そのカップルは大学生で、男の方は工学部、女の方は文学部だった。
しばしば話が合わない。しかしだからこそ、驚きもある。それが恋のエネルギーに
なっている。
男は山口進、女は岸田桃香といった。
進は初めて彼女ができたので、これを一生離したくないのだった。だから勉強に励んで、バイトもして、
とにかく頑張り、頼られる男になりたいのだった。
桃香は、恋人を作るのは三人目だが、最初の二人との恋は、中途半端だった。今では、進が、本当に好きだと思う。こんな
人がいるのなら、最初の二人と、形だけの恋人になんかならなければよかったと思っている。汚されたと思っている。