ウネリムネリ村の怪

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧
2:枕上 白痴:2017/04/05(水) 12:38


          2
 久しぶりに、ウネリムネリ村に帰ってきた。田舎は嫌いで、飛び出したわたしだけど、
 たまには田舎もいい。
 ここは、別世界のように、のどかだ。実際、ここで三日すごして、東京に帰ると、
 浦島太郎みたいに、むこうでは何もかも変わっていたりしていそうだ。
「おお、景!おかえり!」
「幸太!ただいま!」
 重そうな木材を抱えた幸太がいた。あの無精髭も綺麗にそられていて、母の手紙の通り、
 ほとんど別人のようであった。
 居間で、のんびりしていると、ついに夜が来て、幸太が仕事から帰ってきた。
「ああ、疲れた」
と言って、ただおとなしくテレビの前に座ったのが意外だった。わたしの知っている幸太は、
いつも酒を飲んでいないと、落ち着かない人だ。
 わたしの方が、その時、お酒を飲んでいたのだった。
「幸太、お酒は?」
「いらん」
「すご」
「やめたんだ」
「すご」
 その時、母が
「できたわよ」
 と、晩ご飯を運んできた。
       3
 さすがに、田舎は、眠るのが早い。
 布団の中にいても、わたしだけ、ちっとも眠たくならないのだ。
 それに、クーラーもないので、すごく暑い。
 ふと、都会の束縛から解放された反動か、風流な気が起こってきて、
 音を立てずに、こっそり布団から出て、外に出てみた。月が、星が、きれいだったから、
 そのままふらふら歩いていた。
 すると、しくしくと、誰かが泣いているのが聞こえたので、ぞっとした。しかし、なんだか
引き寄せられるような心地で、鳴き声の聞こえて来る方へ行ってみると、それは兄、幸太だった。
「あれ、幸太、さっきまで寝てたよね?」
「ちがう!おれは偽物だ!」
「何変なこと言ってるの、こわいよ」


全部 次100> キーワード
名前 メモ