洋風喫茶の魔法使い。

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5:かてぃあ:2017/03/26(日) 09:24

(二話です(^o^)早えですが4話まで書いてるのでコピペっす)

ウエストをキュッと締めた深い緑色のワンピースに、背中には杖を装備して。
非常用の折りたたみスティックを赤いポシェットに入れたら、仕事用の服装の少女がそこにいた。
杖に何度か魔力を込める練習をしてから控室とカウンターを隔てるカーテンを開けた。

そこにいたのは__________________。

先ほどカウンターに万札を置いて行った青年だった。

前髪の間から綺麗なアーモンド色の釣り目がみえて、優しくも凛々しい雰囲気を匂わせた。
「よろしくおねがいします。」
少女はお辞儀をした。マニュアル通りの対応だった。
「よろしく」
青年は小さくお辞儀をしてマスターに向き直ると、万札を手渡した。
「確かに。」
お金は確かに儲けているはずなのに、マスターは大事そうにお札を受け取った。
そういうところも、きっと変わっている。
「部屋は二回の宿屋を使っていいからね。それと.....」
「はい」
マスターの話を遮り返事をすると、青年は少女の腕をつかんで、半ば強引に少女を外に連れ出す。
なぜかマスターは止めない。
「え......ちょっと、まってください!」
「なに?」
喫茶店から出たところで少女は解放された。
「ちょっと.....なんで.....いきなりなにするんですか!?」
「ここには90日しかいないから。一日目も無駄にせずに依頼をこなしたいんだっつーの。」
90日........。その3文字がどこか引っかかった。
「90日!?」
「うん、聞いてないの?」
「はい」
もともと冒険者は、一つの街に、いつまでもいていいことになっている。
もっと言えば住むこともできる。
「もしかして.....あ」
少女はあることに気付いた。
「そういえば、名前はなんていうんですか?聞いてませんでしたよね」
思い出したように少女は聞いた。
確かに、という表情をしてから青年は口を開いた。
「俺はユウ。君は?」
「無いです」
「はい?」
「だから、名前がないんです。」
即答だった。
「この町のギルドの仲間パートナーは名前がないんですよ。冒険者の方がその都度名前を付ける決まりなんです。」
さっき説明できなかったことを淡々と話す。
「それって寂しくないか?」
ユウは予想外の答えを返してきた。
「はい?」
「だってさ。その冒険者がどんな名前を付けて、お前がそれを気に入っていても、その仕事が終わったらその名前はそこまでで、その存在は消えてしまうんだろ。ちゃんとここにいるのに。」
「そんなこと、考えたことないです。」
少女は今までたくさんの名前をつけられてきた。いわばペットの様なものだ。
すこし暗くなった空気を持ち上げるかのように少女は言った。
「と、いうわけで名前を....。」
「じゃあ、アンで」
またまた話を遮りユウは言った。
この人、人の話聞かない人だ........。
そう思いながら、
「はい、私はアンです。よろしくおねがいします。」
『アン』は笑顔で答えた。


かてぃあ◆R2:2017/03/28(火) 22:54 [返信]

>>5>>6の間にこれが入ります。

「はい、私はアンです。よろしくお願いします。」
『アン』は笑顔で答えた。

〜・〜・〜・〜・〜・〜

その後、90日の内訳に今日は入れないこと、そして依頼は受けられないことを説明し、ユウとアンは街を散歩していた。
ユウはあまり喋らない方だし、アンも一度区切られたら詮索はしない。
そのため、会話も途切れ途切れだった。
まさに、今もどちらも話題がない状況だった。

「そういえば、まだ聞いてませんでしたよね。」
会話を断ち切るように、アンは口を開く
「ん?」
「あなたは結局、魔法使いなんですか?」
「んー、まぁ」
少し曖昧だが、確実にユウは頷いた。
「それ先言ってください。」
正直冒険者の役職が何であろうと関係ない。魔法使い以外。
説明すると、この世界では魔法使いは貴重な職業として扱われる。
なぜなら、一つの街に一人の魔法使いが必ずいなければいけない決まりになっているからだ。
アンにも理由は分からないが、管理とか色々あるんだろう。
だが現在、その数は少ない。国の中でギリギリで回しているのだ。
田舎の町には魔法使いがいないところもある。実はこの町も、都会だが王都から離れているせいか魔法使いがいないのだ。
そして、魔法使いは一人前になるために一度、王都に向かわなくてはいけないのだ。
その道は険しくここからでも10年はかかるだろう。
少し長くなってしまったが、問題はここからだ。
そのために、魔法使いのみの特別ルール『制約』が課せられている。
『ひとつの街には90日しかいられない。』もそのひとつだった。

「こっちは制約とか色々大変なんですか……………ら。」
何気なくユウを見ると彼の目が、あるひとつの看板に釘付けになっていることに気がついた。
「あの…ユウさん?」
「……!えっと、なんか言った?」
動揺したような目でユウはアンを見る。
「いや…。そんなに気になるなら見ます?本屋」
「別に見なくて良いし」
ユウは辺りをキョロキョロと見回した。喫茶店からの道のりを覚えようとしているように見えた。
「一人で来ようったって無駄ですよ。最初の一週間はどんな所にもお供するようにとマスターから言われてるんです。気になるなら見ましょうよ。」
ほぼ無理やり。アンはユウを引っ張った。
強引なのはさっきの仕返しだと思おう。そう心で思いながら。
30分ほど色々なるならところを見てから、ユウは戻ってきた。
さすがに本屋の中でつきまとうのもしつこいので店の外で待っていたのだ。
まるで公園で遊ぶ我が子を待つ母のような気分だった。
ユウが出てきた頃には、もう日が落ちかけていた。
そんな時間が経っていたことに驚きつつ、
「もう、帰りましょうか。」
アンは、そうユウに言った。


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