んでくよぉっ!」
ハルが言って、一番隅からぜ〜んぶ見ていった。
かき氷でひんやり!
うーん、冷たい〜!
金魚すくいで1匹ゲット!
おばあちゃんと飼おっと〜!
隅木田くんと坂宮におみやげで焼きそばを!
買って、戻ったり、行ったり。
40分くらい歩いて、また隅木田くんたちとバトンタッチ!
さ〜あ、どんどんやってくよ!
笑顔とお金の報酬に、明スイに参加してくれたハルたちとも、みんなで目を見合わせて笑った。
(つづく)
あとがき
まい
こんにちは。
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイ作者の、元絵菜、まいです!
今回の6巻、いかがでしたか?
ちょっと、ドキドキシーン多かったではないですか?
作者でありながらも、恋愛が混じってきて面白いですね!
皆さん夜店は始まってますか?
わたしの地域は始まってますよ!
友達と行けるかなあ?
皆さんも、夜店のことなど、明スイに関連することありましたら送ってくださいね!
早目に送信させていただきます!
わたしは、最近恋が発展していてニヤケが止まらない日々です。
皆さんは恋してますか?
この作品を見て分かった方もいらっしゃるかもしれません。
気付いたら恋をしていることに。
意識してると、していないけど、ふとした瞬間、心が好きオーラ出してますよ(きっと)!
恋についても、ぜひぜひ送ってくださいな!
次回の7巻の予告です!
やっと新キャラが出ます。
矢本くんは、引っ越してないけど、本当の決断とは一体!?
あと、矢本くんの隣にいるのは誰なのよ、あれっ!
次回は、彦宮体育祭で波乱の予感!
では、次回会いましょう!
『ここは明確スイーツ研究部!7』
登場人物
多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。明確ゼミナールに通う。
坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。
矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。
隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。
1.English!?
夏後半の暑い日の朝。
久しぶりにスクールバッグを握りしめて歩き出す。
今日は二学期の始業式。
わたし、多田本真美は、幼なじみであり、親友の、ハルこと緑川晴奈とふたりで登校する。
「ね、初等部最後の体育大会だよ!9月にあるんだから。楽しみ」
優しくて、はっきりしていて、モジモジしない、いい子。
体育大会かぁ。
わたし、正直言って、運動は苦手。
足は、速いと見せかけて遅いし。
走り幅跳びなんかは、ルールさえ分からないんだもの。
はぁ〜って、手を後ろについたら、先生に怒られちゃったし。
そんな決まり、知らないのに!
「わたしは、100m走には、絶対出るんだよ。もう決まったの。あと、200m×4人リレーも」
ハルは、運動神経が抜群。
幼なじみで、同じ遊びをしていたのに、この運動神経のあるのとないのの差は何なのっ?
って。
いっつも体育の時は思っちゃう。
「マミ、ハル、Good morning」
ヒマが、英語で挨拶してきた。
ヒマとは、小6で仲良くなった。
本名は、矢本陽茉理。
で、そのとなりにいるのは。
「G、Good morning,every one」
ユリこと利等万由里歌も英語で挨拶してきた。
英語を習っていて、ほぼペラペラなハルがすぐさま反応する。
「Good morning every one」
確か、皆さんおはようございます。だよね?
みんなの視線が、わたしに集まる。
わたしも言えって!?
みんなとは違い、英語が苦手なわたしは、発音もド下手。
ケタ違いなんだ。
「おはよう…」
「In English!」
はいぃ!
英語でって言われた〜!
「グ、グッドモオニングエブレワアン」
発音がなってないよね。
グッドモオニングって…。
モーニング、だよね。
エブレワアンは、エブリワン。
みんなの前で話すと、緊張しちゃう。
「マミ、モーニングでしょ?モオニングはダメだよ。あと、エブリワン。エブレワアンじゃない。every one」
って言われても分かんないよお。
書けるのは書ける。
頑張って勉強したもの。
Good morning every oneって。
「おはようございます」
気付いたら学校に着いていた。
私立彦宮学園という学校に通っているわたしたち初等部の児童会長、ふみ会長こと杉田ふみが言う。
ハルは、英語で返し、わたしは、もちろん日本語で返す。
ヒマも英語。
ユリは日本語で返した。
「ふみ会長も大変。始業式の日から早く来るなんて」
うん、本当に大変。
つくづく、ふみ会長ありがとう。
面白いです!(^^)!
いつ本になるんですか?って、聞きたいくらい!
これからも頑張ってください(´V`)♪
ありがとうございます!
こんなに褒められたのは初めてかも…
もし良ければ、創作板や短編小説板も顔を覗かせてください。
本当にありがとうございます!
2.隅木田くんとの関係
「キャーーー、キャーーー!藤本先生だぁ〜」
ハルが指差した先は、わたしたち6年生の副学年主任、藤本先生だ。
実は、ハルは藤本先生に恋していることが発覚し、それからは恋バナで盛り上がっているのだ。
「隅木田先輩と、あれから会ってないんだよね〜会いたいよ〜」
ユリがボソッっとつぶやく。
実は、明スイメンバー隅木田くんとユリは付き合っているのだそうだ。
ヒマも、隅木田くんが好きで、わたしも_____好き…。
「あれぇ?隅木田先輩だぁ!ユリ、行ってくるね!」
ユリは、自分のことをわたしって言ったりユリって言ったりする。
ニックネーム呼びじゃないときは、由里歌って言ってたけど。
隅木田くんは、ユリのことを、確か由里歌ちゃんって呼んでる。
ヤキモチ焼くな〜。
「わたしたちは、行こっか」
ヒマがわたしとハルの手をとって、わたしたちのクラス、6年1組へ行く。
ドアを開けると、みんながこっちを向いて、あいさつしてくれた。
「おっはよ〜」
ヒマがにっこり笑ってあいさつする。
ハルもそれに続いて、わたしも飛びっきりの笑顔を見せる。
「みんな、おはよ〜!」
今日は、始業式と夏休みの提出物出すだけだから、リュックで来なければならない。
制服を折り曲げないよう気を付けながら椅子に座る。
ここは、登校が自転車以外の人は制服で来なければならない。
わたしは歩きだから、制服をもう着ているのだ。
ちなみに、ハルは歩き。
ヒマは自転車。
ユリは電車で登校している。
「真美ちゃん、国語で表彰があるらしいから。頑張って」
えええ!?
聞いてないよ!
教えてくれた七井さんの方をマジマジと見る。
「あー、突然でごめんって、学年主任の小林先生が言ってた」
えーーーーー!
3.七井さん
「小林先生が、真美ちゃんに伝えといてって…」
「あ、ありがとう…」
明スイで結構目立ってたけど、もうこういうので目立ちなくないよ〜!
表彰って、世の中にあるので一番苦手なんだから〜!
「あとさ、彦宮道の屋台、お疲れ様。わたし、行かせてもらったよ、お姉ちゃんたちと」
ああ、この前のことか。
明スイでは、この彦宮学園の周りの道ーーー彦宮道での彦宮祭に屋台を出した。
すごい人気だったんだよっ!
すごく売れたものだから、お金がたまりにたまってっ!
手伝ってもらった、ハル、ヒマ、ユリには30000円ずつ。
明スイメンバーは50000円ずつ。
残りは明スイの資金にすることにしたんだ。
「心音お姉ちゃん、すっごく喜んでたよ!」
七井さんは、3人姉妹の末っ子。
みっつ上が心音さん。
よっつ上が心夢さん。
ハルたちと遊ぶ前まで、ずっと遊んでたから知ってるんだ。
名前は。
顔は、知らない。
「じゃあね」
七井さんが手を振って、友達の輪に戻っていったので、朝のしたくを始めることにした。
「みんな、おはよう!久しぶり〜」
クラスのキラキラした子のひとりが来る。
この子が来たら、大抵ボスも来る。
わたしが苦手な…。
うっ!
ボスの香水みたいなキツい匂いが…。
「ごっきげーんよ〜うっ!」
ああ、来た〜!
4.
「ほの〜、お久しぶり〜!」
この人は、美華ちゃん。
怪盗日本が来たとき、一緒に闘ったんだよね。
わたしと、美華ちゃんと、ふみ会長とね。
戦闘少女3人組って呼ばれてるよ!
タイプは全然違うし、話すこともないんだけど。
一応、わたしは空手を習っている。
美華ちゃんは、趣味でレスリング。
ふみ会長は柔道。
わたしが空手をやってるのを知ってるのは、美華ちゃん、ふみ会長、ヒマだけなんだ。
みんなには、何かの格闘競技をやってるって思われてるだけ。
「真、真美ちゃん、お、おはよう」
「おはようございますぅ」
美華ちゃんはクスッっと笑って、ユウこと優佳ちゃん、ほのこと穂乃果ちゃんの輪へ入っていく。
みんな、夏休み最高だっただろうな。夏休み後って、何となくウキウキするよね。
今学期の目標は、美華ちゃん、優佳ちゃん、穂乃果ちゃんと仲良くなることにしよっと。
「吹部〜!体育館集合ー!」
初等部吹部こと吹奏楽部部長のふみ会長が声をかける。
始業式では、演奏がある。
校歌と、吹部が選んだ曲とを。
あー、あとちょっとでひょーしょーだー。
4.今学期の目標
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
5.新しい前田先生
「多田本真美さん。壇上へ」
ついに表彰だ〜。
彦宮校長先生の前に立つ。
初等部から高等部みんながわたしに注目する。
やだやだやだ、怖い〜!
「表彰状。多田本真美様。あなたは、校内国語上旬テストにおいて、優秀な成績を収めましたので、ここに証します。おめでとう」
パチパチパチパチパチパチ
おおお〜!
無理ですぅ〜!
渋々受け取る。
彦宮校長先生の前でお辞儀し、足早に自分の席へ戻っていく。
スーハースーハースーハースーハー
ここの空気って、新鮮で美味しいっ!
教卓に、担任の先生になった前田先生が立つ。
この前まで先生だった人は、子供の妊娠で出ていってしまった。
すごくいい先生だったものだから、修学旅行へ行けなくて残念。
何よりも、卒業時にいないことが寂しいな〜。
「初めまして、前田あいです。6年1組の皆さん、よろしくお願いします」
前田先生は、にっこり笑って言い、自己紹介が書いてある紙を配る。
ふむふむ。
サーフィンをやったことがあるのか。
子供はふたり…。
へ〜。
「趣味は、華道。華道部の顧問になります」
わたし、華道部。
前田先生、お願いします。
「イベントがたくさんありますから、初等部最高学年の6年生で頑張って盛り上げていきましょう」
あ〜、今月末は、彦宮体育大会だ。
格闘ないから…。
まあまあ、盛り上げていけたら、いいのかなっ!
6.特別な日
前田先生からの宿題で、作文を書くことになった。
題名は、『わたし』。
みんな一緒なんだ。
自己紹介みたいなものを書くんだ。
「真美ちゃんお帰り。ねえ、見て見て!明スイの評判、また上がってる」
おばあちゃんが、パソコンを指差して言う。
パソコンを覗くと、明スイのホームページみたいなのが出来ていて、そこにファンのコメントが書かれていた。
『明スイ最高!』
『彦宮道の屋台、並んだかいがあったよ〜!』
『見て!これ写真貼ったから!彦宮道で買ったの!』
評判上がってる〜!
矢本くんのファンは減っちゃったけど、わたしたちのファンは増えたってことかな?
それとも、ハルたちにファンが出来ちゃったとか?
「真美ちゃん、今日は外食に行きましょうか。夜」
外食、久しぶり。
それよりも、おばあちゃんから提案するって?
おばあちゃんは、家で食べる食べ物が好きで、外食は苦手なのだ。
「ほら、今日は菜和の誕生日よ。菜和にはもう言ってあるから」
ま、ママの誕生日だったっけ!?
9月1日…。
始業式であり…ママの誕生日だ!
「うん!行く行く!」
「ふふふ。和食だけど、いいかしら?菜和、和食が好きだし、和食って落ち着かない?って思って」
「和食大好きーっ!いいよーっ!」
今日は、勉強もがぜんやる気が出てきた。
よーし、やるぞっ!
二階にかけ上がり、ほしいと思っていた勉強本リストの紙を片手に、本屋へ走った。
うーん?
何にしようかな〜?
これとこれ、似てて似てない。
どういうことか分からないけど、どっちの方がいいの?
「マジで?キャハハ!」
明るい女の子たちが来て、迷っていた方の一冊を手にとる。
3人中3人が。
よーし、決まり!
あの女の子たちが取った方に、決まりだーっ!
それ以外にも、計五冊買った。
本屋の袋をギュッっと握り締めて、また家まで走った。
7.ママ!?
参考書、問題集、解答、よく出る攻略勉強方書、英語のリスニングセット。
まずは、苦手な英語から!
英語のセットのビニールを破る。
そして、リスニングCDを取りだし、音にかける。
「英語を聞いて、次にあてはまるもとを、A〜Fから選びなさい」
うーっ!
始まったよ〜。
わたしの嫌いな言葉、Good morning every oneって言ってる!
でも、英語も克服していかないと!
店内には、流行りのアイドルグループのデビュー曲が流れている。
どうして知っているかって、ハルがよく口ずさんでいるから。
ハル、ファンなんだよねえ。
「菜和、誕生日おめでとう」
「歳とっちゃったわぁ」
ママは、若いと思う。
今、37歳。
30代って言うことが、嬉しいっていうか、プライドが何かいろいろあるんだってさ。
「お待たせいたしましたーっ!こちらが、天ぷら定食ですね。天ぷら定食のお客様」
ママが手を上げる。
こんがりいい匂いの天ぷら。
それに加えて赤みがかったお味噌汁。
美味しそう。
「じゃあ、ママお先にいただきます」
ママが手をパチンと叩いていただきますをすると、ママはお腹を押さえた。
ど、どうしたの?
「お母さん、病院…」
ママっ?
だ、だいジョウ夫?
「菜和っ?真美ちゃん、救急車を」
あああ、はいっ!
ママ、大丈夫?
絶対にわたしが、助けるからっ!
8.矢本くんたち
「お腹の赤ちゃんが動いた衝撃でちょっと痛めてしまったようです」
看護師さんが伝えてくれる。
和食屋の、天ぷら定食の代金のみ払って病院へ来た。
グーッ
お、お腹空いたよお。
「もしよろしければ、病院内のレストランをご利用しては?お腹空いてませんか?」
さっすが看護師さん。
おばあちゃんとレストランへ行って、夜ご飯を済ませた。
「ちょっとお手洗い行ってくるね」
おばあちゃんに言って、さっき見かけた男の子のあとを追う。
矢本くんみたいな人だった。
追いかけて、見つけて、正体を突き止めて、何かいろいろしてみる!
「ここっち、こっち」
ここっち?
矢本くんらしき人は、ここっちと呼んだ女の子と腕を組んで歩いている。
横顔さえ分かれば…。
「たっくん、優し〜い!」
たっくん?
矢本くんの本名って、拓斗くんだったよね?
たっくんって呼び方、ある…?
「たっくん、お母さんの来てくれてありがとねぇ。わたしの家、泊まって」
と、泊まるだとぉ!?
今、完全に横顔が見えた。
絶対にあれは矢本くん。
たっくんって呼ばれてる…矢本くん。
「七井家に泊まるの?嬉しい!」
な、な、い、家?
矢本くんの同い年なら、心音ちゃん?
心音ちゃんと付き合ってるってこと?
正面から見て確かめたくて、正面まで回ってみた。
やっぱり…!
「心音ちゃん」
「拓斗くん」
9.思わない言い合い
「ちょっと、拓斗兄、どういうことなのよ!七井先輩と仲良くして」
ひ、ヒマ!?
ど、どうしてここにっ?
矢本くんもそう思ったらしく、唖然としている。
心音ちゃんは、手を口にあてて、上目使いで矢本くんとヒマを見ている。
「七井先輩、拓斗兄とどういう関係なんですか!?」
「どうしたのよ、陽茉理ちゃん。わたしと矢本くんは、深い深い関係があるのよ。陽茉理ちゃんには話せないわ。ねえ、たっくん」
心音ちゃん!?
ひ、人が変わったっていうか、なんと言うか…。
「七井先輩、どういうことなんですか!?拓斗兄、帰るよ。さようなら、七井先輩」
ヒマはヒマで強気ではあるけど…。
矢本くんと心音ちゃん、どう出るの!?
「陽茉理ちゃん、今日は、たっくんはわたしの家に泊まる予定なの。もう時間遅いから、わたしが送ってったげるよ。陽茉理ちゃんは帰りな」
心音ちゃん、それ、本当にっ?
矢本くんが、心音ちゃん家に泊まるってことだったよね?
「いいえ。認めませんから。拓斗兄、執事が来ているから、帰るよ」
矢本くん、執事いたんだ。
ってことは、ヒマや香音ちゃんにもいたりして…。
「たっくん、陽茉理ちゃんは引かないつもりよ。またにしましょう」
ヒマの勝ちってわけか。
心音ちゃん、優しいから、そこまで強気にならないんだよね。
わたしも、心音ちゃんみたいになったら、矢本くんを明スイに戻すことができるのかな?
「あら?真美ちゃんじゃないの。お久しぶり。こんなとこで何してるの?」
ヒマと矢本くんが行って、今は心音ちゃんとふたりきりっ?
「お母さんが妊娠しているので、ちょっと…。心音ちゃんは?」
「ふふふ。わたしは、おばあちゃんが入院しているの。だから」
へ〜。
すると心音ちゃんは、身を翻して矢本くんが行った方へ行った。
お、追いかけた?
わたしも追いかけるぞ!
10.そんな子だったの!?
「たっくん!ちょっと話させて。いいでしょ?陽茉理ちゃん」
「いいよ、ここっち。ちゃんと戻るから先行ってろ。ちょっとだから」
ヒマは、ふたりに、矢本くんにははっきりと。
心音ちゃんには遠回しに。
帰れって言われていた。
かわいそうに。
大好きなお兄ちゃんを、心配しているだけなのにさ。
「たっくんと結婚したら、わたしにも執事がつくのよね。受験せずに、高校も行かずに、ふたりで遊んで、中学校卒業したらすぐくらいに、ふたりで住んで、18歳に結婚するのよねっ?」
け、結婚のハナシ!?
心音ちゃん、もう!?
っていうか、高校行かずにふたりでカップルみたいに遊んでるの!?
「そうだよ。ふたりで住むって言っても、ここっちのアパルトマンと、俺とここっちのアパルトマン造るだけ」
「まあ、素敵!たっくんって本当にカッコいいわぁ」
アパルトマンですかぁ。
なんじゃそりゃ。
何語ですか?
矢本くんは持ってますか?
アニメですか?
アンパンマンのいい間違いですかっ?
「さ、わたしの家へ」
結局!?
心音ちゃんってそんな子だったの!?
すると、矢本くんと腕を組み、ヒマが行った方と反対。
こっち側へ来た。
きっと、こっちの出口から出るつもりなんだ。
バレるっ!
そういって、トイレに駆け込み、矢本くんたちが行ったら、公衆電話でヒマに報告した。
たまたま見かけてしまったことも。
11.わたしが作家に!
ん〜、まぶしいよぉ。
はっ!
あわてて起き上がる。
時計を見ると、まだ4時だった。
カーテン開けっぱなしで寝ちゃった。
ベッドに潜り込み、目を閉じる。
うーん、眠れなさそう。
仕方なく、パジャマを脱いで、体操服に着替えた。
体操服の上から、制服を着るんだけどね、シワが出来たらいやでしょ?
だから体操服だけ着るの。
やることがなくて、読書をした。
学校の図書室で借りた本を。
だけど、もう何度も読み直した本だったから、つまらなくなって。
この本が面白かったものだから、わたしも同じように書いてみようと思ったから、小説を書いてみた。
題名は後からでもいいでしょ。
だから、とりあえず…。
主人公は…佐藤ななみにしよっと。
わたし、佐藤ななみ。
そこまで書いて、手を止める。
はた。
いきなり名前出していいかな?
情景を先に書かなくてもいい?
…初めてだし、いっか。
11歳で、小学6年生の子っと。
わたしと同じ設定にして。
って考えていると、案外スラスラ書けてきた。
ななみちゃんは、ナナって呼ばれて、人見知りでっ!
クラブに入ったら楽しくて、本当のわたしが見えた気がした。
すごく楽しく過ごしてて…。
いや、待てよ。
こんなに楽しいことの連続なわけあるわけないから、ななみちゃんに悪いけど、ちょっと不幸なことを!
親友とケンカして、親友という大きな存在に気付いたりして…。
はぁ〜、早起きって楽しいかも!
12.わたしの気持ち
「ハル、ファッション誌見たぁ?」
ヒマが、ファッションの雑誌?の話を始めてしまった。
ユリはオシャレが苦手で、ヒマのこの話題が苦手なのだ。
わたしも、ちょっと苦手。
分からないから。
ヒマが、スマホをハルだけに見せて笑っている。
わたしたちには見せてくれない。
「カワイイよね〜」
ハル、ヒマ、わたしたちの気持ち、気付いて!
…ななみちゃん…!
こういう感じなのかな。
わたしたち4人の関係は、ずっと続くものだと思ってたけど。
たまにはこういう不幸が訪れちゃうんだよね。
「ハル、話が分からないから、話変えよう」
わたしが笑いながら言うと、目すら上げずに断られた。
絶望的。
わたしでいる力なんて入らない。
ヘナッっと崩れ落ちると、ハルが初めて顔を上げる。
「マミ、だいじょーぶー?でさでさ!ここのアクセかわいくない?」
えええええ!
もう無理だよお。
「わたしの気持ち分かってよ。どうして気付いてくれないの!ふたりだけの世界で、楽しいことなんて何もない。ユリもそう思ってるはずだよ」
そう言って、教室を出る。
わたし、何てこと言ってしまったの。
バカ、バカ、バカ、バカ!
わたしのバカーーー!
13.新学期にゆううつ
後になって後悔すること。
ハルとヒマに言わなければよかった。
恋バナなんてしなくちゃよかった。
グループだけじゃなくて、いろいろな子たちと仲良くしとけばよかった。
もっと…、はっきり言えばよかった。
言って後悔してるのに、言わなくても後悔すること。
こんなに辛いことはないよ。
「真美ちゃん。プライベートだろうが何だろうが、名前で呼んでいいでしょ?あら、緑川さんたちは?」
あ、ここに、仲良くしてた友達、ちゃんといた。
ふ、ふみちゃ〜ん。
なぜか、涙が溢れてくる。
いろんな意味の涙。
「真美ちゃん?どうしたの、大丈夫?しっかり。話聞くから落ち着いて」
ふみちゃんが背中をさすってくれて、ちょっと落ち着いた?
でも、完全に落ち着いたわけではないけどね。
「わたし、もしかしたら、ハルたちとケンカしちゃったかもしれない」
「どうして?」
だって…。
わたしはふみちゃんに、ファッション誌の話が分からなかったこと。
わたしがはっきり言ったような言えなかったようなこと。
飛び出してきたことなど。
「そっか、辛かったんだね。真美ちゃんの分からない話されて、相手にもされなくなって」
ふみちゃんの温かい言葉で、また涙を流した。
今は、嬉し涙かもしれないけど。
「わたしってひとりでしょ。緑川さんたちといるなら、そうしてくれて構わないけど、わたしと一緒にいる?」
ふみちゃんとっ?
一緒にいてもいいの?
こんなわたしと!?
「ありがとう、ありがとう。でも、ごめんなさい。わたしなんかが」
「カフェで話してたときのこと考えたら楽しかったし」
ふみちゃん…。
こうして、これから距離を置きつつ、ふみちゃんと遊ぶことにした。
ほら、前田先生って新しいから分からないだろう。
でも、作文に書いちゃった…。
キーンコーンカーンコーン
うっ!
「真美ちゃん行こ!」
うん…。
次は作文の提出だあ。
ゆ、ゆううつ。
14.悪化する気持ち
「多田本さん、ちょっと」
ハルたちとのことがあってから一週間が経った。
ついにバレたか。
そういう意味でため息をつき、先生のところへ行く。
「多田本さん、作文には、緑川さん、矢本さん、利等万さんと仲良しって書いてありましたよね。今は杉田さんといますけど、何かトラブルでもありましたか?先生で良ければ聞きますよ」
やっぱり気付かれたか。
先生、するどいですねっ!
ふみちゃんに視線を流すと、強い視線でうなずいてくれた。
嬉しいまなざしだった。
ハルたちは、わたしのことは気にしていないように話している。
はぁ〜。
学校、来たくないな〜。
前田先生にも、ふみちゃんに話したことをそのまま伝えた。
「先生も、早く気付いておくべきでしたね。ごめんなさい。緑川さんや矢本さんや利等万さんには言っておきますから、解決するといいですね。ありがとうございました。戻っていいです」
はぁ。
ますます来たくないな。
おばあちゃんに迷惑かけたくないし、仮病…使って休んで、い、いか、な?
「真美ちゃん、大丈夫だった?」
「うん。大丈夫」
ふみちゃん心配してくれてるのにごめんね。
わたしのためにしてくれてるのに。
ハル…。
なんて馴れ馴れしくも呼びたくなくなってきた。
親友であり幼なじみを。
晴奈ちゃん。
陽茉理ちゃん。
由里歌ちゃんかぁ。
「真美ちゃん、本当に大丈夫なの?わたし、児童会行きますよー」
「行ってらっしゃい。頑張って」
力なく言い、ヘナヘナ崩れ落ちた。
またか。
「真美ちゃん、大丈夫!?七井さん保健委員会でしょ?真美ちゃん連れてってあげて!涼太、前田先生に、真美ちゃんは保健室って伝えておいて」
ああ…。
意識がもうろうとしている気がして、何となく地面に肩が触った気がした。
15.異常はあるか
何となく、視界が白っぽい。
まぶしいんだ。
すっごく。
何か、太陽の光を、直線で目を閉じたまま受けたイメージ。
これが、結構辛いんだ。
ハッっとして目を覚ます。
カチカチカチカチ
時計の秒針の音が聞こえる。
教室では、秒針の音は聞こえないから、ここは教室じゃないでしょ。
辺りを見回すと、保健室の先生が机と向かい合っている。
ということは、保健室か。
保健室は、なぜかお人形がたくさんある。
かわいいミッキーのお人形を見つけ、手に取ってみた。
柔らかい。
感触があるってことは、生きてるんだね、わたし!
「ああ、真美さん。体調はどうなの?痛いところ、ある?」
保健室の先生は、顔を覗き込んで聞いてきた。
うーん特に痛いところはないし。
「大丈夫です。えっと…わたしって、どうなったんですか?」
「ええ?七井さんがおんぶして連れてきて、教室で倒れましたって」
七井さんが!?
こ、心音ちゃんの妹だ…。
わたしが重たいの、バレたんじゃないの!?
あーヤダヤダ。
七井さんにバレたらーっ!
「意識が回復したので、病院へ行きましょう」
病院へ行くの!?
原因聞かれたら、晴奈ちゃんたちのこと言わなくちゃいけないの?
そんなのイヤだなぁ。
「さあ、行きましょう」
保健室の先生は、わたしの手を引いて保健室を出る。
鍵もカッチリ閉めて。
「特に異常はありません。では、またこのようなことがあれば。ありがとうございました。さようなら」
ふーっ!
保健室の先生が、ママって感じてきて、心細くなかった。
ママと、どうせ年齢近いと思うし。
「真美さん、帰りましょう。部活は、運動部?文化部?」
「文化部です」
「そう。なら部活行けるなら行ってもいいと思いますよ。行きますか?」
はい、行きます…。
保健室の先生に返事して、先生の車に乗り込んだ。
16.HAPPYの連続
「すみません。多田本さんいますか?隅木田ですが」
「いやーっ!隅木田くんじゃなーい」
うわーっ。
華道部の、優先輩、希羅先輩、隅木田くんファンですか!?
文化部は、初等部、中等部、高等部と一緒に行う。
それぞれの階級によって、部長はいるんだけどね。
我らが初等部の部長は、藤城さん。
話したこともなかったけど、華道部で話せたんだよねぇ。
「はい。わたしですか」
「真美ちゃん、隅木田くんの心を仕留めるなんて、案外やるじゃない」
優先輩、勘違いですよ!
確かに好きではありますけど、仕留めたわけではありませんから!
「ちょっと」
隅木田くんに、おいでおいでっていう仕草をされて、胸がキュンッ!
キャー、ヤバイーッ!
「明スイのことだけど。矢本が、戻ることになったんだ。付き合ってたらしいんだけど、別れたって。それで、俺たちが、俺たちに、活動しようと思ってるんだ。題して、矢本復帰パーティーみたいな」
おおお!
いいですねえ!
矢本くん、戻ってきてくれるんだ!
心から、感謝です。
「矢本も謝ってるし、許してやってくれ。で、矢本復帰パーティーは賛成?反対?」
「もちろん賛成です!やりましょう」
やっぱり、隅木田くんって、すごい。
隅木田くんと別れて、華道部の教室に戻ったときも、胸の高鳴りは収まらなかった。
17.新しい友達
今日は、塾に車で送ってもらった。
いろいろと、体調がなってないかもしれないしさ。
玄関には、多くの人だかりがっ!
ど、どうして?
「あ、真美先輩」
あ、河合さんだ。
華道部の後輩で、一番初めに先輩って呼んでくれた子。
「河合さん。どうして、こんなに騒がしいの?」
「6年生、中学3年生、高校3年生の順位が出ています。真美先輩の名前を探してたら、国語が一位で驚きました。さすが真美先輩。満点で一位なんて」
満点で明確ゼミ内で一位か。
嬉しいっ!
それよりも、河合さん。
わたしの名前を探してくれて、どうもありがとう。
初等部って、先輩後輩の関係って浅いけど、河合さんは、そんなの関係なしに接してくれる。
うわさでは、秀才だとか。
キーンコーンカーンコーン
「引き留めてごめんなさい。失礼しました」
河合さんに頭を下げられて、わたしもあわてて頭を下げる。
って!
もうこんな時間。
急いで行かなくちゃ!
順位表は、後から先生が紙にしてくれるだろうしねっ!
「あの、多田本さんですよね?」
え、この子誰なの?
明スイメンバーの、ファンとか?
わたし、この子知らないけどなぁ。
「わたしの名前は、美先綾南。あやなって読むから、綾って呼んでくれればいいんですけど」
はぁ。
綾さんは、明確ゼミに新しく入ってきた子らしく、わたしと同じクラスのレベルだそうだ。
一応、わたしのクラス、上から3つ目なんですよっ!
「あなたは?」
「はい。ええっと、わたしは、綾さんからも言われました通り、多田本真美です。よろしく」
会釈すると、会釈し返してくる。
うーん、微妙な子だ。
どうしたらいいんだろう。
「さっき、矢本って男の子が、多田本さんに用事で来て、放課後談話室って言ってました」
ふーん。
って、そうなの!?
談話室に、矢本くんが報告に来たってことはっ!
「綾さん、ありがとうございました。わたしのことは、真美って呼んでください」
「いえ。あの、綾でいいですよ。綾さんだなんて、言われたことないですから」
そうだったの。
わたし、綾さんってずっと呼んでたし。何かごめんなさい。
「いいですかー?多田本さん、美先さん、着席ーっ」
先生が言い、綾…もわたしも席についた。
18.乙女の時間
「綾って感じでいい?」
「真美ちゃんでいいですか?」
わたしと綾の声が重なる。
今は、一時間目、地理が終わったところ。
二時間目の理科では、わたしの大好きなカッコいい上野先生っ!
実は、綾も一目惚れしたと言う。
「いいですよ」
「いいよ!あと、敬語も、やめてよ。タメ口で、ね?」
綾は、にっこり笑ってうなずいた。
それと同時に、上野先生が入ってきたの!
「上野先生〜!」
わたしと綾、声ピッタリだなあ。
元はね、理科嫌いではなかったの。
好きの方が大きかったのよ。
でも、苦手だし、苦手意識があって、成績は落ちるばかり。
だけど、理科が上野先生になってからは、学校の理科順位は35位以内っ!
すごいでしょ、すごいでしょ!
前は、82位だったのにさっ!
「真美ちゃんと、誰ちゃん?」
「わたしは、今日入った美先綾南って言います。よろしくお願いします」
綾の目には、ハートがいっぱい!
多分、わたしの目にもっ!
わたし、二股かけていいのかな?
うん、いいんだ。
こっちは大人の恋。
隅木田くんは、子供の恋っ!
「さあ、そろそろ着席するぞー!」
「はぁ〜い!」
わたしと綾、乙女だ…。
上野先生の声カッコいい〜。
キーンコーンカーンコーン
ああ、幸せな時間スタートだ!
「きりーつ!」
ああ、うっとり。
「お願いしまーす!」
キャーーァン!
19.嬉しい時間
談話室のドアをノックする。
中には、大勢の明確ゼミ生がいる。
真ん中の椅子に、明スイメンバー3人は座っていた。
矢本くんもいるっ!
「みんな、遅れてごめんなさい」
言いながら、空いている椅子に腰をかけた。
明確ゼミのスクールバッグは、膝の上に置いておくことにした。
「明スイメンバーみんなが揃うのは久しぶりだな」
坂宮がつぶやき、わたしたちは、何度も何度もうなずいた。
心から嬉しい!
「ごめんなさい。俺の都合で」
矢本くんが頭を下げて謝る。
いえいえ、そんなことないのに〜。
いろいろ都合ってあるんだから、そこまで気にしなくてもいいのに〜。
「早速始めるぞ。今回の活動は、矢本復帰パーティーだ」
おおお〜!
何度このタイトルを聞いて思ったことだろう。
ついつい感動するんだよね。
わたしたちの絆が見られるから。
明スイだけの絆だけじゃなくて、失った絆も見られるけど。
「会場は、明確ゼミの5階、パーティー会場を借りる予定」
4人のために、あんなに広いところを使うのねっ!
楽しみ!
「だけど、やる時間がない。部活、体育祭と、イベントがある。だから、体育祭の終了後行うことにしようと思っている。賛成者は挙手」
隅木田くんが簡潔に言って、みんなが挙手する。
オーケー決まり。
日付は9月30日。
体育祭終了後ねっ!
「それより後は、会場の予約が出来、完全に使えるようになったら、だ」
うん。
そうだね。
パーティー会場によって変わること、あるもんね。
こうして、わたしたちは解散した。
公衆電話で、おばあちゃんに電話をかける。
初めてテレフォンカード使ったな〜。
楽しかったっ!
20.緯度、経度?
「隣がいない人は挙手お願いします」
今は、七井さんによる健康チェックの時間。
今日は、ふみちゃんが熱でお休み…ということは、ひとりぼっち。
クラスの大勢の子のところ、入ってもいいんだけどねぇ。
ふいに、あこちゃんたちとのことが頭をよぎる。
ダメダメ。
大勢は、新しい中学校に入ってから!
一時間目から、移動教室で社会だった。
社会は、最近地理を習っているので、地理室という、地球儀や資料がたくさんある部屋に行くのだ。
社会の担当は、学年主任の小林先生。
「小林先生、おはようございます」
七井さんが元気よく言い、みんなも後に続く。
七井さん偉いなあ。
あいさつがしっかり出来て。
体育祭後、学級委員長、学級委員を決めるから、立候補しなかったら推薦しようかな。
「はい、始めます」
学級委員長のふみちゃんがいないので、学級委員の柴田くんが号令をかけた。
「今から地理を始めます。お願いします。着席ーっ!」
みんなが着席したところで、小林先生はにっこり笑った。
かわいい〜。
小林先生は、男の先生なのに、すごくかわいいって有名。
わたしも、ついつい思うんだ。
カッコいいとも、たまぁに思うんだけどね。
「いいですか?地理の教科書、77ページを開いてください」
わたしたちが今習っているのは、世界地図とか、緯度、経度、赤道、本初子午線。
分かるような分からないような…あいまいではあるんだけど。
「緯度、経度を使って説明してください。いいですか?緯度、経度を使って、日本の位置を説明してください」
緯度は、えっと、緯度38度。
経度はぁ…経度135度。
「もう良さそうですか?では、隣の席の人と交換してみてください」
学級委員の柴田くんと交換する。
うちのクラスには、柴田くんがふたりいるんだ。
呼ぶのがめんどくさいったら。
「真美と違ーう」
ええええ!
絶対わたしが違うじゃん!
急いで消して、解き直す。
うーん、分からんっ!
「はい。では、言ってくれる人」
シーン。
あ、いつもふみちゃんが言ってくれてるんだ。
本当に、ふみちゃんに感謝!
「はい!わたしが言いますっ!」
七井さん!
本当に七井さん偉い。
学級委員長に、推薦しよっ!
21.日本の位置の謎
「えっとぉ、緯度が38度で、経度が135度です」
あ、一緒じゃん。
柴田くんが間違えたんじゃないの。
すると小林先生は、「残念」って言ったんだ。
何で、どうして、何でっ?
柴田くんがニヤニヤしている。
もう!
なら、柴田くんが言えばいいのに。
「俺言います」
うんうん。
とっとと正解言ったらどうなの。
「緯度が135度、経度が38度です」
え…?
それ、絶対違うと思うけど。
小林先生は、またも「残念」とつぶやいた。
まずさぁ、緯度って、縦線じゃなくて横線でしょ?
そこから間違ってない?
「杉田さん分かりますか?」
「先生、今日は杉田さん休みです」
あああ〜。
答えが分からないという空間、わたし苦手〜。
うーん…。
「はいはい!わたし分かりました!」
晴奈ちゃんが手を挙げて言う。
小林先生は晴奈ちゃんを指すと、かっこよく、「北緯38度!東経135度!です」と言い切る。
すると、小林先生は「はなまる」と言って晴奈ちゃんのプリントに丸を描いた。
そう言えば晴奈ちゃん、社会得意だったなー。
もう考えるの、やめよっ!
22.前の絆
ふみちゃんと遊ぶようになってから、家から弁当を持ってくるようになったんだ。
ひとりで、屋上のパラソル付きテーブルで弁当を食べる。
中等部の人たちに、学食取られたんだよね。
学食は、学習、おしゃべり、ご飯を済ませることが出来る。
中等部って、おしゃべりが好きらしいからなーっ。
「あ、真美。どうしてひとりなの?緑川さんたちは?」
「…」
わたしは、坂宮に聞かれたけど、答えられなかった。
聞かれたくないし、坂宮は関係ないことだもの。
「真美、何で黙ってんだよ。教えろ。どうしてひとりなんだっ!?」
「別にいいじゃん。坂宮に言っても変わらないし。ふみちゃんが今日休みだから、ひとりなだけだし」
ちょっと語尾を強めて言った。
坂宮の手には、サッカーボールが握られている。
サッカー少年だもんねぇ。
「俺は、緑川さんたちのこと聞いてんの。杉田会長は、いい」
チッ!
晴奈ちゃんのことなんか言いたくないし。
もう、場所変えよっと。
「真美、どこ行くんだよ」
「教室で食べるから。邪魔しないで」
坂宮も、ちょっと反省したのか、うつむいて校庭かな?に走っていった。
ああ、そういうつもりじゃなかったんだけど…。
坂宮、ごめんなさい。
教室で弁当の包みを開けて、弁当の続きをひとりで食べる。
わたし、こんなだからいけないのかもしれない。
「ねえ、多田本さん。ちょっと」
陽茉理ちゃんに呼ばれる。
もう、真美ちゃんって呼ぶのもイヤになって、多田本さんって呼び方にっ!
それがイヤになったら、何て呼ばれるんだろう。
ゾクゾクゾクッ!
「わたしとハル、ファッション誌の話してたじゃん。ユリもイヤって聞いたから、驚いたよ。でも、この前の、あの言い方はないんじゃない?わたしとハル、傷ついたんだから」
「ごめんなさい。でも、わたしも傷ついたんだから。謝られてないから、納得はいってないよ」
わたしもはっきり言うと、教室のざわめきは消え、注目される。
でも、気にしない。
陽茉理ちゃんたち、どう出てくるのっ?
23.ハッピーなこと
「ごめんなさい」
晴奈ちゃんと陽茉理ちゃんは、声をそろえて謝った。
わたしからも、反省、言った方がいいのかな。
すると、晴奈ちゃんが言った。
「わたし、多田本さんといて、すごく楽しかったんだけど、こんなに話さない日が続くって、多田本さん、わたしのこと嫌いなのかなって思った」
えっ。
嫌いじゃない。
陽茉理ちゃんたちと話してるから、話しかけられなかっただけでっ!
「多田本さんは、どうするの?わたしたちと、いるの?ふみ会長といるの?今決めて」
いまぁ!?
でも、ここで反論したら、は?って思われちゃう。
がまんがまん。
「わたしたちといるなら、わたしも気を付けるけど、多田本さんも気を付けてね」
陽茉理ちゃんに言われて、改めて考えてみる。
そんなに限られた条件で遊んで、楽しいわけがない?
それとも、それが絆の必須方法?
「わたし、多田本さんといたいし、もっと恋バナしたいなぁ」
由里歌ちゃんが言ってくれる。
わたし、決めた。
ごめんなさい、由里歌ちゃん。
恋バナはするけど、基本はっ。
「わたし、ふみちゃんといるかな。その他もあるかもだけど」
わたしの頬に、涙が伝う。
泣いているんだ、わたし。
今まで辛かったけど、そこから解放されたみたいな。
「そう。じゃあ、幼なじみであり、友達になろうね」
晴奈ちゃんに言われて、何度も何度もうなずいた。
陽茉理ちゃんと由里歌ちゃんも、「ごめんね、ごめんね」と言いながら背中をさすってくれていた。
わたし、これで良かったんだ。
いろんな意味の涙が、ずっと出て、わたしは最後ににっこり笑った。
24.結果は?
パンッ!
みんなの応援、音楽が同時に聞こえてきた。
あと、ピストルの音も。
応援、ピストルの言えば、体育祭。
多分だけど、彦宮学園最高の体育祭になりそう。
って、こんなこと考えてないで走らなきゃいけないね!
わたしの種目、1000mを、頭を真っ白にして走る。
「真美ちゃーん!頑張ってー!」
「多田本さん、ファイトーっ!」
「真美先輩頑張ってくださーい!」
ふみちゃん、晴奈ちゃん、河合さんが応援してくれる。
よーし!
行くぞーっ!
「真美先輩、抜かしてくださーい」
河合さんの声が聞こえて、前の人をふたり抜かす!
すると前はひとりだけっ!
よし、ラストスパート、抜かすぞ!
おばあちゃん、パパ、ママもね!
ばあば、じいじが応援してくれて…。
「い組が一着、ゴール!」
実況の仕事の陽茉理ちゃん、うまい!
さすがアナウンサー目指してるっ!
我らが、い組の女の子1000m優勝!
「真美ちゃん、ナイス!」
「多田本が優勝だーっ!」
クラスの男の子も喜んでくれた。
いつもなら、男の子は苦手なのに。
は組の坂宮は、は組代表の子ーーー2位にナイス!など、声をかけていた。
1位〜3位は、今から表彰だ。
「表彰状。6年い組1000m代表、多田本真美。記録、優勝。あなたは、私立彦宮学園体育祭1000m走において、優秀な成績を修めましたので、ここに賞する。おめでとう」
パチパチパチパチ
彦宮先生に賞状を受けとるけど、恐くもない、おののかない。
嬉しい気持ちで、いっぱい。
い組に戻ると、みんなが「おめでとう」と言ってくれる。
ありがとう、ありがとう!
賞状を高らかに持ち上げて、「やったね!」と叫んだ。
25.優勝、明スイ笑顔のメモリー
結果発表。
い、ろ、は、に、ほ、へ組。
体育祭だけは、いろは順で、1組からい組になっていく。
「最終結果を発表します。初等部。優勝、い組!準優勝、に組!努力賞、は組!代表者は、前に出てきてください」
やった、優勝だっ!
ふみちゃんが前に出て、優勝旗、優勝トロフィー、賞状をもらった。
賞状は、教室に飾り、優勝旗、優勝トロフィーは、6年1組室に飾る。
ああ〜、いい体育祭になった!
「みんな、写真撮ろうぜ!」
前田先生が構えて、わたしは1000m走の賞状、ふみちゃんは優勝旗、柴田くんは優勝トロフィー。
七井さんが優勝の賞状、後の子は、個々の賞状を持ったり、ピースしたりしている。
「いいですかー?はい、カシャ!」
前田先生が撮った写真には、いろいろな気持ちが詰まっている。
彦宮学園6年い組で、良かった!
「よし!スイーツは全部そろったね!じゃあ、パーティー会場に運ぼ」
隅木田くんが言い、みんなでパーティー会場に運ぶ。
矢本くんも、もちろん。
パーティー会場は、わたしと矢本くんで飾り付けた飾りがたくさん!
「真美ちゃんと矢本、センスあるね。すごく楽しめそう」
隅木田くんが褒めてくれて、ニヤニヤする。
…よーし!
スイーツは全部そろったし、明スイメンバーもみんなそろったしっ!
「矢本/矢本くん復帰、おめでと!」
みんなで明スイケーキという大きなケーキに包丁を入れて、4人で同時に食べた。
ん〜、美味しい。
やっぱり明スイって最高!
(つづく)
あとがき
まい
こんにちは。
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイ作者のまいです。
今回の7巻、いかがでしたか?
ざっくり内容を言えば、矢本くんが戻ってくるけど、喧嘩しちゃって、体育祭で…でしたね。
(ざっくりすぎるでしょ!by真美)
わーん、ごめんなさい。
皆さんは、体育祭、ありますか?
小学校では運動会、中学校では体育祭または体育大会。
わたしは、運動会の短距離走で1位をとったのが保育園から一度もない!
恥ずかしいったら!
でも、頑張って速くなるもんねっ!
皆さんも、体育祭あったら頑張ってください!
コメントをくださった方、ありがとうございました!
わたしの自信、力に繋がります。
本当にありがとう!
質問、感想待ってますね!
最後に、次回の予告!
何事も一見落着。
と思いきや、中間テスト!
こんな中で、明スイ活動出来るの!?
次回もお楽しみに!
宣伝
『*レインボーハッピー*』というスレは、わたしの小説を載せています。
ぜひ読んでみてください。
『ここは明確スイーツ研究部!8』
人物紹介
多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。明確ゼミナールに通う。
坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。
矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。
隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。
1.テストの結果
うーん。
総合、46位かぁ。
165人中。
「真美ちゃん、国語何位?」
「ん?えっと、2位。惜しかった〜」
わたし、多田本真美は、私立彦宮学園という学校に通っている。
そこの、夏休み明けテストーーー彦宮テストの順位表を見てビックリ!
国語2位ってのはいいとして。
総合!
もっと下かと思ってたから、嬉しい!
「ふ、ふみちゃん、総合、何位?」
ふみちゃんこと杉田ふみは、彦宮学園初等部の児童会長。
秀才で、最近いつも一緒にいるんだ。
「1位だった。良かった〜。夏休み、ずっと勉強したもの」
ヒエーッ!
何で休まなかったのーっ?
わたし、明スイ活動であわただしくしていたのに。
「クラブの美術は、1度出席したけどね。でも、真美ちゃん、すごく忙しかっただろうに、46位って素晴らしいと思うけど」
「ありがとう」
すると、幼なじみで、元親友、緑川晴奈と目が合う。
晴奈ちゃんが歩み寄ってきて、後ろには、矢本陽茉理ちゃん、利等万由里歌ちゃんもいる。
「多田本さん、総合何位だった?」
「低かったよ〜、46」
わたしが笑いながら言うと、晴奈ちゃんたちは、「高いよ〜」、「低くないじゃ〜ん」、「何それ嫌味〜?」って言ってきた。
「そ、そう?ありがとう」
ちょっと一緒にいられなくなって、ふみちゃんのところに戻った。
すると、涼太くんが来た。
「ふみちゃん、総合1位?」
「ああ、涼太。うん。1位」
涼太くんって、ふみちゃんの幼なじみなんだって。
知らなかったけど、坂宮と同じサッカー少年なんだってね。
「涼太は?」
「俺?ふみちゃんにしては低いと思うけど、11位」
高っ!
わたし、格が違うかもっ!
2.キャラ弁
「はい、では終わりまーすっ」
前田先生が言い、学級委員長でもあるふみちゃんが号令をかける。
そして、みんなで「ありがとうございましたー!」と言う。
よし、午前終了。
お昼ご飯だ、お昼ご飯だーっ!
「真美ちゃん、明日から、学食で頼むことにしない?大変でしょ、いろいろと」
確かに、一理ある。
おばあちゃんに言ってからというものの、わたしはいつも通り。
おばあちゃんは4時に起きてくれている。
「今日は、学食で食べましょ。外だとちょっとむしむしするし」
うん。
昨日が雨だったからか、むしむししている。
暑くはないけど、暑いみたいな。
微妙な気温。
「あ、真美先輩。こんにちは。学食でお昼ご飯ですか?」
あ、河合さんだ。
河合さんとは、同じ華道部部員。
わたしのことを、先輩と慕ってくれる子だ。
「そうだよ。河合さんは?」
「わたしも学食でお昼ご飯です。ひとりなので、入れてくれませんか?」
「いいよ。ね、ふみちゃん」
ふみちゃんも大きくうなずいてくれて、久しぶりに4人用テーブルに座る。
いつもは、2人用か3人用だから。
一番人気の3人用席、空いてない。
座りたかったのになー。
「初めまして。河合です。杉田会長のおかげで、素晴らしい小学生ライフが送れております」
河合さん、礼儀正しくてすごい。
「初めまして。河合です」だなんて。
そう言えば、河合さんの名前何だったっけ?
「初めまして。杉田ふみです。河合、何さん?」
「河合莉保子です」
莉保子(リホコ)っていうんだ。
河合莉保子ちゃん。
それで、ふみちゃんは河合さんがふたりいるので、「かわりほ」と呼ぶことにしたらしい。
ネーミングセンス、あるよね。
わたしは、莉保子ちゃんにした。
「かわりほの弁当かわいい。わたし、普通におかず詰めただけだから。かわりほみたいにかわいい弁当にしようかしら」
莉保子ちゃんの弁当はキャラ弁。
ミッキーがにこやかに笑っている。
「真美先輩の弁当見せてください」
パカッっと弁当を開くと、おばあちゃんが作ったのかと驚いた。
だって、わたしが好きなキャラクター、ダッフィーのキャラ弁だったんだ。
3.まーちゃんとふーちゃん
「真美先輩かわいいですね〜。わたしも、明日はシェリーメイちゃんにしようかな〜」
シェリーメイもかわいいよね!
わたしの部屋に、ダッフィーのとなりで座ってるよ〜!
「真美先輩は、明日の弁当どんなのにするんですか?」
「あ、明日からは、学食のにするの。いつもおばあちゃんが大変だから」
莉保子ちゃんは、ふーんというように鼻を鳴らす。
そいえば、さっきからふみちゃんが話してないや。
「ふみちゃん、五時間目なんだっけ?わたし、忘れちゃった〜」
「五時間目は、話書か小書よ。真美ちゃんは、小書でしょ?」
うん、そうだった。
さっきから、話書、小書、でしょって、しょが多いっ!
あ、小書って、小説を書くこと。
話書は、絵本を描くこと。
この前の、佐藤ななみちゃんの続きを書くつもりなんだっ!
「あ、ごめんなさい。そろそろ行かなくちゃ。五時間目、校外学習なんですよね。失礼しました」
莉保子ちゃんが行ってちょっとすると、ふみちゃんが特大のため息をついた。
ど、どうしたの!?
「わたし、河合さん苦手かも。かわりほって呼ぶので精一杯。河合さんの前以外は、かわりほって呼ばないよ」
莉保子ちゃんのこと、苦手かあ。
いい子だとは思うんだけどね。
嬉しくなると、テンションマックスになっちゃうんだものね。
まあ、仕方ないとするか。
「ねえ。わたしたち、呼び方変えない?真美ちゃんのこと、まーちゃんって呼んでいい?」
「いいよ!」
まーちゃん。
やっぱりネーミングセンスあるなぁ。
えっと、ふみちゃんのことは…。
「わたし、小さい頃からふーちゃんって呼ばれてるの。ふーちゃんでいいから」
ふーちゃん。
かわいいニックネーム。
まーちゃんとふーちゃん。
ずっとマミだったけど、何となくイメチェンしたみたいだ。
「ねえ、まーちゃん。わたしも小書にするから、一緒にやらない?」
「いいよ、ふーちゃん!」
ふーちゃんと顔を見合わせて笑い、弁当の巾着袋を握りしめた。
4.小書
前に立っているのは、晴奈ちゃんがラブな藤本先生。
今は、五時間目、小書、話書の、書練の先生だ。
書練とは、物語を書く練習。
彦宮学園で作った国語の勉強法。
「話書こっち。小書こっちに集まってもらいます。一番良かった作品は、市の私立物語コンクールに出します。藤本先生が決めますからね。ファンタジーでも、恋愛でも、何でもいいです。さあ、書いてください」
藤本先生が言って、わたしたちは小説か絵本を書き始めた。
わたしは、佐藤ななみちゃんのを書いたノートに続きを書いた。
「まーちゃん、主人公とか決まっているの?」
「うん。ちょっと前に書いた続きから書くから」
ふーちゃんは、へ〜と言って、紙と1対1で見つめあっている。
藤本先生が来て、「多田本さんたくさん書いてありますね。佐藤さんって子が主人公なんですね。ふーん」
ちょっと、藤本先生声大きい!
バレちゃうでしょ!
「多田本さん、佐藤って名字の子が主人公なの?わたしは、鐘餅望(カネモチ ノゾミ)が主人公よ」
美華ちゃんが大きい態度で言った。
鐘餅望って。
どれだけお金持ちを望んでるの。
「まーちゃん、わたし、戸部田優っていう男の子の物語にする。男の子の気持ちを考えて、児童会長と学級委員長をやることにするの」
ふーちゃん偉いな。
男の子の気持ちを考えるなんて。
ななみちゃんの気持ち、かあ。
考えて書かないと入賞できないよねっ!
5.毎日コース
「ただいまー」
制服のスカートを押さえながら、家に入る。
10月という季節なのに、まだまだ暑い日が続いてっ!
「真美ちゃん、彦宮テスト、あんまりいい結果じゃなかったって言ってたでしょ?中間テストは、気合いを入れていきなさいね。だから、中間テストが終わるまで、明スイ活動禁止ね」
ええええ〜!
明スイ禁止〜?
そんな〜!
「だって真美ちゃん、いいの?勉強に専念するなら、明確ゼミの日付を毎日コースにして、家でも勉強を続けてほしいものよ」
はーい。
わたしより、おばあちゃんの方がやる気に満ち溢れているかも。
いやいや、わたしがやる気がなくてどうするのっ!
頑張って勉強を続けるんだ。
「真美ちゃん、毎日コースにする?」
「します」
おばあちゃんはにっこり笑って、明確ゼミに電話していた。
毎日コースってことは、日付問わず、毎日あるんだ。
宿題も、1日の時間も一時間増える。
「さあ。おばあちゃんが送ってあげるから、行きましょう。今日から毎日だからね。毎日コースは、教室が4階だから、間違えて行かないようにね。公衆電話で電話してくれたら、おばあちゃん行くから」
手短に説明されて、わたしはあたふたした。
だって、多すぎ。
難しすぎ。
どうしてこんなに変わるのっ?
教室が変わるって、綾と離れるんだ。
残念。
明確ゼミの玄関に着くと、新しい見習い先生、尾原先生がいた。
「多田本さん。こっちよ」
尾原先生に着いていくと、毎日室という看板の部屋に入った。
みんな静かな子ばかりで、ちょっとタイプの違う綾すぐ気付いた。
「あ、真美ちゃん。毎日コース?」
「うん。綾も?」
綾はうなずいて、となりの席に案内してくれた。
尾原先生はにっこり笑って、前の教卓に立った。
「毎日コースで先生になる、尾原先生です。見習いですが、よろしく。ここは、全て尾原先生がやりますので」
へ〜。
わたしが毎日コースじゃなかった時の担任が尾原先生で、綾とわたしが毎日コースに変わったから、尾原先生に変わったという。
「新しい子がふたり来たので紹介しますね。はい、ふたり、前」
わたしと綾は、ふたりで前に出た。
6.ファンたち
「わたし、美先綾南です。元気な時、静かな時って様々ですけど、分かってください。よろしく!」
6年生ばかりの受験する子、成績をアップすることに熱を入れている人たちは、綾を冷たい目で見る。
確かに、騒がしくされたらって思うのかな。
「わたし、多田本真美です。明確スイーツ研究部のメンバーです。よろしくお願いします」
みんなは、にっこり笑ってくれた。
優しい子たちばかりだなあ。
「多田本さんと、美先さんは、席に座ってください。今、6時30分ですが、9時45分まであるので、頑張っていきましょう」
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、あいさつをして、国語の準備をする。
教科書は変わらないから、ホッ。
すると、いろんな子たちがわたしの机に集まってきた。
「わたし、明スイファンなのー!」
「次の活動は?」
「僕、真美さんのファン。サイン」
ここにも、明スイのファンが!?
でも、明スイ活動禁止令出てるから。
わたしのところに寄ってくるのは、明スイメンバーであるだけで、普通の子だったら無視だろう。
「次の活動は、隅木田くんが検討中なので、ちょっと今は分かりません」
なーんて。
いつも検討してくれているから、隅木田くんに押し付けちゃった〜!
「真美ちゃんいる?」
隅木田くん!
救世主だ〜!
「はい!」
「今日、8時から談話室。いつもなら放課後だけど。真美ちゃん、毎日コースにしたの?何かあった?」
う、受験のこと言うのか。
後から言えば、いいよね。
みんなの前で言えば。
「後で言います。では」
そう言って戻ると、みんなニヤニヤしていた。
200おめでとうございます!元レミリです。いやー!凄いね!私のやつなんて、これっぽっち続いてない…でも、考えてる!…かな…?←レスが進むとネタ切れになる。100になったのが初めてだから。これからも、続けてね!
元レミリ レミリアより
レミリア、ありがとう!
本当に嬉しい気持ちでいっぱい。
コメントしてくれて、おめでたい言葉をいただいて、本当にありがとうございました。
共に頑張っていこうね!
まい様
私の小説にコメしてくださり、ありがとうございます!
明スイを読むと、ワクワクします!
これからも微力ながら、応援しております。
7.身近な教師
初めて会ったとき、矢本くんはルービックキューブをいじっていた。
今も、いろいろ回している。
隅木田くんは、問題集をひたすら解いてて。
坂宮は、サッカーがあとちょっとらしい。
「ただいま来ました、坂宮です!」
坂宮が談話室に、サッカーボールを片手に。
ユニフォームを汗でヒタヒタにして入ってきた。
「じゃ、始めようか。…まず、真美ちゃんが、塾を毎日コースにしたらしいんだ。何かあったのか聞こう」
隅木田くんが、わたしに視線を流しながら言うと、坂宮たちもこちらに視線を流す。
「えっと、わたし、中学校を受験することに決めたから、勉強をたくさんしようと思いまして」
改まった感じで言うと、矢本くん以外が唖然、呆然。
どうしてそんなにビックリするのかな。不思議。
ただ、受験するってだけなのに。
「明スイ活動は、受験するまでどうするの?そこの中学校に決まったら?」
続けて、坂宮も質問してくる。
「俺が真美のこと好きなの知ってるだろ。俺を捨てる気なのか!?」
うっ!
わたしが受験することって、多くの人に影響を与えるわけっ?
「明スイは、おばあちゃんには禁止って言われてます。ですが、時間を見付けてやっていくつもりです。あと、坂宮。わたしは、坂宮を捨てたわけではないよ。将来のことをいろいろ考えての上だから、理解してほしい」
隅木田くんは、「本当に大丈夫?」と言い、坂宮は、「良かった〜」とつぶやいた。
「真美ちゃん。僕、勉強教えてあげようか?受験、成功させたいでしょ?」
「い、いいんですか!?」
「うん。放課とか、いつでもどうぞ」
好きな人がわたしの教師っ!
嬉しい〜!
8.イベントに明スイ
「本題は、明スイの方針。今後は、学校のイベントにも出すことにしたんだよ。彦宮先生の許可も降りた」
へ〜、隅木田くん、行動が早いな。
わたしなら、みんなの確認をとってからなのに。
こういうと、説得力とかあるよね。
根拠とか、許可を得たら、理解できるけど。
知らないとか、忘れたって言われると、嘘に聞こえてしまうもの。
まあ、わたしの言ってることが嘘って思わないでね。
わたし、嘘はあんまり言わないから。
「最近は、中間テストを控えている。クラスごと、教室で泊まり、勉強をするというイベントをすることにしたらしい。だから、その合間に作り、合間に食べてもらうことにしたんだ」
中間テストでイベントかあ。
」勉強は、ひとりでするべし!』という合言葉を胸に、彦宮学園は勉強している。
なのに、果たしてそれで伸びるのか。
「朝食、昼食、夕食は、全て自分たちで作り、団結する心を強め、勉強をして、運動も休憩もするというシステムのイベントだ。企画は、彦宮先生と杉田さんだって。すごいね、杉田さん」
ふみちゃんが!?
さすが秀才。
考えることが違うね。
勉強しながらも、違うことも強くしていくなんて、素敵。
「この休憩で作ろうとしている。反対意見は?」
隅木田くんは、結末を言い、みんなが何も言わなかったため、先へ進める。
日付は、10月7日から10月9日の二泊三日。
これまでに、スイーツを決め、研究しなければならない。
今日は___3日だ!
あと4日しかない。
毎日ここに集まって会議だ!
よし、頑張ってやるぞ!
9.サイテイ
「時間はないから、僕から案を持ってきた。これだ」
紙を見ると、女の子、男の子と別れている。
女の子の方は、美・スイーツと書かれており、男の子の方は、運動後のさっぱりスイーツと書かれている。
美・スイーツ、いいなあ。
さっぱりスイーツも、新しい。
「僕、女の子の悩みが分からなくて。美・スイーツって、真美ちゃんどう?由里歌ちゃんは、賛成してるんだけど」
由里歌ちゃん…!
そう言えば、隅木田くんと由里歌ちゃんは付き合ってるんだ。
忘れてた、忘れてた。
でも、隅木田くんにも、ちゃんと頼れる女の子がいるのに。
「いいと思います。由里歌ちゃんが賛成するんですから、素晴らしいスイーツになりますよ」
ほぼボー読みで言い、うっすら笑って見せた。
でも、わたしの心は全然笑ってない。
いや、笑えない。
好きな人の口から、自分の彼女の名前が出るなんてね。
わたし、ちょっと辛かった、今。
「書記の真美ちゃん、これ、まとめてノートに書いておいてくれる?じゃあ、明日この時間」
隅木田くんが言い残して立ち去ると、わたしは矢本くんと坂宮に言う。
「隅木田くんって、彼女いると思う?わたしと遊んでた由里歌ちゃんが彼女なの」
と、真実を言ってしまった。
すると、ふたりは驚いた。
予想通りのリアクション。
「由里歌ちゃんって、利等万さん?」
「隅木田のやつ…バカ野郎」
ああ、言うんじゃなかった。
でもね、わたしの口は止まらなかったの。
「本当に。わたし、どうしてわたしたちに内緒にしてたのか許せない。隅木田くんって、メンバーの気持ち考えない人なの?」
何でこんなこと言ったのっ!
でも、もうダメだ。
「ごめんなさい、真美ちゃん。由里歌ちゃんが隠すって言ったものだから」
「わたしたちに内緒で付き合ってて、こっそり会うなんて。サイテイ」
いや、わたしがサイテイッ!
10.一粒の涙
「真美ッ!言いすぎだろ。でも、隅木田も言うべきだよな。どういう経路で付き合うことになったか、言ってもらおうか」
坂宮のバカッ!
言い過ぎなんかじゃないよ。
黙ってるのがいけないでしょ!?
「お前らには関係ない。由里歌ちゃんとは、恋人としか言えない」
「いいですよ、もう。隅木田くん、キツいこと言ってすみませんでした。わたし、授業の予習に戻ります」
ちょっとイライラしながら談話室を出て、瞬きする。
涙が頬を伝い、首筋に流れる。
ヒッ!
「まみちゃんさぁ、見てるとイライラするのよね。顔、声、体、全てが」
伝った涙。
今と似ている。
みゆさん、さとこさん、かんなさん、あこちゃんがクスクス笑っている。
辛く、苦しく…。
悲しい。
この時の涙と、今とは同じ。
わたし、もしかしたら友達を失ったのかもしれない。
すると、ちょうど梨歩佳さんが通り、泣いているところを見られた。
「真美ちゃんっ?大丈夫っ?」
梨歩佳さんが背中をさすってくれながら、わたしたちは毎日コースの教室に来た。
その間に、今あったことを話して。
梨歩佳さんは、ずっと聞いててくれたんだけど、わたしは、何とも変わりはなかった。
「真美ちゃんっ!あれ、どうしたの?大丈夫〜?」
綾〜。
大丈夫じゃないよ〜。
「真美ちゃん、とりあえず授業に集中すること。頑張って!」
梨歩佳さんは、わたしにエールを送ってくれて、自分たちの教室へ帰っていった。
11.好きです
授業には集中し、すぐに公衆電話で電話をかけた。
眠たいよ〜。
あくびすると、前を隅木田くんが通ったんだ。
わたしは、あわてて目をそらしたんだけど、隅木田くんはこっちに歩いてくるの!
来ないで、ちょっと!
とも言えず、公衆電話の近くで立っていると、やっぱり隅木田くんに呼び止められた。
「真美ちゃん、本当にごめんなさい。僕、由里歌ちゃんとは別れるよ」
ふーん。
先輩に対して、この言い方は悪いですけど。
勝手にしたらいいじゃないですか。
そういう視線を送る。
「僕からの告白だったんだ。すごくかわいい子だ。って、一目惚れで。僕の初恋が由里歌ちゃん」
あ、そうですか。
どうせわたしは平凡人だから。って言いたいんでしょ。
分かってますよ、それくらい。
「でも、由里歌ちゃん、キラキラしているから、僕みたいな人は合わないかもって思い始めて」
じゃあ、別れてください。
わたしは関係ないんだから、わたしに言わなければいいのに。
違いますか。
「僕がこんなに恋したのは初めてなんだけど。真美ちゃん。僕、真美ちゃんが好きです」
ハッ?
いきなりのことでビックリしながらも、隅木田くんの方を見つめた。
「返事、まだいいよ。僕の気持ち、伝わったかな?」
「は、い。どんな答えを考えたらいいんですか」
隅木田くんは、「付き合うか付き合わないか」と言って、その場を去った。
12.ダブルの好きです
「真美、大丈夫か。隅木田とのこと。…なんか、隅木田告白してたよな」
うっ。
坂宮に聞かれてたのか。
しかも、あれって、やっぱり告白だったのかあ。
初めての経験で、意味不でした。
坂宮から言われてるのは、本気だと思ってないし。
「真美」
「はいぃっ!」
何、この展開。
さっき、隅木田くんに告白されたときと流れが似てる…!
って、もしかしてっ!
「真美のことが好きです。付き合ってください!」
ふ、ふたりにーっ?
1日でふたりに告白された!?
ど、どうしたらいいのよ!
「返事、明日よろしく。学校で」
はあっ?
そして、坂宮はその場を後にした。
どうしてこうなっちゃうの!?
わたし、どうしたらいいのか分からないんだけど!
…そうだ。
京香ちゃんーーー夢花見さんの孫に電話してみよう。
京香ちゃんは、かわいくて、清楚で、運動も出来て秀才。
この子なら、一度は告白経験があるよねっ!
そうして、おばあちゃんが来るまで公衆電話で京香ちゃんに電話した。
「もしもし。夢花見です」
「もしもし。多田本真美です。京香さんに用事があって電話をかけました。京香さんいますか?」
お母さんだったらしく、「京ちゃーん、多田本さんよーっ!」と聞こえて、京香ちゃんが出た。
「もしもし、京香です」
「多田本真美です。京香ちゃんに相談があるんだけど」
京香ちゃんはキョトンとし、わたしの相談に乗ってくれた。
全部話すと、京香ちゃんはとても驚いていた。
「真美ちゃん、なかなかやるじゃないの。陽都と隅木田先輩の心を射止めたなんて」
確かに、そういう意味では、わたしすごいかもしれない。
京香ちゃんからしたら、そんなことなかったりして。
「わたし、何度かされてるけど、全て断ってきたの。付き合うの、わたし苦手だから」
なるほどね。
わたし、隅木田くん好きなんだよね。
好きだった…かも。
「わたしに相談しても、その答えは真美ちゃんだよ。また困ったら電話して。じゃね」
そうして、電話を切った。
13.中間テスト
遅刻する遅刻する!
家のドアを閉めて、ジャージで自転車に飛び乗る。
わたしの場合、徒歩か自転車通学。
いつもは、いろんな時間の短縮で、徒歩通学だけどっ!
そんなのしたら遅刻するっ!
急いで自転車をこいで、何とか到着。
すると、同じく自転車で来た坂宮と鉢合わせ!
わたしの生命、ここで途絶えたか。
まるで、金魚が太陽に囲まれているかのようだった。
「真美。結果、教えて」
「無理よ、今は。時間ヤバイもの。後でね」
坂宮に言い残して、初等部玄関へダッシュ!
そこから、6年1組の4階へダッシュ!
教室に着くとっ!
キーンコーンカーンコーン
間に合った〜。
「まーちゃんセーフ。あ、涼太遅い。遅刻ね〜」
涼太くん、遅刻か。
わたし、ギリギリセーフ!
涼太くんが、羨ましそうな目で見てくる。
前田先生、怒ったら恐いから、気を付けてね、涼太くん。
「Good morning every one」
前田先生が教室に入ってくる。
どうして前田先生まで英語でっ?
「前田先生、Englishありがとうございます」
晴奈ちゃんが頼んだってことね。
そういうことか。
前田先生まで、毎日英語喋ってきたら困るったらありゃしない。
「いいですか。そろそろ中間テストがあります。今日からテスト期間ですので、しっかり勉強するように」
うんうん。
今回は、気合い充分。
だって、明確ゼミでは、テスト期間の1週間前テスト期間というのを企画している。
その企画で、わたしは勉強勉強勉強なんだ!
「しっかり勉強して、いい結果を出すために、杉田さんと校長先生が、このような企画を考えました」
そして、ふーちゃんが前で隅木田くんが話していたことを話した。
みんなの目には活気が見られる。
わたしも、がぜんやる気が出てきた。
「ということですので、みんなで中間テスト頑張りましょう」
はーい!
わたしは、元気よく心の中で言った。
14.わたしの気持ち
「まーちゃん。この企画では、明スイも参加してくれるって話だけど、どうなってるのか、少しでも決まり次第、わたしに報告してね」
ふーちゃんが振り返って来て、わたしはうなずく。
わたし、隅木田くんにあんなこと言っちゃったけど、戻れるのかな?
常識的に、ダメだよね。
ちょっと落ち込んでいると、ふーちゃんが「大丈夫?まーちゃん」と声をかけてくれる。
ふーちゃん、優しくしてくれてありがとね〜。
「隅木田優斗です。多田本真美さんいますか」
うっ、隅木田くんじゃん。
でも、空気を読めなかったふーちゃんが片手を挙げる。
「こちらは隅木田先輩。真美さんはこちらにおります」
ふーちゃん、空気読んでっ!
渋々隅木田くんの方へ行くと、いつものにっこり笑顔だった。
「由里歌ちゃんとは、別れたよ。僕、しっかり自分の気持ち受け止められたから、真美ちゃんの気持ちも、受け止めるつもり」
わたし、結局どうするんだろ。
隅木田くんのこと好きだったから、付き合う?
それとも、フッちゃう?
「真美ちゃんの気持ち、教えて」
「すみません。わたし、まだ決められてません」
本当のことを言い切ると、隅木田くんは天を仰いだ。
悲しそうな瞳。
顔はまるで、猫に負けた犬みたい。
「いいよ。僕も、最悪なことしちゃったしね。フラれちゃったけど、明スイやっていってくれるよね」
「はい。これからは、明スイのメンバー、友達でいていいですか!?」
隅木田くんは、綺麗な顔に微笑みを見せて、中等部へ帰っていった。
残されたわたしは、坂宮の教室へ行った。
「真美、決めてくれたか」
わたしは、大きくうなずいた。
隅木田くんの時みたいに、わたしの気持ち、しっかり言うんだ。
「わたし、さっき隅木田くんに返事してきたの。それで、坂宮にも言う決意をしたんだ」
「溜めなくていいから、ねっ!ねっ!結論はっ?」
ああ、こんなにも期待されてるっぽいのに、言いづらい。
「ごめんなさい、坂宮。明スイって、ファンもいるし、それに、わたしは、受験と明スイを両立させたい。だから、坂宮とは、友達でいてほしい」
これが、わたしの気持ち。
どうか坂宮。
受け止めてくださいぃ!
15.みんな笑顔
坂宮は一度大きな息をして、わたしを見つめ直した。
お願いします神様。
わたしの気持ち、坂宮に届けて!
すると、わたしのお願いが叶ったのか、坂宮はゆっくり笑った。
「友達な。…これからも、友達でいてほしいけど。でも、俺はあきらめないからな。それ、覚えとけよ」
坂宮は、またにっこり笑い、教室に戻った。
わたしも、つい笑顔になる。
何もかも良かったんだ。
これで。
教室に帰ると、京香ちゃんが待っていてくれた。
「真美ちゃん、お疲れ様です。みんながイヤな思いをしなくて、いい返事だったと思う。聞いて、ごめん」
京香ちゃん、聞いてたのぉ!?
聞いちゃダメでしょ!
笑いを含んで京香ちゃんをにらむ。
「真美ちゃんったら〜!さあ、次は美術だから、美術室行くよ!」
京香ちゃんとふーちゃんが一緒に来てくれて、美術室へ行く。
途中、坂宮とも会ったけど、にっこり笑って素通り。
これが一番良かったんだ、よね?
「ね、美術の山野先生、怖いでしょ。早く行きましょう」
ふーちゃんがちょっと早歩きしたので、わたしと京香ちゃんも早歩きする。
山野先生、怖いっていうの忘れてた!
「走ったら、学級委員長としても、児童会長としても。許しませんからね」
ふーちゃん、分かってますーっ!
みんなで、美術室へ早歩きしたのだった。
16.中間テスト勉強お泊まり会
よし、全部ある!
リュック、旅行バッグを持って一階へ行く。
今日は、待ちに待った中間テスト勉強お泊まり会。(って名前になったんだってね。)
「おばあちゃん、また、明後日?ね」
家を飛び出して、ふーちゃんと学校へ向かう。
知らなかったんだけど、ふーちゃん、電車でこの辺りまで来て、わたしの家の前を通って学校行ってたんだって。
だから、一緒に行くことになったの。
「まーちゃん、おはよ」
ふーちゃんがリュックを担ぎ直す。
ずいぶん大きなカバン。
前のめりになっちゃってるよ。
わたしがクスッっと笑うと、ふーちゃんが「何よーっ!」と笑った。
ヘンなおしゃべりをしていると、もう学校に着いていた。
辺りには、制服、ジャージに重たそうなカバンを持ってる人ばかり。
「みんな、笑ってるから、この企画、成功かしら」
「うん。大成功だよっ!団結、絆。全てが成長するよ!」
本当にそうだよね。
きっと、ふーちゃんや、他の子とも仲良くなれるし。
勉強も出来るし、団結力深められそうだもんねっ!
「6年1組到着ー!」
わたしがジャンプして教室に入る。
みんな、「おはよー」ってあいさつしてくれて。
わたしもみんなに「おはよう!」って返した。
「皆さんおはようございます。荷物を自分のロッカーに入れて、多目的ホールへ移動しましょう」
わたしがみんなとおしゃべりしている間に、ふーちゃん。
放送室へ移動してたんだね。
早い早い。
多目的ホールへ行くのは、怪盗日本が来たとき以来かも。
七井さんとおしゃべりしながら多目的ホールへ行く。
「適当に空いている席に座ってください。早く来た人から黙って待ちましょう」
ふーちゃんがマイクで呼びかける。
みんな、座ったら一瞬でシーンとなる。こういうところ、彦宮学園のいいとこだよね。
初等部みんなが集まると、ふーちゃんが前に出てお辞儀する。
わたしたちも、それに合わせてお辞儀した。
「今日は、中間テスト勉強お泊まり会です。初等部がお休み0で、とても嬉しく思います。一年生も、初めての中間テストですが、楽しみながらやっていきましょう」
ふーちゃんが言い切ると、各クラスの男の子が「おー!」とか「イェーイ!」って言って叫んでる。
楽しみだな〜!
早く、教室へ戻りたいっ!
17.放課に
まずは、30分間の放課。
長いから、いろんなことが出来るんだよね!
図書室、学食、購買、カフェが開いているんだ!
中等部や高等部が、下の部に来るのは良いけど、わたしたちが上の部へ行くのは禁止。
これを守れば、何をしてもオーケーなんだよっ!
「真美ちゃん、こっち」
隅木田くんに呼ばれて、初等部料理部のキッチンを借りることにした。
今からも、作れるものは作る。
「まず、分担。真美ちゃんと矢本ペアと、僕と坂宮ペアね」
もしかしたら、隅木田くん。
坂宮がわたしに告白してきたこと知ってるのかな?
だから、気を使って、何もない矢本くんとペアにしたのかな?
「真美ちゃんたちは、ケーキを作ってほしい。大きなケーキだ。僕たちは、チョコレートクッキー二枚の間に、生クリームを挟む。これを作る」
これは、みんなが食べるものだよね。
美・スイーツとかじゃなさそう。
「じゃあ、スタート」
隅木田くんが手を打って、矢本くんと一緒にケーキを作る。
ボウル、泡だて器、包丁、あとは…。
「多田本。生クリーム作ってもらってもいいか」
矢本くんが手を止めずにボウルと泡だて器をこちらに突き出す。
何となく、耳が真っ赤。
どうしたんだろう、矢本くん。
「おい、さっさと受けとれ」
は、はい。
ごめんなさい!
ボウルと泡だて器を受け取り、冷蔵庫の中から材料を取り出す。
線を繋いで、材料もあるし。
オーケー。
泡だて器で、ガーッっと生クリームを作る。
このまま、わたしはほぼ静止状態。
隅木田くんと坂宮を見ると、案外仲良くやってる。
ふふん。
告白の話は切り出さないんだね。
っていうか、切り出さなくて良かったよ、本当!
18.時間がっ!
カチカチカチカチ
生クリームを作り終わって、スポンジを作っているところ。
時計の針の音がやけに大きく聞こえて時計を見上げる。
放課、あと5分じゃん!
「みんな、切りつけて教室行こう!」
隅木田くんは、時計を見て目を見開く。坂宮も、急いで材料を片付け始めた。
「矢本くん、片付けよ!時間がっ」
「うん」
返事はしてくれるけど、スポンジから目を離さず、わたしが言ったことは気にしてなさそうな…。
大丈夫なのっ?
「早くしないとっ!」
わたしが矢本くんを焦らせると、ようやく目を上げてくれた。
ふう。
もっと早く上げてくれたら、寿命も縮まないのにさっ。
「じゃあ、次の30分の放課に、各自ここに集まるように。解散」
隅木田くんが走りながら言い、みんな全力で走る。
ふーちゃんに見つかったら怒られちゃうよーっ!
6年1組に帰ると同時にっ。
キーンコーンカーンコーン
隅木田くんや矢本くん、間に合えたかな?
ちょっと心配しつつ、椅子に座る。
「教科書、ノート、筆記用具を持って、図書室へ行きますよ」
前田先生が大きな声で指示して、急いで教科書類を引っ張り出した。
そして、背の順で並び、図書室へ移動する。
「はい、着席ーっ」
図書室のカウンターのところに前田先生が立ち、みんなを見回す。
わたしも目が合った。
でも、すぐにそらされちゃった。
「理科で分からないところ。本を使って調べながら解いていきます。この問題用紙と解答用紙は違うので、問題用紙に書き込まないでください」
へー。
そういう勉強法かぁ。
「分からないところは、友達と教えあってもいいですが、写したり、紙を見せてはいけません。いいですか?では始めましょう」
よーし!
秀才なふーちゃんに教えてもらうぞ!
19.秀花さん
理解が終わり、地理、歴史、数学も終わった。
今のところ、特別に10分放課があるんだよっ!
でも、このあとは、外でスポーツ。
学年で、中間テスト勉強お泊まり会オリンピックをやるんだって。
得意な分野のスポーツの代表になるとかならないとか。
わたしは、1000mに出るよっ!
ジャージに着替えて、グラウンドに飛び出る。
すると、グラウンドを走っている女の子を見かけた。
放課なのにスポーツかぁ。
その女の子は6年生だった。
人数が多いから、知らない子もいるわけだし、名前も知らない子がいる。
その女の子は、胸に杉田と刺繍があった。
杉田さんなんだ。
杉田さんは、わたしのとなりにいた女の子たちのところに来た。
「秀花、疲れないの?」
杉田さんは、へへへ。
と笑って、男の子のところに行く。
「秀花、すごいでしょ!」
うっ。
こういうのって、リア充が目立つよね。わたし、苦手かも。
「まーちゃん。あの子、秀花。わたしの双子の妹だよ。見た通り、美少女で秀才で、スポーツ出来る。あの男の子とは、付き合ってんのよ」
ええ、やっぱり。
ふーちゃんの双子の妹なんだ。
でも、美少女だなあ、かわいい。
20.オリンピック
ふーちゃんは、杉田さん(だと分かりにくいかなっ?)の話になると、ちょっと顔を沈める。
でも、ふーちゃんは学年1位。
すごいすごぉい!
「秀花の話なんてやめましょ。わたしなんて、どうせ地味、秀才かもしれないけど、運動出来ないから」
ごめんなさい、ふーちゃん。
なんか気分落ち込ませちゃって。
すると、ふーちゃんは前に出てマイクで話始めた。
「ただいまから、中間テスト勉強お泊まり会オリンピックを始めます」
ふーちゃんの司会で、オリンピックが開催される。
わたしたちはい組。
『いろはにほへと』の、『い』。
みんなが走っている時とか、高跳びで跳んでる時とかも。
体育祭の時にみんなが応援してた言葉を使って応援する。
「い組ーっ!優勝ーっ!ファイトファイトファイトファイト!い組ーっ!」
これを続けるっ!
「い組ーっ!優勝ーっ!ファイトファイトファイトファイト!い組ーっ!」
制服にエプロンを付けて、美・スイーツを作る。
ゼリー、かわいく出来るといいけど。
デコレーションして、最後。
イチゴをそのまま上に、ポン。
「ゼリー完成しましたー!」
隅木田くんが拍手してくれた。
あ、ありがとうございます。
次の作業。
ええっと…。
「真美ちゃん。多目的ホールへゼリーとケーキをこれで運んで」
隅木田くんに、台車のような物を渡される。
あちらこちらに、ゼリー、ケーキを入れて、エレベーターで多目的ホールへ行く。
ああ、楽しみだな、るんるんるんっ!
21.報酬が
「初等部から高等部の皆さん。僕たち明確スイーツ研究部メンバーで作った、このスイーツを食べていってください。各種そろえてあります。質問は、僕たちメンバー、隅木田優斗」
「矢本拓斗」
「坂宮陽都」
「多田本真美まで申し付けてください。では、どうぞ」
メンバー紹介もふくめて言い切ると、全校のみんながドッっと前に来る。
報酬ゲットだよーっ!
これで、わたしたちの仕事は終了になるね!
洗い物はあるけど。
「多田本さん、ありがとうございました」
彦宮先生が歩いてきて握手を求めてきた。
わたしは、満面の笑みで握手し返す。
「わたしたち、明確スイーツ研究部に、このようなチャンスをくださり、本当にありがとうございました」
彦宮先生は、次に坂宮、矢本くん、隅木田くんと握手する。
よし、あとは勉強を頑張れば!
中間テストの、お泊まり会も楽しむよっ!
みんな、家から持ってきたパジャマに着替える。
みんなが寝られて、教室は広く感じる。
前田先生は、家に帰っちゃったけど。
「まーちゃん、恋バナしよーっ!」
パジャマパーティーみたい!
休憩タイムだから、うるさくしてもいいんだよね。
マクラ投げ合ったり。
おしゃべりしたり。
プロレスごっこしたり。
その他みんないろんなことしてる。
「好きな人は?」
ふーちゃん、いません。
わたしの初恋終わったもん。
それより、ふーちゃんは?
首を横に振って、期待の目でふーちゃんを見る。
「はぁ〜。まーちゃんには叶わないのかしら。涼太よ、涼太」
えーっ?
涼太くんだったのぉー!?
22.最後に
「ちょっと、まーちゃん」
あの、ふーちゃんの幼なじみの、涼太くんだったんだね!
ふ〜ん。
「絶対ナイショよ」
うん、分かってるって。
ピーンポーパーンポーン
「消灯時間5分前です。布団に入り、寝る準備をしましょう」
放送が入り、あたりがシーンと静まる。こんなに騒がしかったのにね。
ふーちゃんと目を見合わせて笑う。
涼太くんが電気を消し、教室が真っ暗になった!
怖いからっ!
ふーちゃんの腕を掴んで、ふたりで寝る。
この日は、月も綺麗に見えた。
(つづく)
あとがき
まい
こんにちは。
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイいかがですか?
ちょっと、面白くなかった?
なんて思ってドキドキしてます。
オリンピックが短かったり。
この8巻を終わらせ、新刊を書きたかったんだZE!
カッコつけてごめんなさい。
忘れてください。
皆さんは、中間テストでイヤな思いしたことありませんか?
わたしはあります。
終わってから失うものって多いので、初めからしっかりやることが大切になってくると思います。
(まいさん。カッコいいこと言わないことですよ。 byふみ)
わーん。
分かってるよお。
夏休み楽しいですよねー。
でも大変。
体に気を付けながら生活してくださいねーっ!
(まいさん、やめてください。あなた、カンペ読んでるだけでしょ。
byふみ)
うっ。
っということで。
コメントをくださった方々、本当にありがとうございました!
質問、感想、受け付けます!
ではでは。
次回9巻の予告と行きましょう。
合唱コンクールが近づいているのに、6年1組で不登校が多発!?
明スイ解散!?
わたしと、真美ちゃんと。
応援してください。
お楽しみに!
『ここは明確スイーツ研究部!9』
人物紹介
多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。
明確ゼミナールに通う。
坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。
矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。
隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。
1.児童会長へ!
七井さんに、一票!
ただいま、後期学級委員を決めてる。
ふーちゃんこと杉田ふみちゃん。
ふーちゃんは、前期学級委員長。
みんなの頼りになるふーちゃんがいないときも、率先して物事をやっていたから。
「多くの票を集めた、七井さんに、学級委員長になってもらいます」
辺りから、拍手が流れる。
七井さんは、立ってお辞儀した。
礼儀正しいところも、素晴らしい。
「学級委員を、大橋くんにお願いしたいと思います」
また、辺りから拍手が流れる。
七井さんと大橋くんかあ。
となりの席の根本くん、大橋くんと仲良しだから、わたしの席で何かが行われるかも?
ゾークゾクゾク。
「次に、後期児童会選挙に出たい人、挙手をお願いします」
わたしは、まっすぐ手を挙げる。
児童会長に、立候補するんだ。
わたしは、多田本真美。
ここ、私立彦宮学園に通う小学6年生だよっ!
すると、前田先生が原稿用紙を2枚持ってきた。
「ここに、選挙で読むことを書いてください。推薦者も探すように」
はい、分かりました。
そこに、大橋くんも立候補し、そこに乗った根本くんも手を挙げた。
「あと女の子ひとり。やれる人いませんか?」
前田先生が辺りを見回すと、手を挙げた女の子がひとりいた。
その子は…陽茉理ちゃんじゃん!
「わたしやりたいです!」
前田先生は、陽茉理ちゃんにも原稿用紙を渡して、手を打つ。
「じゃあ、原稿用紙を書いてくるようにすること。明日までに」
明日!?
児童会選挙って、明明後日だよね。
練習時間もふくめるから、明日ってこと!?
やっぱり、ちがうな。
公立は、もっと遅いのに。
わたしのいとこ、葉金井睦美ちゃんは、類木川小学校の児童会長。
原稿は、3日後までだったのに。
私立って、どうしてこんなに早いの!?
2.明確ゼミ
家に帰ると、明確ゼミナールという塾の準備をした。
わたしは、私立青山野学園に受験するつもり。
だから、明確ゼミを毎日コースにしたんだ。
だけど、今日は別。
原稿用紙を仕上げるから、ちょっと時間を短くするんだ。
「行ってきます」
家を出て、私服のスカートをなびかせて歩く。
そろそろ11月ということもあって、さすがにちょっと寒い。
明確ゼミのスクールバッグを片手に、電車に乗る。
いつもなら、自転車で行ったり、ウォーキングのために歩いたり。
おばあちゃんの車で乗せてもらったりしてね。
でも、受験、青山野学園に通うとしたら、電車を利用しないといけない。
それに、本を見ながら原稿の書き方を学んでいくんだ。
「あれ、真美ちゃん。明確ゼミへ向かってる途中?」
「うん。香音ちゃんって、明確ゼミに通ってるっけ?」
そう。
わたしのとなりに座っているのは、矢本香音ちゃん。
陽茉理ちゃんの、双子の妹。
私立百合千学園に通ってるらしい。
「陽茉理は、頭良いからいいけど、わたしはバカだから、通わされたの」
香音ちゃん、頑張ろうね。
晴奈ちゃんが言ってたけど、香音ちゃんも、陽茉理ちゃんと同じ学校に受験するんだよね。
偏差値の高い。
「わたし、前の車両行くから。バイバイ、真美ちゃん」
バイバイ。
心の中で言って、本に集中する。
「真美ちゃんですか、あなた」
3.女の子の正体は?
椅子がたくさん空いているのに、吊革に掴まってわたしの前に立つ子。
それは____み、実柚乃ちゃん!?
「あぁ、真美ちゃんかぁ。よかった。実柚乃、間違えたかと思ったぁ」
実柚乃ちゃんは、わたしのとなりに黙って腰掛け、持っていたトートバッグを膝に置く。
「真美ちゃんは塾行きでしょ?明確ゼミ?実柚乃、明確ゼミのとなりの、お料理教室に今日から通うの」
実柚乃ちゃんは、トートバッグの中身を見せてくれて、ふふふと笑った。
「実柚乃、真美ちゃんみたいに頭よくないから、副教科でカバーするの」
副教科とは、技術アンド家庭科。
美術。
音楽。
最後に保健アンド体育。
お料理教室って言ったら、家庭科。
わたし、自分で言うのもあれだけど、家庭科も技術も結構得意っ!
ただ、ちょっと苦手なところも…。
「実柚乃さぁ、お料理得意だから、とにかくお料理の腕を極めるの!」
へぇ、カッコいい。
わたしとは全然違うな。
「実柚乃と、帰り一緒かなあ?9時の電車に乗るんだけど」
「同じ時間だよ。実柚乃ちゃんと」
わたしが、実柚乃ちゃんの方を向いてにっこり笑うと、実柚乃ちゃんは手を合わせた。
「わぁー、本当〜?じゃあ、お料理教室の前で待ち合わせて、実柚乃と一緒に帰ろう」
初めてのことだったから、わたしの目は点、点、点っ!
みんな、わたしのこと知らなくて、明スイでようやく気づいてもらえたのに、近付いてくるのは明スイめあて。
うぅ、友達として来てくれるのは、実柚乃ちゃん、久しぶり。
ありがとう。
『次は〜、大見〜大見〜』
電車のアナウンスが入って、降りる準備をする。
ここ、大見駅から、歩いて3分のところに、明確ゼミがある(はず)。
「実柚乃と一緒に行こ!」
誘ってくれて、雑談を交わしながら明確ゼミへ向かう。
こんなに足取り軽やかなのは、初めてと言っても過言じゃない。
「じゃあ、真美ちゃんバイバイ。後でここ集合ね!」
「んっ!実柚乃ちゃん、バイバイ!」
4.ケンカ!
実柚乃ちゃんと別れて、明確ゼミへ行く。
玄関の、多田本真美と書かれたロッカーに靴をしまい、上靴に履き替える。
「真美ちゃん、実柚乃ちゃんと仲良しなの?」
え、誰が話してるの?
今日は、知らないところで話したり、謎の人が話しかけたり、多いなあ。
「どちら様ですか?」
誰もいないところに話しかけると、壁に持たれていた隅木田くんがいた。
気付かなくて、すみません。
ペコリと謝ると、クスッっと隅木田くんは笑った。
「今日の一時間目が終わったら、毎日コース相談室へ来て。絶対来てね。これで終わりだ」
『終わりだ。』
その言葉の意味はふたつに別れる。
ひとつ目は、これで話は終わりってこと。
ふたつ目は、集まるのが終わりということ。
うーん、どっちだろう。
ふたつ目であってほしくないけど。
隅木田くん、ボンヤリしてて、悲しげだったもんな〜。
いやいや、そんなことないよ。
だってまだ、明スイの活動、8回しかしてないじゃん。
わたし、ヘンにとらえちゃダメじゃないの!
「真美ちゃん、聞いてっ!クラスの子の様子が、何かヘンなのっ!」
綾が飛ぶようにやって来る。
様子が、ヘン?
「真美ちゃん、とりあえず来てっ!」
う、うん。
詳しく、どういう風にヘンなの?
浮いてるとか?
みんなひとりぼっちとか?
ケンカしちゃったりした?
あとはぁ、嫉妬したり?
「真美ちゃんが開けて。わたし、もう怖くて開けられない」
綾に言われて、毎日コース室を開け、教室に入る。
別に、変わった様子はないけど。
綾の方を見ると、ビクッっとしている。
「さっきまで、ずっとケンカしてたのよ!きっと、みんなプンプンしてる」
ケンカしちゃったの!?
確かに、みんなそっぽ向いて、ツンツンしてる。
鉛筆を持ってきてる人は、鉛筆の芯をバキバキ折ったり。
シャーペンの人なんかは、シャーペンを解体して、バネで遊んだり。
消しゴムを小さく、何個かに分けて、ゴミ箱に捨てたり。
文房具勿体ないよっ!
あわてて、すぐ近くにいた子に聞いてみた。
「わたし、もう、明確ゼミやめるよ。こんなところで勉強したくないもん」
ええええーーっ!
すぐ近くの子にも聞いてみる。
「僕、もう絶対ここの教室来ない。違う教室に変えてやる」
どうしてみんな!?
先生が入ってきて、「こんばんは」とあいさつされるけど。
「…ん…は」
って、声ちっちゃい!
本当にみんな、どうしてケンカなんてしちゃったの!?
5.児童会長への道
「声が小さいですね。どうしたんですか?」
みんな、シーンとなっちゃう。
出来るだけ、目を合わせないようにしてね。
そして、綾が手を挙げる。
当然、先生は綾を指すよね。
「ちょっと、いろいろあったみたいですから。わたしたちで何とかするので、先生は気にしないでください」
おおぉ、綾偉い!
確かにその通りだよね。
って!
実感しているだけじゃ、児童会長になんかなれっこない。
「先生。連絡をお願いします。美先さんが言ったように、わたしたちのことは、わたしたちで引き取ります」
となりに座っていた綾が、親指を上げる。
グッドって意味。
わたしも、綾にグッドをし返す。
ちょっとは、児童会長への道が開けたかもしれないよね。
多分。
「じゃあ、美先さんと多田本さんがそう言うので、みんなで何とかしてくださいね。はい、連絡するよ!」
先生がいろいろ連絡している時も、みんな先生の方を見ていない。
外見てたり。
爪を見てたり。
友達見てたり。
はたまた、ドアを見てたり。
先生を見ている人は、わたしと綾しかいない。
どうすれば、みんなが仲直りできるんだろう。
うーん?
「では、15分休憩です」
先生が手を打ち、教室から出る。
綾が前に出たから、わたしも一緒に前に出ることにした。
「みんな、どうしたの?仲良く楽しくやっていこうよ!ね、真美ちゃん」
綾に言われて、わたしは大きくうなずいた。
「わたし、勉強って、心と心をつなぐ魔法だと思うの。将来への道でもあるんだけどね。みんなでやろう」
みんなに訴えるように、見回して言うけど、聞いてくれる人なんていない。
聞いてくれなかったら、言っても無意味だし。
「聞いて…!お願い、聞いて!」
綾が大きな声で言って、ようやくみんな顔を上げてくれた。
よし、この調子っ!
6.決死の結論
「みんな、勉強は楽しくやろうよ!未来、夢がある?それはみんな一緒!みんなの夢をみんなで叶えていこう」
綾が訴えるようにみんなを見回す。
すると、クラスで一番静かな子が手を挙げる。
綾はその子を指す。
まるで授業みたいだなぁ。
その子は立つ。
「未来は、自分で変えるもの。他の人が絡んできては、素晴らしい未来にはなりません」
まあ、自分で変えるものって言いますけど、それは努力次第でしょ?
楽しむと努力は違うんじゃ。
「とりあえず、仲直りしませんか?」
綾が言うと、また辺りはシーンとなりそうな中。
わたしの後ろの席の子が手を挙げる。
綾は、もちろんその子を指すよね。
そしたらその子、こう言ったのよ。
「さっきのAグループとBグループで別れて、クラスにしちゃいましょう。毎日コースA室、B室にするのよ」
ええええ!?
別れちゃうの?
そんな報告、先生に出来ないよ!
すると、みんな「そうしましょう」とか、「それでいい」って!
いやいや、よくないよっ!
「もういいだろ。それで」
男の子が席を立って、「Aグループ集合!」なんて手を挙げてる。
Aグループらしき子たちは、そこに集まるでしょう?
すると、やっぱりBグループも集合しちゃうのよ。
所属していないのは、わたしと綾。
「真美ちゃん、どっち入る?」
Aグループの女の子が、肩をトントンと叩いてきて、わたしはまたもうーんと唸る。
人数も同じくらい。
「真美ちゃん、わたし、Bグループ入るから」
綾は、Bグループの方へ歩み寄る。
ずっと訴えてたのに、綾。
もう別れるのに賛成なの?
「この流れで、真美ちゃんもBグループ来ちゃえば」
「人数合わせるために、Aだろ!」
「人数なんて関係ないわ」
あわわわわ。
どうしたらいいの〜?
すると、救世主様、先生が来た。
「結論はどうなったの?多田本さん」
わたしは、ふたつのグループに別れてしまったことを話した。
すると、先生は特大ため息。
何度もため息、出るよね。
わたしも、小さいため息してるもの。
「毎日コースは、受験や、学力急アップのため。それが出来ないようじゃ、意味がないわ。普通のクラスへ戻ってもらいますよ」
ああぁ、それはそれで困るぅ。
すると、先生は突き放すように言ってしまったの。
「もういいわっ!毎日コースはもうおしまいよっ!」
えええええええええ!
7.昔の友達
そして、わたしは普通のクラスの教科書が家にあるし、親のハンコで普通コースに戻るから暇だった。
帰っても、おばあちゃんいないし。
早く帰ったとしても、実柚乃ちゃんを置いていきたくないし。
明スイの用事があるし。
だから、わたしは先に相談室で待っていることにした。
ちょうど原稿用紙も持ってるから、原稿を書きながらね。
毎日コースの教科書、高かったのに。
一冊5500円が五冊。
つまり、27500円だったのに。
ま、受験の時使えばいいか。
おばあちゃん、わたしの説得が上手くなくて、ごめんなさい。
「あれ、多田本さん」
相談室の入り口を見ると、6年2組の、ずーっと前に遊んでいたっ!
「亜子ちゃん!?」
その後ろには、みゆさん、かんなさんにさとこさん。
ちょっと、五年の時を思い出すっ!
「やっぱり真美ちゃんか」
「亜子ちゃんたちも、明確ゼミ入ったの?」
ちょっと怯えながら聞くと、4人は顔を見合わせた。
何?
イヤな予感?
でも、全然ヘンな予感はしない。
「真美ちゃんと仲直りしたかったの」
えっ?
わたしと、ナカナオリ?
どうして今?
「わたし、真美ちゃんの幼なじみの晴奈ちゃんまで仲間にして、わたしダメだなって思ってた」
思ってくれてたんだ、一応。
そこは微妙に嬉しいかも。
当時は思わないと思うけどっ!
「ごめんなさい!」
亜子ちゃん、みゆさん、かんなさん、さとこさんが声を合わせて謝った。
8.最後の約束
わたしは、ちょっとビクンとする。
これがワナだったら、どうなるのかって、ビクビクする!
「お願い、許してっ!このまま卒業するなんて絶対イヤ!」
亜子ちゃんは、イヤ、イヤ!って言うけど、ちょっと許せない。
わたしが学校に行きたくなくなって、イヤだったのに、憧れのバドミントンも出来なくなったのに!
亜子ちゃんの口から『イヤ』って言葉が出てくるんだもの。
「真美ちゃん、お願いしますっ!わたし、本当に後悔したんだよ!反省して仲良くするって誓うから!お願い!」
亜子ちゃんは、目に涙を浮かべている。そんなに苦しいことか。
そんなにしなくちゃいけないことか。
亜子ちゃんが、それくらいで泣いて、わたしはいじめられて泣かなかった。
もう、ワナにしか聞こえない。
「多田本さん、亜子を信じて。わたしも反省したよ」
みゆさん…、本当?
すると、次はかんなさん。
「わたし、亜子とみゆとさとこと、泣きながら心の中で謝ったの。ね?」
最後にさとこさん。
「本当に、ごめんなさい!」
もう、ワナじゃない気も、してきた。
本当に反省してくれて、仲良くしたいって、心から思ってくれてるって。
「わたし、辛かった。すごく。楽しい生活が送りたかった。わたしと、ずっと仲良くして償ってくれる?」
わたしが四人に聞くと、すごい早さでうなずいてくれた。
わたしも、原稿用紙に涙を流して、みんなで泣いた。
「最後の約束、いい?ずっと仲良くして、償うことね!」
来たよ!最近、来なくてごめんね!
原稿用紙に涙?!私も涙がぁ……
いえいえ。大丈夫。
レミリアも小説書いてるもんね。
原稿用紙が濡れるくらいの涙。
(まいさん、そんなに泣いてません。
by真美)
わーん、ごめんなさぁい。
お互い頑張ってこーね!
9.お出掛け!
わたしが持っている原稿用紙を見て、亜子ちゃんたちは気付いたみたい。
「児童会選挙に出るの?」
亜子ちゃんに聞かれて、照れながらうなずいた。
そしたら、さとこさんが手を打った。
「償いその1。原稿を手伝おう!」
「さとこさん、待って。原稿は、ひとりで書く」
「そうだね、多田本さんの想いを乗せて、だもんね」
かんなさんも、うなずいてくれた。
わたし、多田本さんって呼ばれてる。
亜子ちゃんには、真美ちゃんなのに。
みんなに、思いきって提案しよう。
「亜子ちゃんたち!名前で、呼び合わない?わたし、みゆちゃん、かんなちゃん、さとこちゃんでいい?」
3人に聞くと、みんなうんうんってうなずいてくれたし。
亜子ちゃんなんかは、「絆誕生でござる」なんて言って。
「真美ちゃん、児童会の役割、何がやりたいの?」
みゆちゃんが身を乗り出す。
かんなちゃんとさとこちゃんがじゃれあいながら身を乗り出してきて。
最後に、亜子ちゃんがふふふと笑いながら身をよじる。
「児童、会長だよっ」
上目使いにすると、3人はテンションマックスで笑い出す。
何が面白いんだか、さっぱり。
「亜子、みゆ、さとこ、真美ちゃん。また今度遊ばない?」
「いいよ!わたし、スミレッチカフェ行ってみたい」
わたしがみんなに提案すると、またまたテンションマックス。
はあ、笑う時間、長いんだよねえ。
10.突然の出来事
キーンコーンカーンコーン
「亜子ちゃんたち。明確生じゃないなら、出た方がいいよ!ここ、利用者いるから」
亜子ちゃんは、わたしに手を振って、走るように帰っていった。
これで、みんなとケンカしない限り、卒業しても心残りはないよね。
「失礼します。隅木田です」
あ、隅木田くんが来た。
わたしは、スクールバッグに原稿用紙を突っ込む。
坂宮と矢本くんも来て、明スイ活動が始まる。
今回はどんなことするの?
ワクワク。
でも、隅木田くん話し出さなくて。
何が言いたいのか、さっぱり。
「どうして集まったんだ」
坂宮が、隅木田くんをにらむ。
矢本くんとわたしは、顔を見合わせる。だって、坂宮の意地っぱり。
すぐそうやってにらむんだから。
「今日で、明スイは終わりだ。開催。今までご苦労だった。これからは楽になるといいよ。じゃ、それだけ」
そう言い残して、相談室を…立ち去るつもりっ?
わたし許さないよっ!
坂宮たちも同じ気持ちだったらしく、代表して坂宮が前に出た。
「どうしてだよ。お前」
今度は、別にちょっとくらいにらんでいいよっ!
そういう目で坂宮と隅木田くんを見る。隅木田くんは、ため息をつく。
「もう、明スイがウンザリだよ。この気持ちをみんなにも味あわせたくないんだ。もうやめよう」
ウンザリ?
明スイが?
どうしてそんなのになっちゃったの!?
わたしが隅木田くんを見ると、隅木田くんと目があった。
どうしたんだろう。
悲しげで、うつろ。
目が泳いでいる。
「隅木田先輩って呼んでほしい。多田本さん」
え…何で。
突然のことで、意味が分からなかったんだけど。
わたし、意味が分かった。
それは、もう僕とは関わらないで。
ってことだと思う。
本当に悲しかった。
明スイも、わたしも捨てられた気がして、情けなかった。
わたしたちって、小さいんだ…。
11.メガネファッション
隅木田くんが帰った後は、坂宮はサッカーへ。
矢本くんは野球へ行ってしまった。
ひとりぼっちで、今日二度目の涙を流した。
どうして解散なの!?
わたし、明スイが大好きだったのに。
その日、実柚乃ちゃんと約束した時間までずーっと泣いていた。
気付けば、目の下はパンパンッ!
これじゃあ、実柚乃ちゃんにバレちゃうし、おばあちゃんにもっ!
慌てたわたしは、明確ゼミのおしゃれメガネっていう女の子向けのコーナーへ行ってみた。
ドが入ってない、かわいいやつ。
それでかけたのが、赤い縁あり明確。
これで、痛くてふくれたって言えば証拠隠滅っ!
わたしは、メガネをかけてお料理教室へ!
もう、実柚乃ちゃんは待っていた。
「ごめんなさい、遅れて」
「うんん。いいの。あれ、メガネ。真美ちゃん付けてたっけ?でも、かわいいメガネ〜!」
でしょでしょ!
実柚乃ちゃんに、メガネを外して見せた。
、、、あああ!
メガネ取っちゃった!
慌てて実柚乃ちゃんからメガネを奪い取る。
「ああ、ごめん。いつもコンタクトだから、メガネないと見えなくて」
ウソ言ってごめんなさい!
でも、実柚乃ちゃんは見逃さなかったのよ!
「このメガネ、ド、入ってる?」
「あ、視力いい人でも、メガネによって合うのもあるの。きっとそれよ」
うんうん。
メガネをかけ直して、電車に乗る。
実柚乃ちゃんお願い。
気付かないでえ!
皆さんに連絡です。
コメントをくださった方へのコメントは、あとがきで紹介させていただきますので、お願いします。
12.ゆびきりげんまん
「まあいいや。コンタクトだなんて知らなかった。実柚乃、いつもメガネかけてるけど、こんなにボヤけたメガネ初めてだったから。実柚乃って目、悪くなったな。メガネになるのギリギリだったのに」
あー、それ以上言わないで!
わたしが目が悪くないことバレちゃうからっ!
「真美ちゃん聞いて!わたし、私立青山野学園に受験するの」
「え、実柚乃ちゃんも?」
「真美ちゃんも青山野受験するの!?」
わたしは、縦に首をブンブン振るっ!
だって、仲間がいるし、安心っ!
実柚乃ちゃんも同じ気持ちだったらしく、にっこり笑った。
「真美ちゃんが一緒なら、実柚乃、安心して青山野受けれる!一緒に頑張ろうね!」
実柚乃ちゃんと、絶対ふたりで青山野に受験するゆびきりげんまんをする。
久しぶりだなあ。
ゆびきりげんまんしたの。
確か、前にしたのは…。
「まみちゃん、まみちゃん!これからず〜っと仲良くするって、約束!」
「いいよ!はるなちゃん。せえの!」
「ゆびきりげんまん。ウソついたらハリセンボンの〜ますっ!ゆびきった」
はるなちゃんと保育園のときにやったゆびきりげんまん。
ふふふ、実柚乃ちゃんとゆびきりげんまんしたの、初めて!
あ、当たり前か。
「真美ちゃん、ごめん。実柚乃、もう降りないと。バイバイ」
「バイバイ!」
実柚乃ちゃんが降りて、スクールバッグに突っ込んだ原稿用紙を出す。
涙で濡れたのもあるけど、グシャグシャになっちゃった。
ガーン。
どうしよう!
もう、文房具屋は閉まってる。
だけど、このまま書いたら破れそう。
ううぅ。
「次は、彦宮〜。彦宮〜」
あ、そうそう。
彦宮学園の校長先生、彦宮先生が、ここを彦宮駅にしたんだって。
だから、わたしが利用するのは彦宮駅になるんだ。
電車から降りて、まっすぐ歩けば家。
わたしは、原稿用紙を握りしめて家まで走った。
13.あら、そんな機器を
家に入り、手を洗って、スクールバッグの中から原稿用紙を出す。
おばあちゃんに見せて、どうにかしなければ。
「おばあちゃん」
グシャグシャの原稿用紙を見せて、うつむく。
メガネをかけてることは、気付いてるだろうけど…。
「そのメガネどうしたんだい?」
「ああ、ちょっとかけてみようと思って、明確ゼミのおしゃれメガネをかけてみたの」
おばあちゃんは、ため息をつく。
いけないことだったかな?
ちょっと先へ行ってみる。
受験勉強に専念しなさいってことだよね、多分。
おばあちゃん、ごめんなさい。
「ちょっと、中学校へ行ってかけるようになっても、慣れてるようにするためだよ。ちょっとお試し!」
ウソがバレたかなぁ?
おばあちゃんはホッっと息をつき、にっこり笑った。
「そのグシャグシャの原稿用紙はなんだい?」
「ああ。わたし、児童会選挙に出るから、原稿用紙を明日までに仕上げないといけないの。その原稿用紙がグシャグシャになっちゃって」
おばあちゃんに原稿用紙2枚を渡すと、なぜかクスッっと笑うっ!
亜子ちゃんたちと言い、おばあちゃんと言い、何が面白いのっ!
「真美ちゃんは、もうちょっと周りが見えたらいいねえ。コピーしたらいいんじゃないかい?」
おばあちゃんがコピー機を指差す。
そ、そんな手が!
おばあちゃんは、失敗したときように、3枚印刷してくれた。
グシャグシャのは捨てて、計4枚。
「本当にありがとう!わたし、原稿書いてくる!」
部屋に行って、原稿用紙、シャーペンに消しゴム、わたしの対決。
「真美ちゃ〜ん」
「はい」
開始早々おばあちゃんに呼ばれる。
おばあちゃんは電話機を握りしめている。
戦い中によくある、電話が来る!
「代わりました、真美です」
「わたし、陽茉理。原稿ってどんなこと書くの?」
あ、陽茉理ちゃんか。
これを言ったら、間違いなくネタバレだよね。
「わたし、分かんなくて。教えて」
「ごめんね。わたしも、今から書くものだから」
「そっか〜。ごめんね〜」
ピッ
よし、戰開始だ〜!
14.秀花さんをかばって
ピーンポーン
ドアフォンが鳴って、おばあちゃんが出た。
秋の風が入ってきて…。
寒いよぉっ!
あわててカーディガンをギュッっと握る。
「真美ちゃん、杉田さんよ」
「はいはーい」
髪の毛をキュッっと縛る。
わたし、髪の毛短いけど、やっとポニーテール出来るようになったの。
だから、ポニーテール。
カバンを引っ付かんで、外に出る。
ふーちゃんが、いつもの児童会長様じゃなくて、かわいい女の子で立って待っていた。
「お待たせしました!おばあちゃん、行ってきます」
今日は、わたしの大好きな彦宮特別日なの。
必ず私服登校。
カバンも、ランドセル、スクールバッグは禁止。
ちょっとは学校でも休もうという企画なんだよっ!
教科書は持ってくんだけどね。
「まーちゃんかわいい!カーディガンが、色合い鮮やかで素敵ね」
「ふーちゃんこそ。パーカーによくあった短パン。おしゃれは我慢だね」
目がふくれてない今日は、メガネはもうかけてない。
ふーちゃんにもバレないから、ホッ。
「あ、まーちゃん、カバンかわいい。これって、最新ドラマで使ってるってウワサのトートバックじゃん!」
「ふーちゃん、よく気付いたね。おばあちゃんが、そのドラマハマったらしくて。応募したら当たったんだって。わたしにくれたの」
ふーちゃんは、羨ましそうにわたしのトートバックを見た。
おばあちゃん、わたしにくれたけど、ミシンでもうひとつ作ってるんだ。
飾り用って。
おばあちゃんに教えてもらって、わたしがふーちゃんにプレゼントするぞ。
「ふーちゃんって誕生日いつ?」
「わたし?12月31日。大みそかだから、ちゃんと祝えないのよね。だから毎年、おせち食べるとき」
大みそか。
それはそれで、ちょっとイヤかも。
わたしの誕生日は、3月11日。
東日本大震災が起こった日。
わたしが祝われる日は、毎年黙祷するんだ。
「真美ちゃ〜ん!ふみ会長、おはようございま〜す」
実柚乃ちゃんが駅から走ってきた。
そう言えば、実柚乃ちゃんは電車通学かぁ。
いつも、わたしの家の前通ってたんだね。
「実柚乃も一緒にいい?」
わたしがうなずくと、ワンピースをなびかせてとなりに並ぶ。
ふーちゃんは、実柚乃ちゃんのワンピースのキジに反応。
「これって、秀花が持ってるワンピースにそっくりね」
「へ〜。シュークリームと一緒なんだ。実柚乃、やだ〜」
「実柚乃さん。シュークリームって?いやってどういうこと?」
ふーちゃんが顔を険しくして聞くと、実柚乃ちゃんは人差し指を口元にあてた。
「シュークリームって秀花ちゃん。ふみ会長と違ってウザいじゃん?プライド高いんだよね、いちいち。そんな人と一緒って、やだ〜」
やっぱりと思ったけど、もう遅かったんだ。
ふーちゃんは、実柚乃ちゃんをにらみ、こう言ったんだ。
「秀花の悪口言うなら、わたしの悪口言えば。お願いだから秀花を汚さないで!」
ビックリした。
こんなに勢いがあって。
そして、ふーちゃんはすぐ走って学校へ行ってしまった。
15.気さくな子
実柚乃ちゃんはハッっとして、駅の方へ走っていってしまう。
「実柚乃ちゃん!」
でも、振り向いてくれない。
晴奈ちゃんが、わたしと実柚乃ちゃんの様子を、顔をしかめて見ている。
でも、もう今は気にしちゃいられない。わたしは、実柚乃ちゃんを追いかけようと、したの。
「ねえ、あなたが、多田本さん?」
って、秀花さんに腕を掴まれたの。
わたしの腕って細いから、秀花さんの大きな手の中にカッポリ。
「そうですけど。秀花さんですよね」
秀花さんはニヤッっと笑いながらうなずいた。
電柱のそばから、秀花さん出てきたから、聞かれてたっ?
秀花さんの方を見ると、ちょうど目が合った。
「実柚乃がそう思ってるとは思わなかった。わたし、ずぅっと実柚乃と遊んでたのに、シュークリームって」
秀花さんは、遠くをボオッっと見つめながら、瞳に涙をふくませる。
わたしのせいかもっ!
そう思ったから、トートバッグからハンカチを出す。
「秀花さん、これ」
「ありがとう。多田本さん。ふみが言ってた通り、いい子なのね」
ふーちゃん、秀花さんにもわたしのこと話してたんだ。
何か、嬉しいなっ!
「多田本さん、仲良くしましょう。秀花って呼んでね」
「はいっ!わたし、真美って呼んでくださいっ!」
ふたりで、並んで学校へ向かう。
足取りが軽い。
実柚乃ちゃんと一緒に電車で帰ることになって、明確ゼミへ行くときも、足取り軽やかだったのに。
でも、実柚乃ちゃんのことなんて、今言えないよね。
「真美ちゃんってさ、付き合ってる?わたし、付き合ってないけど」
「ええ?付き合ってないんですか!?」
わたしは、オリンピックの時を思い出した。
あれは、中間テストのオリンピックって企画だったんだけど。
秀花さん、すごく仲良しな男の子いたのに。
「わたし、受験するから別れたのよ。だって、付き合ってる暇ないし、寸前で別れるのもイヤじゃん?だから」
だけどわたしは、あえて相手を聞かなかった。
秀花さんの瞳に映っているのは、悲しげな気持ちだったから。
もしかしたら、秀花さんの心かなって思ってしまったの。
実柚乃ちゃんにシュークリームって言われて、悲しいに決まってるもの。
「真美ちゃん受験する?」
「はい。私立青山野学園です」
「マジか!わたしと一緒じゃ〜ん!タメ口でいいからさ。ね?」
タメ口って、敬語じゃないののことだよね。
何だか、嬉しい。
今日初めて話したのに、タメ口で仲良くさせてくれるんだもの。
「秀花、その子誰?」
あ、オリンピックの時にわたしのとなりにいた子だ。
もう、学校着いたんだ〜。
「初めまして。多田本真美です」
16.ふたりともかばう!
出席確認の時、ようやく実柚乃ちゃんが来た。
ふーちゃんは、実柚乃ちゃんだと分かった瞬間目をそらすっ!
わたしも、ちょっと目をプイッってやっちゃったから。
みんなが、わたしとふーちゃんと実柚乃ちゃんに注目っ!
晴奈ちゃんは、あったこと知ってると思うんだけど。
「杉田さん、多田本さん、川西さん。後から先生のところへ来なさい」
すると、実柚乃ちゃんの表情はひきつるばかりっ!
だって、この原因って実柚乃ちゃんだもんね。
本当のことを話さなくちゃいけないとなると、実柚乃ちゃんは泣き出した。
「川西さん、とりあえず座って。後から聞くから」
前田先生は、実柚乃ちゃんをなだめるんだけど、実柚乃ちゃんは、わたしとふーちゃんを指差す。
「あのふたりがいじめてきてっ!わたし、怖かったから家に帰ってっ!」
いじめですって?
わたしもふーちゃんも、いじめてはないでしょ。
どうしていじめなんかに…。
「皆さんは、放課にしていてください。三人の人たち、相談室へ」
それでわたしたちは、6年相談室へ移動することになった。
前田先生は、思いっきり手を机にドンと叩く!
「まずは杉田さんから聞きますよ」
「はい。わたしは、いじめたつもりはありませんでした。ただ、実柚乃さんに、双子の妹の悪口を言われたので、カッっとなってしまいました。多田本さんは、一緒にいただけです」
いやいやいや、違うよ!
ふーちゃんだけに責任を負わせるようなこと出来ませんからっ!
「本当なの?多田本さん」
「はい。多田本さんは、全く関係ありませんから」
ちょっ、実柚乃ちゃん?
わたしを、ふーちゃんも実柚乃ちゃんもかばった。
どうして?
「多田本さん出なさい」
わたしの話も聞いてもらえず、わたしは相談室から出された。
17.涙、涙、涙っ!
教室へ戻ると、涼太くんが飛ぶように走ってきた。
「多田本さん、ふみちゃんは、大丈夫なのか?」
わたしは、追い出されたこと、ふーちゃんがかばったことを説明した。
すると、やっぱり涼太くんは冷や汗。
だってねぇ。
ふーちゃんの味方のわたしが、追い出されたんだものね。
「誰か、証人になる子いないの?」
わたしは、頭をフル回転させた。
今までにないくらい。
これが、テストでも出来たらいいんだけど。
…って!
そんなこと考えてる場合じゃない。
「いないんなら、多田本さん相談室へ行って!ふみちゃん、優しいから負けちゃうだろ!」
仲間、仲間…。
あ、あの人だ!
わたしは、秀花さんの教室に思いっきり走った。
「あ、真美ちゃん」
秀花さんが手を振ったけど、降り返さずに腕をガシッ!
ピンチだから、来てっ!
目線で伝えて、相談室に走る。
「証人を連れてきました。わたし、関係ないくらい普通の人じゃありませんからっ!」
わたしが叫ぶように言うと、秀花さんには熱気が伝わった、よね?
秀花さんは、わたしが元座っていた椅子に座った。
わたしは、椅子がなかったので立ったまま。
秀花さんが、本当のことをどんどん話していく。
ふーちゃんは泣いてるし。
実柚乃ちゃんはうつむいてる。
自分が嘘ついたってバレるもんね。
「ふみは悪くありません」
前田先生は、実柚乃ちゃんと話をするようで、わたしたちは相談室を出た。
瞬間のことで分からなかったけど、双子の絆ってことかな。
すごく秀花さん、かっこよかった。
「秀花ありがとう。本当に」
ここはふたりにしてあげよう。
と思って、教室に帰ろうとしたけど、わたしの頬にも涙っ?
とりあえず、顔を洗うけどっ!
全然落ちない。
どうして!?
とめどなく涙が出てくる。
グスン、グスン。
「まぁちゃぁん」
「ふぅちゃぁん」
わたしは、ずっと廊下でふーちゃんと泣いた。
まいちゃん、せいらだよ!教えてくれてありがとね。
全部読んだよ!
17話、私も涙、涙、涙っ!
続きが、た・の・し・み♡
いえいえ。
読んでくれてありがとー!
じゃあ、話し合いますか。
いーえ、読んでて楽しかった!
ん、そだね!
ありがとう!
ちなみに、誰推し?
リレー小説進行にする?
やっぱり無難に真美ちゃんかなぁ〜
可愛いしぃ〜健気だしぃ〜
コラボのやつ?いいんじゃないかな?
たぶん、リレーが一番やりやすいと思う。
…コラボって4人の小説を、ってこと?だよね?
レミちゃんは読んでくれたけど…まいちゃんとリリカちゃんは…読んだ?
やっぱり真美ちゃん!
リレーだよねぇ。
何を読めばいいの?
教えて教えて!(知らなくてごめんなさい)
私の小説だよ!
254:まい◆8Q:2017/07/29(土) 13:14オーケー、みるみる!
255:まい◆8Q:2017/07/29(土) 13:15 ごめん、題名教えてもらってもいい?
ごめんなさい!
>>255
分かった、かな?
わかったよ!
すっごく自然で、続きが楽しみ。
なら、よかった!
…お、お褒めのお言葉、有り難く頂戴致しますわ、オホホホ…。
>>258
ごめん、照れ隠し…///
セイラちゃんカワイイ!
リレー小説って、私達が書いてるストーリーをコラボ?
それとも、新ストーリー?
18.驚きの関係
実柚乃ちゃんは、反省したらしくて、渋々か知らないけど、ふーちゃんと秀花さんに謝ったんだって。
よかったのかな?
「ふみちゃん!」
涼太くんが、泣き止んで、わたしのとなりにいるふーちゃんのところに飛ぶようにして来る。
みんな、もちろんこっち見るよね。
涼太くんって、ふーちゃん好きなのかな?
幼なじみにしても、この心配よう。
ねえ。
「真美ちゃん、ごめんなさい。実柚乃のせいでこんな風になって」
「大丈夫。反省したらいいよ」
実柚乃ちゃんはまだ泣いていたけど、わたしはふーちゃんが気になってたまらなかった。
顔が赤いふーちゃん。
そんなふーちゃんを心配する涼太くん。
「お似合いカップルよねぇ」
え?
カップル?
わたしは、ゆっくり実柚乃ちゃんを見つめる。
「真美ちゃん知らなかったの?ふたりが付き合ってること」
…えーーー?
全然知らなかったよ!
「昨日、涼太くんからふみ会長に告ったんだって」
そうだったのぉーー!?
ふーちゃん、教えてよ〜。
でも、わたしが知らないのに、どうして実柚乃ちゃん知ってるの?
もう一度、実柚乃ちゃんを見つめる。
「昨日、みんな大騒ぎだったよ。真美ちゃんに電車で言わなかったっけ」
言ってない、言ってない。
わたし知らないもの。
カップルだと思ってふたりを見ると。
「大丈夫よ。気にしてくれてありがとう」
ふーちゃん、顔真っ赤ーっ!
>>260
かわいくなんてないよぉ〜!///
ん〜、私はどっちでもいいけど…。
>>261
え!!!!!
しょ、ショーゲキ!!!これは、ビックリするね…!
レミリアたちにも聞かなきゃだよね。
とりあえず、レミリア呼ぼう!
感想ありがとう!
そだね。
うん、レミちゃん呼ぼうっ!
いえいえ〜
セイラちゃんたちの感想で元気付けられるよ〜。
ガルト(ガールズトーク)のところで、レミリア呼んできたよ!
>>265
そんなぁ…思ったことそのまま言ってるだけだから!v(*'-^*)b
そう思っててくれて嬉しい(涙)
268:Seira◆V6:2017/07/30(日) 08:54 >>267
あはは、そんな感涙するほどじゃ…笑
いえいえ、励みになりますから〜
270:レミリア◆3es:2017/07/30(日) 17:38ヤッホー!もう少しで、>>300だね!頑張ってね!
271:まい◆8Q:2017/07/30(日) 19:24 レミリア、ありがとー!
もうすぐ、レミリアのスレも200じゃん!
レミリアも頑張ってね!
19.スマフェスの力で
部活の時間。
文化部だけは私服で出来るけど、運動部は部T(部活Tシャツ)だから、運動部は今日ないんだ。
「ふーちゃん、教えてくれればいいのに。わたし、涼太くんと付き合ってるなんて知らなかったよ」
ふーちゃんが、スマホを片手にわたしを見る。
最近、ふーちゃんはスマホを買ってもらったらしいんだけど、スマホでフェスティバルやってるんだって。
「でもさぁ、帰ってからのことで、真美ちゃんがね?みんなにバレたから、きっと真美ちゃんも知ってるかと」
全然知らないよ〜。
チロッっとふーちゃんのスマホを覗き込むと、スマフェス争いと書いてあり、ルールが書いてあった。
明確スイーツ研究部、解散?
解散しない?
とあった。
明スイがスマフェスで争われるの?
「隅木田先輩が、明スイ解散って言ったから、みんなが騒いでて、このニャンニャンフェスティバルってアプリで、争うの。わたしは、もちろん続行を願うわ」
これって、スマフェスって言われてるのもあるけど、ニャンフェスって呼ばれてるのもあるんだよね。
スマフェスで、明スイ解散か決められるなんてイヤだ。
「ふーちゃん、勝ってほしいけど、わたし、絶対解散させないから」
強い目線でふーちゃんに言うと、わたしは中等部料理部へ行った。
隅木田くんに、しっかり話すために。
「失礼します。隅木田先輩いますか?ちょっとうかがいたいことがあって来ました」
料理部の部員さんの中に、隅木田くんがいて、一瞬こちらを振り返った。
となりの子に何かを話して、道具を置いてこっちに来てくれた。
「隅木田先輩、ちょっとこちらに来ていただいてもいいですか」
部員さんがいたので、敬語で話す。
料理部前ラウンジに移動すると、わたしはきっとみすえた。
「どうして明スイ解散になっているのか、詳しくお願いします」
「ごめんなさい、僕、明スイに迷惑かけてばかり。多田本さんといる資格なんて、ないよ」
「資格ですか?あります!わたし、隅木田くんといたいです。ずっと!」
わたし、隅木田くんや坂宮、矢本くんがいてこそ。
明スイが成り立っていると思う。
わたしはいなくてもいいかもだけど、隅木田くんはいなきゃ…!
「お願いします!わたしにチャンスをもう一度ください!戻ってきてください、お願いします!」
わたしが何秒か頭を下げていると、隅木田くんが鼻をすすった。
ちょっと顔を上げると、目にちょっと涙を浮かべてる。
「一度じゃなくていいよ。明スイに、戻っていい?…またつくって」
「はい!」
わたしたちが、ハッピーエンドになっているところで、気付かなかったけど、料理部でひとり、バッドエンドになっている人がいた。
「チッ、せっかく解散するところだったのに」
20.元に戻って
その日、また普通クラスに戻って授業を受けた。
教科書とか元に戻してね。
だから、難しくなくて発言できるっ!
今日は明スイの集合もかかってるわけだから、すっごく嬉しい。
「真美ちゃん、スマフェスで、明スイ解散か、解散しないかってフェスしそうだったけど、解散しないって明スイで決めたらしいね。さすがっ!」
わたしは、明スイを改めて誇りに思うようになったんだ。
隅木田くんとの話し合いを通してね。
きっと、もうこんな風になったりしないから。
そう断言できる。
「ありがとうございましたっ!」
授業が終わり、談話室へ飛んでいくように走っていくと、もうみんなが座っていた。
矢本くんは、ルービックキューブやってて、隅木田くんはスマホ。
坂宮はサッカーボールを足でコロコロ転がして。
「多田本ですっ!遅れてごめん」
隅木田くんが、となりに置いてあったクッションを退かしてくれた。
わたしは、頭を下げながら隅木田くんが空けてくれたところに座る。
「みんな、本当にごめんなさい。好き勝手に解散なんて。でも、絶対もうしないから」
隅木田くんがみんなを見回すと、わたしたちは大きくうなずく。
「ここで、だ。明スイ始動だ。何をするかと言うと。第1弾明スイパーティーだ」
第1弾明スイパーティー?
それは、参加者を集めて、明確ゼミの5階のパーティー会場でパーティーを行うんだって。
「わたし、賛成です!」
気付かなかったけど、談話室にひとりでいる女の子。
この子がボソッっとつぶやいた。
『わたし、反対』
21.チラシ事件
それから、チラシを明確ゼミのカウンターに置かせてもらった。
安心して、実柚乃ちゃんと電車に乗る。
「実柚乃は行けないの?実柚乃、明スイのパーティー行ってみたい!」
「いいと思う。実柚乃ちゃんも、チラシあげるね」
そして、翌日。
明確ゼミのカウンターは騒ぎになっていた。
明スイのチラシの取り合い?と思って、チロッっと覗いてみたの。
そしたら、『明スイ解散』と書かれたチラシが入っていた。
ええ?
わたしは、カウンターへ行って確かめてみた。
「皆さん、どういうことですか?明スイは解散しません!チラシをすり替えた人は誰ですか?」
すると、わたしと同じように、坂宮も駆けつけてくれた。
「お前ら、誰がやったんだ!」
坂宮は、鬼の形相でみんなを見回す。
みんな、ビクン!
もちろんわたしも、ビクン!
「ごめんなさい、わたしです。明スイが解散するって悲しくて、みんなに伝えたくて」
坂宮は、その人をにらんだ。
そういうことなら、別に怒らなくてもいいんじゃないの。
「お前、俺らが作ったチラシ捨てただろ!」
「だからぁ、ちょっと前に作ったのかと思ったからぁ」
あ、そういうことね。
わたしは、その女の子ににっこり笑いかけたのに。
坂宮ったら、その女の子をにらむっ!
「ウソツキ。いいか?明後日、5階のパーティー会場で明スイパーティー第1弾を行う。来たい人は、明スイメンバーの誰かに言うこと」
坂宮が説明している時、女の子はすごく笑っていた。
クスクスクスクスって。
何が面白いのか分からないけど、坂宮が可笑しかった、の?
後日。
「明確スイーツ研究部メンバーです!皆さん、拍手!」
パーティー会場で、隅木田くんを先頭に行進。
うーん、カッコいい!
梨歩佳さん、司会、ありがとうございます!
「ヨッ!明スイっ!」
「真美ちゃーん」
ふーちゃんと涼太くんカップル。
綾、実柚乃ちゃんも来てくれた。
みんなに手を振りながら、前に立つ。
さぁ〜、明スイ活動〜!
22.笑顔ばっかり
梨歩佳さんの司会で、お菓子食べ放題タイムとなった。
わたしたち明スイメンバーは、あいさつに行くの。
まず、ふーちゃんと涼太くんペア。
「ふたりとも、来てくれてありがとうございました。多田本真美です。どうぞお楽しみください」
ふたりに敬語を使うのは不自然だけどね、接客決まりだから。
ふたりにお辞儀して、綾のところへ行く。
「来てくださり、ありがとうございました。多田本真美と申します。どうぞお楽しみください」
綾の次は、実柚乃ちゃん。
知らない子たち。
あいさつに回るだけで、わたしはすっごくいい気分。
にっこり笑顔で、このパーティーを支えてくれた梨歩佳さん。
警備してくれた佐藤さん。
見回りの鈴木さんにもあいさつする。
「真美ちゃ〜ん!」
ふーちゃんが手を振ったので、わたしはあいさつを中断してふーちゃんのところへ行った。
ふたりとも笑ってて嬉しい。
怒ってる人は、いないよねっ!
わたしは、ふーちゃんに笑いかけたけど、ひとり。
「バッカじゃないの」
(つづく)
あとがき
まい
こんにちは!
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイはいかがですか?
文才がないもので、面白い作品が上手く書けません。
見てくださっている方々、お優しい目でごらんいただけたら嬉しいです。
今回は、解散間際、謎の女の子の出現がありましたね。
あの子、恐るべし存在!
コメントの件です。
ただいま9巻ですが、10巻の人物紹介を書くまでの間に、コメントをくださったら、返していきます。
ですが、物語中は、コメントできないかもです。
ご了承お願いします!
私たち、コラボすることになったのも覚えておいてほしいです!
リリカ先生、セイラ先生、レミリア先生とのコラボ。
リリカ先生とのコラボです。
見てね!
では、ちょっとコメントコーナー。
セイラちゃん!
コメントありがとう。
読んでくれて本当に嬉しいよっ!
レミリア。
いつもコメントありがとう!
皆さんも、コメント、質問お願いします!
ガンガン答えていきます!
では、キリのいい10巻の予告!
謎の女の子の正体が明らかに!?
でも、それと同時に、新・明確スイーツ研究部結成!?
では、次回会えたら嬉しいなっ!
じゃあね!
わぁ〜〜!!終わってるぅ〜〜!!
お疲れさまでした、まい先生〜!
て・い・う・か!
最後の『バッカじゃないの』て誰が言ったの?!
文才、なくないですから!!!
せいら先生…照れる…///
先生て付けてもらえるようなキャラじゃないよ、私は〜
いえいえ!面白いんだもん!
超・楽しみにしてます!
これからも頑張ってねっ!
まいりん来たよ〜
小説凄いね…天才だァまいりん…。。
はじめまして。薫です。
明スイ、面白かったです!
表現方法など、参考にさせていただきたいことがたくさんです!
私は真美ちゃん推しです!
でも、ハルちゃん&ヒマちゃん&ユリちゃんも、なんだかんだ良い子で友達関係の参考になることもたくさんで………。
あと、コラボの件も、わたしの好きな先生方のコラボで凄く楽しみにしてます!応援していますね!
わたしは「解決事務所 パワフル☆ピース」という小説を書いているのですが、我ながらまだまだで。わたしもいつか憧れの先生方とコラボできるような小説をかきたいです!
って、図々しい私事ばっかりごめんなさい。
あの明スイ反対の子のこれからや、恋の進展est、楽しみにしていますね!
頑張って下さい!
お返事書かせてもらいます!
セイラ先生!
あなたの作品はすごいよ!
文才、私にもあるのかなっ?
コメント、ありがとう!
これからも、真美ちゃんと頑張っていくので、応援よろしく!
かのちゃん!
コメントありがとう〜♪
励みになるよっ!
頭は良くないけど、小説は頑張っていくぜ!
これからも、応援よろしくお願いします!
薫先生!
読んだことありますよ、その作品。
私も、コメントさせていただきます♪
コラボ、薫先生ともしてみたい…!
本当にありがとうございます!
これからも、真美ちゃんや明スイ、応援してくださると嬉しいです。
よろしくお願いします!
まい先生
返信ありがとうございます‼
解フル☆(解決事務所 パワフル☆ピースの略称です!)へもコメント本当にありがとうございました‼言葉の一つ一つが励みになります!
コラボも、よろしければまたやりましょう!
いつでも引き受けます(笑)
まい先生、今は他の先生方とのコラボでお忙しいでしょうし。
あと、もしよければタメ口で話してもいいですか?
わたし、まい先生より1歳年下なのですが…………
執筆、お互い頑張りましょう‼
薫先生。
夏休みの宿題、コラボ、部活と両立できてますので、大丈夫です。
ご心配ありがとうございます。
私の方も、いつでもコラボ出来ますので、薫先生の準備出来次第報告してくださったら幸いです。
タメ大丈夫です。
では、お互い頑張りましょう!
まい先生、ありがとう‼
コラボ、ぜひやろう!
贅沢言わせてもらっていいなら、解決事務所の1話(最初の悩み相談)が終わってからがいいな。
その方が話も進めやすくなるし!
でも、物語のエピソードとかは考えていいかな?
どんな風な話にするか考えて、解フル☆1話が終わったらはじめ、って感じがいいかも。
なんか私の意見ばっかりだけど、意見あったら言ってね!
あと、部活、宿題優先で大丈夫です!
薫先生とのコラボ楽しみです!
1話終わってからでいいですよ!
私のコラボ作品は、*レインボーハッピー*でお願いします。
二度目のコラボは、他のにします。
*レインボーハッピー*も、一巻が終わったらでいいですか?
ありがとうございます!
でも、そろそろ終わるので大丈夫です!
まい先生、こっちもすぐ終わらせるから大丈夫!
わたしもコラボ楽しみだよ!
じゃあ今回は、『*レインボーハッピー*』と『解決事務所 パワフル☆ピース』のコラボだね‼
じゃあ、お互い1巻終わったらまた話そう‼
『*レインボーハッピー*』と『解フル』のコラボ、楽しみ。
じゃあ、次回から話し合いは『*レインボーハッピー*』でやろ!
お互い執筆頑張ろ!
『ここは明確スイーツ研究部!10』
人物紹介
多田本 真美
目立ちたくないを意識している小学6年生。明確ゼミナールに通う。
坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。
矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。
隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。
1.我らが児童会長
初等部のみんなの前で、お辞儀。
わたし、多田本真美。
れっきとした、ここ、私立彦宮学園の初等部児童会長になれましたっ!
「これから、杉田ふみ元児童会長に続き、わたしが後期児童会長を務めますので、ご協力よろしくお願いします」
またお辞儀して、司会カウンターへ戻る。
ここからは、わたしの司会で全校集会が行われるの。
責任重大だけど、児童会長として、頑張るぞっ!
「次に、前田先生から連絡があります。お願いします」
前田先生にマイクを渡して、カウンターからお辞儀する。
はぁ〜、寒い。11月の真ん中くらい。
制服の上に、みんなセーター着て登校してた。
わたしも、黄土色のセーターを着て、寒さを凌いでるよっ!
「第2次部活変更委員会の皆さんは、このあと後ろに集まってください」
はぁ〜、5月に一度あって華道部に入部したけど、またかぁ〜。
中学校、高校、大学を受験する6年、3年は、部活に入らなくてもいい。
わたしは、勉強に専念するため、部活は入らないんだっ!
つまり、華道部でキリをつけておしまい。
もう、どんどん終わっていってしまって、何か悲しい。
来週は、秋の遠足へ行く。
再来週は、文化祭の後に演劇会。
そして、来月の初めは修学旅行。
修学旅行から次の週は持久走大会。
その後日、期末テスト。
あ、ちなみに、中間テストは29位と上がったの!
結構いけたんだ!
「これで、全校集会を終わります。各先生の指示に従って、放課にしてください」
わたしがマイクに向かって吹き掛けると、先生がワアッっと動き出した。
低学年の子は、ワイワイガヤガヤ。
「では、片付けをしましょう」
わたしが児童会メンバーの方を向く。
秀花さんは気合い満々だけどっ!
「ちょっと、5年生?やりますよ」
「は〜い」
もう。
5年生なのに、やってくれない男の子の戸部くん。
5年生なのに、すっごくやってくれる河合さん。
同じ華道部の5年生だよっ!
「真美先輩、やりましょう。戸部くんは、先生に怒られるだけですから」
河合さん、すごい冷静。
まあ、いいや。
わたしの責任じゃないもんね!
2.私立青山野学園
教室に戻ると、机の上にパンフレットが置いてあった。
私立の中学校の。
すぐ、青山野学園を探す。
制服のデザイン、変わるんだ。
変わったデザインの方が、カワイイ!
「多田本さんって、青山野学園受けるの?」
となりの席になった涼太くんが聞いてきた。
涼太くんとは、青山野涼太くん。
ふーちゃんこと杉田ふみちゃんの彼氏なんだって。
ふーちゃんの幼なじみでもある。
それで、ふーちゃんっていうのは、最近遊んでる子。
さっきも出てきたけど、前期児童会長だよっ!
そして、元学級委員長。
「そうだよ」
「じゃ、俺と離れるな。残念」
そうだねぇ。
あんまりみんなと離れたくないもんねえ。
青山野学園って、涼太くんのおじいちゃんが校長先生なの。
だから、結果涼太くんに聞けば、分かることがいっぱい。
「ふみちゃんは、東大付属へ行くって言ってた。俺と一緒」
ふたりで東大付属行くんだ。
わたしたちと、すっごく遠くまで行くんだね。
あんまり会えないね。
「パンフレット見ましたか?そろそろ親と、受験するかしないか考えてくださいね。もう決めた人は、このあと先生のところに来てください」
前田先生が入ってきながら言った。
実柚乃ちゃんっていう、わたしが通っている明確ゼミナールのとなりの料理教室に通ってる子も、青山野学園受けるって言ってた。
秀花さんも。
「お互い頑張ろうな」
「うん!」
わたしは、涼太くんと前田先生のところに行きながらうなずいた。
待ってましたー!!
10も頑張ってくださいね、まい先生!!
まい先生、ついに真美ちゃんの進路も動き出すんですね!
コラボの打ち合わせの件もOKです!
*レインボーハッピー*のスレ、また行くね!
りの、ありがとう!
ぜひ真美ちゃんを応援してね!
薫先生、進路もねぇ。
グッっと進んでく予定だよっ!
レイハピのスレも良かったら読んでほしいな!
じゃあ、明日更新予定だよ。
楽しみにしててねっ!
もう書いちゃうよ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
3.勉強会!
もらった紙は、受験する学校を書く紙だった。
もう決定だって。
絶対に青山野学園受ける。
そして、パアッっと輝く!
「多田本さん、また今度、ふみちゃんと俺と、こいつと、」
涼太くんが、わたしの前の席の桜庭くんを指差す。
「勉強会しない?」
受験するために勉強会っ!
チラリと桜庭くんを見る。
ちょっと苦手なんだ、桜庭くん。
今は亜子ちゃん苦手じゃないんだけどね、裏切られて。
ちょっと前に仲直りしたんだ。
その亜子ちゃんと付き合ってて、亜子ちゃんと仕組んでた子。
だから…。
「多田本さん、本当にごめんなさい。俺、結構前に謝っただろ?」
桜庭くんも、あの日のこと思い出してるのかな。
わたし、いつまで経っても、桜庭くんは許せないかも。
ごめんなさい。
「いいよ。国語だったら教えられるから」
涼太くんは数学得意でしょ。
ふーちゃんは、主に英語。
桜庭くんは理科。
わたしは国語ってところ。
社会は何とかなるし、ねぇ。
「じゃあ、明日、俺の家来て」
ごめんなさい、わたし、ふーちゃんの家知らない。
つまり、涼太くんの家も知らない。
そのことを伝えると、涼太くんはちょっと笑った。
「そっか。じゃあ、俺とふみちゃんで迎え行くよ」
「あ、ありがとう」
ちゃんと、ふーちゃんも入ってる。
涼太くんがひとりでわたしの家来たらの話だよ?
ウワサになっちゃうし、浮気になっちゃうもんね。
それに、ふたりの時間を大切にね。
4.新明確スイーツ研究部?
翌日。
約束の時間に家の外で待っていると、ふーちゃんと涼太くんが来た。
と、思ったら。
「多田本真美さん、この前はチラシの件ごめんなさ〜い」
あ、あの時の女の子!
チラシを解散って書いたチラシに置き換えた女の子だ。
「いえいえ。お気になさらず」
「多田本真美さん。わたしたちの明確スイーツ研究部、楽しみにしててくださいね」
「どういうことですか?」
その女の子はクスッっと笑って、駅の方に歩いていった。
わたしたちの明スイ?
あの子が創り上げているんじゃないのに、どうして…。
「まーちゃん、こっちよ」
女の子が行った駅の方から、ふーちゃんが手を振っている。
となりには、私服姿の涼太くん。
涼太くんの私服を見たのは、二度目かな。
ふーちゃんたちと遊園地行ったから。
「おはよう!」
ふたりの方に駆けると、電柱の隅に女の子がいた。
作り笑いで行くけど、笑えない。
わたしは、方向を変えて女の子の方に歩く。
「何の用ですか?」
「フフン。わたしの名前は、俣野コヨって言うの。新明確スイーツ研究部メンバーよ」
新明確スイーツ研究部って何なのよ。
俣野コヨは、ヘンな笑みを残して足早に去っていった。
「ちょっと、まーちゃん、どうかしたの?あの子誰?」
「うんん。何でもない」
「まーちゃん、それじゃ返答になってないじゃない。あの子誰なの」
いつもは優しいふーちゃんがキッっとしている。
昔の児童会長のときだ。
「ふーちゃんには関係ないんだから、いいじゃないの」
おー!
なんか進展キター!
楽しみにしてる!
5.突然ケンカ!?
わたしもふーちゃんをにらんだ。
すると、涼太くんはわたしたちの間に割って入った。
「まーちゃんのこと考えて、助けようと思ったのに」
ふーちゃんの頬には涙が伝っていて、いつの間にか涼太くんの胸の中。
涼太くんは、ふーちゃんの背中を優しくさすっている。
わたしの、せいだ。
こんなことしなければ。
うんん。
違う。
コヨが来なければよかったんだよ。
「ふーちゃんを巻き込みたくなかっただけ。わたしは悪くない」
「わたしを守ろうとしないで。だからまーちゃんは緑川さんにも嫌われたのよ」
「晴奈ちゃんには嫌われてないし」
そうよそうよ。
晴奈ちゃんは幼なじみなんだからずっと味方に決まってる。
「ふたりとも落ち着いて。勉強会行くよ」
「涼太!この雰囲気で行けないわよ。わたし帰るっ」
ふーちゃん…!
涼太くんは、わたしとふーちゃんの行った方を見比べる。
わたしにお辞儀して、ふーちゃんを追いかけた。
「真美、大丈夫?」
わたしの後ろには、晴奈ちゃんが立っている。
にっこり笑いかけてくれて、わたしはすごくみじめになった。
もう…!
「泣いていいよ。わたし、真美のこと嫌いじゃない。大好きだよ」
わたしは、今までで1番くらい泣いた。これからどうしたらいいの…?
晴奈ちゃんとは、もういられないよ。
避けられたくないもん。
あんなこと言ったから。
学校一緒になるから、実柚乃ちゃんといようかな。
すると、ちょうど前を通りかかった初香ちゃんたちに事情を話した。
「真美ちゃんさ、良かったら初香たちのところ来る?晴奈ちゃんといたかったらそれでもいいし、ふみちゃんといたかったらそれでいいから」
「いいの?」
初香ちゃんはうなずいてくれて、みんなに確認をとって、初香ちゃんたちと遊ぶことになった。
真美ちゃん、またまたトラブルに巻き込まれちゃった!
薫先生、コメントありがとう。
楽しみにしててね。
6.生まれ変わり?
初香ちゃん、絵理乃ちゃん、さやかちゃんの3人グループ。
そこに、わたしも混ぜてもらった。
今日も遊ばせてもらったけど、モヤモヤが消えなかった。
「真美ちゃん、無理しなくていいからね」
初香ちゃんはそう言ってくれるけど、全然無理してない。
むしろ、すごく楽しんで、る…。
多分だけどね。
「絵理乃って言いにくくない?みんなエリちゃんって呼んでるからエリちゃんでいいよ」
「じゃあ、エリちゃんって呼ぶね」
初香ちゃんは、自分のこと初香って呼ぶでしょ。
エリちゃんも、自分のこと絵理乃って言ってるでしょ。
さやかちゃんは、さやって言ってる。
わたしが、自分のこと名前で呼ばなくなったのは、小2からかも。
七井さんっていう、学級委員長の、亜子ちゃんたちと遊ぶ前に遊んでた子がわたしって言ってて。
それがカッコよくて真似したんだったかな。
わたしも、真美って言お。
そっちの方がカワイイ。
かわいくなりたいわけじゃないけど。
「真美ちゃん、バイバ〜イ」
最後にさやかちゃんと別れて、駅からわたしの…真美の家へ帰る。
「ただいま」
「お帰りなさい。勉強捗った?」
「うんん。ちょっとふーちゃんとケンカしちゃって、初香ちゃんと遊んできたの」
おばあちゃんに言って、「どうして?」と聞かれたので、事情を話した。
途中涙ぐみながらね。
仲直りしたいけど、したくない。
真美は悪くないから、真美が謝る必要はないっ!
「コヨって不思議な子だねぇ。おばあちゃんの幼なじみも、コヨって子だったよ」
コヨ、たまたまかな。
おばあちゃんは、すごく幼い子のような目をした。
コヨさんとの思い出を思い出しているのかな。
「コヨは、小代って書いたよ」
おばあちゃんが紙に、小さいの小と、時代の代を書いた。
へぇ、小代って昔っぽい字。
真美も、そういう字好き。
「コヨとはずっと遊んでたんだけど、12年前亡くなったんだ。俣野って名字だったよ」
俣野コヨ。
名字も名前も同じ。
そんなたまたま、ある?
「コヨも、俣野って名字だよ」
「そうかいそうかい。じゃあ、コヨの生まれ変わりみたいだねぇ」
生まれ変わり…。
コヨさんとコヨが?
ピンポーン
真美が出ると、コヨが立っていた。
「ちょっと、あんたのせいで、真美ケンカしたのよ!」
「多田本真美さんのことは関係ない。どうしてわたしの話してるの」
「おばあちゃんの幼なじみが俣野コヨさんだったからよ」
真美は、コヨをキッっと見据える。
きっとだけど、コヨっていいキャラじゃないよね。
真美たちの友情を切ったんだもの。
おもしろい!
まいの小説、これからも応援してるね!
7.昔のコヨ
「コヨって、小さいの小に、時代の代って書くの?」
「いきなり呼び捨てか。わたしも呼び捨てで呼んでみよう、真美」
溜めなくていいから、さっさと答えてよね。
今日のうちに何回にらんだんだろ。
真美は、コヨをにらんだ。
「そうよ、小代よ。どうせ、真美の祖母の幼なじみの生まれ変わりって言うんでしょ」
何で分かるんだろ。
ちょっと疑問の目でコヨを見る。
コヨは笑いながら、戸を閉めた。
聞かれたくない、話かな。
「わたし、両親に虐待受けてて、養護施設行ったの。本名は和江。だけど、小さい時だったから、名前も変えられたの。本当の俣野コヨさんが亡くなった生まれ変わりって」
コヨ、大変なんだ。
真美、勝手に悪いヤツって決めつけてた。
ごめんなさい、コヨ。
きっと、自分を本当に育てたいと思って引き取ったかもしれないけど。
記憶がないっていうのを利用してコヨにされた恨み、ちょっとはありそ。
「わたし、和江で生きたい。コヨはイヤだ」
本当の自分で、生きたいよね。
真美だって、いきなりコヨになれって言われてもイヤだもん。
「おばあちゃんに相談して、家来る?絶対楽しいよ」
「イヤだ。わたしは真美の敵。敵の家なんかイヤだ」
敵っ?
真美は、いきなりコヨが話しかけてきた時のことを思い出した。
「今回の用は何よ」
「別に。じゃ」
そう言い残して、コヨは真美の家を去っていった。
リリカ、ありがとう!
300行ったー!
今から、
料理・グルメ板に、
『明確スイーツ研究部で出してほしいスイーツ』
というスレを建てます。
そこから出そうかと考えてます。
良かったら行ってください。
300おめでとう‼
真美ちゃん、一人称変えちゃうの⁉
あ、『明確スイーツ研究部で出してほしいスイーツ』にも行ってみるね!
ありがとう!
みんなのコメントのおかげだよ!
一人称は、初香ちゃんたちみたいになりたくて真似してるんだよ。
ぜひ書いてください!
出させていただきますから。
8.ついに宣戦布告!
真美は、寝る寸前、まさかと思ったけど、カーテンをこっそり開けてみた。
コヨがいた。
パジャマのままだったけど、コヨは女の子だったからそのまま家を出た。
「コヨ」
敵だったけど、ちょっとコヨがかわいそうで、優しい目を向けた。
初めて、コヨが笑った。
「真美気付いたんだ」
「うん。コヨがいる気がして」
「わたしのことをそんなに気にかけてくれた人は真美だけだ」
真美だけ?
コヨは、さっきよりもしっかり。
くっきり笑った。
カワイイ…!
「わたし、俣野コヨは、新明確スイーツ研究部のメンバー。真美は、旧明確スイーツ研究部」
旧明確スイーツ研究部?
新ってことは、真美たちの明スイは途絶えたってこと…?
疑わしい目でコヨを見る。
「そう。旧明確スイーツ研究部は好きにしてくれればいいの。ファンもいない。今の注目は、新明確スイーツ研究部なの」
「どうして」
「それは、露島くんに聞かないと」
ツユシマくん?
確か、高等部のプリンスって言われてるイケメンが露島だったような。
「そうよ。その露島くん。隅木田くんとの闘いに勝ったから、注目を新明確スイーツ研究部に変えたのかしらね」
闘い?
真美はそんなこと聞いてない。
旧なんて言葉、消して見せる。
この明確スイーツ研究部で!
「旧明スイと新明スイで闘いましょう。勝ったら注目。負けたら解散で」
「ふん。旧明スイなんて突き落としてやるわせいぜい頑張るのよ」
そう言い残して、またまたまたコヨは闇夜に去っていった。
不思議な、子。
9.隅木田くんが知ってること
真美は、きっとひとりで抱えきれないことを聞いてしまった。
おばあちゃんにも、こんなこと言えるわけない。
真美は、隅木田くんに電話することにした。
きっと、隅木田くんなら何か知ってそうだよね。
「もしもし。隅木田です」
ちょっと幼い女の子が出た。
隅木田くんって妹いるのかな?
カワイイ声。
「どちら様ですか?」
「あ、多田本です。隅木田優斗くんいらっしゃいますか?」
女の子が、「お兄ちゃ〜ん」と言っているのがかすかに聞こえた。
やっぱり妹だったんだ。
真美にも、妹ができるんだよね。
「代わりました、優斗です」
「多田本真美です」
隅木田くんがホッっとしたような声をもらした。
真美も、隅木田くんって分かって、ホッっとした。
同時に、ふーちゃんとのことも思い浮かんだんだけどね。
「明スイのことなんだけど、俣野コヨって子がね、新明確スイーツ研究部の話をしてたの。真美たちのは、旧明確スイーツ研究部だって」
「コヨか」
え?
今隅木田くん、何て言った?
コヨに心当たりがあるようなこと、言ってなかった?
真美が必死で考えていると、隅木田くんが何かを思い出したように言った。
「俣野コヨの本名は和江だよね」
「うん」
また、隅木田くんはちょっと考えるように間を開ける。
やっぱり、隅木田くんは何か知ってた。コヨの本名まで知ってるなら、相当知ってそうだよね。
「和江は、俺の従姉妹。きっと、露島っていうやつから誘われたんだろう」
「コヨは、露島先輩に聞かないと分からないって言ってたもの」
露島先輩に、コヨ。
謎だらけだけど、隅木田くんや、本当の明スイなら出来る。
乗り越えられるはず。
「分かった。露島に接近するよ。ありがとう。和江も何か企んでいる」
敵って言ってたもんね。
隅木田くんっていう、従兄弟の敵にはならないよね。
10.私の未来
後日。
彦宮学園へ向かっていると、ちょうど初香ちゃんと会った。
「真美ちゃんおはよう」
「初香ちゃんおはよ〜」
真美って、どんどんケンカして、仲良くしてを繰り返すのかな。
初香ちゃんたちと、ケンカしたくないな〜。
「一緒に行こ、真美ちゃん」
初香ちゃんに誘われて、おしゃべりしながら6年1組へ向かう。
あの時、晴奈ちゃんに聞いてもらってて、初香ちゃんが通ってなかったら。
真美、こんなに楽しくないよ。
本当にありがとう、初香ちゃん。
「真美ちゃんもまた今度一緒に遊ぼうね。初香たちのところ来てね」
「うん!ありがとう。良かったら、また今度真美の家来てね」
赤ちゃんが産まれてからの方がいいかもだけど、機会を見つけて来てほしいもんね。
「初香のお母さん保育士だから、あんまりお母さんがいないときに入れなくて、その時間がないから、ごめんね」
「いやいや、いいよ。保育士ってカッコいいね!」
初香ちゃんは、首を横にブンブン振るけど、本当にカッコいい。
真美もなりたいって思ったり。
教師になりたかったり。
佐藤ななみちゃんっていう、真美が初めて小説書いたのを完結させて、小説家になりたかったり。
いっぱいだよね。
「あ、エリちゃん!」
「初香ちゃんおはよ〜」
エリちゃんがやって来て、三人で教室へ向かう。
あんなことがあるとは知らずに。
あんなことがあるとは知らずにって何?気になる〜
309:みぃ◆8Q:2017/08/07(月) 11:47 かのちゃん、ありがとう!
それは、なんと…???
ネタバレになるからナイショで!
名前変えました、みぃです。
11.コヨがいる!
真美は、自分の机にスクバ(スクールバッグ)を置いて、中身を机に移していると、教室の隅が騒がしい。
美華ちゃんたちグループがいた。
その中に、最近よく見る人影。
「ちょっ、コヨ!?」
この、真美たちの友情を切ったコヨがどうしているのぉ!!
コヨがチラリとこちらを見る。
あの時の、ちょっと古びた服とはうってかわって違う。
清楚なイメージの彦宮学園初等部の制服を着こなしている。
そして、6年生の証のバッヂを付けていたんだ。
途中受験、受かったんだ。
受験する時じゃなくても出来る、途中受験。
普通より難易度も高いし、値段も高いのに。
「真美じゃない。わたし、美華と遊ぶことにしたの。ねえ、美華」
美華ちゃんは、真美に向けたことのないくらい満面の笑みだった。
コヨ、どうして…?
隅木田くんに報告しなきゃ!
真美は、中等部2年生の棟へ移動。
やっと隅木田くんを見つけて、「隅木田先輩!」注目の的っ!
でも、この際いいや!
「俣野コヨが、6年1組にいます!入学してきました!」
宣言するみたいに言うと、辺りがざわついた。
コヨのこと、知ってるのかな。
みんなを見渡した瞬間にそらされた。
何か知ってるに違いない。
「真美ちゃん、ここは何とかするから帰って。児童会長でしょ?初等部の方を見てきて」
隅木田くんは、中等部生徒会長。
きっと、中等部のことはやってくれるはず。
初等部の後期は児童会長6年生だけど、中等部の後期は生徒会長2年生なんだよね。
どうしてだろ。
「真美ちゃん、帰って」
「はい。さようなら」
わたしは、身をひるがえして帰る。
コヨ、一体何をたくらんでいるの?
コヨちゃんどうなっちゃうの⁉
隅木田くん達はなにを知ってるの?
楽しみにしてる!
コヨちゃんは、実は…
(みぃさん、言わない!薫先生、ごめんなさい! 真美)
隅木田くんたちは…
(みぃさーん 初香)
楽しみにしててねっ!
コメントありがとう!
コヨちゃん何企んでるんだろう。。
続きが気になりすぎるよーーー><
小説更新されるのが毎日楽しみω
かのちゃん、ありがとう!
目を通してくれてることだけでもありがたい。
コヨちゃんはね、あの…
(みぃさん!いい加減にしてください!コメントありがとう。これからもよろしくお願いします! 真美)
(こんなみぃさんと真美ちゃん、応援してあげてね! 初香)
(素直な意見でいいから、推しキャラ教えてほしいなっ! 絵理乃)
よ、よろしく…。
12.コヨ出現!
その日、真美は明確ゼミで明スイ会議があるし、勉強しなくちゃいけないから明確ゼミへ向かう。
結局、真美はコヨのことを掴めないまま終わったんだけどね。
隅木田くんが、何か知ってると思う。
何たって従姉妹だもんね。
「実柚乃さぁ、やっぱり彦宮残ることにしたから」
「えっ?」
電車の中で、ボソリと実柚乃ちゃんがつぶやいた。
ど、どういうこと?
彦宮に残るって、青山野学園は受けないの!?
「真美ちゃんは頭いいけど、実柚乃は悪いもん。落ちたくないから、彦宮に残る。ここも私立だからいいよね」
そっかあ。
真美が止められる立場じゃないけど、悲しいな、うん。
みんなと別れなくちゃいけなくて、青山野学園って難易度高いから、受験する人が少なくて。
「実柚乃は、真美ちゃんが青山野学園受けるの応援してるから頑張って!」
降りる駅で降りると、実柚乃ちゃんは明確ゼミのとなりの料理教室へ。
真美は、実柚乃ちゃんを送ってから明確ゼミへ向かう。
「ありがとう、真美ちゃん。帰るとき会おうね〜」
真美は、昇降口に靴を突っ込んで、前に通っていた教室に入る。
毎日コースが良かったのになぁ。
新しく、出来たらいいのに。
「本当に真美とは気が合うわ〜」
「へっ?」
後ろから声をかけられる。
声の主は、最近よく聞いている…。
「コヨっ?どうしてっ?」
「だってねぇ、明スイは明確って付いてるから、露島くんとここへ来たの」
露島くんって…!!
とりあえず、本当の明スイを見せて、コヨたちの偽者の明スイをやめさせてやる!
「まあ、いいでしょ。塾に来るのは、わたしの好きで。真美が言えることではないし」
うっ。
あとちょっとで言いそうだった…。
でも、明スイだけは本当の明スイだけにするんだから!
コヨちゃん何を企んでるのー!
実柚乃ちゃんも青山野学園受けないの?
急展開……………。
続き楽しみ!応援してるね!
コメントありがとう!
コヨちゃん、明確ゼミにも来ちゃったよねえ。
実柚乃ちゃんも自信なくなってるし!
解フルのメンバーで、実柚乃ちゃんを前向きにしてほしいところだよ…!
これからも応援してねっ!
>>317
うん、トウナ達でよければいつでもどうぞ(笑)
続き楽しみに待ってるね!
ありがとう!
コラボで、真美ちゃんと実柚乃ちゃんを前向きに…とかしちゃう?
続き楽しみにしててね!
13.突然バトル!
コヨは真美と同じクラスで、授業中もチラチラこちらを見てくる。
全然集中出来ないじゃん!
一度、コヨをにらみ返したけど、その時はシュンとしたコヨの顔が見えたから、反省した。
「真美ちゃんいる?談話室へ来て」
隅木田くんが真美のクラスに呼びに来てくれて、それと同時にコヨも立ち上がった。
ビックリしたけど、もう授業も終わりで帰るのかと思って気にしなかった。
けど…。
「一緒に行こうね、真美」
コヨはつぶやいて、談話室の中まで着いてくる。
今日は待ちに待った明スイ集合なのに、こんなときにもコヨに邪魔されちゃ困る。
「カズエ」
コヨが振り向いた先は、高等部の露島先輩!
思わずお辞儀。
露島先輩もお辞儀し返してくれたけど、すぐ視線をそらされた。
ガーン。
でも、もしかしたら敵って思われてるかもとか思って、身構えた。
「ハッハッハッ。真美ちゃんは面白い子だねぇ。ぜひ明スイに入れたいよ」
「わ、わたしは、もう明スイに入ってます」
露島先輩は、笑いを止めて真美たち本当の明スイを見据えた。
グッっと身構える。
逆らえない。
先輩だし、高等部の王子様だもん。
「真美ちゃんを賭けて、3つバトルしよう」
ま、真美を賭けて?
その場の空気が重くなった。
真美ちゃんを賭けて!?
気になる(*´ω`*)
みぃの小説、楽しみ!
ありがとう、リリカ!
これからもよろしくね!
14.戦いの項目
そんな…。
真美は、すぐ反論しようとしたけど、坂宮がグッっと前に出た。
「いいだろう。戦ってやろう。戦う内容を教えろ」
何だって真美を賭けるの!?
隅木田くんと矢本くんもやる気みたいだしっ!
「露島くんがやるなら、わたしもやってやるわ」
コヨまで…。
露島先輩がチラッっとこちらを向く。
「お前が戦う内容を決めろ」
「ま、真美がですか!?」
露島先輩はにらみながらうなずく。
明スイに不利な要項は与えたくない。
でも、分かりやすすぎると…。
「さっさと決めれないのか。なら俺が決める。ひとつ目は、明確生にどちらが美味しいか決めてもらおう。ふたつ目は、彦宮学園初等部から高等部に決めてもらおう。ちょうど、どの部の生徒会長もいる」
学園で、真美がどちらに入るか決めてもらうってこと!?
そんな大事というか…。
「みっつ目は、お前が決めるんだ。どの項目も、食べてもらう物には、どちらが作ったと言わないこと。それで戦う。反論する者はいるか」
シーン。
高等部の先輩に逆らうなんてするわけないよね。
「お前は、明スイに入るなよ。お前は見学者だ。話し合いにも入らないようにすること。お前は帰れ」
真美は、渋々家に帰った。
おばあちゃんが怒っていることも気付かずに。
おばあちゃんに怒られちゃうの⁉
325:みぃ◆8Q 『終わる世界でキミに恋する』大好き!:2017/08/18(金) 15:32 薫ちゃん、コメントありがとう!
実はね。
よーく物語を読めば分かるよ!
では、理由をどうぞ。
15.思いがけない言い合い
明確ゼミのスクールバッグを握って家のドアを開けると、おばあちゃんが怒った顔で待っていた。
「ただい、ま」
「真美ちゃん!明スイ活動してたのかい!受験なんだからやめなさいって言っただろう!」
ハッ!
おばあちゃんは、明スイのことインターネットで調べてくれる情報屋。
これくらいのことバレたか。
「ごめんなさい!勉強も…」
「やってないじゃないかい!明確ゼミの先生から言われたよ!ちょっと考え事が多いって!」
あっ…。
明スイのことばっかり…。
「でもね、」
「でもじゃない!明確ゼミへ行っても伸びないなら、ずっと部屋で勉強しなさい!分かったね!?」
「はい…」
おばあちゃんが明確ゼミに電話して、真美は明確ゼミを卒業することになってしまった。
あと、1日行くだけで。
「おばあちゃん…」
「もう、今日は早く勉強に取り掛かりなさい。出来なかった部分を取り返しなさい。おばあちゃんと話している場合じゃないのを知っているのは真美ちゃんだろう!」
初めておばあちゃんに怒られた。
受験勉強しなかった真美が、悪いけどさ…。
ちょっと、言い返しちゃったの。
「仕方ないじゃないの!真美だって、大変なのよ!勉強、明スイ、児童会長の仕事、コヨのことって!」
「明スイはやめなさいって言っただろう?受験なんだから!甘いこと考えてるんじゃないよ!一度学年順位が一位のことがあったって喜んでちゃダメなんだよ!」
「明スイをやるかどうかは関係ないじゃない!別に、これからはいろいろあるから、真美は活動しないし!」
ああ…どうしてこんなこと言っちゃったんだ。
真美のバカッ!
「そんな子だったのかい。真美ちゃんの受験が終わるまで、おばあちゃんは家に帰るよ!」
えっ…。
おばあちゃんは、持ってきていた荷物をまとめて家を飛び出す。
ウソ…待って…。
やめて。
「おばあちゃん、ごめんなさい。ここにいて…」
「真美ちゃんの受験を邪魔しちゃいけないから!勉強しなさい」
おばあちゃんは、キッっとにらんで、車を動かす。
おばあ、ちゃん…!
真美が泣いている頃には、おばあちゃんは家に帰ってしまった。
16.秋の遠足解決!
真美は、お風呂から出終わって、バスタオルに顔を埋めた。
パパは仕事で当分帰ってこない。
おばあちゃんも帰っちゃった。
プルルルルプルルルル
「多田本です」
「もしもし?杉田秀花だけど。真美ちゃん?」
「そうだけど」
秀花ちゃんか。
真美は、出きるだけ震える声を静めて言った。
「どうしたの?」
「あぁ、明後日の秋の遠足の話だけどさ、6年生は、神社巡りに決まりました。校長先生が電話かけたみたいだけど、かからなかったって。どうかした?」
「うんん。ありがとう」
秀花ちゃんは、やっとホッっとした声に戻って、真美もちょっとホッっとした。
校長先生、ごめんなさい。
明後日はいよいよ秋の遠足。
だけど、弁当は手作りか…。
不味そう。
「じゃあ、ね…」
電話が切れて、ベッドにバタッっと倒れ混む。
あーあ。
時間巻き戻したいなーっ。
「もーしもーし!実柚乃でーす」
家の外で、実柚乃ちゃんが叫んでる。
近所迷惑になっちゃうっ!
真美は、あわててパジャマのまま出た。
「真美ちゃん、明確ゼミやめるって本当の話?」
「うん…」
「どうしてっ?一緒に電車乗れないじゃん」
実柚乃ちゃんごめんね。
受験とかいろいろあるから。
おばあちゃんのことは言わずに伝えると、納得してくれた…?
「まだあるでしょ?今日おばあちゃんいないの?いつも出てきてくれるのにさ。実柚乃が訪ねると」
「実は、ね」
真美は、おばあちゃんとのことを実柚乃ちゃんに話した。
「そうだったんだ。秋の遠足の弁当は実柚乃に任せて!実柚乃が作るから」
「ありがとう…」
「うん。わざわざごめんね。実は、真美ちゃんのおばあちゃんから電話で、訪ねてやってくださいって」
そっか…。
実柚乃ちゃんとお別れして、真美は家に入った。
17.遠足案に決定!
翌日の朝。
今日は雨だった。
真美の心の中を撮してるみたい。
制服に着替えて、一階へ降りる。
はぁー。
誰もいない。
食パンを一枚焼いて食べる。
あんまり美味しくないな。
おばあちゃんがマーガリン塗ってくれてた時は、綺麗だったのに。
まだらすぎだな。
髪の毛も上手く結べなくて、仕方なく下ろして学校へ向かった。
「真美ちゃん、おはよう。弁当のおかずだけど、今日一緒に買いに行かない?一緒に決めたいし」
実柚乃ちゃんが後ろから自転車で追いかけてきた。
本当なら電車通学で、ここなんて通らないはずなのに。
わざわざここ通ってくれたのかな。
「いいよ!真美も、今日の夜ご飯のいろいろ買わなくちゃだし」
実柚乃ちゃんと学校へ向かう途中、ちょうど秀花ちゃんと会った。
あ…。
これで、実柚乃ちゃんがシュークリームって言ったんだよね、この前。
「秀花ちゃん、この前はごめん。これからは、こう呼ばせてもらうから」
「実柚乃ちゃんって呼ぶから」
いいなあ、実柚乃ちゃんと秀花ちゃん。仲直りできたんだもん。
卒業前に。
真美が仲直りしなくちゃいけない人は、ふーちゃん。
涼太くん。
桜庭くん。
多すぎるよお。
「実柚乃ちゃん、秋の遠足の話だからいい?」
秋の遠足の話は、明日学校に来てみんなが知るから、まだ内緒。
ということで、秀花ちゃんと学校へ向かう。
「全部自由行動がいいと思うの。この辺りの神社を巡るってことで、見回りに児童会メンバー、学級委員メンバーが各チームに入る。変なところへ行かないように。どう?」
「バスの中でプランも立てられるからいいね!」
電車、バス、タクシーを利用して秋の遠足…。
いいね〜。
真美は、秀花ちゃんと雑談を交わしながら学校の校門をくぐった。
18.気まずいグループ
学年集会で、児童会メンバーが前に出る。
「秋の遠足についてです。6年生の行き先が神社に決まりました。各班自由行動で、児童会メンバーと学級委員メンバーが各班に入ります」
真美がザッっと説明して、秀花ちゃんが大きな紙をホワイトボードに貼る。
「神社巡りで、各班いくら持っていくというのを決めてください。電車運賃やバス運賃、タクシー運賃も含めてください。ですが、行き帰りのバス運賃はいりません」
各班に、誰が入るのかを秀花ちゃんが発表する。
実は、真美も知らない。
秀花ちゃんしか知らないんだ。
「児童会長、多田本真美さんは、杉田ふみ、相川実柚乃、青山野涼太、桜庭樹グループです!」
よ、よりによって、真美と気まずい人ばっかり。
実柚乃ちゃんはいいけど。
秀花ちゃんの発表が終わって、各班話し合いのタイム。
班長は、真美。
みんなを見回して、地図を広げる。
「どこの神社に行きたい?」
何も知らない実柚乃ちゃんがはいはーいと手を挙げる。
「ここの、恋愛神社って言われてる神社行きたーい!カップルもいるし、実柚乃好きな人いないしぃ」
ギクッ。
恋愛神社か。
ふーちゃんは、恋愛というワードに反応して行きたそう。
「恋愛神社に行きたい人」
ビシッ。
真美以外みんな…!
仕方ない、恋愛神社。
「他に回りたい神社がある人」
「はいはーい!勉強神社ー!真美ちゃん受験するもんねっ」
実柚乃ちゃんが勉強神社に挙手。
勉強神社って言われてる、勉強専門の神社。
ここは興味あるかも。
「勉強神社、行きたい人」
みんなビシッっと手を挙げる。
これを何度も繰り返して、6つの神社を巡ることになった。
順番に、恋愛神社、勉強神社、友情神社、信用神社、幸運神社、運動神社。
学校のワードには最適な神社巡りになりそうだな!
神社名は、本当の神社名じゃないよ。
専門分野を神社名として呼んでるだけだから。
「秀花ちゃんたち決まった?」
「うん」
真美たちのグループ、秀花ちゃんたちのグループが決め終わったので、一旦中断。
「決まってないグループは手を挙げてください」
えっと…5グループだね。
今日は部活なし、オーケー。
「では、居残りして決めてください」
みんなに言って、コッソリ秀花ちゃんに聞く。
「居残りしてもらっていい?真美、ちょっといろいろあって」
「あ、オーケー」
秀花ちゃんに謝りつつ、頭を下げた。
19.突然お泊まり!?
制服のまま、近所のスーパーへ入る。
うぅ、寒い…!
買い物カートの上に真美。
下に実柚乃ちゃんのカゴを入れて、野菜コーナーから見る。
「実柚乃が作ろうと考えているのは、トゥボロのキャラ弁」
トゥボロの!?
トゥボローーー最近出来たテーマパークのキャラクター。
すごい最近新しくテーマパーク出来るよね。
真美たち、出来る度に晴奈ちゃんたちと行ってたけど。
「食べてみたいな、トゥボロのキャラ弁。実柚乃ちゃん、本当にありがとうね」
実柚乃ちゃんのスマホで調べながら買い物を済ませていく。
ええっと…。
真美の夜ご飯は何にしようかな…。
「真美ちゃん、夜ご飯決まらないの?…あ、そうだ!実柚乃の家においで!泊まってきなよ!」
「え!?」
泊まり?
真美、迷惑かけちゃうし、いきなりそう言われても、実柚乃ちゃんのお母さん困っちゃうし。
「いいでしょ?お母さんに電話するからね〜」
クックパッドを閉じて、実柚乃ちゃんはお母さんに電話。
ちょっ、えっ?
本当に泊まるなんてダメでしょ!
「いいって。泊まってって!」
「でも…」
「いいでしょっ!」
実柚乃ちゃんは、真美のカゴに入っている食パンを実柚乃ちゃんのカゴに移して、カゴを戻してきた。
「真美ちゃん、家帰って荷物まとめてきていいよ!実柚乃が買い物済ませとくから。そしたら真美ちゃん家行くから、それまでにまとめといてね!」
えええーーっ!
ここで断るのも断りにくかったから、家に帰って荷物をまとめる。
歯ブラシ、タオル、歯磨き粉、明日の制服、体操服…。
と、まとめているうちに実柚乃ちゃんが来た。
「もーしもーし、実柚乃だよーっ」
旅行バッグに荷物を詰めて家を出る。
カギをかけて、オーケー!
「突然ごめんねっ」
「うんん。さ、行こ!」
実柚乃ちゃんに手を引っ張られて、制服に旅行バッグの真美。
制服にスーパーの袋にスクールバッグという変な真美たちだった。
20.お姉さんはお母さん!
実柚乃ちゃんの家はマンションで、マンションにしてはすごく広かった。
もしかしたらお金持ちかな。
「お邪魔しま〜す」
実柚乃ちゃんの家に入ると、実柚乃ちゃんのお母さんらしき人が顔を覗かせた。
「あら、実柚乃お帰り。その子が真美ちゃん?」
「はい。今日は本当にありがとうございます。多田本真美です。実柚乃ちゃんと仲良くさせていただいてます。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げると、実柚乃ちゃんのお母さんらしき人はニッっと笑う。
か、カワイイ〜。
「実柚可は、実柚乃の姉!み、ゆ、か。ね。よろしく」
お姉さんなの!?
実柚乃ちゃんは、玄関をスーッっと通っていき、実柚乃ちゃんの部屋に通してくれた。
大人っぽいな〜。
実柚可さん。
「真美ちゃ〜ん、今日は、実柚可のこと普通に話していいから」
は、はーい。
実柚乃ちゃんと同じで家庭科得意なのかな。
フライパン持ってたし。
それにしても、綺麗だな〜、ここ。
「実柚乃のお母さんが、実柚可。お母さんは亡くなったから」
そっか…。
実柚可さん、実柚乃ちゃんのお姉さんでありお母さんなんだ。
ジュワーっと音がして、ハンバーグが見えた。
今日はハンバーグッ!
真美が好きな食べ物だ!
「実柚乃先お風呂入るね〜」
パジャマを持って、実柚乃ちゃんがお風呂へ行くと、部屋はシーンとした。
キッチンへ行って、実柚可さんと並ぶ。
「真美が手伝えることありますか?」
「真美ちゃん、そういうときは、真美が手伝えることある?でいいの!」
笑いながらハンバーグにソースをかける。
うっわ〜、いい香り。
「お願いしたいところだけど、終わっちゃった。ハハハ〜」
実柚乃ちゃんも実柚可さんも、笑顔が素敵だな〜。
「実柚乃、ご飯出来たから早く出てきなさいよ〜!」
実柚乃ちゃん家中に、ハンバーグのいい香りが漂った。
真美ちゃんのお祖母さん、厳しいね……
私、ほっといてくれるよ。
でも、その分終わったら言い訳するな、自分の出来ることをやれ、って言われる。
でも、真美ちゃん偉いね!
自分に出来ることを頑張ってる!
薫ちゃん、コメントありがとう。
真美ちゃんがちゃんとやってなさすぎて怒ってたね。
このことで、真美ちゃんは何を学ぶのか!
続くよ!
21.ふーちゃんの願い?
実柚乃ちゃんの大きなベッドで、漫画を読みながらおしゃべりする。
最近、漫画にハマったんだって。
真美が漫画を読むのは初めて。
「八王子プリンスって言って、小説やドラマにもなってるんだよ!」
「ドラマ!?すごい作品…。八王子プリンスって、タイトルは聞いたことが…あるような…?」
うーん?
どこかで聞いたことがあるんだよね。
いつだろう。
「まあまあ、いつでもいいでしょ。一巻から読んで読んでっ!」
主人公の女の子が、八王子の男の子に恋する物語。
舞台は…私立学校。
八王子。
幼なじみの男の子に恋した!?
八王子の男の子って幼なじみだったってこと!?
「…真美ちゃん、気付くことない?」
「気付くこと?」
漫画をペラペラめくりながら、いろんなことを考えた。
主人公の名前が、若干実柚乃ちゃんに似てるとか?
ミキノだから。
「ミキノって名前は似てるけど、これ、ふみちゃんにめちゃめちゃ似てると思わない?物語」
ふーちゃんに!?
幼なじみに恋するところは…。
それに、真美と同じ立場の子出てきてるし、コヨも、実柚乃ちゃんも!
真美の立場の子の名前は、マコ!
ふーちゃんの立場はミキノだけど。
「この作品を書いているのは、ふみちゃんのお母さん。ふみちゃんは、お母さんの作品が大好きで、ずっと読んでるらしいの」
「あ〜。真美が聞いたことがあるのって、ふーちゃんからかも」
もしかしたら…!
どんどん読み進めていくと、最後にミキノちゃんとマコちゃんが仲直りしていた。
あとがきには、娘の願いの物語と書かれている。
「真美ちゃん、明日、仲直りしよう」
「うんっ!」
真美は、実柚乃ちゃんと一緒にベッドに潜り込んだ。
22.隅木田くんからの電話
実柚可さんが、真美と実柚乃ちゃんを起こす。
時計を見ると…4時30分!?
「キャラ弁作るんでしょ?難しいんだから、早めに作り出さないと」
そ、そういうことですか。
体操服に着替えて、実柚可さんのエプロンを借りてキッチンに立つ。
プルルルルプルルルル
「もしもし〜。あ、隅木田?はーい」
隅木田くん!?
実柚乃ちゃんに後から聞いたんだけど、実柚可さんって中2なんだって。
れっきとした彦宮生の。
知らなかったな。
「真美ちゃん、隅木田が電話」
え〜?
こんな朝早くから?
実柚乃ちゃん家にいるの知ってるの!?
「代わりました、真美です」
「実柚可の家にいるんだね。ビックリしたよ」
「どうしたんですか…?」
お願いします、悪いお知らせじゃありませんように。
祈りながら返答を待つ。
「受験勉強で明確ゼミやめるんだってね。明スイばっかりで。ごめん。真美ちゃんのおばあさんには、謝っておいたよ」
「いえいえ。真美の責任ですから」
隅木田くんは、ちょっとホッっとしたような息をついて、悲しげな声で言った。
「今日の明確ゼミで最後だよね。だから、それでパーティーを開くことになったんだ。その時、とりあえず一回目の闘いをする」
闘い…!
明確生に決めてもらう、アレだよね。
ゴックンとつばを呑み込む。
「出席できる?闘いにおいては、真美ちゃんは、作らない・食べない・教えないだから」
「出席します」
「じゃ、よろしく」
絶対、明スイが、勝つんだから!
23.いざ団結神社へ!
先頭で、前田先生のとなり。
後ろが涼太くんと桜庭くんペア。
そのとなりがふーちゃんと実柚乃ちゃんペアが座っている。
ここは、バスの中なのです!
「前田先生ー、どこ行くんですかー」
「とりあえずは、クラスごと違う神社に行きますが、1組は団結を専門とする神社、団結神社へ行きます!」
そうそう。
昨日、ギリギリで前田先生と話し合って決めたんだよね。
もう、演劇会の練習も始まってるし、団結することって重要だよね!
「多田本さん、そろそろお菓子タイムにしましょうかね」
「はい。皆さんいいですかーっ?」
バスの中のマイクを使う。
よく、バスガイドさんが使うのだ!
カッコいい…。
「多田本さん?」
「はいぃ!皆さん、そろそろお菓子タイムにしたいと思います」
バスの中がドッっと盛り上がる。
お菓子の匂いがバス中に漂ったかと思えば、みんな交換。
めちゃめちゃハイスピードで食べる。
って、みんな楽しめてる!
「多田本さん、これどうぞ」
涼太くんが、ブドウ味のグミ。
桜庭くんが、イチゴ味のグミ。
実柚乃ちゃんが、手作りクッキー。
ふーちゃんが、ビスケットをくれた。
すっごく、楽しいな〜。
24.みんなの願い
真美、実柚乃ちゃんは、団結神社でお守りを買った。
真美は、クラスが団結して、演劇会優勝出来ますように。
実柚乃ちゃんは、家庭科の時間、団結していい料理が作れますように。
っていう願いを込めて。
各神社全部、お守り買うことにしたんだ!
「今からは自由行動になりまーす。班長さんは、地図、カメラ、時計を取りに来てくださーい!」
いよいよだ!
地図、カメラ、時計をもらって、恋愛神社へレッツゴー!
「ま、まー、ちゃん」
「どうしたの…?ふーちゃん」
「恋愛神社へ向かうのは、時間的にもタクシーでいくのが効率的。タクシーで行きましょう」
えっ…。
ふーちゃんをマジマジと見ると「調べてきたのよ。さあ、行きましょう!」照れてる…。
実柚乃ちゃんがコソコソ言った。
「今がチャンスでしょ。仲直りっ!」
だよね。
やっぱり今だよね。
「ふー」
「ふみちゃん、行こっ」
涼太くんに話しかけられて、まっすぐ涼太くんの方へ。
あっさり手を繋いで…。
神社の長い階段を下ってく!
「カップルだね〜。まあ、ちょっと様子見るか」
実柚乃ちゃんも桜庭くんも境内を下っていったので、真美も追いかける。
ふーちゃん、願いは仲直りだよね?
なのに、逃げてない?
あたかも、仲直りしたくなさそうな。
真美は、ションボリ境内を下った。
※あたかも→まるでという意味です
ふみちゃんと仲直りできるといいね!
頑張って!
ふみちゃんとねぇ。
仲直り出来たら、みんな嬉しいと思うんだけどなぁ。
コメントありがとう!
25.恋愛神社で
チャリン チャリン パンパン!
みんなでお賽銭箱にお金を入れて、手を叩く。
真美の願いは、中学生になったら、いい恋が出来ますように…!
神様、どうかお願いします!
お参りが終わって、お守り購入。
団結神社と一緒で、実柚乃ちゃんと色違いのお守り。
真美はオレンジ。
実柚乃ちゃんは黄色。
「ねえ、相川と多田本」
突然桜庭くんが前に出る。
ふーちゃんと涼太くんは、まだお守りを見てる。
バレないね。
なんかこの気まずいムード。
「杉田と涼太と俺に、避けてない?ふたりだけの世界すぎて困る」
「樹くんだって、青山野くんとふみちゃんとの世界に入り込んでる!」
実柚乃ちゃんと桜庭くんの言い合いに、ふーちゃんと涼太くんも気付いた。
ここは、やっぱり班長の真美が…。
「どうしたの、ふたりとも」
ふーちゃんがお守りを置いてこちらへやって来る。
このグループ、終わりかも。
ムードが気まずすぎ。
「実柚乃だって、ふみちゃんたちと仲良くしたいのに、3人で話してるから悪いんじゃん!」
「落ち着いて!まあ…みんなで仲良くさ、やってこっ」
みんなを見回すけど、実柚乃ちゃんと桜庭くんはピリピリ状態。
あ〜、どうすれば。
「実柚乃ちゃん、ごめんね。わたしたちがずっと。桜庭くん、ね…?」
ふーちゃんが割って入ってふたりに笑いかけると、この騒ぎは収まった。
真美だと仲直り出来ないのに、ふみちゃんなら出来る…。
もっと頑張らないといけないって証拠かなぁ。
「ごめんなさい、桜庭くん」
実柚乃ちゃんがボソッっと謝って、無事騒ぎは解決。
真美は、神様がいるところでお辞儀した。
「お騒がせして申し訳ございませんでした」
真美は、にっこり笑顔で輪に戻った。
26.友情神社は友情専門!
またも、ふーちゃんの調べによって、友情神社へはすぐ行けた。
チャリン チャリン パンパン!
ここでのお祈りは、もちろん。
このグループがいい雰囲気になれますように。
そして。
ふーちゃんと仲直りできますように。
お願いします!
「あれ?真美〜!」
境内からコヨが走ってくる。
コヨがいるグループは、美華ちゃんグループ。
よくあそこにいられるな〜。
「明確ゼミのパーティー楽しみにしててね」
ふと言われて思い出した。
今日、ひとつ目の闘いのこと。
「真美ちゃーん、行こ〜お守りー」
実柚乃ちゃんが言ってくれて、コヨをちょっとにらんで実柚乃ちゃんと一緒にお守りを買った。
今回の友情神社では、真美たちグループの絆ってことで、みんなオソロイのお守りを買ったんだ!
みんな紫で、可愛いの。
実柚乃ちゃんが選んでくれたの。
「ふーちゃんっ!」
境内を下ろうとしているふーちゃんを呼び止める。
コヨが、お守りを買うところからこっちを見てる。
真美とふーちゃんがいい雰囲気じゃないの、知ってるもんね。
「あの…この前はごめんなさいっ!真美のせいで…」
「まーちゃん…?」
頭をずっと下げていると、ふーちゃんが真美の肩を持ち上げた。
そして、にっこり。
「わたし、まーちゃんが悪いなんて思ってないよ。ただ、北山さんと遊びはじめて、北山さんに嫉妬してたの」
えっ…そうなの?
でも、真美はやっぱり悪いことしかしてないし…!
「仲直りって言うより、また、仲良くしてくれる?ねっ?」
「うんっ!」
こんなに真美は幸せになっていいのかな?
真美ばっかり。
ふーちゃんと境内を下って、みんなのところへ行く。
もう、実柚乃ちゃんと桜庭くんも悪いムードじゃない。
涼太くんとも、仲良く話してる。
「じゃあ、勉強神社へ行きましょう。電車で行くのが最適。勉強神社でお弁当食べましょ」
ふーちゃんのプランで、真美たちは勉強神社を目指した。
27.秋の遠足の思い出
帰りのバスの中。
本当に思う。
今日は本当に良かったって。
お弁当は実柚乃ちゃんとオソロイで、おかず交換したこと。
グループ内で恋バナしたこと。
桜庭くんのこと、樹くんって呼ぶようになったこと。
他にいろんな神社行って、最後。
集合場所の勝利神社での記念撮影。
クラスみんなオソロイのお守り。
みんな寝てるバスの中、うっとりお守りを見る。
グループのお守り。
クラスみんなオソロイのお守り。
実柚乃ちゃんとオソロイのお守りの数々を。
「多田本さん、楽しかったみたいですね」
となりの前田先生がお守りを見ながら笑った。
前田先生の手には、3つのお守り。
恋愛神社と、幸運神社と勝利神社のお守りだ!
「先生も楽しかったみたいですね」
「ええ。みんな楽しそうだったもの」
前田先生と笑いながら、真美はまぶたを閉じた。
「みちゃん!真美ちゃん!」
はいぃっ!
揺すられて起きたときは、彦宮学園に着いていた。
実柚乃ちゃんが真美の顔を覗き込む。
「ごめんごめん!」
急いでバスを降りて、学年で集まる。
学年主任の小林先生が前に出る。
「秋の遠足はいかがでしたか?」
すっごく楽しかったです!
いろんな先生の話が終わって、解散となるとき。
真美は家に帰る決意をした。
実柚乃ちゃんにも悪いしね。
「本当にありがとう!荷物が実柚乃ちゃん家にあるから、実柚乃ちゃん家へは行くね」
「分かった。本当にいいんだね」
真美は大きくうなずいて、実柚乃ちゃんと実柚乃ちゃんの家へ。
向かった。
28.意外な結末
荷物を持って、実柚乃ちゃん家を出る。家はスッカラカンだろうけど。
カギを開けると、すごくいい匂いがした。
ど、どうして?
キッチンへ行くと、いつものエプロンを付けたおばあちゃんがいた。
「おばあ、ちゃん…?」
「真美ちゃん、お帰りなさい」
どうして?
おばあちゃん、家を飛び出したんじゃないの?
キョトンとしていると、おばあちゃんは笑った。
「ちゃんと勉強しないといけないことが分かったかい?」
「うん。ありがとう」
涙もろいのおばあちゃんは泣いて、真美も部屋でずっと泣いた。
勉強しないといけないのが分かったのはもちろん。
おばあちゃんの大きな存在にもよーく気付いたしね。
コツコツコツコツ
ヒールの高い靴を履くことになって、やや緊張ぎみ。
「多田本真美さん、明確ゼミ卒業!そして、明スイどちらに入るか闘い!」
梨歩佳さんの力強い司会で、パーティー会場のドアが開いた。
カワイイワンピースを着て、いざ入場だ!
真美は、お辞儀して入った。
29.結果は?
明スイメンバーがスイーツを作るところから始まった。
どんな風になっているのかは黒い板で隠してあってね。
真美も、どんなスイーツを作るのか楽しみ。
「明スイを待っててくれる人は、こんな気持ちなんだよ」
梨歩佳さんがとなりでつぶやいた。
こんな気持ちなんだ。
じゃあ、すっごい楽しみだね。
「おおっ、露島先輩の方が完成しました!矢本先輩の方も…完成です!」
いよいよだ。
梨歩佳さんも審査員なので、会場の前に移動した。
ひとつは、シュークリーム。
もうひとつは、パフェ。
美味しそ〜う!
明確生が食べ比べて、結果は真美の発表になる。
えっと…シュークリーム派。
パフェ派、パフェ派、パフェ派…。
シュークリーム派、シュークリーム派、シュークリーム派…。
シュークリーム多くない!?
「結果は、シュークリームを作ったグループです!」
明スイの方を見ると、ガックリした様子。
負けたのっ?
コヨは、ギッっとにらんできた。
(つづく)
あとがき
みぃ
初めまして!
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイいかがでしたか?
今回は、いろいろありましたね!
ふみちゃんとケンカ。
コヨちゃんの出現。
新明スイ!?
おばあちゃんとの言い合い。
実柚乃ちゃんと桜庭くん…樹くんの言い合いなど。
皆さんはどこのシーンが好きですか?
今回も、皆さんに記念すべき10巻をお届けできて嬉しいです!
ちょっと雑談。
皆さんは親友いますか?
私はいません。
親友というのは、何でも打ち明けられる人。
そういうと…いるけど、その人は、私のことそう思ってないだろうし。
それなのに親友って言えるのかな?
親友がいるって心強いですよね。
それも、青春のひとつです。
青春を楽しみましょう!
ここでコメント!
薫ちゃん、いつもコメントをくれて本当にありがとう!
これからも真美ちゃんを応援してほしいな!
最後になりましたが、お礼。
ここまで読んでくださった皆さん、本当に本当にありがとう!
良ければ、コメントください!
これからもよろしくお願いします。
次回予告です。
学校のイベントは修学旅行!
だけど、第二回闘い!
真美ちゃんはどっちに入るの!?
次回もよろしくお願いします!
おおっ、完結!
真美ちゃんも、一難去ってまた一難、って感じだね。
明スイどうなっちゃうの⁉
次回も読むよ!(^o^ゞ
薫ちゃん、ありがとう!
あとがきにも毎回出てるね(ごめん!)
感想もいつもすごい嬉しい!
次回もよろしくお願いします!
『ここは明確スイーツ研究部!11』
人物紹介
多田本 真美
目立ちたくないを意識していた小学6年生。私立青山野学園を受験する。
坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。
矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。
隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。
1.放課後の児童会室
12月に入ったばかりの日のこと。
児童会メンバー全10名はずーっと悩みこんでいる。
わたし、多田本真美。
ここ、私立彦宮学園のれっきとした児童会長。
だけどね…。
「児童会長〜、無理〜」
児童会会計の戸部くんが投げ出した。
5年生なんだけど、やる気が全然ないから困ってるの。
真美たちが真剣に考えてるのに、ランドセルから漫画出してさっ!
漫画、持ってきちゃダメなのに。
「ちょっと、戸部くん!」
5年生の頼れる、児童会対応の河合さんは、この間まで入ってた華道部の部員なんだ。
「戸部くん、やらないなら帰って。すごく目障りで仕方ない」
5年生の児童会対応の、ちょっと冷たい横田さん。
メガネのレンズが光って見えて、真美もドクンとした。
他、児童会会計の古橋くん。
5年生のね。
頼れる6年生の、児童会書記の秀花ちゃん。
秀花ちゃんとペアの6年生の、児童会書記もうひとりは、野口くん。
落ち着いた様子の6年生の、児童会生活の柴田さん。
柴田さんのペアの6年生の、鈴木くん。
いつでも元気な6年生の、太田くん。
そして、真美。
「児童会長、これ」
横田さんが資料を渡してくれて、ザッっと目を通す。
文化祭の流れから演劇会の流れまで、きっちりパソコンで打ってある。
「ありがとうございます。横田さん。では、演劇会のお知らせプリントを作ってください。河合さん、横田さんと作ってください」
「分かりました」
修学旅行担当の6年生は…?
チロッっと6年生の方を見ると、みんな頭を抱えてる。
今週なのに…!
真美は、急いで6年生の方に入った。
2.修学旅行へ行ける!
柴田さんが、鈴木くんと仕上げていたプリントを掲げる。
「児童会長、これをしおりに印刷したら、しおりは完成しますよ!」
「ありがとう。じゃあ、鈴木くん。印刷してきて。柴田さんはこっち。秀花ちゃんたちと一緒に、電話かけて!」
手際よく行っていてちょっとホッっとしつつ、5年生の方も見る。
…って!
本当に戸部くん帰ったの!?
横田さんの目力強い!
「児童会長、お知らせプリント印刷終わりました!」
河合さんがプリントを見せる。
さすが河合さんと横田さん。
手際よくやってくれたね!
「では、学校に貼ってきてください。いつものところに。初等部だけでなく、中等部と高等部も」
「はいっ!」
うちの文化祭は、今年から初等部から高等部一緒に行うことになった。
この時、真美は全校の前でスイーツを食べるらしい。
彦宮生の第二回の闘いで、明スイが勝利したら、ね。
真美が、新明スイか、いつもの明スイに入るか決めるらしい。
第一回は負けちゃったけど、絶対勝てるよねっ?
「児童会長!電話かけ終わりました!全て計画通り進行出来ます!」
「ありがとう秀花さん、柴田さん。鈴木くんはどう?」
印刷室をチロッっと見ると、だいたい150枚ありそうなプリントの束を持っていた。
オーケー!
これで修学旅行へ行ける。
行き先は毎年変わって、今年は新潟県へ行くことになった。
学年全員で、スキーやったり、雪だるま作ったり、鎌倉作ったりね。
貸しきりなんだよ!
2泊3日で。
二日目の予定は、美味しいもの巡り!
これは、鈴木くんが行きたかったんだって。
秀花ちゃんも行きたいらしく、美味しいもの巡りに決まったんだけど。
学年主任の小林先生がめちゃめちゃ喜んでるんだよね。
「よーし!6年生も、文化祭の方やりましょうかね。演劇会のこと担当してください!」
絶対、絶対。
文化祭も演劇会も修学旅行も成功させるんだから!
3.離れない心
「ただいま〜」
ローファーを脱いで、先に児童会メンバーに配られたしおりをおばあちゃんに見せる。
「今回の行き先は、新潟県、美味しいものを巡りながら東京都へ。3日目はスカイツリーだよ!あと、キッザニアってところ」
「スキーだよねえ。ちょっと子供っぽいかもしれないけど、真美ちゃんが優樹さんにおねだりして買ってもらったシカのスキーボードならあるよ」
おばあちゃんは、物置からシカの子が写っているスキーボードを出す。
久しぶりに見たなあ。
真美は、ちょっとスキーボードをなでてみる。
汚れた感じが、使ってるってイメージだけど、一度しか使ってないんだ。
スキー場に行くのも二回目だし。
「さあさ、真美ちゃん。赤ちゃんの話だけどねえ。まあ何と双子だったらしいんだよ」
「ふっ、双子!?」
真美に、いきなり妹か弟がふたりも出来ちゃうの!?
嬉しーい!
「ひとりは女の子、ひとりは男の子だそうだよ。男の子の方は、もう名前は考えたみたいで、眞優くんだそうで」
眞優くん!!
カッコいい名前。
きっと、真美みたいな児童会長になれるはずだよ〜。
「女の子の名前も気になるねっ!」
「そうだねえ。やっぱりおばあちゃんの案は、真子かしらねぇ。野太いだろう?」
真子ちゃんかぁ。
それもカワイイけど。
チュンチュン
外を見ると、真美が飼っている感じの鳥が鳴いている。
真由ちゃん。
名前がちょっとだけだけど、眞優くんと似ているかも。
眞優くんと来たら、『ま』を使うなら『眞』だよねえ。
真美が、本を見ながら考えているのは様々。
良ければだけど、真美の案も聞いてほしいな〜。
プルルルルプルルルル
「もしもし多田本です…ああ、真美ちゃんですね。はい、はい…」
実柚乃ちゃんから電話がかかってきた様で、受話器を握る。
軽やかな、優しい声が聞こえた。
「真美ちゃん?実柚乃だよ」
「真美だよ!」
実柚乃ちゃんは、ちょっと間を空けてモジモジしながら言った。
あたかも、決意するように。
「秋の遠足で、真美ちゃんともっと仲良くなれて、実柚乃嬉しかった。真美ちゃんと離れたくないし、チャレンジしたいし、ずっとその気だったから」
スッっと息を吸い込んだかと思うと、実柚乃ちゃんは一言。
「実柚乃も青山野受けるからっ!」
「実柚乃ちゃんっっっ!」
絶対絶対、一緒に行こうね。
受験合格者票に、実柚乃ちゃんと真美の名前があるの楽しみにしてるから。
実柚乃ちゃんも真美ちゃんも、頑張って!
双子なんて珍しい!
まゆう君……かな?あ、まやくんかも?(馬鹿でごめんね)
薫ちゃんありがとう!
双子だよ〜!
まゆう君で当たりだよ。
全然馬鹿じゃないからっ!
これからもよろしく!
まゆう君か、可愛い!(いや、かっこいいの方が妥当?)
馬鹿じゃないなんて……ありがと!
4.修学旅行で児童会長
一階に降りて、スカートの裾を整え、昨日準備した荷物を確認。
よし、オーケー。
「さあ、行くかい?」
「うんっ!行こ行こっ!」
大きなバッグに入っているしおりを車の中で見つめる。
女の子が、真美、実柚乃ちゃん、ふーちゃん、初香ちゃん、エリちゃん、さやかちゃん。
男の子が、涼太くん、樹くん、太田くん、数学くん。
数学が得意だから、コッソリ数学くんって呼んでるんだ!
正直、名前を知らないんだけど。
「おばあちゃん!絶対絶対お土産買ってくるから待っててねっ!」
おばあちゃんに伝えて、彦宮学園前の広場へ足を降ろす。
今から、もう修学旅行は始まってる。
しおりをギュッっと握りしめて、前田先生にあいさつ。
「おはようございます」
児童会ということで、ちょっと早く来たんだよね。
今来てるのは、柴田さんと真美のみ。
「児童会長おはようございます!」
「おはようございます!」
柴田さんとは、二回同じクラスになっただけで、クラブも一回同じクラブになっただけ。
あんまり関わってなかったんだよね。
だけど、仲良くできて嬉しいっ!
「スキーボード、新しいの買ってもらったの。児童会長は?」
「真美は、昔買ってもらったのを」
充分それで使えそうなので、綺麗に磨いて新品くらいにした。
そのことを柴田さんに言うと「さすが児童会長です」なーんて。
汚かったから磨いただけなのに。
「児童会長〜」
秀花ちゃんが車から降りてきて、ふーちゃんも降りた。
「秀花ちゃんおはよ!」
「おっはよー!」
ふーちゃんはひとりでいるけど、すぐいろいろな人が来て、ふーちゃんもどこにいるか分からない。
みんな、普通の車で来るけど、美華ちゃんはっ!
リムジンにコヨを乗せてる…!
「秀花ちゃん、読み上げて。柴田さんは人数チェック1、2組を」
すぐ指示して、真美は校長先生にあいさつ。
皆さん、今日は本当によろしくお願いします!
分からない。
カッコカワ?
馬鹿じゃないでしょ!
ー訂正ー
全150名。
1〜5組。
体育祭では、い組ろ組は組に組ほ組。
夢花見京香、と遊んでいる琴ちゃんは転校してしまったと考えてください。
理由はそのうち明らかに!
うん、かっこかわだね!
修学旅行、新潟なんていいなぁ!
私も秋に行くよ!
でも、ほとんど行ったことある場所なんだよね〜
薫ちゃん、コメントありがとう!
カッコカワかな…?
いいのか悪いのか普通なのかwww
新潟ねぇ。
焦って決めたところ。
薫ちゃんは行ったことあるところに行くんだね!
真美ちゃんのヘタクソなスキーに、笑った男の子たち。
もう休みなのに、指示が聞こえなくてひとりまだ練習していく真美ちゃん。
真美ちゃんを助けに行くのは…?
おぉっ、なんか良い展開を期待しちゃう!
私は東京に一泊二日。
なんか前は二泊三日だったのに、変わっちゃったんだよね〜
期待できる内容かもだけど、文才なくてガックリするかもだからやめといた方がいいかも。
私は奈良に一泊したよ〜♪
では、本編どうぞ!
5.意外な出来事
ガタンゴトンガタンゴトン
電車が揺れていて、エリちゃんとさやかちゃんより身長が高い真美は、吊革にぶら下がってるんだよね。
通学中の学生や、通勤中の大人がパンパンで揺れるときガクンとなる。
「エリちゃん、あそこ見て!」
さやかちゃんが指差していた先は、露島先輩と、隅木田くん!?
ど、どうして!?
「何か話してるねぇ。高等部の王子様と中等部の王子様!」
「本当だね。さやちゃん行ってきたらいいじゃん。それが修学旅行」
ふたりが盛り上がっているのをボーッっと眺めながらも、隅木田くん達をジッっと見る。
するとっ!
「イヤァァァ!」
ウグッ。
つい叫んじゃった…。
同じ車両に乗っていた人達の視線がジリジリと集まってくる。
やだなあ。
頭を下げながら、しゃがみこんだ隅木田くんを見つめる。
露島先輩にほっぺたを叩かれた隅木田くん。
痛すぎて、しゃがみこんでるんだよね。真美分かるよ。
やられたことあるもん。
もう解決したけど。
そんなことを考えていると、次の駅へ向かうため、電車が発進してしまう。
絶対、助けてあげるから。
真美じゃ何にもならないかもしれないけど。
必ず何とかして見せるから!
「あのぉ、あのぉ」
エリちゃんのとなりに座っていた男の人が言った。
「座りますか?」
「いえいえ。絶対大丈夫です。わたしは立ってますから」
「いえ…」
男の人はカバンを持って立ち上がる。
何か、座らない方が失礼かな。
せっかく譲ってくれてるし。
「ありがとうございます」
椅子に座ると、ため息をついてエリちゃんの方を向いた。
6.乙女の恋
バスを降りて、新幹線で新潟県へ向かう。
真美は初香ちゃんのとなりで、将来の夢の話をしていた。
「初香はね、特に将来の夢ないけど、強いて言うならディズニーのダッフィー関係のお仕事だよ」
へぇ〜。
きっとだけど、初香ちゃんは優しいから、おっとり癒しタイプのダッフィー関係のお仕事は剥いてると思う。
真美の夢って…何だろう。
とりあえず、結婚して、子供産みたいだけかもしれないな。
とりあえず、ね。
子供は欲しいし、結婚はしたいし、結婚しなきゃ子供産めないしね。
「真美ちゃんは?」
「特に決まってないかな。ごめんね」
「いやいや、全然大丈夫!」
初香ちゃんはバスの外を見ながら、前の樹くんの頭をポンポンした。
好きなんだって、樹くんのこと。
付き合ってたこともあって、別れたらしいけど。
ま、初香ちゃんはカワイイし、樹くんも初香ちゃんにお似合いだよ。
ぜひとも付き合ってほしいなっ!
「何だよ初香」
樹くんは、他に好きな人がいるみたいで、初香ちゃんの気持ちに気付いてないらしい。
かなりアピールしてると思うけど。
「班一緒になれて良かったぁ」
「そう?俺と一緒になって?」
「うん!もーっちろん!」
乙女ってこういうののことか。
真美って乙女だと思ってないから、恋してる女の子を見ると、乙女!
って反応しちゃうんだよね。
「オソロイの何か買おーねー!」
「あ、ああ」
樹くーん、初香ちゃんの気持ちに応えてあげてよね〜?
すると、樹くんは真美を見た。
「真美が笑った顔ってカワイイよな」
「はぁっ?急に何言い出すの。ほら、初香ちゃんが笑った顔の方がすごくカワイイけど」
樹くん、お願い。
そろそろ気付きなさいよ!
でも気付かなくて、チラッっと初香ちゃんを見る。
「え、何それ樹くん。真美ちゃんはカワイイのに、初香はカワいくないの。正直、顔には自信あったのにぃ」
「初香もカワイイよっ!気にしなくていいって。顔に自信持てよ」
樹くん、気付いたかな。
真美はホッっとしながら、初香ちゃんの恋を眺めた。
7.乙女のお願い
『わぁーーーー!』
みんな、スキーボードを握りしめて、スキー場へ飛び込む。
樹くんは、雪を見た瞬間。
ボフッ
真美の肩を抱きながら雪の中へ倒れ混んだの!
「ちょっと、樹くん!」
「わりぃわりぃ、ハハハッ!」
もーう。
すぐそういうことするんだから。
雪でも湿らない手袋で樹くんに付いた雪も払う。
本当にダメなんだからっ!
「真美ちゃん、こっちこっち〜」
班の女の子が手を振っている。
はいはーい。
スキーボードを持ち直して、初香ちゃんのとなりへ行く。
「真美ちゃんって樹くんと仲良しだから羨ましいな」
「初香ちゃんも仲良しじゃん。もっと仲良くなりたいよね。今日、みんなで目一杯遊ぼっ!」
初香ちゃんはうなずいて、エリちゃんの肩をポンポンつつく。
よーし。
「じゃあじゃあ、ガーッって上がってく乗り物で一番上まで行ったら、そこから一番早く降りた人が、好きな人と1日過ごせるね。いない人は、適当に選んで」
初香ちゃんの樹くんのとなりに立ちたいという願望も込めて、みんなで乗り物に乗る。
二人乗りだったので、初香ちゃんとふたりで乗る。
「真美ちゃんにお願いがあるんだ…。樹くんのこと、取らないでほしいの」
「あ、そういうつもりじゃないの。初香ちゃん応援してるし」
初香ちゃんはホッっとしたように笑って、スキーボードを直す。
「強く言ったように捉えないでね?」
初香ちゃんがボソッっと言ったのには気付かなかった。
おおっ、なんか予想通りといいますか。。。
続きが楽しみ!
薫ちゃんありがとう。
予想通りでしたか!
続きは予想通りに回るかな…?
では、どうぞ。
8.闘いのトラブル
みんな木々の間を通り抜けながら気を引き締めて立つ。
好きな人はいないから、好きな人がいる人が、その人と過ごせるように。
真美は、乙女に協力するためにゆっくりしようかな。
「真美ちゃん、みんなでバトルするけど、実柚乃ともバトルしよう!」
「あ…うん、いいよ」
どうしよう。
初香ちゃんに協力しなきゃ。
でも、どうせ上手く出来ないし、比べるほどじゃないよね。
「いくよ〜、よおい、どん!」
エリちゃんが掛け声を出して、真美たちはスタートした。
実柚乃ちゃんは、器用に木々を通り抜けて、ダントツ1位で滑っていく。
負けちゃうな、真美。
せっかくの修学旅行で、上手く出来ずに終わるのはイヤ。
よーし、頑張るぞ!
「真美ちゃん速いよぉっ!」
初香ちゃんが苦戦しながら叫ぶ。
真美の後ろは初香ちゃんだけ。
みんな前。
すると。
「真美ちゃぁんっ!」
初香ちゃんは、坂が急なところでボードごと転倒した。
「初香ちゃん!」
真美は、近くの木に掴みながら、ゆっくり初香ちゃんに近寄る。
ギュッっとふたりで手を握りあって、ゴールしようとした…けど!
初香ちゃんが方向を決めてて、自分目線から見てたから。
真美は大きなトゲトゲがいっぱいの木に突撃しちゃったっ!
「あっ、真美ちゃん!」
でも、もう遅かった。
もう木はなく、雪ばっかりの坂。
真美と初香ちゃんの手は離れ、トゲトゲとジャンパーの裾が絡まって!
「初香ちゃ〜ん!」
「…」
ここからは、ちょっとした急斜面で、上手くスピードを調節出来ない初香ちゃんは、恐らくスピードを上げて滑り降りる。
つまり…。
ゴックンと唾を呑み込む。
ちょっとずつ雪の降る量が増える。
みんなは見えない。
微かに、前田先生の声が…。
「前田先生ーーー!」
「…」
どうしたらいいの?
全然取れないトゲトゲ。
誰もいない雪の中。
そして…寒い。
初めはそんなに寒くなくて、薄い方を着てきて、今は寒い。
お願い初香ちゃん。
一番下へ行って。
先生に伝えて、真美を助けて。
真美は、パサッっと雪の中に倒れた。
9.知っている真実
初香のせいだ。
ギリギリ、木の横を滑ったかと思えば、真美ちゃんが…。
「初香ちゃん、真美ちゃんは?」
「そろ、そろじゃない…?」
初香の声は強ばっている。
今、前田先生が呼び掛け中。
あとふたり帰ってきてない。
いや…三人。
真美ちゃんと樹くんと坂宮くん。
「はぁぁっ!」
坂宮くんが帰ってきた!
スキー場の小さな家で、暖炉、ヒーターに当たりながら待つなんて。
真美ちゃんがどこにいるのか知っているのは初香だけ。
でも、話したら疑われる。
何か知ってるならって。
初香が真美ちゃんを置いてきたこともバレちゃう。
そんなの怖いから、ヤダ!
「多田本さんと同じ班の子来て」
前田先生が家に入ってくる。
どうしてこの班だけふたりも…!
「多田本さんと桜庭くんのことについて、知っていることありますか?」
「はいはーい!初香ちゃんと一緒にいたのが見えましたー。実柚乃が一番に滑ったら〜、初香ちゃんが倒れて〜、真美ちゃんが助けてて〜、それからは雪が降って〜見えませんでしたー」
実柚乃ちゃん!
真美ちゃんのことは知らない設定なのに!
前田先生に見られてギクッ。
「実柚乃ちゃんの言う通りです。ですが、そこからは初香ひとりで滑れたので知りません。真美ちゃんは、体勢整えてました」
実柚乃ちゃんと前田先生にギロッっとにらまれる。
でも事実だし。
初香は悪くないしっ!
初香は、平静を取り持っていた。
10.仲間を守った行動
ハッ!
ゆっくり目を開ける。
まだトゲトゲが絡まってる。
立ち寝してたんだ、真美。
トゲトゲをまた取りながら、どうしようか考える。
前髪が微妙に凍ってる…!
風は強く、なぜか上の方は弱い。
一番上へ行って、練習しながら様子を見ようかな。
…真美は、最高に寒い雪山を上る。
「お〜い真美〜!」
「真美いるかーーー?」
この声は、坂宮に…樹くん?
上の方はだんだんはっきりくっきり見えてきて、雪も降っていない。
「真美!」
「早く帰ろう真美!」
右は坂宮。
左は樹くん…。
っと…!
「真美ちゃ〜ん!初香よーっ!」
初香ちゃん?
バランスを崩しつつも姿を見せる初香ちゃん。
が…!
倒れちゃうっ!
「樹くん、初香ちゃんを!」
真美は初香ちゃんを樹くんの方に押して、体勢を崩して木々の間に転がり落ちていく!
初香ちゃん、これで樹くんと仲良くなれたよね。
坂宮、今までありがとう。
なんか亡くなる感じの感情。
どうしてこんなこと考えてるの。
そんな真美の手を掴んだのは。
「真美!」
坂宮だった。
やっほー!なんか久しぶりだね!
真美ちゃんと坂宮くん、どうなるのかな?
あと、みぃも勉強頑張ってね!
久しぶりだね!
コメントありがとう。
真美ちゃんたちの新たな恋行進だよ!
勉強、薫ちゃんも頑張ってね。
お互い頑張ろう!
恋も楽しみだし。
そうだね!
楽しみにしてくれててありがとう。
名前変えました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
11.心配してくれた友達
何か、暖かい。
さっきまで寒かったのに。
ゆっくり目を開けると、心配そうな顔をした実柚乃ちゃん。
と…坂宮!
部屋の隅には班の子がいた。
「真美ちゃんっ?」
実柚乃ちゃんが声を上げて、みんなが近寄ってくる。
真美、ベッドに寝てるんだ。
ゆっくり起き上がると、ふーちゃんがおでこに手を当てた。
「ちょっとは暖まってきたね。まーちゃん大丈夫?」
やっぱり冷えてたんだ。
初香ちゃんが歩み寄ってきて、耳元でつぶやいた。
「後から話したいことがあるの。みんなが行ったら、ふたりで初香と話させてね」
初香ちゃんは起き上がって、エリちゃんやさやかちゃんとおしゃべり。
ふーちゃんと実柚乃ちゃんもふたりでおしゃべりしていた。
心が和むな〜。
「ふみちゃん、俺、前田先生に言ってくる」
涼太くんと樹くんが部屋を出ていき、坂宮が顔を近付けてきた。
「真美、ごめんな。助けに行くの遅れて。俺がもっと早く行けば…」
「うんん、いいの。ごめんね、迷惑かけちゃって」
坂宮に謝ると、首をブンブン横に振って、ニカッっと笑った。
「真美が元気そーで良かったぜ!」
そうだね、心配してくれてありがとう、みんな。
真美も坂宮に笑いかける。
前田先生が入ってきて、「大丈夫?」と声をかけられた。
「はい、すみません。勝手な行動してしまって。本当に反省しています」
前田先生に何度も何度も頭を下げると、優しい微笑みを向けた。
いつもはちょっと厳しい前田先生が。
「多田本さんが無事で、本当に良かったわ」
前田先生は涙を流してうなずく。
真美の頭をなでてくれて、ママみたいに笑ってくれる。
卒業の年が、前田先生で良かった。
本当にそう思って、ベッドに持たれかかる。
すると。
「前田先生ー、真美ちゃんとふたりで話したいことがありまーす」
初香ちゃんが言って、みんなが退出した。
何を言われるのかな?
「あのね…真美ちゃん…」
ドクン、ドクン
何…言う、の…?
12.初香ちゃんの気持ち
「本当にごめんなさい!初香が勝手な行動したからっ!」
初香ちゃんが、ペコリと頭を下げる。
え…そういう話だったの?
すっかり樹くんのことかと。
「初香が、真美ちゃんの目線でも滑らなかったし、先生に本当のこと言わなかったから!」
初香ちゃんによると、ちょっと先生に聞かれたときにウソをついてしまったとか。
自分がしたって認めたくなくて。
何とか抜け出してきたらしいけど。
「最悪だよね、初香。ごめんなさい」
「いいよそんなの。気にしないで」
「気にするよ!初香のせいで、修学旅行台無しじゃん…」
初香ちゃんの目がウルウルしてきて、いつしかは涙でいっぱいだった。
真美が引っ掛からずに滑ってたら、こんなことなかったんだ。
チクチクも、早く取ってたら…!
「真美のせいだよ。初香ちゃんのせいじゃない!」
真美もだんだんウルウルしてきて、ふたりで泣いていた。
ベッドの布団は湿って冷たい。
初香ちゃんの心は温かい。
真美のこと、一番に考えてくれてる気がしたから。
「もうやめよう?この話。楽しもうよ、修学旅行!」
真美が初香ちゃんの背中をさする手を止める。
初香ちゃんはゆっくりうなずいて、一緒に食堂へ移動した。
エリちゃんやさやかちゃん。
実柚乃ちゃんとふーちゃんたちも晩ごはんを食べていた。
真美、お昼ご飯食べてないな。
お腹空いてないけど。
「あ、初香ちゃん、こっちこっち!」
エリちゃんが手を振って、となりに座る。
晩ごはんは和食かぁ。
温まるご飯だ。
焼き魚にご飯にお味噌汁。
お漬け物と、ほうれん草のお浸し。
どれも、『和』って感じ。
「真美ちゃん、おしゃべりしよ〜」
実柚乃ちゃんがにっこり笑って焼き魚の骨を取る。
って、取り方違うよ〜。
「実柚乃ちゃん、骨の取り方、こう」
真美がやって見せると、実柚乃ちゃんも真似してきれいに骨を取った。
ほぼ身のみだよ!
「ありがとう真美ちゃん!」
良かった、骨が残ったまま食べることなくて。
ホッっとしつつ、真美も焼き魚を食べる。
おばあちゃんの味がして、とても心が温まってきた。
13.乙女の恋バナ
その日、旅館の真美たちの部屋で恋バナが繰り広げられていた。
初香ちゃんの恋愛がメインでね。
「樹くんの好きな子って、絶対真美ちゃんだよね〜」
さやかちゃんが真美の腕をつついてきた。
ええっ、違うってば!
さやかちゃんにつつき返すと、初香ちゃんがしんみりして言った。
「初香も思った。真美ちゃんカワイイもんね〜」
「真美ちゃんも初香ちゃんも、みんなカワイイじゃ〜ん」
エリちゃんが、初香ちゃんを励ますように手を打った。
だけど、ふーちゃんが涼太くんの話を始めた。
「涼太が言ってたけど、樹くんは初香ちゃんのこと好きらしいよ」
「おおっ、涼太くんの話じゃん!」
エリちゃんが興奮しながらふーちゃんをからかった。
ふーちゃんは照れながらエリちゃんとやり取りをしている。
初香ちゃんは、さやかちゃんと興奮しながらハイタッチ。
恋してない真美と実柚乃ちゃんは、噂話。
「転校しちゃった京ちゃんと琴ちゃんも、涼太くんに告白して行ったよね」
「へ〜、そうなんだ」
京ちゃんと琴ちゃんって言うのは、元彦宮学園生徒。
早期受験で転校したんだ。
涼太くんに恋してたんだ、ふたり。
「ロマンチックだよね、転校告白」
「卒業するときに告白すると、結ばれるって噂あるよねえ。校門前で」
「そうそう!去年告白ラッシュだったらしいよ!」
恋バナに達していない話で盛り上がっていると、班の男の子がやって来た。
同じ部屋で寝るんじゃないのに!
真面目な涼太くんまで!?
「せっかくだし、修学旅行らしいことしてぇから、王様ゲームしよーぜ」
樹くんがいきなり言ってきて、急遽王様ゲーム開始。
みんな、パジャマ姿でね。
ちょっと恥ずかしかったけど、王様ゲームが楽しくて忘れていた。
あの、読書板で読んだ本の感想を書いているのですが、岬さんのここは明確スイーツ研究部!を記してもよろしいですか?または紹介してよろしいですか?
378:岬◆8Q:2017/09/11(月) 21:37 >>377
いいんですか!?
私なんかの作品を!?
ありがとうございます!
ぜひどうぞ!
よろしければ、これからもご覧いただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします!
>>378
ありがとうございます。
今月中に掲載する予定です。
これからも楽しみにしています。
>>379
いえいえ。
こちらも嬉しい限りです。
これからもよろしくお願いします。
よろしければ、感想なんかもいただけたら嬉しいです。
14.王様の命令
まず、樹くんが割り箸を突き出してきて、みんなが引く。
割り箸の先が赤だったら、王様。
真美は…王様じゃない。
今回の王様はエリちゃんだった。
「何番まであるっけ?」
ええっと、真美、ふーちゃん、実柚乃ちゃん、初香ちゃん、エリちゃん、さやかちゃん。
男の子が…。
「絵理乃も入れて10人」
樹くんがにっこり笑った。
初香ちゃんが、まるで自分が笑いかけられたかのように微笑む。
恋してる感、ある〜。
「そっか、ありがとう。じゃあ、4番と10番は、今日同じベッドで寝る」
エリちゃん無茶だよ〜。
真美は5番だからニヤニヤしながら、当たったメンバーを確認。
実柚乃ちゃんと、さやかちゃん?
女の子同士なら大丈夫だね。
「次!」
また割り箸を引く。
真美は1番か。
当たらないといいけど。
王様は涼太くんで、ちょっと悩んで口を開いた。
「1番と8番、これから10分男子部屋で二人で話す」
え…。
8番は樹くん。
1番は…真、美…。
「1番誰ー?」
真美が渋々手を挙げると、初香ちゃんが思いっきり立ち上がった。
その拍子に、真美は体勢を崩す。
「ごめん、真美ちゃん。これじゃあ、あんまり動けないよね。初香が代わりに行ってあげる」
あ、行きたかったんだ。
真美は座り直して、初香ちゃんを見送ろうとした。
そしたら。
「おい真美。王様の命令は絶対。初香は戻ってろ」
別にいいのに〜。
遊びなんだからさ〜。
でも、仕方なく樹くんと男子部屋へ移動した。
入ってみると、物がゴチャゴチャ落ちていて踏み場がない。
「ごめん真美。俺のベッドここ」
一番奥じゃ〜ん。
樹くんが手を握ってくれて、ゆっくりベッドを移っていく。
「あのさ、真美」
樹くんのベッドに移ったところで、急に静かになった。
どこの部屋も騒がしかったのに。
先生かな…?
「真美隠れろ!」
樹くんの布団に隠れて、他の子の荷物を、別のベッドの布団の下へ。
寝ているように思わせる。
樹くんは適当にベッドに横たわる。
「寝てるかー?おぉ、ここの部屋は静かでよろしい」
藤本先生だ〜。
副学年主任の。
樹くんが起き上がってきて、真美の肩に手を置く。
「俺、真美が好き。付き合って…」
え…?
15.付き合うか
真美は、硬直して何も出来なかった。
樹くんのまっすぐな眼差し。
本気だろうな、きっと。
「あとさ…真美、自分のこと名前で言うの似合わねぇぞ」
ガーン。
マジですか。
初香ちゃんたちの真似してみたけど。
似合わないなんて…。
わたしに戻そっと。
「わたし、で、いい?」
「うん!」
樹くんがニカッっと白い歯を見せて笑う。
この人から、わたし告白されたんだ。
「でさ、どうなんだよ」
「樹くんは、わたしのどこがいいの」
上目使いに聞くと、樹くんは頬を赤らめて指を折って数える。
「秀才なところ。カワイイところ。笑顔が素敵なところ。一生懸命なところとか…。いっぱい」
「わたしより該当する人いるのに?」
「俺は真美がいいの!」
わたしがいい…、かあ。
樹くんを見つめて、うつむく。
きっと、ずっと考えてたんだろうな。
わたしの反応。
「ごめんなさい。わたし、受験や中学校のことで頭がいっぱいで…。樹くんに迷惑かけかねないし、初香ちゃんとか該当してるでしょ」
初香ちゃんの名前を出した途端、樹くんの顔色が変わった。
「俺、初香苦手なわけ。気付いてくれなかったわけ?さすがの児童会長様も無視ですか」
「樹くん…?」
急にタイプが変わったような樹くん。
冷たくなった?
「児童会長様は自分のことで頭がいっぱいだから、俺のことは捨てたんだ。オーケー、分かりましたー」
「捨ててない!どうしたら捨ててないことになるの?」
「付き合うこと」
気持ちじゃ届かないの?
行動にひとつひとつ移さなきゃ、届かないの?
「どうする?」
「…わたしが、捨ててないこと証明したら、別れてもいいの?」
「うんいいよ。でも、長いよ?」
ゆっくりうなずいて、付き合う決心をした。
必ずすぐ分かってもらって、別れる。
勉強集中!
執着はしないでね。
祈るような気持ちで、10分終わりのベルの音を止めた。
16.ピリピリ関係
わたしは女子部屋に戻り、今あった報告をした。
付き合うことになったのも、樹くんが言っちゃってね。
「真美ちゃん初香を裏切ったんだね、もういい。樹くんと別れたら許してあげる」
究極の選択。
樹くんと、いち早く別れたい気持ちは山々。
だけど、樹くんを捨てたこと、樹くんに捨てられたことになる。
初香ちゃんの敵になりたくない。
でも樹くんの敵にもなりたくない。
どうしたらいいの!?
「そろそろ寝ましょう」
ふーちゃんが落ち着いた声で言って、みんな散らばった。
実柚乃ちゃんとさやかちゃんがくっついているとなりのベッド。
わたしはずっと悩んでいた。
どうしてもひとりで抱えられないけど、誰にも言うことが出来なくて。
恋愛要素あるもん。
先生には言えないし。
勉強に集中したいのに。
翌日。
美味しいもの巡りへ行く準備。
初香ちゃんとピリピリしたまま行う。
嫌だな〜、最近。
トラブルばっかりで。
わたしの周りにいるとトラブルしか起きないじゃん。
ムスッっとしていると、エリちゃんが耳打ちしてきた。
「樹くんと付き合うことになったのって、無理矢理だよね」
キョトンとしながら見つめ返す。
クスッっと笑われて、初香ちゃんを指差した。
「初香ちゃんも気付いてるよ。反省してるから、聞いてあげて」
エリちゃんって本当にいい子だね。
初香ちゃんも、本当はおっとり優しい子かと思ってたけど、結構意志を貫くんだね。
ビックリしつつ、初香ちゃんととなりに並んだ。
17.尊敬されるか
わたしが、昨日の男子部屋でのことを話した。
「ごめんなさい真美ちゃん。初香も気付いてたのに、カッっとなって」
わたしは首をブンブン横に振る。
でも、初香ちゃんはボソッっとつぶやいた。
「別れるまでの道のりはどうでもいいよ。失恋した。あきらめる」
初香ちゃん…。
あっけなく終わった初香ちゃんの恋。
エリちゃんが知ったら…。
樹くんが初香ちゃんのこと分かってあげていたら。
「いいんだよ、もう。本当にごめんなさい」
初香ちゃんの笑顔を見てから、東京へのバスへ乗り込む。
となりは実柚乃ちゃんだった。
「樹くんとカップルおめでとう!」
「おめでたいことじゃないよ。わたしだって、樹くん苦手になったもん」
実柚乃ちゃんはキョトンとしている。
そうだよね。
苦手な人と付き合うなんて。
軽く、昨日あったことを話すと、実柚乃ちゃんは普通に納得。
「実柚乃も樹くんヤダ〜。多分、実柚可も嫌いなタイプ」
実柚可ーーー実柚乃ちゃんの姉で、秋の遠足ではお世話になった。
優しくて、姉兼母なんだよね。
「実柚乃ちゃんと実柚可さんって似てるの?」
「実柚可とは似てないと思うな」
そうかな〜。
家庭科上手い。
優しいところとか。
お手本になるところ。
すっごく似てると思うけどな〜。
「実柚可と似てたら、実柚乃、超カッコいいじゃん!」
実柚乃ちゃん、実柚可さんのこと尊敬してるんだ。
仲良しそうだし。
わたしも産まれる赤ちゃんに、尊敬してもらえるかな。
18.初等部のプリンセス
翌日もすぐ終わってしまい、気付いたら家に帰っていた。
旅館の『和』より落ち着く空間。
おばあちゃんがお料理して待っていた。
「お帰りなさい、真美ちゃん」
ボストンバッグの中から出すものを出して、彦宮学園へ向かった。
隅木田くんに、いろいろ聞くために。
中等部に足を踏み入れると、ちょっと気が引き締まった。
「すみません。隅木田先輩っていらっしゃいますか?」
隅木田くんを呼んでくれて、生徒会室から出てきた。
「お疲れのところすみません。露島先輩と何かあったりしましたか?」
隅木田くんはにっこり笑って紙を見せてきた。
明スイで回ってるプリント。
明後日の彦宮学園中等部家庭科室にてスイーツの練習。
露島先輩たちの練習は高等部。
と書かれている。
「真美ちゃんも良かったら来て」
プリントをもらって、明後日の勉強時間を削る。
明スイでいるためには、行くしかないのだから。
プリントを握りしめて走っていると。
「初等部のプリンセス。高等部の王子様だよ」
つ、露島先輩…。
プリンセスって何なんですか…。
後ずさりしながらも、露島先輩を見る。
「練習来るみたいだね。これで俺たちが勝ったら、プリンセスは俺のもの」
「きっと明スイが勝ちますよ」
露島先輩は、ジッっとわたしをにらんで苦笑いした。
「君は出られない。よって、自信を持つ権利もないだろう」
確かにそうだけど。
言い返せなくてタジタジしていると、露島先輩は笑いながら高等部へ戻っていった。
…不思議な先輩。
わたしは、怖くなって急いで家に向かって走った。
19.カップルじゃないカップル
その日。
わたしはゆっくりと初等部家庭科室へ向かった。
結構執着してくる樹くんと。
「陽都と何かしないでね。終わったらすぐ呼んでね。そしたら一緒に…」
何もかも一緒にやればいいんでしょ。
もう。
どうして付き合ったんだろ。
素敵な恋したかったのに。
早く認めてもらうしかないか…。
「分かってるから」
「あ、真美冷た〜い」
「分かってるよ」
樹くん、執着しすぎ。
出来たらもっと楽な恋で…。
ちょうど隅木田くんが家庭科室から出てきて、一緒に入る。
わたしは見学しているだけ。
「隅木田先輩。真美が見てるだけなら、となりで俺もいますね」
「何で?」
隅木田くんはちょっと怒っているように思えた。
すると、樹くんは淡々とした口調で言った。
「真美の彼氏だから〜」
「本当?真美ちゃん」
わたしはコクンとうなずく。
認めたくない事実。
あんまりこんなこと思ってばかりじゃダメだな〜。
早く認めてもらうためには。
「真美ちゃんいい?」
「はい」
隅木田くんは苦笑しながら椅子を空けた。
みんながそろうまで、樹くんとふたりきり。
ここにいることがイヤ。
バカみたい。
わたし。
「俺のこと好きじゃなさすぎ」
樹くんがとなりで手を握りながらつぶやく。
「カップル感なさすぎ」
なくていいよ〜。
下を向きながら心の中でぼやくと、樹くんはため息をついた。
20.別れるか
わたしは、樹くんの方を向いて宣言するように言った。
「だって、わたしたちが付き合った理由覚えてないの?」
樹くんは、「もちろん覚えてる」と、首を縦に振った。
なら分かってるじゃん。
「認めてもらうためでしょ?樹くんを捨ててないってこと」
強い眼差しを樹くんに向けると、樹くんはほったらかしにして、矢本くんのルービックキューブを組み立て始めた。
「樹くん!?」
「何だよ真美」
「わたしは、好きっていう意味ではないんだよ!」
樹くんは、わたしの頬を一回パシンと叩いた。
頬をなぞる。
「どうして叩くの!」
「好きじゃないのに付き合ったカップルなんて好まねえ」
それとこれとは別でしょ!?
好まないなら、さっさと別れればいい話じゃん!
「叩いた理由はムカついたから。何かヘン?」
ムカついたなら、別れたら縁切れるのに。
わたしは、樹くんにずっと怒ってるんですよっ!
「何事!?」
矢本くんが家庭科室に駆け込んで来ると、樹くんはルービックキューブを元に戻した。
聞かれてたらどうしよう。
「樹、お前、陽茉理にもやっててさ、多田本にもやって。楽しいわけ?」
陽茉理ちゃんにもやってたの?
樹くんって、あこちゃんと付き合ってから、わたしと陽茉理ちゃんとも付き合ってたんだ。
晴奈ちゃんが言ってた。
樹くんは危険って。
「お前出てけ。多田本と別れろ!」
矢本くん…。
わたしは、ゆっくり席を立って矢本くんの後ろに立った。
大きな背中。
守られてる気がして、心強かった。
「ああ、いい。真美には捨てられたことにする」
捨ててないっ!
でも、別れれてちょっとホッっとした気がする。
「すぐ闘いあるだろ。そんな時期に、アイツと仲良くなるなよ」
矢本くんの手が、わたしの頭の上に乗っかる。
言う通りだ。
わたしは微笑み返して、明スイの勝利を目前とした。
21.繊細な動き
明スイは、パフェを作るらしい。
いろんなスイーツが乗せられるから。
露島先輩たちも。
お題がパフェってことに気付いたのはさっき。
「マカロン、ソフトクリーム、アイスにチョコレート」
隅木田くんが使うスイーツを読み上げる。
きっと、彦宮生は明スイの味知ってるはずだから、スイーツにも馴染みがあるよね。
祈るような気持ちで見る。
かき混ぜたり、練ったりする、ひとつひとつの動作が細かい。
「繊細なんですね」
隅木田くんに向けて微笑むと、にっこり笑った。
「大事なメンバーを賭けられてる。適当なスイーツなんて作れないよ」
わぁー、キュン!
隅木田くん、ちゃっかり女の子の心を落とすんだよね。
カッコいい!
「おい隅木田、俺の真美にそういうこと言うなよ!」
坂宮、悪いけど、わたしはわたし。
いつ坂宮のわたしになったの…?
樹くんといた時より、気を使わないところとか。
すっごく好き。
わたしの居場所。
「おい真美!」
坂宮に呼ばれて、ハッっとする。
わたしは、またみんなを見た。
(つづく)
あとがき
岬
こんばんは!
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイいかがですか?
皆さんのおかげで11巻完結。
本当にありがとうございます!
ここでコメントコーナー。
コメントをくださる皆さん、本当にありがとうございます!
感想・アドバイス・質問お待ちしておりますね。
ここで宣伝コーナー。
皆さんが、『*レインボーハッピー*』の作品を自分の作品に入れてくださっています。
ぜひチェックをお願いします!
詳しくは『*レインボーハッピー*』のスレをご覧ください。
雑談は控えて、12巻の予告。
文化祭で、いよいよ闘い2回目。
児童会長の真美ちゃん、文化祭を無事成功出来るか!?
これからもどうぞよろしくお願いします!
『ここは明確スイーツ研究部!12』
人物紹介
多田本 真美
目立ちたくないを意識していた小学6年生。明確ゼミナールに通っていた。
坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。
矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。
隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。
1.文化祭
12月の寒い寒い日の昼。
私立彦宮学園の6年1組は、学級委員長を中心に話し合い。
「カフェとお化け屋敷、展覧会の案があります」
黒板には、『文化祭6年1組』と書かれており、出し物を考えていた。
わたしの名前は多田本真美。
本校の初等部児童会長。
6年生で、付き合った歴3日だよっ!
多数決かぁ。
やっぱりカフェかなぁ。
学級委員長の七井さんが言って、手を挙げる。
七井さんが黒板に書き込むのが聞こえて、すぐみんな顔を上げた。
「カフェが1番人気です。よって、6年1組の出し物はカフェに決定です」
落ち着いた表情で言い、周りがワッっと沸き立った。
「俺、外で呼び掛ける〜」
「わたしは料理したの運びたい!」
「実柚乃はもちろん作るから!」
得意気に実柚乃ちゃんが胸を張る。
実柚乃ちゃんは、家庭科が得意。
期末テストでも、実柚乃ちゃんに叶う人はいない。
ずっとずっと1位だから。
「実柚乃がひとりで作ればよくね?」
「でもひとりじゃねぇ」
「補助で誰か入ればいいじゃん」
実柚乃ちゃんを中心に、みんなが囲って、勝手に話を進める。
実柚乃ちゃん、嬉しそうだけど…。
「みんな、落ち着いて!ゆっくり決めましょう」
七井さん、ナイスフォロー!
心の中で拍手する。
みんなが席に着いて、静まった。
「料理をするのは相川さんに任せていいですか?」
みんなが、「賛成!」「6年1組の料理の魔王登場だ!」「絶対人気出る」「実柚乃ちゃんしかいない!」って。
実柚乃ちゃん大人気。
照れながら、ちゃっかり輪の真ん中。
「では、相川さんで。補助で3人着きましょう。誰かいますか?」
「はいはい、推薦。杉田と涼太と絵理乃〜」
エリちゃんは、目を真ん丸にしてキョトンとしている。
ふーちゃんこと杉田ふみちゃんは、付き合っている涼太くんを見る。
みんながそれに賛成。
あっさりメンバーが決まった。
「相川さんを中心に、杉田さん、尾原さん、青山野くんお願いします」
辺りから拍手が巻き起こる。
どんどん決まっていくぞ!
この調子なら、結構良くなるよねっ!
2.児童会室事件
結構決まった。
わたしは、料理を運ぶ仕事。
朝ね。
昼からは自由タイム。
初香ちゃん、エリちゃん、さやかちゃんと回るんだ!
料理を作る担当の実柚乃ちゃんたちは、ずっと仕事で無理だけど。
「真美ちゃん、妹ちゃん産まれたら見せてね〜」
さやかちゃんがうっとりしながらつぶやいた。
エリちゃんは初耳だったから、「真美ちゃん家今年子供産まれるの!?」なーんて驚いてて。
初香ちゃんは黙ったまま。
「初香ちゃんどうしたの?」
エリちゃんが心配そうに顔を覗き込んだ。
修学旅行から、初香ちゃんはちょっとわたしから避けてる気がする。
きっと、3日間樹くんと付き合ったから。
初香ちゃんの好きな人とね。
無理矢理付き合って、別れたの。
ヘンでしょ。
「樹のことはいいじゃん、ねっ?」
エリちゃんが初香ちゃんの背中をトントンと叩く。
初香ちゃんからしたら、そんなに軽いことじゃないよね。
ごめんなさい。
「わたしも反省してるよ。あんなことしなければ…」
「いいよいいよ、気にしてない」
え、絶対気にしてる。
気の毒に思いながら、初香ちゃんたちと別れた。
家の方に歩いていると、秀花ちゃんが走ってきた。
「真美ちゃん!」
「何?」
「児童会室が荒れてるよ!」
どういうこと!?
今来た道をダッシュで走る。
足の早い、ふーちゃんの双子の妹、秀花ちゃんは、わたしを置いて学園へ!
待ってえええ。
「秀ー花ちゃ〜ん」
返事しないほど遠くにいる!
はぁっ、はぁっ。
やっとのことで学園に着くと、露島先輩が初等部を歩いていた。
イヤな予感。
それは的中し、児童会室いっぱいに、『初等部児童会長学園出てけby露島』と書いてある。
わたし…退学…?
3.退学をまぬがれる方法って?
初等部より、高等部の生徒会長の言うことの方が権利がある。
よって、退学取り消し確率はほぼ0。
「プリンセス」
露島先輩だ。
高等部の生徒会長。
その後ろは、俣野コヨ。
ふたりで、新明確スイーツ研究部を立ち上げようとしている。
「どうしてここにいるの?」
「露島先輩こそ」
一歩前に出ると、コヨが思いっきりにらんできた。
まるで、「露島先輩の前に立つな」とでも言っているように。
「もう、君の居場所はない。制服を捨てなさい。新児童会長はコヨ」
コヨも露島先輩に並ぶ。
どうしてわたしが退学になるの?
グッっと耐える。
「わたしが退学する理由は?」
「いても意味ないでしょ。公立とか市立行きなよ」
「今更ですか」
露島先輩はにっこり笑う。
秀花ちゃん助けて。
わたしを、意味あるって言って。
チロッっと秀花ちゃんを見ても、こちらを見ていない。
露島先輩を見ている。
「いいか、児童会。わたしに着いてこいよ」
コヨが児童会長…!?
学園の雰囲気は児童会長って言う。
彦宮学園の雰囲気がコヨに!?
「退学しないようにするには…どうしたらいいんですか」
露島先輩は待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑った。
「明スイを抜けて新明スイに入る」
何それ、話が違う。
闘いで勝つって話だったじゃん。
「答えは明日。待ってるよ」
露島先輩とコヨは身をひるがえして帰っていった。
シーンと辺りが静かになる。
「児童会長!」
秀花ちゃん、まだ児童会長って呼んでくれてありがとう。
児童会メンバーがすがりつく。
「児童会長がいなくなったら学園は潰れます!合併案も来てるんだから」
合併ね。
となりの私立御立川学園との合併。
絶対拒否してるけど。
そんな中、わたしなんかに時間をかけられない!
「合併案は任せて。児童会の仕事をしてください。わたしは帰ります」
みんなに伝えたもんね。
今日は用事あるって。
青山野学園の校長先生が、彦宮学園の児童会長が希望してるから話したいってことで。
「いいから仕事、仕事!」
みんなは、渋々仕事に取りかかった。
4.わたしの決断
翌日の朝。
露島先輩と隅木田くんを前に話す。
わたしが決めてきたこと。
「ごめんなさい、隅木田くん。露島先輩の方へ入ります」
露島先輩は、ニヤリと笑みを浮かべて隅木田くんをからかった。
きっと、負けたって言って。
退学したくないから。
我慢も大切だよ。
昨日、青山野学園の校長先生と話していて、推薦で入れることになった。
推薦取り消しはごめんだから。
卒業まではとりあえず。
「すみません!」
隅木田くんは、身をひるがえして中等部へ戻っていった。
露島先輩とふたりで児童会室へ向かう。
「真美ちゃんカッコいいねぇ。俺のことは露島くんと呼んでよ」
馴れ馴れしい。
先生に怒られたらイヤだな〜。
露島くんは、コヨの仲間。
わたしもコヨの仲間になるんだ。
「コヨの従姉妹のコンも、よく手伝ってくれる。覚えとくといいよ」
コンさんもコヨの仲間か〜。
敵ばっかりな感じ。
露島くんと別れて6年1組へ行く。
合併は見事無しになった。
わたしの迫力でね。
英雄だよ、わたし。
「真美っ、おはよ!」
コヨが馴れ馴れしく抱き付いてくる。
きっと聞いたんだろうな。
露島くんから。
「ごめんね、ずっと仲良くしなくて。今日から大親友ね!」
こんな簡単に親友になっていいの?
コヨの中の親友って何?
ちょっとひきつった顔を伸ばしながらコヨと話す。
「よろしくね!」
うん…。
明スイに戻る方法はあるかな。
もう言っちゃったけど。
図々しいよね、わたし。
「闘いは無しだね!」
いや、やるよ、コヨ。
文化祭までに、必ず抜けるから。
いやぁ、なんか凄いことになってるね……。
それに、中学推薦ってすごっ!
私、普通受験だし、かなり難しいと思うのに……。
それと、明スイ戻れるように真美ちゃん頑張ってっ!
薫ちゃんありがとう!
校長先生に気に入られたからね。
真美ちゃん頑張ってるし。
読んでくれてありがとね!
5.コヨといて
今日はコヨと勉強会をすることになった。
もう美華ちゃんたちといなくなって、わたしや初香ちゃんのところに来たコヨ。
「真美〜、わたしも青山野受ける〜」
「いいよいいよ。コヨの行きたいところ行けば」
コヨは、樹くんみたいに執着。
1日だけでも疲れちゃう。
初香ちゃんもね、コヨに言ったの。
「初香たちにも仲良くして」
ってね。
だけどコヨったら、「真美とふたりがいいの!」なんて意地張ってる。
わたしは初香ちゃんたちがいいよ〜。
「コヨ、コンさんってどこに住んでるの?」
「コンなら、家」
コヨと一緒に住んでるんだ。
従姉妹ってところだから、似てるのかもしれないよね。
新明スイはヘトヘト。
「露島くんから聞いたかもだけどさ、明日、学食で話し合いね。活動の」
「了解しました」
コヨといるようになってから、学食でご飯を買うようになった。
お金かかるんだよ〜。
「真美の家楽しみだな〜」
コヨは、わたしの腕をギュッっと握った。
6.作るスイーツは?
家に帰って、コヨを迎える準備をしていると。
ピンポーン
「はーい」
最近、おばあちゃんは帰宅。
亡くなったおじいちゃんのことでいろいろあるんだって。
パパもママも帰ってきてないから、基本ひとりなんだ。
パパは出張。
ママは入院中だから。
妊娠してるからだよ。
「真美ちゃん、露島だよ」
つ、露島くんかぁ。
ゆっくりドアを開く。
後ろにはコヨ。
「コヨと勉強するのに俺は入れてくれないの?」
「すみません。どうぞ」
露島くんにも上がってもらって、さすがにわたしの部屋は無理になり、リビングを使うことにした。
「勉強よりさ、活動方針の話し合いもしよーよ」
露島くんに圧され、ノートを持ってきた。
明スイノート。
どんなことがあったのか書き留めたいから、新明スイでもこのノート。
「俺とコヨは明確ゼミ入ってるけど、真美ちゃんは元だよね。気にしなくていいから」
は、はい…。
露島くんが言うには、わたしたちは第2代目明スイらしい。
「明確ゼミで、2代目明スイのパーティーを行う。よろしくね」
パーティーかぁ。
わたし、キライじゃない。
でも、イヤだな。
逆らうことも出来ず、先に進む。
「作るものは、パン」
パンって、あれでしょ!?
もっちもちふっわふわの!
あげパン食べたい、チョココロネ食べたい!
パン食べた〜い。
「真美ちゃん喜んでるね」
あ、バレた。
2代目に入って一番嬉しい。
って、こんなことより、抜ける方法を考えないと。
まずは隅木田くんと話すこと?
「大丈夫?真美」
コヨに笑いかける。
大丈夫じゃないけど。
露島くんは、またも先に進む。
「明明後日行う予定。パンは何パンを作りたい?」
「はい!あげパン、チョココロネ、カレーパンに明スイパン!」
露島くんとコヨは笑い、わたしのノートに書き込んだ。
「じゃあ、あげパン俺。チョココロネコヨ。カレーパン真美ちゃん。明スイパンみんなでいい?」
わたしは力強くうなずいた。
スイーツのことなら、持ってこい!
パンってスイーツじゃないかもだけどね。
7.再び闘いへ
コヨと別れ、隅木田くんと電話する。
抜ける方法について。
「ごめんなさい隅木田くん」
「いいよ、露島先輩が悪いんだから」
隅木田くんと約束して、近くの公園で話すことにした。
わたしの初恋相手と。
「あ、隅木田くんこっちです!」
ベンチに腰を降ろし、しんみりした感じで切り出した。
「文化祭で、しっかり闘いたい。明スイに戻りたいから」
「露島先輩には、僕から申し込むよ。真美ちゃんは動かないで」
わたし、動かしにくい駒だよね。
チェスで表すと、ポーン。
マヌケな感じがするから。
「文化祭のはやるつもりだから」
隅木田くんの強い眼差し。
きっと助けてくれる。
翌日。
露島くんに呼ばれて高等部の生徒会室へ向かった。
やや怒ってる顔。
隅木田くんに言われたのかな。
「文化祭、闘いたいって言われた。どうせ俺たちが勝つから乗ったよ」
おお、隅木田くんありがとうございます!
でも、明後日はやるよね。
パン食べたいし〜。
「じゃあ、明後日はよろしく!」
「はい!」
よかった、なんか。
ヤバイ感じじゃなかったから。
コヨと、ふたりで廊下を歩いていると。
「コヨ」
「あっ、コン!」
コンさん!?
コヨが駆け寄って行った先は、コヨに似ている顔の女の子だった。
8.ママがっ!?
この子が、コンさん。
コヨがコンさんを紹介する。
「俣野コン。漢字で書くと、紺色の紺って書くよ」
「初めまして、多田本さん。コヨの従姉妹のコンです。高等部2年。露島くんと付き合ってます」
あ、付き合ってるんだ。
だから仲良くしてるってこと?
まあいいけど。
「初めまして。多田本真美、初等部児童会長です。コヨさんと仲良くさせていただいてます」
コンさんととりあえず別れて、コヨと教室へ向かう。
初香ちゃんたちとは、もういられなくなっちゃった。
「ちょっと、真美来い」
坂宮が呼び出して来て、わたしは図書室へ向かった。
コヨは、先に教室へ行ってね。
「絶対連れ戻すから待ってろよ」
隅木田くんに聞いたんだ。
坂宮は、わたしの手を優しく包み込むように握った。
「パフェ、何度も練習してるから」
わたしのために…?
明スイのみんな、ありがとう。
思わず涙ぐむ。
すると。
「多田本さん、病院へ行ってください。お母さんが…」
藤本先生が呼びに来て、わたしは病院へ向かった。
呼ばれて行ってを繰り返してる。
そんなことを思いながら、藤本先生の車に乗った。
「多田本さん大変だよね」
「はい。…あの、お母さんがどうしたんですか?」
藤本先生は車を運転しながら、となりのわたしをチロッっと見た。
「すごく苦しいみたいです。多田本さんを呼んでるって聞いたから」
娘であるわたしが、ね。
いたら、元気出るかな。
出たら嬉しいけど。
「笑顔でいてくださいね」
はい。
わたしは、病院の門をくぐった。
真美ちゃんのお母さん!
大丈夫?
それと、400おめでとう!
薫ちゃんありがとう!
どれもこれもみんなのおかげ。
皆さん、本当にありがとう。
コメントサンキューです!
9.コウスケくん
ママの部屋に藤本先生と行く。
笑いながらね。
おばあちゃんはいなかったけど、パパは来ていた。
出張先から飛んできたんだ。
「真美ちゃん?お母さんね、あなたの名前をずっと呼んでたのよ」
看護師さんがかがむ。
ママは寝ているけど、すごく汗をかいていて、苦しそうな顔。
「ありがとうございます」
看護師さんは部屋を出ていき、パパとわたしと藤本先生だけになった。
何話したらいいんだろ。
あたふたしていると、パパと藤本先生が話し始めた。
「真美は、ママの手でも握ってあげなさい」
パパがママの手を布団から出す。
わたしは、坂宮に握られたように、優しく握った。
ママ、お願い。
赤ちゃんを産んで!
「あぁ、遅れてごめんなさい」
「お母さん!」
「おばあちゃん!」
パパのお母さんじゃないよ。
ママのお母さん。
だけど、パパはおばあちゃんのことをお母さんって呼ぶんだ。
そうやって呼ぶ人多いらしいよね。
「真美ちゃん、優樹さん、すみませんでした」
おばあちゃんは、軽く藤本先生にあいさつして、布団をめくった。
わたしのとなりに座り、ママの手を握った。
「ちょっと行くね」
わたしは、部屋を出た。
すると。
「おねえちゃん、おかあさんがいなくなっちゃったの〜」
小さな男の子が、制服のスカートの裾を引っ張った。
お母さんがいないの!?
迷子かな。
「かんごしさんには言わないで!おかあさんにおこられるから〜」
困ったな〜。
看護師さんに言わずに捜す。
…って、お母さんに怒られる理由って看護師さんに言うから!?
どういうことだろう。
迷惑かけたからとかかな。
「僕、俣野コウスケ〜」
俣野?
初めの文字が『コ』?
ドクンとする。
コヨもコンさんも、初めの文字は『コ』だから。
「コウスケくん、おねえちゃんはいるかな?」
「いるよ!コヨおねえちゃんと、コアおねえちゃん。おねえちゃんと同じお洋服だよ〜」
やっぱりコヨだ!
コアさんは知らないけど。
ともかく。
「おねえちゃんは、真美。コヨおねえちゃんと仲良しだよ」
「えっ?コヨおねえちゃんと仲良しのおともだちなの?」
「うん、おともだち」
コウスケくんは、にっこり笑って上を向いた。
考えてる感じ。
コヨのこと思い出してるのかな。
「おかあさんとはどこではぐれたのかな?」
「ここ〜。僕がトイレ行ったらいなかったの〜」
コヨのお母さん、コウスケくんのこと見ててあげてねっ!
そんなことも言えず、立ち尽くす。
どうしよっかな〜。
「あ、僕、おねえちゃんと遊びたい。おかあさんが来るまで遊ぼ〜」
コウスケくんに連れられて、保育園くらいの子が遊ぶようなスペースへ移動した。
10.コンさんの秘密
コウスケくんは、思ったより元気っ子だった。
休憩せずに、ヒーローごっこをして遊ぶから。
わたしは悪者でね。
コウスケくんが剣でやつけるの。
「ごめんね〜、コウスケくん。おねえちゃん疲れちゃった。他のことやらない?」
「え〜?コヨおねえちゃんはずっとやってくれるのに〜」
さすがコヨ。
運動神経抜群だったからね。
体育祭、無我夢中に適当に走ったら一位のわたしとは違う。
たまたまみんなが運動苦手なだけだったし。
「コヨおねえちゃんより体力なくて」
「じゃあ体力付けよ〜」
そういうこと〜?
わたしはコウスケくんに引っ張られて、悪者になる。
そう言えば、どうしてコウスケくんは病院にいるんだろ。
ふと思って聞いてみる。
すると。
「従姉妹のおねえちゃんが病気だから来たんだ〜。知ってる?コンちゃん」
「知ってるよ、コンさん!」
思わず身を乗り出す。
すると、コウスケくんに身を沈められた。
「後から〜。まずはヒーローごっこ!おねえちゃんいいでしょ〜?」
「いいよ」
「やったぁ〜!」
コウスケくんはぴょんぴょん跳び跳ねながら剣を構える。
わたし、お絵描きが好きだったって聞いたな〜。
コウスケくんは好きかな?
遺伝子とかで、コヨは美術苦手だから好きじゃないかも。
わたしは、クスッっと笑って構えた。
「コウスケくんいいよ!」
すると、コウスケくんは体当たり。
わあっ。
思わず寝転がり、コウスケくんが剣でバシバシ叩いた。
痛い、痛いよ〜。
コヨすごいな、耐えれて。
「おねえちゃん立って〜」
立とうとしても。
ち、力が入らない…!
どういうこと!?
コウスケくんがブスッっとしている。
「ごめんねコウスケくん」
た、立てないっ!
すると。
「コウスケ!」
「おかあさん〜」
あ、コウスケくんのお母さんが来た。
あの人がコヨのお母さん。
もしかしたら、コヨはお母さんの遺伝子かも。
顔そっくりだし。
「迷子でした。気をつけて見てあげてください」
「ありがとうございます」
わたしは、苦笑いしながら足をさすった。
もう少しで400だね……
頑張ってね………
11.優しいお母さん
「痛いっ!」
コウスケくんたちが振り返った。
まだスペースで足を押さえている。
足が動かない。
「おかあさん、おねえちゃん、全然動けなくなったんだよ〜」
「えっ、大丈夫ですかっ!?」
コウスケくんのお母さんが駆け寄ってくる。
足をパッっと見て、カバンから1000円札を取りだし、言った。
「ヒーローごっこですよね。コウスケが出すぎた真似を。すみません。これで病院で治してもらってください。本当にすみません!」
やっぱり、コヨの遺伝はお母さんじゃないかも。
すごく優しいもん。
コヨはちょっと意地っ張りだからね。
「あの、いいですよ」
「いいえ、どうぞ!」
わたしは渋々受け取って、お母さんを引き留める。
もうそろそろ行きたいよね。
コンさんのところ。
「わたしは、お宅のコヨさんと仲良くしている多田本真美です」
「あなたが真美さん!?コヨが楽しそうに真美さんの話をしているのよ」
コヨ…。
コウスケくんのお母さんは、「真美さんは本当に素晴らしい子ね」と言い、コウスケくんと帰っていった。
「あの、すみません」
看護師さんを呼び止め、足を見せる。
1000円札も出してね。
ごめんなさい、コウスケくんのお母さん。
使わせていただきます。
「大変ね。おんぶするわ」
看護師さんが治療室へ運んでくれて、包帯をグルグル巻いた。
コウスケくんは怒られないけど、わたしが怒られるかも〜。
わたしは、怯えながらおんぶしてもらってママの部屋へ行った。
ルナ、ありがとう!
さっき400行けましたっ!
本当にコメントしてくれてありがとう。ガルトの件ごめんなさい。
ごめん。もう400行ってたね。
おめでとう。
>>407
良いよ。でも、たまには来てね。
ルナ、ありがとう!
行けるときは行けるよ!
本当にごめんなさい。
12.コン先輩の部屋へ
やっぱりと思ったけど、おばあちゃんにはこっぴどく怒られた。
根に見えてたけど。
「菜和が大変なの分かるでしょ。真美ちゃんまでケガして〜」
は〜い、分かってるって〜。
ケガしたら、お世話じゃないけど、めんどくさいことになるってことだよね。
知ってるんだから。
「すみません、看護師さん」
呼び止めて、コンさんのことについて聞いてみる。
先輩だし、コンさんじゃなくて、コン先輩、かな。
「病気の女の子よ。病名までは言えないわ。個人情報だから」
コウスケくんの言った通り、病気なんだ。
だけど明スイ続けてるんだね。
スイーツを好きっていう気持ちがすごく伝わってくる。
ちゃんと彦宮学園に通っていること、きっと、ずっと通いたいんだろうな。
楽しいこと、見てたいと思うし。
「行ってもいいですか」
今はちょうど起きているらしく、看護師さんに押してもらい、コン先輩の部屋へ向かった。
「失礼します」
「どうぞ」
コン先輩は、いつにもましてぐったりしていて、かわいそうだった。
コヨも悲しいんだろうな。
「真美ちゃん?」
わぁー、名前で呼んでくれた。
コン先輩に笑いかけ、にっこり。
クスッっと笑われて、椅子を引っ張り、座るよううながされる。
「わざわざありがとう。真美ちゃん、車椅子なの?」
「いえ、先程、コウスケくんと遊んでいてケガしたもので」
コン先輩は、キッっと目を見据えた。
13.俣野家の秘密
コウスケくんと、何かある!
急に眉が動いたコン先輩。
「コウスケくん、従兄弟ですよね」
「本当の、従兄弟ではないけど」
…えっ?
コウスケくんも?
コヨは知ってるけど、まさか、コウスケくんまで。
「コヨとも無関係だったのよ。コウスケは、事故で両親を失い、養護施設へ行ったの。それで、叔母さんがコヨと一緒に引き取ったの」
コウスケくん、小さい時から、つらい思いしてたんだね。
いきなり知らない子たちを迎えるコン先輩。
認めたくなかったんだろうな、自分の従兄弟だなんて。
「コヨ、隅木田くんの従兄弟で、誇りらしいのよ。裏切りたくないって」
露島くんと、明スイやるの、ためらってるのかも。
それなら、わたしがやめさせなきゃ。
「お話ありがとうございました。必ずコヨがしたいことさせてあげます。お大事に」
「待って!!」
部屋を出ようとすると、コン先輩が声を上げた。
えっ?
コン先輩に渡された手紙。
コヨへの手紙だった。
14.エプロン作り!
ここは家庭科室。
カフェのエプロン作ってるの。
わたしたちは接客だから、メイドみたいなエプロン着るの。
実柚乃ちゃんをはじめ、料理組は、家にあるエプロン。
メニューがおおまかに決まったところで、実柚乃ちゃんが来てくれた。
さっすがだよね。
料理だけじゃなくて、お裁縫まで一流なんだから。
ミシンなんて、先が見えないくらい早いんだもん。
「あ〜、ダメダメ。コヨちゃんの左手危ないでしょ〜!」
実柚乃ちゃんがミシンを止めて声を上げる。
コヨ、初香ちゃんにはちょっと冷たいけど、実柚乃ちゃんだと笑顔。
どういうことかな?
「ゆっくりここまで縫ってごらん」
「実柚乃ちゃ〜ん!」
すぐ、向こうで初香ちゃんとさやかちゃんが呼ぶ。
コヨは、思いっきりにらむっ!
思わず身がすくむ…。
「さや、ミシン苦手〜」
「実柚乃ちゃん助けて〜!」
コヨは、ミシンをハイスピードにして縫った。
ぐちゃぐちゃ、汚いよー!
「真美、これ初香にあげてきて」
「ダメでしょ、これじゃ。ちゃんと、一着作ってみない?」
コヨは、ムスッっとしながら初香ちゃんたちを見る。
しょうがないなあ、コヨ。
リッパーで糸を取って、0からやり直す。
これは、コヨが着るんだよっ!
「ありがとう実柚乃ちゃん!初香ひとりでも出来そう」
「いやいや〜、実柚乃も、力になれて嬉しいな〜!」
わたしは、実柚乃ちゃんたちを見ながらコヨに差し出した。
「だいたい縫ったから、続きからは、コヨが縫うんだよ」
「は〜〜〜い」
もーう。
もっとやる気出してよーーーっ!
15.文化祭開催
「ただいまから、第46回、私立彦宮学園の文化祭を開催致します!良い思い出を作りましょう!」
わたしが放送を入れて、文化祭は始まった。
放送室から6年1組へ移動する時も、いろんな教室から呼び込まれる。
そのたびに断っててさ。
本当に悪いよ〜。
「あ、真美ちゃんよろしくね!」
午後から仕事の七井さんがピース。
真美ちゃんって呼んでくれるのがすごく嬉しい。
七井さんにし返して、6年1組に入った。
家庭科室がとなりで助かったよ〜。
エプロンを家庭科室へ持っていき、準備室で着替える。
「実柚乃ちゃんたちよろしく!」
「任せといて!あとから試食品出すつもりだから」
おお〜!
こっちも盛り上がってるね。
「真美ちゃん早く!」
「今行く!」
教室へ向かうと、すぐワッフルふたつが来た。
ええっと、5番机だね。
「お待たせいたしました!ワッフルになります。ではお楽しみください」
料理を、家庭科室から運んでくれる樹くんにもらう。
次はソフトクリーム。
「お待たせいたしました!ソフトクリームです!お楽しみください」
あ〜、みんなにっこり笑顔じゃん。
わたしも笑っていると、樹くんに呼ばれて家庭科室へ。
「試食品!外で真美ちゃんが呼び込んで!」
実柚乃ちゃんに渡されたワッフル…。
美味しそうだけど、食べるのはまだ。
任された責任を背負い、家庭科室を出た。
「ね〜、カフェだって。混んでる。向こうの5年2組の注文の多い料理店にする?」
カップルが悩んでいる。
一般の人も来てるじゃん!
「ここのワッフル美味しいですよ!一口いかがですか?」
カップルは食べた途端、すぐ列に並んでくれた。
よーし、呼び込むよっ!
16.やけど事件!
そろそろ教室に戻ってもいいかな。
わたしは、紙皿をゴミ箱に捨て、教室に戻った。
「ちょっと運んでくれる?」
陽茉理ちゃんにパンケーキを渡されて、お客様の元へ運ぶ。
急にどうしたのかな。
「お待たせいたしました。ふわっふわのパンケーキです。お楽しみくださいませ」
あれ、莉保子ちゃん。
わたしに気付いて、莉保子ちゃんはお辞儀する。
「カワイイエプロンですね。カッコいいです、真美先輩」
「いえいえ」
莉保子ちゃんは、パンケーキにこぼれ落ちるくらいのハチミツをかける。
ポトポト音がしそう。
「じゃあいただきますね」
わたしはその場を離れ、陽茉理ちゃんを探す。
大変なことなら何とかしたいし。
「あっ、真美ちゃん」
エリちゃんに呼ばれて、家庭科室へ行く。
すると、手を冷やす実柚乃ちゃん。
注文カードがたくさん貼られた紙。
「どうしたのっ?」
「実は、実柚乃やけどして。明スイの真美ちゃんなら代わってくれると…」
なるほどね。
わたしがお客様が食べるスイーツを。
よーし、任せて!
「エリちゃんは保健室へ連れてって。さあ、作るよ!」
陽茉理ちゃんのことは、ちょっと置いといて、わたしの実力見せてやる!
17.救世主あらわる
大量の注文カードを全て作り、ちょっと休憩。
午後からは、実柚乃ちゃんの代わり、七井さんが入ってくれる。
なんってったって、実柚乃ちゃんに続いて2位だし。
「ふみちゃん、これ」
接客担当の晴奈ちゃんが注文カードを5枚持ってくる。
陽茉理ちゃん大丈夫かな。
見てないけど。
「まーちゃんどうする?」
みんながわたしの指示を待つ。
ワッフルが多いね。
なら、わたしとエリちゃんがワッフル担当。
ソフトクリームが涼太くん。
ふーちゃんは、サンドイッチ。
それを言うと、みんな散って作り始めた。
「おい、樹。これ」
涼太くんが、素早く。
でもていねいにソフトクリームを作っていく。
コーンやカップ様々。
「次は…」
「サンドイッチお願い」
涼太くんがふーちゃんの隣に立ち、どんどん野菜をサンド。
裏返す時になったらササッっと。
ワッフルを裏返して、チョコレートソースをたっぷりかける。
「晴奈ちゃんよろしく!」
チョコレートワッフルがひとつ終わったから、注文カードをゴミ箱へ。
これでも、まだまだたまる注文カード…って量多っ!
「樹くん、接客グループからひとり呼んできて」
呼ばれてきたのはコヨ。
コヨも混じって、スイーツ作り。
さすがだけど、スピード早い。
ミシンとは大違い。
めちゃめちゃ美味しそうだし。
「桜庭、これ」
コヨが樹くんに渡すと、また次々にスイーツを完成させてゆく。
ボサッっとしていると…。
「真美ちゃん集中」
あ、はい!
エリちゃんに注意されて、唾を呑み込む。
コヨに負けないくらい頑張るぞ!
わたしは、またワッフルを裏返した。
18.初美先輩
「真美ちゃん、終わり!」
初香ちゃんに呼ばれて、わたしは制服に着替えた。
ここからは自由時間。
初等部から高等部まで回れる。
ご飯もどこかで済ませなきゃ。
「一緒に回ろ!」
コヨはまだ残るから、4人でいろいろ回ることになった。
まずは昼ごはん。
初香ちゃんオススメ店へ行く。
中等部の…2年7組!?
『お笑いカフェ』。
ここもカフェなんだ。
並んでおらず、普通に入れた。
「さあさあ、お客様やってきました」
おっ、お笑いって本当じゃん。
ご飯を食べながら爆笑する人たち。
面白そうじゃん!
「ここ、お兄ちゃんがやってて」
初香ちゃんは椅子に座り、みんな分のスパゲッティを注文した。
わたしが注目した生徒は、あの子。
楽しくなさそうに立っている。
「初香ちゃん、あの子…」
「ああ、初香のお姉ちゃん。双子だから。でもタイプが違う。初美っていうの」
初美先輩か〜。
ボサッっと立っていて、やる気がなさそうな感じ。
「お姉ちゃん、ダメだよね〜」
何とも言えないけど、何かイヤなことでもあるのかな。
初等部児童会長だけど、ほつんとけないかも。
気づけば、わたしは屋上にいた。
19.関係ない
「初めまして。初香ちゃんと仲良くしてます。多田本です」
初美先輩はコクンとうなずいた。
名を名乗らないタイプね。
わたしは、穏やかな感じで聞いた。
「イヤなことありませんか?初美先輩ですよね」
「別に関係ないでしょ」
初美先輩はムッっとして言い返す。
でもひるまない。
わたしも負けじと言い返す。
「初美先輩がイヤなことあったら、初等部ですけど、児童会長であるわたしが悩みます」
初美先輩は一瞬ひるんだ。
そして、何事もなかったかのように少し笑った。
「北山先輩とでも呼んで。名前を馴れ馴れしく呼ばないで」
…。
北山先輩は、わたしをギッっとにらんで屋上のドアに手をかける。
「待ってください!」
わたしは北山先輩の手をとり、目を見開いて語りかけた。
「そのまま学校にきてほしくないんです。楽しいところであってほしい。だから…!」
「ほっといて。初香が何とか…関係ないものは関係ない」
…、どうして。
北山先輩が出ていった後の風は、いつにも増して寒く感じた。
20.お化け屋敷
わたし、初香ちゃん、さやかちゃん、料理担当だけど、休憩で特別にエリちゃんの4人が来たところ。
ここは、中等部3年1組。
お化け屋敷です!
「いってらっしゃ〜い!」
受付の先輩に見送られてお化け屋敷へ入る。
エリちゃんと手を繋いで、後ろには初香ちゃんとさやかちゃん。
「真美ちゃん怖いよ〜」
「大丈夫、わたしも怖いけど」
エリちゃんと背中をさすりながら歩くこと30秒。
って言っても、進んだのは1歩。
なのに!
「ヒエ〜!何よ〜う」
エリちゃんったら、何もないところで叫ばないでよ〜。
後ろのさやかちゃんは爆笑。
心が緩んだ瞬間!
「ギョエーーーーー!」
お化け出たあ〜!
追いかけてくるし、リアル過ぎるよ〜!
「エリちゃんと真美ちゃん早く!」
初香ちゃんが意外にも声を上げる。
みんなで走り抜けながら、またお化けが現れ。
追いかけられを繰り返して、光がだんだん大きくなり…!
「出れたあ〜!」
ハイタッチしながらお金を払う。
めちゃめちゃリアルだった!
中等部まで行くと、こんなに迫力あるんだね。
高等部だったら、もっと迫力ありそうだな。
「絵理乃さ、またすぐ戻らないといけないから、高等部行っていい?」
露島先輩がいるじゃん。
コン先輩も。
わたしたちは、高等部へ繋がる廊下を走った。
21.コヨに対する気持ち
高等部のバッヂを胸に付けている先輩は、歩き方が大人。
中等部もそこそこだったけど。
初等部はやっぱり子供。
大人びた先輩が多い廊下に、一際子供っぽい子。
初等部1年生のバッヂだ。
注意しようとも思ったけど、文化祭だから、やっぱり楽しみたいよね!
「どこ行く?」
さやかちゃんが指差した教室は、3年5組。
ここには、さやかちゃんのお兄ちゃんがいるらしい。
露島先輩とコン先輩もいるとか。
「何のお店かと言うと。私立彦宮学園お土産屋!」
へ〜、面白そう。
教室に入って、お土産物を見る。
先輩の手作りじゃん。
わたしは、みんなオソロイのストラップを買って、もうふたつ色違いのストラップを買った。
コヨとオソロイなの。
「それ同じのふたつもいる?」
さやかちゃんがストラップを見ながら尋ねる。
「コヨにお土産。オソロイで買って」
「あの子に買ったの〜?」
そうだった、さやかちゃんたちは、コヨに嫌がらせされてるんだ。
初香ちゃんとエリちゃんは、優しいから表に出さないけど。
「コヨちゃんって、真美ちゃんにだけ仲良くするよね。意味分かんない」
やや怒り気味で言いながら、エリちゃんと別れた。
22.演劇会スタート
さあ、演劇会だ!
文化祭も終わって、多目的ホールで初等部は演劇会が始まる。
中等部は、グラウンドにてフォークダンス。
高等部は、体育館にて蓑島菜奈ちゃんのライブが開催される。
高等部に入れば文化祭の後に必ずライブに参加出来るの。
蓑島菜奈ちゃんっていうのは、元彦宮学園生徒で、歌手になった子。
東大卒なの。
「真美、こっちこっち」
コヨに手招きされて、多目的ホールの裏側へ移動する。
6年1組から演技がスタート。
物語はオリジナルで、『6年1組仲良し物語』という。
わたしと実柚乃ちゃんが台本を書いたの。
「コヨは、転校してきたから、転校するまでの物語の間はナレーターだったよね」
プーーープーーープーーー
「第一回、6年1組仲良し物語。6年1組による、友達関係の物語です。では、開幕です!」
アナウンスが入った途端、となりにいたナレーターのコヨが舞台に出た。
「初めまして。わたしの名前は俣野コヨです。こちらに転校してきました。来たときから、仲良しクラスだなと思い、それを演技します。どうぞ!」
まず、ふーちゃんがひとりで出て、紙を掲げながらマイクの前に立つ。
「わたしが、前期児童会長杉田ふみ!これから頑張ります!」
ライトが消え、すぐ現れたのは、初香ちゃんグループに美華ちゃんグループ。それに、わたしと晴奈ちゃんグループ。
まだ、初めは晴奈ちゃんたちと一緒だったから。
わたしもたくさんセリフあるし、頑張るぞ〜!
23.完結・感動・涙
「晴奈ちゃあ〜ん!」
4人でキャッキャしておしゃべりしながら、美華ちゃんのセリフを待つ。
だけど、いっこうに美華ちゃんの口はおしゃべりをやめない。
優佳ちゃんがセリフを静かに教えてあげて、やっとセリフを言う。
「ちょっとあなたたちうるさいわ!」
「そうよそうよ。美華ちゃん、もっと言ってやって!」
「もっと静かにしたらどう?」
優佳ちゃんと穂乃佳ちゃんも負けじと威張り散らす。
怒られた晴奈ちゃんグループと初香ちゃんグループのわたしたちは、ムッっとしながら言い返す。
「みんながおしゃべりして悪い?美華ちゃんたちだけのクラスじゃないでしょ!」
ライトがクルクル回り、赤、青、黄色と色が変わる。
実柚乃ちゃんが描いてくれた黒板アート風のバックもいい感じ。
「美華ちゃんたちも静かにしてよね!スマホの音うるさいし!」
効果音の音楽がチリチリチリチリ!
リアルにケンカっぽくなってきた。
すると。
「仲良くしなさーーーい!」
ふーちゃんの怒声が響きわたり、多目的ホールは、シーンと静まりかえる。
このリアクションいいねえ。
あのあとも、うまいこと演技は終わって、打ち上げが楽しみ。
これだけの完成用なら、打ち上げやる価値があるねっ!
わたしは、感動して涙が出た。
24.結果発表!
1年生の演劇も終わり、いよいよ明スイ対決がスタート。
本当の明スイはパフェ。
コヨによれば、新明スイはマカロンらしい。
洋菓子だな〜。
「皆さん、この場をお借りしまして、初等部児童会長多田本真美さんが、明スイのままか、新明スイかと対決をさせていただきます。第二回戦です。第一回戦は、見事新明スイ勝利。ここで明スイが勝たなければ、新明スイ決定となります!」
露島くんがマイクを置いて、明確ゼミの時と同様、モザイクのかかる板。
調理器具が並べられたキッチン。
5、4、3、2、1。
調理開始!
となりでは、実柚乃ちゃんが何を作っているのか当てている。
調理器具と、音で。
それで分かったらすごいよね。
「この音…、新明スイはマカロン?」
あれっ?
もう分かっちゃったの?
実柚乃ちゃんは、調理器具にも着目。
新明スイは、確実にマカロンだと決定させた。
一方明スイ。
調理器具がたくさん使われていく。
この時点で、実柚乃ちゃんはパフェだと判断。
お見事です…!
調理は無事終わり。
わたし以外と生徒がスイーツを食べている。
実柚乃ちゃんは、どちらがどちらか分かったから、明スイに入れてくれた。
もちろん、明スイの方が美味しいって言ってたし。
ありがとう…!
きっと明スイが勝てる…!
「結果が出ました!」
結果発表はわたし。
結果の紙を裏返す。
…やった、明スイ勝ちだ!
「隅木田先輩率いる明確スイーツ研究部の勝利です!」
よ〜し、明スイ最強。
次も絶対絶対勝つんだから!
25.打ち上げは恋の予感
文化祭の翌日。
土曜日だったので、打ち上げでカラオケに行った。
中等部以上は土曜日も授業あるんだよね〜、かわいそ。
「学級委員長からお言葉!」
樹くんがマイクで叫ぶ。
七井さんにマイクが渡り、七井さんは曲を入れた。
『ありがとう』という曲。
テレビに映し出された歌詞とは全く違う歌詞を歌う七井さん。
「6年1組は最強〜!
みんなで力を合わせたら何でも出来るから〜!」
『ありがとう』が終わると、わっと部屋が盛り上がる。
ここからはカラオケ大会。
点数が一番高かった人には商品。
彦宮学園生徒が持てたらの誇りのバッヂをプレゼント。
これも美華ちゃんの力。
「初香、俺が一位だったら付き合ってくださいっ!」
樹くん、だいたん…!
初香ちゃんの顔はどんどん染まる。
『愛してるぜ』を熱唱した樹くん。
点数は…えっ、99,8点!?
3時間みんなで歌ったけど、樹くんを越す物はおらず。
「では、お先に〜!」
仲良くふたりで帰ったのでした。
(つづく)
あとがき
岬
こんにちは!
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイ、12巻、いかがですか?
文化祭に演劇会に対決。
豪華三点盛りでしたね〜!
皆さんは、対決したことありますか?
運動会とかありますよね。
わたしもありました。
ミニ合唱コンクール、体育大会と、中学校のクラス対抗は全部勝ってます。
看板は負けちゃいました。
(ただいま中1)
だけど、わたしは運動音痴。
みんなが強いから勝てただけ。
わたしは何もしてないのです。
歌は得意ですよ〜。
れっいとしたソプラノです!
皆さんも、対決エピソードありましたら教えてくださいね。
ではでは、最後になりましたが。
ここまで読んでくださったあなた。
良ければ書き込んでください。
コメントをくださった薫ちゃんをはじめとするあなたたち。
本当にありがとうございました!
これからもよろしくお願いします。
次回は、持久走大会&期末テスト&第三回戦です!
果たして勝てるのか!
では、次回会いましょう!
『ここは明確スイーツ研究部! 13』
人物紹介
多田本 真美
目立ちたくないを意識していた小学6年生。彦宮学園の初等部児童会長。
坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
真美が好き。
矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。
隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。
1.持久走大会企画
ある12月の寒い寒い日のこと。
そろそろ持久走大会と期末テスト。
ただいま、学校はテストの空気。
おしゃべりの声ひとつ聞こえない。
みんな、教室、学食、相談室、どこを使ってでも勉強してる。
慣れてきた小1の子すら遊んでない。
わたし、多田本真美。
ここ、私立彦宮学園初等部6年。
初等部の児童会長です!
持久走大会の企画は、我らが児童会。
だけど、活動してくれてるのは、5年生の莉保子ちゃんーーー河合莉保子ちゃんだけ。
ひとりで企画してるの。
えらいよねえ、本当。
「児童会長いらっしゃいますか?」
莉保子ちゃんが訪ねてきたのは、わたしがコヨーーー俣野コヨと学食でご飯を食べながら勉強していた時のこと。
「あっ、お勉強の時間中すみません。持久走大会のことですが。企画が完成したので、拝見願います」
コヨは、莉保子ちゃんにも優しい。
実柚乃ちゃんーーー相川実柚乃ちゃんにも優しいの。
後は、だいたいムッっとする。
わたしと仲良くするからだとか。
莉保子ちゃんは先輩後輩関係だから。
実柚乃ちゃんは縛らないから許すんだって。
「オーケー。莉保子ちゃんありがと」
「いえ、お勉強の時間本当にすみませんでした。俣野先輩も、頑張ってください。失礼します」
コヨは、莉保子ちゃんに手を振りながらカレーのスプーンを握る。
そして、カレーをパクリ。
「本当にいい子だよね、莉保子」
うん、いい子だとは思うよ。
コヨも、わたしと同じ私立青山野学園を受験するらしい。
縛りすぎだよ〜。
2.コヨとの関係
コヨと一緒に帰りながら、ふと敵関係かどうかと考えた。
初めて会ったときは、何度も敵だと言われた。
今は新明スイーーー露島先輩とコヨがやってる、研究部に入ってるけど。
すぐ抜けれるんだから。
対決で、明スイーーー隅木田くん率いるスイーツを研究する集いが勝つから。
明スイが勝てば、いつもの生活が戻るもん。
「コヨって、わたしのことどう思ってる?」
「えっ?大〜好き!」
敵だとは思ってないんだね。
明スイが買ったら、敵って思われそうだけど。
「ねえコヨ。そこの神社でお参りしない?期末祈願のお守り買って」
わたしの家から駅の方へ歩いて、コヨの家の方へ歩いたところ。
神社の境内に足を傾け、一段一段かけ上る。
「わたし、黄色のお守りがいい!」
コヨの要望で、オソロイの黄色を買うことにした。
神様がいるところで手を打ってから、お守り売り場でお守りを買った。
「これでわたしたちはずーっ友」
コヨと笑い合いながら、境内を下る。
制服の上にセーターを着て、ガウンを着ているのに寒い。
マフラーも、手袋もしてるのに!
「真美、寒いから家帰ろ。わたしの家で一緒に勉強しよ〜よ〜」
ひとりで勉強した方がはかどると思うんだけど…これで縁切りたくないし。
コヨのことだから、明スイが勝ったら縁切りそうじゃん。
ふたりでいられる間は、コヨといたいかも。
「いいよ」
わたしは、お守りをスクールバッグに付けながらコヨの家へ向かった。
3.俣野家
「お邪魔します」
すると、出てくれたのは、この前見た活発な男の子ーーーコウスケくん。
「あっ、おねえちゃ〜ん。遊びにきてくれたんだね!遊ぼ〜」
違う違う、勉強しに来たの!
コヨはコウスケくんをなだめてくれたけど、勉強時間をちょっと削って、20分遊ぶことにした。
「何したい?」
「ヒーローごっこ!俺がヒーロー。おねえちゃんがオバケ。コヨおねえちゃんが…妖精のコヨセイ!」
コヨセイっ!?
ネーミングセンスあってカワイイ。
もしかしたら、優眞くんもこうなるのかな。
わたし、お世話しきれない…。
「おねえちゃん、こっちこっち!」
コウスケくんの方へ突進。
すると、100円ショップに売ってそうな剣で叩いてきた。
「コウスケ、もっともっと!」
コヨが、妖精として仕方なさそうに応援している。
コウスケくん、そろそろやめよ〜。
「ごめん真美。コウスケが」
「うんん。コヨって何人兄弟なの?」
「4人。姉のコノカ。妹のコマナ。コウスケ。みんな実の兄弟」
みんなカワイイ名前。
コヨが、コノカさんはいないけど、コマナちゃんを呼んでくれた。
「何か用?」
つっ、冷たい子。
眼鏡をかけていて、比較的冷静。
「俣野コマナです。公立に通ってます。姉が私立でお金使ってるから、わたしは何もできない」
「初めまして。多田本真美です。コマナちゃん、よろしくね」
コマナちゃん、コヨのことにらんでるじゃん。
コヨがコマナちゃんに視線を配った瞬間、すぐ部屋を出ていった。
4.母からの言葉
コヨは、ちょっと切ない感じの目をした。
なんだかかわいそうかも。
「コマナちゃん、きっとコヨのこと応援してるって。わたし思ったけど」
「どうして?」
それは…。
思わず戸惑う。
コヨに、なんと言う言葉をかけたらいいの?
立ち止まっていると、コヨはため息をついて苦笑した。
「真美もさ、あんまりウソつかない方がいいよ。期待しちゃったもん」
コヨの部屋に案内され、勉強道具を取り出す。
コマナちゃん、コヨが私立行ってるからって言ってたよね。
青山野受けたら、もっとお金かかっちゃうじゃん。
でも、彦宮も高いし…。
「コヨ。もしわたしが公立の中学校行ったらどうする?」
「もちろんだけど、真美と一緒に」
「ダメだよ、コヨ。行きたいところ行かないと。行く人で決めてたら、コヨの人生やりたいこと出来ないよ」
コヨは一瞬うなって、わたしに優しく笑いかけた。
「わたしの本当の母が、青山野卒だから、行ってみたい。母が、青山野に行けば分かるはずって言われた謎の言葉を暴けば、元の隅木田家の宝庫が開くに違いない。この話は、お母さんに聞いたんだけどね」
コヨが青山野に行くことで、宝庫が開かれるなんて…!
それを、わざわざコヨの本当のお母さんが、今のお母さんに言うほど…!
「真美は気にしないで。試練もたくさんあるけど、乗り越えたら見つかるものだって。宿命なの」
わたしはそのときはっきり分かった。
新明スイをつくりあげようとする理由が。
5.クラスみんなの心配
後日。
学校へ向かうと、制服姿のコヨがひとりで本を読んでいた。
「コヨっ、おはよ!」
あいさつしたけど、返事はなし。
またか…。
あれっきり、全然会話出来ない。
コヨはひとりでずっといるし。
わたしは、初香ちゃんたちといるんだけど。
「真美ちゃんおはよう!」
初香ちゃんたちが寄ってきて、みんなコヨを見る。
難しそうな本と格闘している。
正直言えば、コヨの内申点では青山野は難しいと言われている。
だから、あれから、ずっと難しい本を読んでるんだ。
「ほっとこ、ほっとこ。さやたちには関係ないんだし」
初香ちゃんとエリちゃんは、やっぱりコヨがひとりはかわいそうらしく、チラチラコヨを見ている。
さやかちゃんは、渋々。
「あっ、エリちゃん見て」
さやかちゃんがヘンな踊りを見せて、コヨのことは気にしなくなった。
ところで、コヨは急にわたしから離れて行ったけど…。
不安が募る。
ちょっと怯えていると。
「真美ちゃん」
美華ちゃんがこっちへ来る。
真美ちゃんって呼ばれたの久しぶりかもしれない。
そんなことを思いつつ、美華ちゃんを見る。
「どうしてコヨひとりなのよ」
「分からないの。受験の話をしたら、それっきりで」
美華ちゃんは腕を組んで考えながら元のグループのところに戻った。
本当に、クラスのみんなが心配してるのに、どうして…?
美華の取り巻き穂乃香の名前
穂乃佳になっているかも。穂乃香です
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
6.更衣室事件
更衣室でジャージに着替える時すら、コヨはひとりだった。
いつもは、わたしととなりでおしゃべりしてるのに。
美華ちゃんが気をきかせて話しかけてるのに無視してるし。
「コヨちゃん、美華ちゃんに失礼だよね、ホント!」
さやかちゃんがコヨに聞こえるくらいの声で言うと、みんながちょっと愚痴を言い出した。
「真美ちゃんもかわいそう。ずっと一緒にいてくれたのに。自分勝手〜」
「そ〜そ〜。いつも自己中だし」
学級委員長の七井さんまで、ボソッっとつぶやいた言葉。
「コヨちゃん最悪」
コヨには全部聞かれてる。
かわいそう。
わたしなんかは全然。
ずっとひとりで、楽しくなさそう。
それに…、悪口言われてるコヨがすごくかわいそう…!
「ダメだよ、みんな。コヨのことそんなに言っちゃ。悪口言うのはよくないでしょ?」
辺りがシーンと静まりかえる。
そこに反応したのは、美華ちゃん。
「真美ちゃんの言う通り。わたしなんかはかわいそうじゃないわ。痛くもかゆくもないもの」
すると、美華ちゃんの取り巻きの子たちまで。
「優佳もそう思うよね?わたしは美華と同じ」
「穂乃香と同じ」
美華ちゃんたち…。
コヨは涙を流しながら、グラウンドじゃない、つまり、校舎側のドアへ駆け込んだ。
7.芽生える友情
わたしはコヨを追いかけて、手を握った。
後ろには、美華ちゃんグループも。
コヨは振り返って、わたしの手を振り払った。
「どうせ真美も思ってるんでしょ?みんなと同じこと!」
コヨの走り出しそうな手を止める。
美華ちゃんたちが、コヨの前に立ちはだかる。
「思ってない!コヨと仲良くしたい。だけど…どうしたらいいの…?」
「真美」
わたしもいつの間にか涙を流す。
きっと、コヨ辛かったんだろうな。
宿命を抱えつつも、前田先生に内申点を言われ。
悪口まで言われて。
「わたしのこと好き?」
「うん、大好きだよ、コヨのこと!」
涙を吹き飛ばすくらい、ニカッっと笑って見せた。
思わず美華ちゃんが吹く。
たちまち辺りは和やかになった。
「持久走大会近いし、早くグラウンド行こっ」
冬の、本当にさむ〜いさむ〜い日の体育の時間。
急に新たな友情の芽が発芽した。
きっと、美華ちゃんたちとの。
体育に行くと、各自グラウンドを走っていた。
これなら紛れ込んでもバレない。
こっそりグラウンドへ入る。
「美華ちゃんたち、優佳ちゃんのことはユウって言わなくなったの?」
「ええ。ニックネームはおさらば」
美華ちゃんは走りながら言う。
こんなに急に仲良くなれるんだ。
クラスのイケイケグループ、美華ちゃんたちと。
内心ビックリだよ。
正直、ただのお嬢様かと思ってたし。
「これからは5人で遊びましょ」
美華ちゃんの突然の提案に、思わず目を丸くする。
だって、わたしもいる!
わたしは、大きくうなずいた。
8.意外な一面
わたし、何度もいろんなグループにお邪魔してるな〜。
そんなことを思いつつ、走る。
穂乃香ちゃんは足が速くて追い付かないけど。
「真美ちゃんファイト!」
優佳ちゃんがとなりで走ってくれて、またスピードを上げる。
コヨは、頑張って穂乃香ちゃんに食い付いて…。
「美華ちゃあん!」
美華ちゃんは後ろでゆっくり走る。
わたしより、運動苦手だったから後ろの方で。
「お菓子食べた〜い」
美華ちゃんが叫びながらスピードをものすごく上げる。
そして、わたしと優佳ちゃんを追い越して、穂乃香ちゃんのところへ。
お菓子パワー炸裂っ!
「美華ちゃん、お菓子大好きなの〜。遊びに行くと分かるけど、プライベートでは、毎回ポテチ」
ポテトチップス毎回!?
美華ちゃんの意外な一面…。
すると、お菓子パワーが消耗してきた美華ちゃんは、気づけばわたしの後ろに…。
これを繰り返すのかも。
「お菓子〜ポテチ〜」
美華ちゃんは、またスピードを上げた。
9.恵梨華と眞理
美華ちゃんが、こんなに単純だったなんて信じられない。
すると、優佳ちゃんはスピードをあげて、いつの間にか前の方へ。
気づけばとなりには美華ちゃんが走っていた。
「わたし、ひとりっこなの」
「えっ?」
聡日さんがいるのに。
美華ちゃんは悲しそうな顔をして続けた。
「両親が離婚したから。だけど、母が再婚して、妹が出来るの」
妹?
わたしと一緒じゃん。
美華ちゃんは、思い出すように笑みを含ませてちょっと泣いた。
両親の離婚って、悲しいよね。
あんまり分からないけど。
ママもパパも仲良しだから。
入院に出張。
会うことも少ないけど。
「恵梨華っていうの。わたしが名付け親」
「カワイイ名だね。恵梨華ちゃん」
恵梨華ちゃんは、きっと美華ちゃんみたいにカワイイ子になるよね。
眞理ちゃんのことを思い出して、わたしも口を開いた。
「わたしもひとりっこだけど、妹が出来るよ。眞理ちゃん」
「眞理?カワイイ」
美華ちゃんはもう泣いていなかった。
笑いながら、恵梨華ちゃんと眞理ちゃんのことを考えている。
やがて。
「恵梨華と眞理ちゃん、仲良くなるといいわね」
「うん。…何だかお母さんみたい」
美華ちゃんと顔を見合わせて、ふふっと笑った。
10.遊ぶ約束
体育は終わり、更衣室で制服に着替えていた時。
わたしは初香ちゃんに耳打ちされた。
「後から話したいことがあるの」
それを言ったっきり、エリちゃんとさやかちゃんと囲んで話してる。
わたしが入ってたのはウソみたいに。
時には実柚乃ちゃんも入ってるし。
「真美ちゃんどうしたの?」
穂乃香ちゃんが顔を覗き込む。
美華ちゃんたちも、心配そうな顔をしていた。
「ヤダな〜。何でもないよ」
制服のボタンを止めて、ロッカーに清潔なジャージを入れる。
今日着たジャージを持って、更衣室を出た。
「大丈夫?真美」
コヨがとなりでこっそり聞く。
ここで初香ちゃんの名前を出しちゃまずい。
わたしは笑ってごまかして、美華ちゃんたちの話に入った。
「また今度さ、5人で遊ぼ。家来て」
美華ちゃん家行けるの!?
楽しみかも〜。
大きなお屋敷。
矢本くん家より大きいかな?
「行く行く〜」
「ポテチ祭りだね〜」
「お菓子持ってく〜」
コヨまでキャッキャしながら教室へ向かう。
優佳ちゃんが急にわたしに話を振ってきた。
「真美ちゃん来れる?」
「あっ、うん。美華ちゃん家の場所、あいまいだけど」
「じゃあ、わたしが迎えに行くわ。真美ちゃん家知ってるから」
優佳ちゃん、わたしの家知ってるの!?
ビックリして優佳ちゃんを見ると、優佳ちゃんはコヨを見た。
そういうことね。
コヨが教えたってことか。
「コヨは何で来る?」
「わたしは歩き」
「遠くない?」
穂乃香ちゃんがつぶやく。
コヨはちょっと焦りつつも、わたしをチラッっと見た。
助けてほしいんだ。
ええっと…。
必死に考えた末…。
「優佳ちゃん、コヨもついでに一緒に行く?」
「あ、オーケー。コヨは、真美ちゃん家に行って。ついでに乗せたげる」
優佳ちゃんも車か…。
コヨはホッっとしたように笑って、わたしにウインクした。
11.勉強生活!
カリカリ…
勉強机に乗っかった問題集と一対一。
ずうっと見つめ合ってる。
結構前に買ったの。
数学のね。
「真美ちゃん、紅茶持ってきたよ」
おばあちゃんがおぼんに紅茶を乗せて部屋に入ってきた。
わたしは、今おばあちゃんとふたりで暮らしている。
ママは、妊娠しているので入院中。
パパは、出張で東京へ。
おばあちゃんが来てくれてるの。
「期末も近いし、頑張って!」
受験を応援してくれているおばあちゃんは、勉強道具を何でも買ってくれるの。
問題集もね。
リスニングCDも、今では20枚くらいたまっている。
「じゃあ、出るね」
おばあちゃんは部屋を出て、最近ハマっているドラマを見に行く。
ドラマって、今何やってるんだろ。
あんまり勉強しない美華ちゃんは、いつもドラマを見ている。
明日聞いてみよっと。
「ふわ〜ぁ。もう疲れた」
シャーペンを握る力が弱くなる。
わたしはそのまま、クテッっと腕の中に顔をうずめた。
ピヨピヨピヨピヨ
まっ、真由ちゃん!?
っていうか、朝!?
ヤバイ、そのまま寝ちゃった。
冷めた紅茶。
付きっぱなしの電気。
跳ねている髪の毛。
最悪じゃん。
真由ちゃんっていうのは、わたしが飼っている鳥。
飼ってるっていうか…ちょっとエサあげたら、よくいるの。
ペットって言える段階じゃないんだ。
「真美ちゃ〜ん、起きなさ〜い」
「起きてるよ〜ぅ」
パジャマじゃなくて、勉強用のジャージを脱いで制服に着替える。
あ〜、眠い。
わたしは、ゆっくりカーテンを開けた。
12.リムジン通学!?
ドアを開けると、冷たい北風がビューっと吹く。
マフラーをついつい口元に当てる。
手袋もキュッっとはめ直す。
「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい。明日持久走大会でしょ?頑張って」
練習最終日だあ〜。
おばあちゃんに手を振って、家を出ると、目の前にはリムジン…!
ちょっ、えっ?
「真美ちゃん乗って」
一番前の窓から見えた顔…。
美華ちゃん!?
リムジンの後ろには、優佳ちゃん、穂乃香ちゃん、コヨ。
「わたしと仲良くしてる子は、リムジン通学よ」
え〜!?
お金持ちがすることじゃん。
こんなことしちゃっていいの!?
リムジンに初めて乗る。
暖房の聞いた暖かい車内。
テレビも付いてるし、冷蔵庫も。
「ゆっくりして」
美華ちゃんに言われて、ちょっと後ろに持たれかかる。
柔らかい〜。
彦宮学園すぐそこだけど、リムジンだなんて夢みたい…。
「到着よ。降りて」
降りると、彦宮学園の駐車場。
わたしたちみんなが降りると、リムジンは音を立てずに駐車場を出た。
すっ、すごい…!
「明日からは、わたしが迎えに行ったら家を出て。いい?」
「ありがとう」
美華ちゃんのリムジンで毎日通うんだな〜。
めちゃめちゃお金持ちがすること!
「行きましょう」
美華ちゃんに誘導されて、裏口から3階へ行く。
あのね、階段じゃなくてエレベーターなの。
美華ちゃんだけの道だ〜。
恵梨華ちゃんが産まれたら!
きっとここ通るんだろうな〜。
わたしは想像しながら6年1組へ足を傾けた。
13.イユミ
穂乃香ちゃんがスクールバッグを机に置いて教室を出た。
中等部に用事があるとか。
「あっ、美華ちゃーん。昨日のドラマ見た〜?」
優佳ちゃんが身を乗り出す。
見ていないわたしとコヨは、耳を大きくして聞きいる。
「ええ。恋愛心でしょ?」
「そー!イユミヤバすぎー!」
イユミ…主人公か何かかな。
ふたりで盛り上がっているところに、隅木田くんがわたしを訪ねてきた。
まだわたしたち以外誰もいない。
「真美ちゃん、期末テスト後、すぐに中等部家庭科室へ来て。闘いをするから。何を作るかは、決められてる。どちらも、マカロンを作るんだ」
「マカロン…」
あまり手を染めたことのないスイーツだった、マカロン。
新明スイだって、活動してたのかしらないけど…。
わたしは、笑って見せた。
クヨクヨしてられない。
「勝ってください、お願いします」
お辞儀すると、隅木田くんは頭をポンポンして微笑んだ。
思わずキュンとする。
「任せて」
はわわわわ〜。
隅木田くんが中等部へ帰るのと、穂乃香ちゃんが帰ってくるのがほぼ同時くらいだった。
ニヤニヤしているわたしを見て、穂乃香ちゃんは吹いた。
「真美ちゃんさぁ、隅木田先輩好きでしょ!?」
「ええっ?」
「まるでイユミみたい!」
イユミ…。
わたしみたい、なの?
14.初香ちゃんの気持ち
今日の更衣室は、それぞれのグループで話していた。
わたしは初香ちゃんたちのグループで着替える。
「初香はさ、真美ちゃんが美華ちゃんたちのグループにいたいならいればいいけど、来てほしいな。初香たちのところ」
小さな声で言われた言葉。
でも、かなり重みがあった。
どちらにいるのかってことだから。
初香ちゃんは、ちょっと微笑む。
「そんなに無理してじゃないよ。真美ちゃんといると楽しいなぁって」
「ありがとう」
エリちゃんは、さやかちゃんとふたりでおしゃべりしながらもこちらを伺う。さやかちゃんも。
「初香は縛ろうとしてるんじゃないからね」
ごまかすようにそっとつぶやく。
知ってるよ、わたし。
初香ちゃんがそんな子じゃないってことくらい。
だけど…。
樹くんのことといい、コヨのことといい…。
初香ちゃんもいろいろ大変。
いろんなこと気にしてるもん。
「来たかったら…うんん、良かったらいつでも来てっ!」
初香ちゃんはそれだけ言い残して、グラウンドへ足を傾けた。
エリちゃんとさやかちゃんは、それを追いかけるように。
わたしは、ポツンと置いてかれた。
15.美華ちゃんの夢
走る時は、美華ちゃんとふたりでおしゃべりしていた。
眞理ちゃんと恵梨華ちゃんのこと。
「恵梨華は、もうすぐ産まれるの。今日か明後日くらいって言われてるわ」
「すぐじゃん。呼んでよ〜」
またお母さん目線だ。
美華ちゃんとおしゃべりしていると、あっという間に一周。
さあ、二周目、三周目!
「眞理ちゃんはいつなの?」
「3月頃」
「ちょっと遅れたら、同級生じゃなくなっちゃうね」
そんなこと考えたことなかった。
確かに、3月ってギリギリ。
友達関係か、先輩後輩関係か。
やっぱり同級生がいいよね〜。
「3月きっかりだといいけど」
美華ちゃんも心配げにつぶやく。
同級生ならね、わたしたちも仲良くさせてあげられるけど…。
先輩後輩関係だと、なかなか何とも言えないし…。
「もう次は三周目よ」
気づけば、二周目も終わり、三周目に差し掛かっていた。
はっ、早い…。
「持久走大会は毎年、秀花、穂乃香、陽茉理だけど…」
あれ、陽茉理ちゃん3位なんだ。
っていうか、秀花ちゃんさすが…!
毎年一位は誰も取れないね。
秀花ちゃんじゃないと。
「秀花はもったいないわ、青山野行って。残るか、東大附属でも行けばいいのに」
「東大附属ねぇ」
ふーちゃんこと杉田ふみちゃん、涼太くんこと青山野涼太くんが受験する、東大附属。
ちなみにふたりは幼なじみで付き合ってるんだけど。
涼太くんのおじいちゃんが校長で、そこそこお坊っちゃんかも…。
ちなみに、美華ちゃんのおじいちゃんは本校の初代校長。
相当なお嬢様。
「恵梨華には、初等部彦宮、中学から高校を東大附属、大学は東大へ行かせたいわ」
「どうして?」
「わたしとお母様の夢だったの。でも努力したくないから、やがて消えた。恵梨華にはこんな思いさせたくないってところよ」
恵梨華ちゃんのこと思ってるんだ。
わたしは、ママも眞理ちゃんも元気でってことしか考えてない…。
気づけば、もうチャイムは鳴っていた。
16.持久走大会開会!
パン!
鳴り響くピストル音。
体育委員会の人たちがピストル確認やラインを引いている。
放送委員会の人たちは、放送マイクの確認。
我らが児童会は、企画書、原稿の確認をしているところです!
持久走大会の担当は、わたし、柴田さん、莉保子ちゃん。
3人で創り出すんだ。
「児童会長、柴田オーケー」
柴田さんが片手を挙げる。
莉保子ちゃんもそれに続いた。
わたしも、オーケー。
原稿確認が終わり、放送室へ向かう。
初めの放送はわたし。
「初等部の皆さん、おはようございます。児童会長です。持久走大会の開会式を行います。速やかにグラウンドへ向かいましょう」
マイクに向かって吹き込むと、初等部の教室からズラズラとみんなが出てきた。
同じことをもう一度言う。
完全に誰もいない。
グラウンドの前に立ち、開会式の原稿をめくる。
「開会式の放送お願いします」
放送委員会の人がアナウンスを入れ、柴田さんが朝礼台の上に立つ。
「開会宣言。ここに、私立彦宮学園初等部、持久走大会の開会を宣言する。児童会役員柴田」
次は体操。
朝礼台に莉保子ちゃんが立つ。
初等部みんなで体操!
わたしも、力いっぱい体を動かした。
17.よーいどん!
パン!
ピストル音と同時に、1年生の男の子がスタートした。
となりの初香ちゃんが、うっとりした顔で男の子たちを見る。
「カワイイ〜。男の子なのにぃ」
確かに、小さい子だと男の子でもカワイイよね。
だけど…。
チラッっと初香ちゃんを見る、と。
「初香」
樹くんが歩み寄ってきて、そのままふたりでどこか行くし…。
ちょっと、手、つないでるっ!?
「ねえねえ、エリちゃんっ!」
エリちゃんはビックリ顔で振り向く。
わたしは、震える手を止めて、初香ちゃんたちを指差した。
「ああ、樹くんが初香ちゃんに告白して付き合い始めたの」
「えええ〜!?」
「真美ちゃん静かにっ」
さやかちゃんが口元に手を置いて、落ち着く。
付き合ったの!?
初香ちゃんおめでと〜。
「よっしゃ、家の子1位!」
近くで由里歌ちゃんが叫ぶ。
キャラ変わったな〜。
おっとりタイプだったけど。
陽茉理ちゃんも、由里歌ちゃんと手を叩いて喜んだ。
わたしもあそこにいたんだ〜。
そう思うと、胸がムズムズした。
パン!
6年生男の子がスタートした。
ええっと、涼太くん、坂宮、頑張って!樹くんもねっ!
初香ちゃんが思いっきり樹くんを。
ふーちゃんが思いっきり涼太くんを応援する。
わたしは坂宮かな。
みんなに負けないくらい大きな声で、坂宮を応援、しようとしたの…。
18.驚きの真実
だけど、だけどね。
向こうの女の子。
キャッキャしてるグループの中。
一際目立つ…秀花ちゃん。
「秀花さ〜、別れたのにまた他のヤツと付き合い始めてさ。秀花はカワイイし何でも出来るからいいよね。付き合いたかったら付き合えるくらいコントロール出来るもん」
「別に〜」
そんなこと言ってる秀花ちゃん。
受験で別れたって聞いたのに、また付き合いだしたの!?
コントロールって…。
秀花ちゃん、勉強も運動も男の子もコントロール出来るんだ…。
唖然。
耳をすませていると…。
「坂宮くんさ、サッカー部のレギュラーだし、サッカー習ってるじゃん?その彼女とかイケイケ〜!」
坂宮の彼女?
ドクンドクン
心臓が早く脈打つ。
胸がキュッっと痛む。
「彼女の秀花、応援しなよ」
ひとりの女の子に急かされて、秀花ちゃんはくっきり、はっきり言う。
しかも大きな声で。
「坂宮くん頑張って〜!」
「彼女からの応援〜」
「スピードあげたよ!」
みるみるうちに、坂宮はスピードをあげていく。
秀花ちゃんもすごく喜んでるし。
わたしに好きだとか言ってたくせに、秀花ちゃんなんだ。
なんかイラッっとするーっ!
「あっ、坂宮くん1位よ!」
見ると、ガッツポーズを、わたしじゃない、秀花ちゃんに見せた。
そして、ゆっくりグラウンドの中を歩き終わり、秀花ちゃんの元へ駆け寄る。
「ちょっと…」
秀花ちゃんの周りにいた女の子はみんな退いて、ふたりきり…!
「応援してくれてありがとな。秀花も頑張って」
ふたりはにっこり笑って、ゆっくり離れていった。
19.いざスタート!
パン!
とうとうわたしたちのスタート。
樹くんは初香ちゃんを。
涼太くんはふーちゃんを。
坂宮は秀花ちゃんを応援する。
「初香ーーーー!ダァーッシュッ!」
「ふみちゃん前見てー!」
「秀花1位のまま〜!」
やっぱり秀花ちゃん1位か〜。
わたしは後ろから数えた方が早いくらいだね。
全くだよ、ホント。
「ちょっと転んでくれる?」
胸に佐藤と付けた子に言われる。
あなたに言われる筋合いないんですけど!
ちょっと加速して、佐藤さんから離れる。
すると、佐藤さんも加速してわたしの前に並んだ。
「ホイッ」
佐藤さんが急に止まって、わたしはつまずく。
それを、3人の女の子が踏む!
意味分からないんですけど。
どうして踏むの。
手を踏まれるとかそれくらいだったけどさ。
「真美ちゃん、大丈夫?」
後ろと差をつけて、速く走ってきた秀花ちゃん。
わたしベリで一周遅れじゃん。
秀花ちゃんに引かれて立ち上がり、佐藤さんを追いかけて走る。
もちろんだけど、そのまま秀花ちゃんに抜かれて…。
はぁっ、はぁっ。
パンパン!
この音は、1位ゴールの…。
「優勝者、今年も杉田秀花ー!」
秀花ちゃんおめでとう。
もうすごすぎる。
わたしもラストスパートを走りきる。
ベリじゃないよ、ちゃんと抜かしたもん、佐藤さん。
わたしを踏んだ子も。
勝手に踏んで、勝った気にならないでよねー!
わたしは心の中でちょっと思った。
20.秀花ちゃんから
「ここに、私立彦宮学園持久走大会の閉会を宣言する。多田本」
朝礼台から降りて、閉会式は幕を閉じた。
これで期末に全てを捧げられる。
頑張って、今回こそは…!
「秀花」
坂宮が秀花ちゃんの元へ行くのが見えた。
本当なんだ。
やっぱりウソじゃないんだ。
「1位おめでと、秀花」
「ありがと。坂宮くんも!」
坂宮は頬を赤らめて微笑む。
もういいや。
告白してきたけど、わたしは断ったんだもん。
それに、好きかって言われると、嫌いじゃないけど、恋愛として好きではないから。
「真美ちゃん?」
いつの間にか秀花ちゃんがとなりに立っていて、坂宮はいなかった。
思いきって聞いてみようか。
でも…。
「1位おめでとう、さすがだね」
「うんん、大したことないよ」
秀花ちゃんにしてはね。
わたしにしてはすごいことだよ。
本当に。
「わたしさぁ、付き合い始めたの。坂宮くんと。青山野は受けるよ。坂宮くんは残るらしいから、遠距離だけど」
ドクンドクン
秀花ちゃんから口にした言葉。
『付き合い始めた』。
ついに…ね。
「別にいいよね、付き合ってても」
「いいんじゃ、ない…?」
わたしは、ちょっとムズムズしながらつぶやいた。
21.焦りの期末
わたしは、勉強が手につかず、あまり勉強せずに一夜を過ごした。
こんなことを、何度も繰り返して…。
あっ、今日期末だ。
ちょっとは勉強したけど、ついに迎えてしまった期末1日目。
国語に数学に技術家庭科に美術。
まあまあいけるかな〜。
「真美ちゃん、制服の上に着るセーター乾いてないから、ダウンでも着てってくれる?」
下からおばあちゃんが言い、クローゼットからダウンを出した。
いつもセーター着てるんだけど、昨日の雨のせいで乾かなくって。
ダウンってちょっとダサいから嫌いなんだよね〜。
「スクールバッグに弁当入れといたよ〜。図書室で食べておいで」
そうだった。
今日は冬季講習だった!
明確ゼミ希望生が行ける講習。
希望してないけどね。
お邪魔するの。
授業法式で教えてくれる。
「弁当と図書室で食べたら、そのまま冬季講習。いい?」
彦宮学園の図書室で行われる冬季講習。弁当は、学食でいいかな。
「行ってらっしゃい」
よぉし、頑張るぞぉっ!
家を出ると、ちょうど美華ちゃん家のリムジンがあった。
「真美様、こちらへ」
わたしのことブスって言った運転手も、いつの間にか『真美様』。
何なのよ、もう。
でも、リムジン通学はまだ続いてる。
今日は、ゆっくりドライブしながら勉強して、みんなと同じ時間に学校に着く日程。
ドライブしてくれてて、その間国語の確かめをやっていた。
「コヨ、ここなんだけど」
意外と言ってもおかしくないくらいの美術得意のコヨ。
絵の上手さと知識の豊富さには驚いたよ、うん。
「美華〜、これこれ!」
数学が得意な美華ちゃんに、穂乃香ちゃんは聞きいっている。
わたしはひとりで、国語でも…。
「真美ちゃん、主語述語って何!?」
優佳ちゃん、そこから!?
ビックリしつつ、解説。
「主語っていうのは、だいたい人。何がってところ。述語は、主語に対して、どうした。何をしたってこと。これについて修飾語とかあるから気を付けた方がいいよ。ちなみに修飾語は、ひとつとは限らないから」
優佳ちゃんは、うめき声をあげながら椅子に座り直す。
果たして、いいのだろうか…。
22.冬季講習あいさつ無茶ぶり!?
キーンコーンカーンコーン
よーし、今日のは終わり。
国語はそこそこ出来たし、まあ何とかなるでしょ。
数学は中間良かったからあんまり勉強してないけど…いいよねっ。
「真美ちゃんのおかげで主語述語修飾語出来たよ!」
優佳ちゃんが嬉しそうににっこり笑顔で言う。
近くから見ると、美少女〜。
まつげ長いし、ちょっとぶりっ子っぽいところも。
ぶりっ子に見えないぶりっ子。
演技っていうか、上手いな〜。
「ありがとう!」
「いやいや、解けてよかったね!」
ピーンポーンパーンポーン
突然放送が入る。
辺りがしーんとなり、放送音が響く。
「冬季講習を受ける生徒、すぐ図書室へ向かいなさい。講師の先生がお見えです」
もう〜?
優佳ちゃんと別れて、スクールバッグを片手に図書室へ向かう。
あいさつしたら、弁当だよね。
この講習には、コヨも参加してる。
希望してないよ、コヨも。
無料だしねえ。
「明確ゼミナール講師の松村です。今日はよろしくお願いします」
新任かな、知らない名前だ。
男の先生で、ガッチリした体つき。
怖そ〜う。
「こちらの児童会長から言葉がありますので」
ええっ、聞いてない。
松村先生は、こちらをジッっと見つめる。
仕方ない、あいさつするか。
「今日は、わざわざ足を運んでくださりありがとうございました。よろしくお願いします!」
松村先生はにっこり笑って、弁当タイムをとってくれた。
コヨと学食へ向かう。
4人掛けの机で、勉強も弁当も食べられるようにするの。
「優佳さ、美術結構出来たらしいけどさ、わたしより、かな」
「どうだろ」
コヨはモヤモヤしながら、弁当の卵焼きにかぶりついた。
23.容量の悪い松村先生
松村先生が図書室の黒板に『数学』と書き込む。
復習か〜。
数学の問題用紙を開いて、松村先生の手のチョーク先を見る。
繊細な文字で、綺麗に。
文字と数字の移項と書き込む。
移項ね〜。
左辺か右辺かってやつ。
わたし苦手。
符号が変わったり、途中式長いし。
ちょっとでも間違えたら可能性ってないじゃあん!
「いいですか?」
松村先生は途端に厳しくなって、ビシビシやっていく。
彦宮生じゃなくても参加出来るんだけど、制服が目立つ。
公立の一般的なの、私立のオシャレなの、市立の昔っぽいのまで。
彦宮学園の制服が一番カワイイと思うのは、わたしだけ?
「ここ、誰か挙手」
すかさず、彦宮学園の意地を見せる。
公立校に負けてられないよ!
指名されたのは、他の学校の子だったけど…ネクストネクスト!
「はい、答えー」
はいはい、わたしわたし!
分かります〜。
あっけなく他の学校の子が指名されて、だんだんいらだってきた。
図書室貸してるのに何なのよ。
初等部の図書室広いのにいっぱいでしょ!?
感謝しなさいよ〜。
「次、ここ」
今度こそは当ててよね〜。
っと、神通力でもあったのか、松村先生はこちらを見ている。
はいはい、わたし当ててください!
目一杯手を挙げた、けど。
「えっと…佐藤さん」
わたしじゃないぃ!?
本当にイライラしちゃうよ、もう!
すると、指名された佐藤さんは、にっこり笑って答えを言う。
佐藤さんって…もしかして。
「あなた…」
そう。
持久走大会で、わたしを…。
「転ばせた人…」
だよ、ね…?
24.テスト終了!
カリカリカリカリ…
今日は期末テスト3日目。
松村先生の指導で、何とか出来たかも知れない。
分からないけど。
案外…って、習ったっけ!?
書かれている問題は、見たか見てないか分からないほど難しい問題。
ちょっと目を横に寄せて、となりの涼太くんをチラリ。
って、もうこんな問題解き終わってる!しかも、この問題の解答、ビッシリ文章書いてあるじゃん!
あ〜、もう飛ばそう。
理科ってこんな難しかったっけ?
期末ヤバイかもーーーっ!
キーンコーンカーンコーン
ついに期末終わった〜!
解放された気持ちで、思わず机に突っ伏した。
でもこれから。
受験はしなくても推薦だけど、やっぱり勉強置いてかれたらヤバイ。
実柚乃ちゃんと秀花ちゃん、受験だからな〜。
「おい、ふみ!」
「杉田〜」
「これ何!?」
秀才ふーちゃんに、みんな集まり、自分の答えが正しいか確かめている。
違うとすぐ「あ〜!」なんて。
合っていると「俺天才!」なーんて。
本当にそうか分からないのに。
「真美出来た?」
コヨは、自信満々に聞いてきた。
良さそうな結果だったんだ。
わたしは全然ダメだよ。
首を横に振ると、コヨはニヤニヤしながらつぶやいた。
「真美越せたら、だいたい一桁かも」
いやいや、わたし越したってそんなに大きいところには…!
でも…。
途中受験で入学してきたコヨのことだし。
めちゃめちゃ頭良かったりして。
わたしは、ビクッっとしながら問題用紙をファイルに閉じた。
25.闘い最後
わたしは、中等部の家庭科室へコヨと向かった。
足取りは重たい。
わたしだけが食べて決めるんだもん。
責任重大。
もう、調理器具はそろっていて、わたしとコヨが来たところでスタート。
どちらもマカロンってことだけど。
本当に大丈夫だろうか。
坂宮は秀花ちゃんと付き合ってるなんて事実抱えてるし。
知らなきゃ良かったよ〜!
「真美、ダウン着てていいよ〜」
コヨがニーッっと笑った。
わたしが今日ダウンなの気付いてたんだ。
今日もダウン。
ダサいけど、仕方ないよね。
我慢してる。
「ありがと」
ダウンを羽織り、両者を見つめる。
お願いします、神様。
わたしは何でもしますから、明スイに微笑みを見せて…!
わたしは、祈るような気持ちで見守った。
時間が終わり。
両者とても素敵なマカロンが。
どちらがどちらか、見当すら付かない。食べて、味も分からなさそう。
ひとつ目のマカロンをパクリ。
ふたつ目もパクリ…。
一発で決めてそれだけ。
迷って、やっぱりとか思いたくない。
ひとつ決めたらそれだけ。
もう迷わない。
わたしの答えは、これ!
26.わたしの未来は
わたしは、ふたつ目のマカロンが乗っていたお皿を指差す。
「こっち。こっちが美味しかった」
…露島先輩は、肩を落とし。
コヨは涙を流し。
明スイはよく喜んでいる。
決まった!
わたしが入るところ。
ずうっと明スイだ〜!
「露島先輩、お誘いありがとうございました」
露島先輩はそのまま退室して、コヨが残った。
友情は終わらないよね。
コヨは優しく笑った。
「負けちゃったけど、人をスイーツで勝負するなんてバカだよね。新明スイは解散するよ」
コヨは涙を拭いて退室。
明スイの、カッコいい男の子たちを見る。
清々しい。
「ありがと」
わたしは、みんなを見ながら、これからの明スイ生活が楽しみに思った。
あとがき
岬
こんにちは!
『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイ作者の岬です。
いかがでしたか?
今回もドキドキハラハラ。
早かったですね〜。
なんやかんやあって明スイ勝利。
みんなはどっちが勝ってほしかったでしょうか。
意見どうぞ。
お待ちしております。
皆さんは、テストどうですか?
わたしは今日で中間が全部返ってきましたよ。
最悪なのや、嬉しいのまで。
いろいろでしたね。
友達には、わざと高い点数言って、ウソだ〜ってバレちゃって。
だけど、ウソとは言いませんでした。
友達関係ってやつですね。
こんな最悪な岬を見放さないで!
テストのエピソードもお待ちしておりますので。
さてさて、お礼といきますか。
ここまで呼んでくださったあなた、どうもありがとうございました!
これからもよろしくお願いします。
ご支援くださった薫ちゃんをはじめとするあなた!
ありがとうございました。
これからも、ご支援お願いします!
次回は、コヨちゃんの転校。
真美ちゃんと明スイのクリスマス…。
次回もお楽しみに!
『ここは明確スイーツ研究部! 14』
人物紹介
多田本 真美
明スイの書記担当の小学6年生。私立彦宮学園の初等部児童会長。
坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。
隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。
1.突然事件!
国語の時間。
わたしは期末テストを返してもらったんだ、けど…。
何この点数。
76点。
胸に引っ掛かる点数。
こんなの…イヤ〜!
「真美ちゃん何だった?」
さやかちゃんに聞かれたけど、心が凍り付いて何も言えない。
もう何もかもダメだぁ〜!
わたしは多田本真美。
国語には自信があった小学6年生。
れっきとした私立彦宮学園初等部後期の児童会長です!
「おい、ふみ何点?」
みんなが秀才、ふーちゃんーーー杉田ふみちゃんに集まる。
大したことないように、ふーちゃんが掲げた解答用紙。
100点…!
「ふみすげえ!」
「さすが〜」
本当だよ。
わたしは76点。
イヤイヤ、イヤ〜!
となりの席の涼太くんーーー青山野涼太くんは96点。
…わたし、死にそう…。
こんなに低い点数で。
あっ、ちなみにだけど、ふーちゃんと涼太くんは付き合ってるよ。
中学校は、ふたりで東大附属へ。
すごいよねえ。
「はーい、終わりー!」
国語の先生が言い、学級委員長の七井さんが号令をかける。
もう家帰りたくない〜。
えっ、47点!?
85点か〜。
66点なんてある!?
74点!?
ヒョロヒョロとその場に崩れ落ちる。
こんなに点数低い…。
「真美」
コヨーーー俣野コヨに呼ばれて振り向く。コヨは、途中受験で入学してきたので、はっきり言って頭がいい。
90点代しか出してないんだ。
「わたし転校するから」
「えっ?」
突然のことだった。
コヨは制服を脱いで、ジャージに。
ハサミでチョキチョキ制服を切る。
「ちょっ、コヨ」
「さようなら」
荷物を持って、テストも置いて学園を出たコヨ…。
急に、何で?
ちぎれた制服を見て、わたしは涙でいっぱいになった。
トリップ変えました〜。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2.コヨの考え
実柚乃ちゃんーーー相川実柚乃ちゃんがボロボロの制服を拾った。
何か決心でもしたかのような顔をして、教室を出ていった。
美華ちゃんーーー彦宮美華ちゃんたちも呆然としている。
「わっ、わたし、追いかけてくる!」
上靴のままグラウンドに飛び出して、門を開ける。
コヨの家の方へ足を向けると、コン先輩が庭のお手入れをしている様子を思い浮かべた。
この前、コン先輩やってたし。
「真美ちゃん、ちょっと、上靴…」
おばあちゃんがとなりの家の人と立ち話している。
悪いけど無視して、コヨのところへ駆け出す。
「真美ちゃんっ?」
おばあちゃんの心配げな声も聞こえたけど、ごめんなさい!
コン先輩は、予想通り庭のお手入れをしていた。
「コヨ来ましたかっ?」
コン先輩はうなずいて、コヨを呼ぶ。
ガクガク震える足を押さえて、コヨと会った。
「どういうこと?」
「学校行って。推薦じゃ行けなくなるよっ!」
「いいってば」
コヨはうなだれていて、仕方なく話してくれた。
それは、やっぱりあの時。
明スイが勝負に勝った時、もう転校しようと思った。
真美が嫌いになったわけじゃないし、もちろん真美とは仲良しでいたい。
でも…!
もうここにいたくない。
コマナにはよくにらまれるから。
いいんだ。
露島くんとも解散したし。
わたしの居場所、ここじゃないし。
久々に、コメントしにきたよ!岬は、良く私の小説にコメントしてくれるけど、私はしてなくてごめんね!
やっぱり、岬が書く、『明スイ』は面白い!でも、やっぱり、気になるのは、最終回だよ!!もし、小説になって売ってたらその時は絶対に買う!
私最近、小説のネタが思い付かなくて、全然投稿できてないんだよ〜
あと、報告!短編小説に新しい小説作ったよ!ぜひ、見てくれると嬉しいな!
頑張ってね!
長文ごめん!
名前↑ミスです!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
3.恵梨華ちゃんついに…!
そんなこと考えないでよ。
わたしはそう思った。
コヨがいなくなったら寂しい!
「やめて。ここにいようよ」
「真美に決められる筋合いはない!」
コヨはそう言ったっきり、ドアを閉じて会ってくれなかった。
コン先輩は必死に謝ってくれたけど、わたしのせいなんだから。
学校に戻ると、クラスの子みんながわたしを取り囲んだ。
「コヨ何って?」
「そもそも会えた!?」
「俣野、退学届出したってよ〜」
落ち着いて、冷静に考えた。
どこまでを言うべきだろうって。
わたしは、みんなに笑顔を見せた。
「家庭の事情だって。仕方ないよ」
「なーんだ」「つまんねえっ!」「めちゃめちゃでかいことになるかと思った〜!」なんて。
思いっきりでかいことだけど。
テレビに取り上げられると思ったのだろうか。
それとも…!
「真美ちゃん、本当のこと教えて」
美華ちゃんたちに言われて、わたしたちは図書室へ移動した。
そして、コヨに言われたことをそのまま伝える。
今がお昼の時間で良かった。
先生にバレてないし。
「コヨ、そんなことがあったんだ」
「コマナちゃんの言い分は分からなくもないけど、コヨ頑張ってたよね」
ああ、美華ちゃんたちに話して良かった。
コヨのことをグズグズ言ってても仕方ないと言う美華ちゃんの言葉で、気分をちょっと変えた。
まだちょっと辛かったけど。
「そ〜いえば、家産まれた!恵梨華」
恵梨華ちゃん!
恵梨華ちゃんって言うのは、美華ちゃんの妹。
美華ちゃんが名付け親だって。
ちなみに、わたしにも妹と弟が出来るんだ。
眞理ちゃんと優眞くん。
恵梨華ちゃんと仲良くなれるといいよねっ!
「おめでとう!」
「恵梨華ちゃん見せてね〜!」
「眞理ちゃんとも遊んであげてね。まだまだだけど」
わたしが眞理ちゃんのことを話した瞬間、初香ちゃんが食いついてきた。
初香ちゃんーーー北山初香ちゃん。
お母さんが保育士さんなんだよね。
だから食いついてきたのかな。
「眞理ちゃん!?また見せて!」
お母さんの遺伝かな。
初香ちゃんの迫力に押されて、苦笑いでうなずいた。
渚ちゃん、ありがとう!
えっと、失礼なんだけど、名前変えたよね?
元誰だっけ?
ごめん。
見てくれてありがとね!
最終回まで書けたらHAPPY!
良ければ最終回までよろしく♪
元レア、ルナだよ!!
461:岬◆x.:2017/10/14(土) 14:31 わざわざありがとう。
短編小説見たよ。
だから分かった。
コメントありがとね。
私も渚のにコメントしたよ。
>>461
ありがとう!
小説の邪魔しちゃってごめんね!
応援してる!新作も期待してるよ!
いえいえ。
こちらこそ。
邪魔じゃないよ!
渚のコメントめちゃめちゃ嬉しい。
期待なんて…ありがとう!!!
4.汚れたお守り
美華ちゃんのリムジンで家へ帰る時、わたしはショックを受けた。
リムジンの中からでも、しっかり見えたお守り。
コヨとオソロイで買ったお守り。
誤って落としたことは絶対ない。
コヨ自らの手で落としたんだ。
だって、絶対落とさないようにしたって言ってた。
コヨに届けようとして、コヨの家へ行ってみたけど、もう空き家だった。
本当に引っ越してしまったんだ。
と、お守りも置いて。
すごく悲しかった、けど。
「真美ちゃん、学校外に上靴で出て何があったんだい?」
おばあちゃんが聞いてきた。
そうだ、無視したんだ。
焦りつつも、本当のことを言う。
おばあちゃんはため息をつく。
「いいかい?コヨちゃんがどうか知らないけど、真美ちゃんが言えることは何もない。おばあちゃんがいろいろ真美ちゃんのために尽くしたことは何だったんだい!」
相当怒ってる。
身をすくめて反省した。
本当におばあちゃんの言う通りだ。
わたしは期末も全然ダメだった。
何もかも対策を考えたり支えてくれたりしたのはおばあちゃんなのに。
「ごめんなさい」
「別にいいよ。青山野に行く気がないってことが分かったよ」
おばあちゃんはココアを飲み、テレビを付けた。
わたしのココアを飲むと、冷たく感じてしまった。
もう無理だなって思った。
おばあちゃんが怒るのも分かる。
「本当に真美ちゃんは行く気がないんだね。止めないんだ」
「青山野行きたいです!お願いします行かせてください!」
おばあちゃんに頭を下げる。
青山野に行きたい。
行けば、きっとコヨと会える。
コヨ受験するよね?
会えなくてもいい。
わたしの夢を広げに。
涙を流しながらお願いした。
5.クリスマスプレゼント
おばあちゃんはちょっと笑った。
そして、わたしの背中をさすった。
「真美ちゃんが行きたいって思ってることは知ってる。児童会長としても恥ずかしいだろう」
おばあちゃんの言うことって、全部本当だ。
言われたことで、ウソとか、ためにならないものってない。
「頑張りなさい。勉強、推薦だからっておこたらないで」
これも、必ず報われる。
わたしは涙を拭いて、階段を駆け上がる。
勉強、勉強、勉強!
部屋に入ると、CDをセットして、たまった英語のリスニングCDを入れた。
「真美ちゃん、ココア。温かいの入れ直したよ」
本当だ。
今までで一番温かいくらいかも。
ココアをズズッっと飲み、リスニングに集中する。
さっきのは何だったんだろう。
「頑張って」
おばあちゃんが残してくれた言葉。
必ず出来る。
わたしなら…きっと…!
その日の夜。
おばあちゃんとカレンダーを見ながら話していた。
今年もすぐ終わるなぁ。
明スイも、結構やって来たなぁ。
「そろそろクリスマスだけど、真美ちゃんは何を頼むんだい?」
「本当。そろそろだね」
わたしが今欲しいもの…。
ものっていうより、コヨと会いたい。
ちょっとでもいいから。
だけど無理だよね、そんなこと。
「分からない。何にしよう」
強いて言えばだけど…わたしは運動用具を思い浮かべた。
中学校で入りたい部活、バトミントン部。
初等部でやめてしまった悔い。
これを晴らしたいから!
「バトミントンのラケットかな」
持ってたけど、ボロボロなんだよね。
持ち手とか、恥ずかしいもん。
おばあちゃんは「了解」と言って、ご飯を食べた。
バトミントンのラケット。
これを持つことで、コートに立つことで…何か変わるかな。
「真美ちゃんはコートに立って闘ったことある?」
「ないんだ」
きっとね。
コートに立てるときがくるよ。
6.明スイ始動決定
翌日、明スイの集合がかかった。
昼休みに中等部の学食へ向かった。
明スイっていうのは、明確スイーツ研究部の略し。
明確ゼミナールで立ち上げたスイーツを研究する集いなんだけど、わたしは明確ゼミをやめたんだよね。
メンバーは、隅木田くんーーー隅木田優斗くん。
矢本くんーーー拓斗くん。
坂宮ーーー坂宮陽都。
それにわたし。
「おい、真美」
後ろから来たのは坂宮。
わたしに「好き好き」って言ってたくせに、他の子と付き合ってるの。
本当にやになっちゃうよ。
飽きられるよ。
でも口に出さずに学食へ向かう。
「弁当?それとも、学食の?」
「学食で買うよ」
本当は初等部しか学食がなかったんだけど、生徒会長の隅木田くんの力で、中等部にも学食を作った。
すごいよね、本当。
「失礼します」
学食へ入ると、中等部のカッコいい先輩たちがご飯を食べていた。
隅木田くんと矢本くんも、椅子に座ってほおばっている。
「遅れてすみません。あの、買ってきていいですか?」
隅木田くんの許可を得て、坂宮と買いに行く。
初等部より多いメニューに驚いた。
「わたしは、和食セットにしようかな。坂宮は?」
「俺も真美と同じで」
和食セットを頼み、隅木田くんたちがいる椅子に座った。
明スイの書記担当のわたしは、ノートに書き込む。
「そろそろクリスマスだよね。クリスマスって、スイーツいっぱいでしょ?だから、活動しないかなって」
隅木田くんが言って、昨日おばあちゃんと話したことを思い出した。
確かに、毎年クリスマスはケーキを食べる。
クリスマスって、キリスト教の関連するイベントだよね。
「俺やりたい!」
坂宮が賛成する。
わたしもうなずいた。
矢本くんは元から納得していたらしく、クリスマスに明スイは活動することになった。
「じゃあさ、何をどうするか決めよ。パーティー2回目にする?それとも、明スイだけとか」
隅木田くんが言うのと同時に、ご飯が運ばれてきた。
中等部は運んでくれるんだ。
初等部は作るまで待つのに。
「ありがとうございます」
「明スイで集合?楽しそうね」
学食のおばさんが笑った。
隅木田くんが笑い返す。
…おばさんが行くと、また話を切り替えた。
「どうする?」
うーん、どっちでも楽しそうだけど。
頭をひねって考えた。
7.会場は?
わたしは、例年のクリスマスの夜を思い浮かべた。
ひとりっこだったわたしは、ママとパパと食卓を囲んでチキンを食べていたな〜。
ママ手作りのピザだったり。
時には、パパ手作りのハヤシライスもあったり。
あれはちょっと不味かったな〜。
いろんな思い出が思い浮かぶ。
「わたし、家族のイベントだと思います。ですから、明スイのイベントでいいと思います」
隅木田くんに言うと、みんなに確認をとった。
坂宮が反対する。
「だからこそじゃん。他の楽しみ方もあるってこと」
そういうこと〜?
隅木田くんはわたしに賛成。
矢本くんは坂宮に賛成した。
ちょうど考えが真っ二つになる。
こういうとき、新メンバーとかいてほしいな〜。
奇数だと嬉しいから。
「おっ、木咲!」
「何、矢本。あなたたち明スイよね?わたし、木咲」
木咲先輩は中等部1年生のようで、梨歩佳さんの仲良しだそうだ。
よく矢本くんの家に来るとか。
「木咲は、クリスマスどうする?」
「何誘い〜?」
木咲先輩、違います、意見お願いします!
矢本くんが説明し、やっと理解してくれた。
「家族〜?やっぱり、姉帰ってくるしさ〜。いろいろあるんじゃない?」
やった、家族イベント!
あっさり木咲先輩は引き返して行って…決まり!
「決定〜」
8.坂宮からの告白
急いで和食セットをかきこみ、初等部へ坂宮と戻る。
なぜか、秀花ちゃんのことを思い浮かべてしまった。
秀花ちゃんから切り出してきたことなんだから、坂宮に言ってもおかしくないよね。
言ってみようか。
息を吸う。
「あの…」
「真美、聞いて」
…かぶったぁっ!
ふたりとも目をそらす。
なんか、双子みたい。
眞理ちゃんと優眞くんもなるのかな?
「俺からいい?」
コクコクとうなずく。
坂宮は、良かったとでも言うように顔をほころばせた。
「何度も何度も言ったじゃん、真美に好きって。俺、まだずうっと好きだけどさ…」
言葉をにごらせる。
どうせ言うならはっきり言ってよ。
坂宮は、遠くを見つめるように言う。
「秀花と付き合い、始めて…さ…」
「別にはっきり言えば?それに、わたし関係ないし。好きにすればいいじゃん」
そうよ、そうよ。
わたしは、音も立てずに走った。
9.最近のニュース
わたしはその夜、小説を書いた。
佐藤ななみちゃんの物語。
何度も何度も書き直しててね。
タイトルは『佐藤ななみ物語』に決定したの。
生涯を描くの。
「真美ちゃんお勉強?」
1日家に来たママが部屋を訪ねる。
あわてて勉強道具を出した。
ちょうどドアを開けた。
「推薦で行けるなんてすごいわね。だけど、気を抜かないでね。真美ちゃんなら大丈夫そうだけど」
わたしの勉強ノートを覗き込む。
ちょっとしか書いてなかったので、あわてて前のページに戻した。
「結構前からやってるの。見て」
たまったリスニングCDを見せる。
これ全部やったんだよね。
毎日5枚確実にやってるんだ。
ママは驚いた。
「すごいわね。さすが。お母さんにもお礼するのよ」
「うん」
おばあちゃんには、本当に感謝してるってば。
わたしのためを思ってくれてるもん。
ママもそうだったよね?
朝起きると、リビングのこたつにおばあちゃんとママがいた。
「おはよう」
トーストが準備されていて、となりに目玉焼きまである。
いつも少ない塩コショウのおばあちゃんとは違い、多めのママ。
この目玉焼きはママが作ったんだ。
「いっただっきまーす!」
トーストに一口かぶりつく。
あっ、この焼き加減といい、マーガリンの多さといい…ママ!
「最近、事件が多いねえ」
おばあちゃんが新聞を見ながらつぶやく。
確かに最近は、不倫や離婚、結婚、出産などのニュースは少ない。
交通事故や覚醒剤、もうイヤになるほど聞いているニュースだ。
「絶対使うんじゃないよ、真美ちゃんは」
わたしは大きくうなずいた。
使うわけがない。
利益ないもん。
そう思いながらトーストを食べた。
10.登校は波乱の予感!
制服を整えて、家を出る。
坂宮とのことがあってからと言うものの、やっぱり秀花ちゃんとも顔を合わせられない。
合わせる顔、ないし。
「あっ、真美ちゃ〜ん」
実柚乃ちゃんが電車から降りてきて、駅から走ってきた。
ちょっと駅の方へ向かう、と。
「真美ちゃん」
しゅ、秀花ちゃん。
あわてて家の中へ駆け込む。
忘れ物とかしてないかなーなんて。
おばあちゃんとママにはヘンな目で見られるし、秀花ちゃんはいるし。
「ね〜えー!真〜美ーぃちゃあん!」
外で実柚乃ちゃん呼んでる…。
カーテンをちょっと開けて外を見てみると、秀花ちゃんはいなかった。
急に逃げて、弱いな、わたし。
それに…わたし最低。
「真美ちゃんいないのぉ〜?」
あっ、待ってるんだ。
ドアを開けると、家の中から見た通り、実柚乃ちゃんしかいなかった。
「ごめんね。ちょっといろいろあったんだよね」
「へ〜何?」
実柚乃ちゃんは興味津々というように身を乗り出してくる。
どこまで話していいのだろう。
プライバシーっていうか、そういうのあるよね…。
告白してきたこととか。
「言いにくいならいいや。早く行こ」
あっさり終わった…。
長々と聞いてくるかと思ったけど。
すると、実柚乃ちゃんはランドセルから本を出した。
「ねえ、見て見て。青山野に受かる対策問題集!これやってるの」
ちょっと借りて、中をペラペラめくってみる。
何から何まで書かれている。
予備で、入るといい塾、制服のデザインから部活動まで。
「実柚乃は、料理部入るよ〜」
さすが。
わたしはバトミントンを続けようかなと思ってるよ!
あっという間に学校に着いて、わたしはあることを思い出した。
美華ちゃんが迎えに来ると言うことに。
名前変えました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
11.クラスでクリスマス会
学校で準備をしていると、美華ちゃんがいつも通りやって来た。
時間は遅いし、コヨはいないけど。
そのまま椅子に座り、準備を始めた。
あれっ?
何か言ってこないのかな。
わたしは、ちょっと考え込む。
もしかしたら、わたしから謝れってことかも。
いや、もしかしたら、絶交とか?
背中にスーッっと冷たい風が吹き込む。ヤバイ、ダメだ。
「美華ちゃんっ!」
「どうしたの、真美ちゃん」
相変わらず、普通。
見つめながら、朝あったことを素直に話した。
すると、美華ちゃんはたちまち爆笑し始めた。
わ、わたし、ヘンなこと言ったっ?
優佳ちゃんたちも来て、美華ちゃんに話を聞くと、優佳ちゃんたちまでもが爆笑。
ど、どうして?
「真美ちゃんウケる〜。別によくね?リムジンで行かなくても」
優佳ちゃん、キラキラ語だ!
キラキラ語っていうのは、よくね?みたいな、すごい言葉。
わたしは絶対使わない言葉!
「でも、わざわざ家来てくれたのに」
「そう思うなら、ちゃんと待ってて」
美華ちゃんは笑って吹き飛ばし、笑いながら準備に戻った。
案外、一番楽かも。
ここのグループ。
コヨがいたらもっと楽しくなるのに。
ひとり外を見ていると、なぜか寂しくなってきた。
翌日、その翌日と、普通に過ぎていく日々。
すると、あの日。
学級委員長の七井さんがクラスの前に出た。
「みんな〜。クリスマス会やらない?みんなバラバラになるから、パアッって楽しく!」
七井さんの言葉で、クラスは盛り上がった。
みんなグループで集まってワイワイガヤガヤ。
わたしも美華ちゃんたちとおしゃべりしていた。
「おい、七井やるじゃん」
最近多いよ、キラキラ語。
そう思いつつも、七井さんの話を聞いた。
12.クリスマスプレゼント
七井さんの話と立候補により、クリスマス会は、陽茉理ちゃんの家の、自分の階の会場で。
12月24日にクリスマスプレゼントをひとつ持っていって、クジで当たった人からもらうらしい。
「わたしは、まあ13万くらいの腕時計でいいかしら」
美華ちゃん、高いよそれ!
優佳ちゃんたちも「ダメダメ」って言うけど、美華ちゃんは「そんな安いのないし」って。
はぁ〜。
お金持ちは違う…。
「実柚乃は何か作ろ〜」
「さっすが実柚乃ちゃん!」
「クジで実柚乃ちゃんが当たりますようにっ!」
みんなが実柚乃ちゃんを囲う。
わたしの作るクリスマスプレゼント誰のところ行くんだろ。
一応お裁縫のつもりだけど。
実柚乃ちゃんのところに行ったら、下手感増すな〜。
「穂乃香は何買うの?」
「まあ、適当に文房具セットで」
いやいや、適当じゃない。
文房具セット買う子多いと思うし。
わたしもそれ思ったし。
「真美ちゃんは?」
優佳ちゃんに聞かれて、「キャラクターのマスコットかな」と答える。
美華ちゃんは感嘆をもらす。
そんなにすごいことじゃないし!
絶対絶対、ぜぇ〜ったい。
美華ちゃんの方がすごいぃ〜!
モンブランさん私と友達になりませんか?
474:みゆ◆x.:2017/10/23(月) 12:14 もちろんいいですよ。
そんなこと言ってくださってとても嬉しいです。
13.4人でお買い物!
その日、わたしたちは隣町のショッピングモールへ出掛けた。
学校が終わってから、すぐ荷物を持って、美華ちゃん家のリムジンで。
「まあ、わたしはここでプレゼント済ませようかしら」
美華ちゃんがつぶやき、優佳ちゃんが持っていたスマホを差し出した。
画面を覗き込む。
すると、ショッピングモールに売られているクリスマスプレゼントの一覧が出ていた。
「美華ちゃんこれ見て決めたら?」
穂乃香ちゃんも同じページを開いて、見せてくれる。
今回、保護者として、運転手さんとおばあちゃんが来てくれる。
「見て見て!これ可愛くない!?」
わたしが指差した文房具セット。
鉛筆、消しゴム、メモ張、ペン、小さな鉛筆削りのセット。
しかも、値段は560円。
めちゃめちゃ安いじゃん!
わたしのお小遣いでもよく買える!
「真美ちゃんがこれ選ぶとするじゃんか〜。男の子がもらったら?」
「それは…誰かもそういうことあるかもだし、交換?」
「それはそれで面白いかもね」
なんて話を交わしていると。
リムジンが停まり、美華ちゃんが指示を出す。
一度来たことがあるここ。
晴奈ちゃんと来たんだよね。
ああ、楽しみっ!
「じゃあ行きましょう」
美華ちゃんは、ワンピースのすそを翻して、クリスマスプレゼントルームへ足を向ける。
止まることなくズンズン歩いて行く。
調べてくれたのかな?
トウナちゃんたちが調べてくれたみたいに。
14.マーフィーの文房具セット
ここがクリスマスプレゼントルーム。
彩り鮮やかなラッピングを手に、スキップする保育園児。
「ここから選びましょう」
美華ちゃんが品を手に取る。
よーし、わたしも、スマホに載ってた文房具セットを探すぞ〜。
近くに、男の子でも女の子でも使えそうなのあるかもだし。
「真美ちゃん待って待って」
おばあちゃんも一緒に探す。
なかなか見つからないな〜。
穂乃香ちゃんが、探していた文房具セットを見つけてくれた。
「ありがとう、穂乃香ちゃん!」
探していたキャラクターのセットを見つけて、手に取る。
これは確実に女の子だもんな〜。
わたしは、男の子でも使えるデザインのセットを見た。
「どれか、真美ちゃん用に買ってあげようか?」
「うんん、いい」
おばあちゃんにはラケットもらうんだけど、サンタさんからは何もらおう。
シューズにしようかな。
「これはどうだい?」
おばあちゃんが手に取ったセット。
それは、最近人気のマーフィーの文房具セット。
女の子はもちろん、わたしも使いたいくらいのデザイン。
それに、男の子でも使える、女の子過ぎないデザイン。
「これにする!値段は…680円」
サイフから700円を取り出す。
先に会計を済ませて、美華ちゃんたちのところへ向かった。
15.突然スプレー事件!
それぞれ、わたしはマーフィーの文房具セットを。
美華ちゃんは中学校でも使えるトートバッグを。
優佳ちゃんは腕時計を。
穂乃香ちゃんは髪の毛のアレンジセットを買ったみたい。
「じゃあね、美華ちゃんありがとう」
順番に、穂乃香ちゃん、優佳ちゃん、わたしの順番で降りていく。
家に着くと、おばあちゃんはリムジンを見つめた。
「真美ちゃんの友達にあんな子がいたなんて知らなかったわ」
話したことなかったもんね。
今日はいろいろあったしということで、外食にした。
久しぶりにお寿司も食べたかったし。
「ごめんね。おばあちゃんとふたりきりのお寿司で」
「うんん。嬉しい」
こんな時だけだった。
わたしが嬉しいだなんて言えるときなんて。
学校に行くと、美華ちゃんたちも、もちろんわたしもビックリした。
まだ誰も来ていないはずの校舎。
警備員が警備したはずの校内。
なのに…。
「多田本真美、青山野学園の校長に断られた…ですって!?」
初等部の壁いっぱいにスプレーで書かれている言葉。
わたし、断られてないし!
「真美ちゃんガチ?」
「うんん、知らないよ、違う違う!」
何で…一体、どうして…。
16.犯人は
みんなが登校してきて、人だかりが出来るようになった。
そんな中で、クスクス笑う子たち。
そちらを見ると、秀花ちゃんグループがいた。
「ちょっと、こっち見られた!あっち行って、あっち」
秀花ちゃんのグループのひとりが声を張り上げ、逃げていく。
そんな様子を、美華ちゃんはしっかり見ていた。
「真美ちゃんは児童会長だからとかじゃない。めっちゃ頑張ってたし!」
美華ちゃん…。
ほっこりした気持ちで見ていると、美華ちゃんは指差して叫んだ。
「優佳と穂乃香、捕まえてここまで」
足の速い穂乃香ちゃんは、ひとりで秀花ちゃんたちを追い掛ける。
優佳ちゃんもそれに続いた。
ムスッっとした顔の美華ちゃんに、とても嬉しかった。
「真美ちゃんがかわいそう。意味わかんねえ。どうせアイツらだよ」
穂乃香ちゃんが秀花ちゃんと、ふたりの女の子を。
優佳ちゃんがひとりの女の子を連れてきた。
「ちょっとこっち来い」
美華ちゃんに呼ばれて、秀花ちゃんグループはたたずんだ。
思いっきり美華ちゃんはみんなをにらみつけると、声を張り上げた。
「これやったのお前らだろ!」
「…」
秀花ちゃん、わたしと楽しく話す仲良しの友達だと思ってたのに。
どうしてわたしの友達は…。
「答えろよ!」
辺りはざわめきを消し、こちらを注目している。
美華ちゃんに呼び出されるのはすごく大きいもんね。
だって校長先生の孫だし。
わたしも、自分が怒られているかのように聞いていた。
17.トドメの一言
すると、一番初めに秀花ちゃんがゆっくり前に出た。
美華ちゃんをはっきりにらむ。
「よく分かったね。わたしたちがやらせてもらった」
「何のために?」
「もちろん嫌がらせのため」
秀花ちゃんが、わたしに嫌がらせ…?
ウソでしょ。
一緒に児童会活動したじゃん。
「だって、わたしの方が優秀だし、児童会も入ってるし。涼太の幼なじみだよ!?なのに何で」
美華ちゃんは、鋭い目でにらみ、吐き捨てた。
「そんなことやってるから推薦されないんだよ。真美ちゃんに謝り、反省文5枚をわたしと校長、真美ちゃんに提出し、グループみんなで弁償することが償い」
美華ちゃんの後を、悲しい目をしたわたしたち3人は付いていく。
どうしてわたしの仲良しはこんなに離れていってしまうの…?
「大丈夫よ、真美ちゃん。アイツらもやらざるをえないから。校長に伝えてくるから、後はよろしく」
美華ちゃんは校長室へ向かい、わたしたちは教室へ向かった。
だけど、関係者として。
児童会長として。
「優佳ちゃんたち先行ってて」
わたしは、トイレのバケツに水をたっぷりため、廊下へ出た。
学校のスプレー、水で落とせるんだよね〜。
手荒い場のスポンジとぞうきんを使って、スプレーを消す。
これでも、ちょっとは汚れてる。
これをしっかり弁償するんだ、秀花ちゃんたちは。
「真美ちゃん。わたしもやる。黙って見てられないし」
優佳ちゃんと穂乃香ちゃんが来て、一緒に壁とスプレーと立ち向かう。
近くで、秀花ちゃんグループがいた。
腕を組んで。
「まだ真美ちゃんに用があるわけ?」
優佳ちゃんが一歩前に出る。
わたしと穂乃香ちゃんも壁と立ち向かうのを一旦やめる。
「早く帰りな。あなたたちに用はないから」
穂乃香ちゃんの一言で、去っていった秀花ちゃんグループ。
はぁ〜。
わたしは、冷たくて痛い手でほっぺたを叩いた。
18.秀花ちゃんに下された処分
校長先生や前田先生、それから小林先生や家族にまで知り渡ってしまった秀花ちゃんグループ。
「アイツらが悪いんだから」
校長先生は大きなダメージを受けたらしく、一番にやり、計画した人を、退学処分に下した。
残念ながら秀花ちゃん。
「やめてあげてください!きっと…秀花ちゃんはそんなことしません!」
わたしは必死で校長先生に言ったけど、秀花ちゃんの生徒手帳、生徒書類をゴミ箱に捨てた。
彦宮学園から秀花ちゃんの名前が消えていった。
「いいのよ秀花は。青山野も終わり。あんなことする人じゃないと思ってたのに、最悪」
ふーちゃんは、泣きながら秀花ちゃんが彦宮学園を出ていくのを見ていた。
門を抜け、ひとりで出ていく姿を。
「ごめんなさい。まーちゃん」
ふーちゃんがお母さんみたいに謝る。
秀花ちゃんは悪くない。
だれも…。
「気にすることないわ。それでみんないいんだし」
そうかなぁ。
ふーちゃんはまだ泣き止まず、今日1日中ずっと泣いていた。
涼太くんや実柚乃ちゃんが声をかけても、どうにもならない。
「わたしも、本当は退学寸前だった。気持ちは分からなくもないかも」
「アイツのことなんていいじゃん」
美華ちゃんは苦笑しながらつぶやいた。
19.よいお年を!
今日は終業式。
みんなと今年会うのも終わり。
「では皆さん、よいお年を!」
前田先生が笑顔で言い、わたしたちは帰った。
よいお年を、かぁ。
明後日はいよいよ明スイパーティー。
楽しみだなあ、冬休み。
宿題はもちろん多いけど。
「じゃあ真美ちゃん、よいお年を!」
実柚乃ちゃんはスキップしながら先に階段を駆け降りる。
わたしは美華ちゃんたちと階段をゆっくり降りた。
「クリスマスは何をもらうの?」
穂乃香ちゃんがつぶやき、わたしたちは一瞬でクリスマスムード。
やっぱり冬休みと言えばクリスマス!
それから〜お正月。
お年玉に初詣!
「わたしはバトミントンとラケット。中学校でも続けたいの」
「わたしは、海外旅行券を」
えええっ!?
美華ちゃんのクリスマスプレゼントは海外旅行券!?
わたしは絶対無理だ。
優佳ちゃんは、黄色の腕時計。
穂乃香ちゃんは、アクセサリーをもらうらしい。
「ラケットいいね。カッコいい」
「いやいや!美華ちゃんのクリスマスプレゼントがすごいよ」
海外旅行券なんて、絶対いらない。
もらうほど欲ないから、まずもらわないし。
もらったとしても、どうしたらいいのか分からないし!
「今日リムジンないって言ったよね」
ああ、そうだった。
そのまま久しぶりに門を通り、交差点へ向かい、そこから駅の方へ行く。
「そろそろだね。バイバイ」
穂乃香ちゃんが別の方向へ帰り、3人だけになった。
すぐ、交差点になり、わたしもひとりで帰る。
終業式が終わり、冬休みになる期待でいっぱいだった。
明スイパーティーの準備は今日。
昨日の終業式から解き放たれ、わたしはパーティーの準備を始めた。
わたしの役割は買い出し。
スイーツの材料を買うんだって。
おばあちゃんとスーパーへ行き、材料をカゴに入れていく。
「真美ちゃんお母さんみたいだねえ」
「うんん、おばあちゃんの買い出しの手伝いみたいだよ」
わたしは、またポンポンと材料をカゴに入れていった。
20.メリークリスマス!
クリスマス!
陽茉理ちゃんの家でパーティー。
今日はパーティーが二回も。
しかも、ここで。
「まずは、やっぱりプレゼント交換しない?」
七井さんが言い、みんなが一層盛り上がる。
実柚乃ちゃんのプレゼントがほしい!
きっとすごいのだし!
手作り〜。
「真美ちゃんの文房具セットほしい!実柚乃、そのキャラクター好きなの」
良ければ交換〜。
七井さんは、「適当に座って」と指示を出す。
椅子に座り、音楽に合わせてプレゼントを横へ横へ回していく。
「止めっ!」
七井さんが声を張り上げる。
わたしの前にあるプレゼント。
『あなたへ捧げる歌by陽茉理』
陽茉理ちゃんからだ!
歌詞が書いてある。
「ねえねえ陽茉理ちゃん!」
もらった歌詞集を掲げ、見せる。
陽茉理ちゃんはにっこり。
しっかり握られている。
わたしの文房具セット…!
「わたしと陽茉理ちゃんのプレゼント交換だね」
陽茉理ちゃんも大きくうなずく。
ちなみに実柚乃ちゃんのプレゼントは穂乃香ちゃんのところへ。
美華ちゃんのプレゼントは涼太くんのところへいった。
「交換が終わりました。陽茉理ちゃんの家の方々が料理を作ってくれたので、食べましょう!」
ここで昼ごはんを食べて解散。
解散したら、すぐ矢本くんの階へ。
矢本家の人みたい。
幸せだろうなあ、お金持ち。
わたしも幸せだけど。
「お〜い、真美ちゃん。陽茉理ちゃんに感謝してごちそう食べよ!」
美華ちゃんがニッっと笑いながら、チキンにかぶりつく。
優佳ちゃんや穂乃香ちゃんも同じようにかぶりつく。
えーい、わたしもっ!
「真美ちゃんいけいけ!」
穂乃香ちゃんが言い、取り皿にチキンをのせ、かぶりつく。
とっても豪快に。
あ〜、美味しい!
「ありがとう陽茉理ちゃん!」
陽茉理ちゃんはにっこり笑い、陽茉理ちゃんもチキンをかぶりついていた。
チキン人気かな。
「楽しいね、クリスマス会!」
「うん!」
わたしは、また一口。
また一口と、チキンをかぶりついていった。
明スイの気持ちに切り替える。
ここは矢本くんの階。
まだみんな来ていないので、陽茉理ちゃんと話ながら待っていた。
「本当にありがとう。すごく美味しかった!」
「嬉しいわ。お母さんも喜ぶ」
矢本くんもとなりで聞きながら喜んでいた。
陽茉理ちゃんの歌詞もすごかったし。
この時、本当の笑みがこぼれた。
21.明スイパーティー!
かき混ぜたり、焼いたり。
初めての明スイ活動より絶対に手早くなってきてる!
そう思いつつ、オーブンからクリスマスケーキを取り出す。
わたしがひとりで作ったの。
チョコレートプレートには『メリークリスマス』と書かれている。
「真美ちゃん上手いね!さすが」
隅木田くんが、わたしのケーキをほめてくれた。
嬉しい…。
最後にイチゴを飾り、冷蔵庫へ。
冷やすんだ。
ここからは、隅木田くんの手伝い。
マカロン再挑戦か…。
この前のも美味しかったけど。
「きれいですね、このマカロン」
すごく形の整ったマカロン。
お店に出せそうだよ!
隅木田くんはにっこり。
今日は笑顔あふれる日だね。
「いっただっきまーす!」
出来上がったスイーツを、明スイメンバーみんなで食べる。
やっぱり美味しい!
マカロンもケーキも。
他のスイーツももちろん。
「今度はさ、お店に出品してみたいよね」
隅木田くんがつぶやき、共感。
思ったもん。
これなら出せるって。
きっとわたしたちの団結力なら!
きっとわたしたちなら!
わたしたちを信じて、みんなでうなずいた。
22.最後のパーティー
翌日の夜。
今日は家のパーティーだ。
ついに明日の25日、サンタさんがクリスマスプレゼントーーーバトミントンのラケットを…!
「真美ちゃん寒いね…」
今度はスーパーに今日の買い出し。
もちろんおばあちゃんに着いていってみた。
チキンを探して。
陽茉理ちゃん家のチキンは高級だから無理だけど。
きっと売ってるよね。
「真美ちゃん、あれ」
おばあちゃんが指差したそれ。
チキン!
おばあちゃんはチキンを手に取り、そっとカゴに入れた。
「いいのっ?」
レジでひとつだけ高いチキン。
きっと美味しいはず!
「メリーメリーメリー…クリスマス」
おばあちゃんとふたりのクリスマス。
チキンを、思いっきりかぶりつく。
陽茉理ちゃん家で食べた時と、もちろん迫力は変えない。
「すごい食べっぷりね真美ちゃん」
おばあちゃんをうならすほどの食べっぷりのわたし。
今年、ほぼ最後。
いろんなことがあったな〜。
「美味しいかい?」
「もちろん!」
わたしは、いろんな意味でうなずいた。
(つづく)
あとがき
みゆ
こんばんは!
皆さん、『ここは明確スイーツ研究部!』略して明スイいかがですか?
もう14巻。
感謝です!
今回はあまり雑談ありません!
話すと長くなってしまう。
ちょっとした恋愛感ありますから。
良ければ日記板『えみりん』へ。
ではでは。
次回予告といきますか。
次回はやっと新年!
コヨとの再会、坂宮の失恋。
だんだんみんなも受験必死です!
ここまで読んでくださったあなた!
コメントしてください。
本当にありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!
では次回会いましょう!
『ここは明確スイーツ研究部!15』
人物紹介
多田本 真美
私立彦宮学園の児童会長。私立青山野学園へ推薦で入学が決定している。
坂宮 陽都
サッカー少年。
明確ゼミナールに通う小学6年生。
矢本 拓斗
野球少年。
明確ゼミナールに通う中学3年生。
隅木田 優斗
勉強得意な少年。
明確ゼミナールに通う中学2年生。
1.明けましておめでとう!
みんな、あいさつ。
新しい年を迎えました。
わたしは多田本真美。
さて!
新年、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします!
年越しそばを食べた夜。
今は朝。
元旦の。
「明けましておめでとう!真由ちゃん」
ピヨピヨッっと返事をするのは、真由ちゃん。
わたしが飼ってる?鳥なの。
一階に降りると、おばあちゃんがおせちを作っていた。
「おはよう、真美ちゃん。お雑煮を食べたら、初詣に行こう。」
家には、久しぶりにいるパパ。
それからおばあちゃんにわたし。
ママはいないんだ。
どうしてかって?
入院してるからだよ。
妊娠してるんだ、双子の子を。
だからおばあちゃん!
「お雑煮早く食べたいなっ。おもち、おもち」
テレビを付けると、やはり元旦スペシャルがやっていた。
芸能人の人たちによるサバイバル。
歌コンテストなどなど…。
「も〜しも〜し。緑川で〜す」
緑川ーーー晴奈ちゃん家だ!
晴奈ちゃんとは、わたしの幼なじみ。
家はちょっと遠いけど、ずーっと仲良しなんだっ!
「はいっ!」
ドアを元気よく開けると、ピッシリ着物を着た晴奈ちゃんと晴奈ちゃんのお母さん。
初詣に行くのかな?
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくね。受験でバラバラになるけど」
晴奈ちゃんのお母さんが言う。
出てきたおばあちゃんもあいさつ。
は〜っ!
新年、だぁーーーーっ!
2.初詣でのお願い事
暖かいセーターを着て、わたしとパパとおばあちゃんで初詣に向かう。
パパの運転で、有名な神社へ行くらしい。
どこなんだろう。
ワクワク。
別名最強神社だって。
何が最強か分からないけど。
「真美は何をお願いするんだ?」
「教えな〜い。教えると、ご利益がないんだって。そんなのヤダもん」
ちょっとムスッっとした顔をして見せる。
おばあちゃんが顔を見て笑った。
「ひどい顔だよ。真美ちゃんのカワイイ顔が台無しじゃないか」
カワイイって…!
思ってないでしょおばあちゃん。
おばあちゃんを見ると、ちょっとニヤニヤ…。
ちょっとっ!
「着いたぞー。降りてー」
パパが車を停め、降りる。
なっ、何という立派な神社!
さっ…さすが最強神社。
「お守り買うでしょ?真美ちゃんたくさん持ってるけど」
秋の遠足で大量買いしたもんな〜。
実柚乃ちゃんと。
実柚乃ちゃんとは、家庭科が得意なカワイイ女の子。
仲良しなんだ〜。
「買いたいけど、いい?」
おばあちゃんはにっこり。
あっ、ありがと〜う!
わたしは感謝しつつ、お参りの参列に並んだ。
すごい並んでる。
パンパンパン!
柏手を打つ音が響く。
お賽銭を入れて、お願い事!
ええっと…。
美華ちゃんたちと一緒にいられますように。
秀花ちゃんたちと仲直りできますように。
気持ちよく卒業できますように。
中学校楽しめますようにっ!
多かった、かな?
「真美ちゃん、こっちこっち」
おばあちゃんに手を引かれる。
神様お願いしま〜す。
わたしはケムリを浴びるところへ来て、たっぷり浴びておく。
そして、お守りの列に並んだ。
3.思わぬ再会
売られているお守りを見回す。
ピンク、カワイイな〜。
今年のお守りはピンクにしよっと。
色を決めて見ていく。
なかなかカワイイデザインばかりで決められない。
「恋愛、学問、交通安全…」
やっぱり学問かなぁ。
中学校へ進学する年だし。
学問のピンクのお守りを差し出し、おばあちゃんにお金を払ってもらう。
お守りを大事にポケットにしまうと。
「ちょっと待って」
おばあちゃんを止めて、目をこらす。
ちょっと汚れたお守りを付けた女の子が歩いていた。
そのお守りは、わたしがコヨにプレゼントしたのと全く同じ。
汚れてた部分も同じかもっ!
「コヨっ…か、カズエちゃん!」
コヨの本名、カズエちゃんと呼ぶと、振り返った女の子。
間違いない。
カズエちゃんだ。
コヨだ。
「真美だよ、カズエちゃん!」
カズエちゃんはこちらへ歩いてくる。
となりには、友達らしき子も。
友達出来てるじゃん。
充実してるみたいで。
「真美…」
「カズエちゃん、お守り付けてくれてたんだね。ありがとう」
「本名覚えててくれてありがとう」
すると、となりの友達がカズエちゃんに話しかけた。
カズエちゃんって呼んでない。
イネコと呼んでいる。
また異名かな。
「カズエって何?本名って?」
「うんん、カズエって名前で劇やってさ。カズエのことみんなカズって呼んでたから、本名覚えててくれたって」
言い訳ダメじゃん。
ちょっと笑いを堪えつつ、話を聞く。
イネコって名前なんだ。
「新しい家庭に引き取られたの。前の人たちには捨てられた…。コウスケとふたりで。コンは違うけど」
捨てられた…。
カズエちゃんは普通に言う。
そんな軽いことじゃないのに。
「わたしの名前は高橋イネコ」
「イネコ…」
カズエちゃんはきびすを返す。
友達と来た道を戻った。
カズエちゃん…わたしは悲しい気持ちでいっぱいだった。
だって、捨てられたなんて…。
みゆさんの小説面白い。
後、このスレ覚えてる?
http://ha10.net/yy/1509096222.html
4.おみくじの結果は?
おばあちゃんに今あったことを伝えると、すごくビックリしていた。
やっぱり。
イネコのことまで全部。
「カズエちゃんと会ってきたのかい」
おばあちゃんはにっこり。
もう、泣きたい。
どうしてカズエちゃんは…。
わたしたちと同じようにしていくことは出来ないの…?
「大丈夫。カズエちゃんは楽しそうだったんだろう?」
わたしはコクンとうなずく。
おばあちゃんはまたしてもにこにこ笑い、おみくじの所へ向かう。
パパはもういるみたい。
おみくじの所へ行くと、すぐパパを見つけた。
「パパっ」
パパの所へ駆け寄る。
100円でおみくじ一回ね。
おばあちゃんに100円をもらい、みんな一斉におみくじを開く。
数字を出し、引き出しを開ける。
何だろう、何だろう。
「いっせ〜の〜でっ!」
わたしの掛け声で3人がおみくじを開く。
うーん、吉か〜。
パパもおばあちゃんも吉。
面白くないな〜。
災いがたびたび降りかかってくる…。
ウソーッ!
何でなの〜!?
運悪いのかも…。
学問、学問っ!
「成績はアップやダウンの差が人生最大ですって!?」
あわわわわ。
思わず大きな声を…。
あわてて口を塞ぐ。
でっ、でもでも!
人生や未来はわたしが創るもの。
だから…大丈夫。
わたしは、スーッっと息を吸い込んで拳を固めた。
かわたさんありがとうございます!
あと、覚えてますよ。
コメントしてなくてすみません。
5.年賀状
初詣から帰ってくると、早速パパからお年玉。
そして、おばあちゃんからお年玉。
ばあばとじいじの喫茶店に行ったら、またお年玉もらえるっ!
ウキウキしつつも、一応受ける面接にドキドキする。
青山野学園の面接なんだけど、推薦だけど受けるんだって。
それが、来週。
今ドキドキしてどうする!
ピンポーン
「はーい」
おばあちゃんが出る。
お正月って大変。
いろんな人がごあいさつに来るし、おせち料理もあるもん。
「彦宮さんよ〜」
美華ちゃんっ!?
急いで一階へ降り、玄関へ出る。
マフラーをグルグル巻きにした美華ちゃんと運転手さんがいた。
「こんにちは、美華ちゃん。明けましておめでとう!」
「おめでとう、真美ちゃん」
美華ちゃんは、手作りのオソロイマフラーをプレゼントしてくれた。
わたし、作ってないよっ!
だけど、これからもよろしくって意味のプレゼントだって。
マフラーを配ってるとか。
あ、グループの子にね。
「じゃあ、これからもよろしくね、美華ちゃん!」
「もちろん」
美華ちゃんと少し会話を交わし、美華ちゃんはリムジンで交差点の方へ走っていった。
…!
その時、わたしは気付いた。
年賀状のことを。
「おばあちゃーんっ!年賀状!」
ポストの中には、大量の年賀状が。
おばあちゃんの年賀状はないけど。
パパとママとわたしの年賀状の束を持って家に入る。
「真美ちゃん宛にたくさん届いて良かったねえ」
「うんっ!」
晴奈ちゃん、ふーちゃん、坂宮、隅木田くん、矢本くん兄弟、実柚乃ちゃん姉妹、ファンと思われる知らない名前の子たちに…。
前田先生!
涼太くんと樹くんからも届いてる!
「すごくいっぱい!」
わたしは、みんなの一言一言をゆっくり読んだ。
6.おせちと最後の始業式
その日の夜。
ばあばとじいじにもらったお年玉も含めて、たまったお年玉を見た。
今年はあんまりお金使うつもりはないし、やっていける!
「さあ真美ちゃん、た〜んと食べて。明日からおばあちゃんは家に帰るんだから、当分食べられないのよ?」
そうだ!
おせちのお重に詰めてある美味しそうな卵をお皿によそう。
豆も調理されてて美味しそう!
「いっただっきま〜す!」
卵にかぶりつき、黄身が口の中でとろけていく。
ほ、ほひひい…。
パパのお皿に盛ってあるエビ、わたしも食べたああい!
「食べっぷりが最高ねえ」
おばあちゃんが嬉しそうにわたしの食べっぷりを見る。
あ〜、今年もいい日に、なりますように。
今日は始業式。
ピッチリ制服を着こなす。
これが最後の始業式。
もう、終業式って終わったんだ。
と思うと、胸がムズムズする。
「真美ちゃん!実柚乃の年賀状どうだった?」
実柚乃ちゃんの年賀状ーーーそれは、今年の戌年で、戌のスタンプが押されており、イラストも描いてあった。
「スタンプね、実柚乃が彫ったの!すごくない?」
「めっちゃかわいかった!」
実柚乃ちゃんは誇らしげに鼻をすする。わたしも来年は、あんな感じに、しようかなあ。
名前変えました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
7.スイーツフェスティバル
家に帰ると、すぐ実柚可さんが訪ねてきた。
実柚可さんーーー実柚乃ちゃんのお姉さん兼お母さん。
もう、実柚乃ちゃんはお母さんが亡くなっていて、実柚可さんが、お姉さんもお母さんも代わってやっているんだって。
「ごめんね、真美ちゃん。これ見てもらえる?」
実柚可さんは、一枚のパンフレットを差し出してくる。
受け取り、内容を見てみた。
『スイーツフェスティバル』。
「実柚乃から聞いたけど、真美ちゃん明スイメンバーなんだってね。これ、出てみない!?」
実柚可さんの話に寄ると、このスイーツフェスティバルは、実柚可さんが企画して立ち上げているそうだ。
今のところ、出店がないみたい。
「明スイが来てくれたら、盛り上がると思うんだ!アイドルも呼ぶ予定なんだけど!」
「行きます行きます!出店してみたいです!」
実柚可さんはニッっと笑って、パンフレットをくれた。
「お願いしに来て、こんなことさせるのはあんまりなんだけど、パンフレットに従って、出店届書いてね。じゃあ楽しみにしてまーすっ!」
実柚可さんは、ドアをバタンと閉めて帰っていった。
しゅっ、しゅっ、出店ーっ!
あわてて隅木田くんに電話する。
「もしもし。多田本ですけどっ!」
「真美ちゃん?どうしたの?」
わたしは、実柚可さんに言われたことを全て話した。
隅木田くんは、楽しそうに聞いてくれる。
「ありがとう。真美ちゃん。ぜひ参加しようよ。じゃあ、明日矢本の家で」
約束をして、電話を切る。
彦宮祭で出店してから久しぶり!
あ〜、楽しみっ!
8.坂宮とふたりで
翌日の午後。
約束通り矢本くんの家へ自転車を走らせる。
ダウンの下はセーターと、暖かい格好をしているはずなのに寒い。
何でこんなに寒いの〜?
「あっ、真美」
後ろから坂宮が自転車に乗ってくる。
ここからは、ふたりで行くことにした。坂宮と付き合っていた秀花ちゃん。
会ってるのかな?
「俺さ、また真美好きになった。秀花が退学になって、別れたから」
「秀花ちゃん、公立行ったんだよね。何か、わたし悪いことした気がする」
坂宮は自転車から降りて、手で押しながらニカッっと笑った。
「秀花が悪いんだから、真美は気にするなよ。真美は悪くない」
そうかな…。
一番、坂宮が秀花ちゃんの近くにいて、その坂宮が言うんだから。
きっとそれでいいよね。
「おい、着いたぞ。どこ行く気だ」
わぁっ。
もう着いてた。
あわてて自転車から降りる。
本館を通りすぎ、別館へ向かう。
こっちが、矢本家のたくさんいる子供たちのプライベートルームみたい。
ピンポーン
坂宮がドアフォンを押す。
「俺の階来て。あれ?多田本と坂宮ふたり!?付き合ってるの〜?」
「付き合ってない、付き合ってない」
わたしはすぐ否定した。
とりあえず、坂宮と矢本くんの階へ向かった。
「真美、否定するの早すぎ」
「だってそうでしょ?…もう。わたし先行くから」
矢本くんの家のスリッパをパタパタさせながら矢本くんの階へ足を傾ける。
いつも行く、一番奥のキッチンへ行くと、もうふたりともいた。
「遅れてすみませんでした。あの、スイーツフェスティバルのパンフレット印刷してきました」
隅木田くんと矢本くんに、それぞれパンフレットを差し出す。
坂宮が来ると、わたしは詳しくスイーツフェスティバルについて説明した。
日時は再来週。
それまでに準備するんだ。
まだまだ時間あるから大丈夫!
9.メニューは?
それから、早速何のスイーツを作るのか決めた。
案はみっつ。
まずは、マカロン。
スイーツと言えば女の子。
女の子と言えばカワイイもの好き。
カワイイスイーツと言えばマカロン。
次に、プリン。
これは、お手伝いに来てくれた矢本くんの妹、梨萌佳さんの言ってたことなんだけど、味のアレンジが簡単なんだそうだ。
最後に、きなこもち。
正月を迎えて、新年はおもちというワードが出てきて、きなこもち。
「やっぱり、プリンじゃない?いろんな味が楽しめるの」
梨萌佳さんがクックパッドを調べながらつぶやいた。
わたしたち明スイは、出来るだけオリジナルのスイーツ作りを試みている。
なので、今までもあまりクックパッドを見なかったのだ。
「おい、梨萌佳。お前の発言権利、ないから」
矢本くんが冷たい目で見る。
梨萌佳さんはちょっと不貞腐れたけど、クックパッドを閉じて椅子に持たれかかった。
「すみませんでしたー。まあ、もしプリンにするんだったら、案があるから呼びに来てね!」
そう言い残して、矢本くんの部屋を出ていく。
一瞬沈黙が流れる。
すると、隅木田くんが手を打った。
「全部合わせるって方法でやってきたけど、マカロンにプリンにきなこもち。これらを合わせるって出来る?」
ここは何でもお任せ!
矢本くんの妹のひとりであり、梨萌佳さんの双子、梨歩佳さんに頼る。
梨萌佳さんもスイーツ作りは得意。
だけど、梨歩佳さんは特別。
すごい腕の持ち主だ。
「呼んだ〜?あ、真美ちゃん、あけおめ〜」
梨歩佳さんは、ハイテンションなのを押さえきれずにハグしてくる。
矢本くんが無理矢理引き離した。
「うっとうしい。多田本に嫌われるぞ。明スイのことで相談」
別に、嫌わないけど。
そんなことを言う合間もなく、わたしが記録していたノートを見た。
「こんなの簡単、簡単。パフェ状にしてしまえばいいのよ」
パフェ?
わたしの質問に答えるように、梨歩佳さんはノートのページをめくり、シャーペンを走らせた。
「まず、プリンを下に引くように。それの上から、きなこもちとマカロン。生クリームなんかでデコしたら?」
おお〜。
さすが梨歩佳さん!
「ありがとうございます!」
ペコリとお辞儀する。
すると、梨歩佳さんは耳元でそっとささやいた。
「本当に礼儀正しくていい子だよね。いつでも家に着いていいよ」
「どういうことですか?」
聞いたけど、それっきり何も答えてくれなかった。
梨歩佳さんは矢本くんの部屋を出ていく。
ちょっと、意味教えてくださ〜い!
10.お久しぶり、香音ちゃん
今日は、とりあえずプリン作り!
誰よりも張り切っている梨萌佳さんと一緒にプリン作りを始める。
料理器具を机いっぱいに並べる。
「梨萌佳、担当決めて」
矢本くんが梨萌佳さんに指示する。
梨萌佳さんが口を開けかけたとたん。
「あけおめことよろ!坂宮くん!」
久しぶりだ、香音ちゃん。
香音ちゃんは、矢本くんの従姉妹。
同い年で、坂宮が好きなの。
「香音ちゃん、悪いけど忙しいの。陽茉理と遊んでてもらっていい?」
梨萌佳さんが頭を下げる。
一緒に隅木田くんも頭を下げた。
香音ちゃんは「イヤイヤ」とわがままを言ったが、坂宮に断られ、あっさり帰っていった。
「坂宮くんありがとね。香音ちゃん、なかなか止まらないから」
梨萌佳さんが苦笑いしながらつぶやいた。
そうかな?
それだけ好きってことだから、わたしが坂宮だったら嬉しいけど。
「おい梨萌佳、た、ん、と、お!」
矢本くんが声を上げる。
そうだった、プリン作るんだ!
梨萌佳さんが気を取り直す。
「ええっと、」
「待て!俺と真美は一緒な」
ちょっと、坂宮!
急に突っ込んだので、矢本くんに頭を叩かれる。
本当ににぎやかだなあ。
「いいーっ?」
梨萌佳さんがふたりをにらむ。
ふたりとも「はいっ!」と情けない返事をして椅子に座った。
「じゃあ、坂宮くんと真美ちゃんが基本的なプリン作り。隅木田くんと拓斗兄が温度作業。わたしがサポートね」
温度作業って言うのは、温めたり、冷ましたり。
基本的なプリン作りは、温度作業以外のことをいうのかなっ!
「さあ、開始ーっ!」
広いキッチンに、梨萌佳さんの大声がこだました。
11.ふたりが言った意味
分からないところは梨萌佳さんへ。
時々、香りに釣られてか香音ちゃんが覗きにくる。
だけどそのたびに、坂宮が断り続けてるんだ。
粘り強いよね、香音ちゃん。
ある意味、尊敬する。
「真美ちゃん、こっち」
今から蒸す。
隅木田くんにプリンを渡す。
熱い、熱い。
あわてて水で冷ます。
「大丈夫?真美ちゃん。火傷してない?冷ますなら、これ、保冷剤」
梨萌佳さんが心配して保冷剤を差し出してくれた。
「ありがとうございます。ですけど、大丈夫です。お返しします」
保冷剤を梨萌佳さんに返す。
すると、さっきの梨歩佳さんと同じように、耳元でそっとささやく。
「いい子だねえ、真美ちゃん。良かったら、わたしお姉さんになれるよ?」
その時、やっと分かった。
梨歩佳さんが言ってたことが。
矢本くんと結婚して、矢本家に着くってことだったんだ。
「イヤイヤイヤイヤ、早いです!」
梨萌佳さんはニヤニヤ。
それを見ていた坂宮が、ムッっとした顔をしてこちらにやって来た。
「何を話しているんだ、真美!」
すると、梨萌佳さんはからかいもふくめて坂宮に忠告した。
「嫌われちゃうよ。真美ちゃんに。いつでも拓斗兄が取っちゃうからね」
坂宮はちょっと弱気になったのか、あわあわしている。
もう、坂宮ったら。
本当に受け止めて。
嫌いにならないよ、それくらいじゃ。
「蒸し終わったぞ、梨萌佳」
矢本くんがプリンを持ち上げる。
梨萌佳さんは、ちょっと残念そうな顔をして笑った。
「冷ましてー」
冷蔵庫に入れられたプリン。
わたしたちは、冷ましている間にお茶会をすることにした。
12.最高のプリン
時計の針が動く音が、やけに大きく聞こえる。
カチッカチッカチッ
みんなで時計をジッっと見つめる。
さんっ、にいっ、いちっ。
「今だ!行けっ!」
矢本くんが声を張り上げ、梨萌佳さんがプリンを取りに行く。
そっとプリンを持って帰ってくる。
ここは、矢本くんの家。
プリンが冷まし終わったのだ。
昨日作った、プリンが。
「食べてみよっ!食べてみよっ!」
梨萌佳さんがラップをペラペラと剥がしていき、ぷるっぷるのプリンを机の真ん中にドンと置く。
ほひひほ〜!(美味しそ〜!)
「いっただっきまーすっ!」
坂宮が、大きなスプーンで自分のお皿にプリンをよそい、自分のスプーンを構えた。
そして、一口パクッ!
「うっめえ!みんなも食ってみろ!」
坂宮は目を輝かせて、大きなスプーンでみんなのお皿にプリンをよそった。
わたしのお皿にも、たくさんのぷるっぷるのプリンが。
「いただきます!」
プリンを手に、プリンをパクッ!
いい香り!
これに乗って、味も最高。
梨萌佳さんに向き直る。
「指導ありがとうございます!」
すると、梨萌佳さんはキャハハと笑いながらつぶやいた。
「前言ったの忘れないでね!」
だから、結婚とか全然まだですってば〜!