その猫は、俺には、俺と同じように孤独に見えた。
きっと、今の俺が孤独で、孤独な仲間が欲しくてそんな風に見えたのかもしれない。
その時の俺は、猫でもいいから仲間がいたらと思い、猫に手を伸ばした。
いつの間にか夕方となっていた時に現れた、夕焼け色のその白い猫は、
怯えることもなく、俺の方へ歩み寄ってくれた。
…これがシロとの出会いだ。
シロが死んだのは昨年の12月。
外に出たがっていたので出してあげたのだが、なかなか帰ってこなかった。
もしかしたら何処かで生きているのかもしれないが、真冬で雪も降っていて、夜は氷点下なのに
生きているなんてないのかなと思っているだけで、実際には死んだかどうかはわからない。
でも、今はすっかり切り替えることができて、シロがいない一人暮らしにも
案外すぐに慣れた。勿論、戻ってきてほしいと思う。
起きるのがいつもよりだいぶ早かったが、二度寝をせずに朝ごはんの支度を始めた。
「(今日は余裕があるから、ちょっとだけ(朝ごはんを)豪華にしようかな)」
そんな感じで、俺は、これからの日々が変わってしまうことなど
想像なんかしないまま学校へ向かう支度を進めていた。