>>5>>6の間にこれが入ります。
「はい、私はアンです。よろしくお願いします。」
『アン』は笑顔で答えた。
〜・〜・〜・〜・〜・〜
その後、90日の内訳に今日は入れないこと、そして依頼は受けられないことを説明し、ユウとアンは街を散歩していた。
ユウはあまり喋らない方だし、アンも一度区切られたら詮索はしない。
そのため、会話も途切れ途切れだった。
まさに、今もどちらも話題がない状況だった。
「そういえば、まだ聞いてませんでしたよね。」
会話を断ち切るように、アンは口を開く
「ん?」
「あなたは結局、魔法使いなんですか?」
「んー、まぁ」
少し曖昧だが、確実にユウは頷いた。
「それ先言ってください。」
正直冒険者の役職が何であろうと関係ない。魔法使い以外。
説明すると、この世界では魔法使いは貴重な職業として扱われる。
なぜなら、一つの街に一人の魔法使いが必ずいなければいけない決まりになっているからだ。
アンにも理由は分からないが、管理とか色々あるんだろう。
だが現在、その数は少ない。国の中でギリギリで回しているのだ。
田舎の町には魔法使いがいないところもある。実はこの町も、都会だが王都から離れているせいか魔法使いがいないのだ。
そして、魔法使いは一人前になるために一度、王都に向かわなくてはいけないのだ。
その道は険しくここからでも10年はかかるだろう。
少し長くなってしまったが、問題はここからだ。
そのために、魔法使いのみの特別ルール『制約』が課せられている。
『ひとつの街には90日しかいられない。』もそのひとつだった。
「こっちは制約とか色々大変なんですか……………ら。」
何気なくユウを見ると彼の目が、あるひとつの看板に釘付けになっていることに気がついた。
「あの…ユウさん?」
「……!えっと、なんか言った?」
動揺したような目でユウはアンを見る。
「いや…。そんなに気になるなら見ます?本屋」
「別に見なくて良いし」
ユウは辺りをキョロキョロと見回した。喫茶店からの道のりを覚えようとしているように見えた。
「一人で来ようったって無駄ですよ。最初の一週間はどんな所にもお供するようにとマスターから言われてるんです。気になるなら見ましょうよ。」
ほぼ無理やり。アンはユウを引っ張った。
強引なのはさっきの仕返しだと思おう。そう心で思いながら。
30分ほど色々なるならところを見てから、ユウは戻ってきた。
さすがに本屋の中でつきまとうのもしつこいので店の外で待っていたのだ。
まるで公園で遊ぶ我が子を待つ母のような気分だった。
ユウが出てきた頃には、もう日が落ちかけていた。
そんな時間が経っていたことに驚きつつ、
「もう、帰りましょうか。」
アンは、そうユウに言った。