色褪せる前に.   

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3:   聖織。   ◆.wmpFy.Zyhxio:2017/06/27(火) 22:04


ミーンミンミンミーン………。

校庭の周りにずらーっと植えられた樹木から、耳を劈くほど威勢の良い蝉の大合唱が聞こえてくる。
暑い。
最高気温32度予想の今日。
ただでさえ暑いのに、この蝉たちのせいで私の体感温度は猛暑日である。

たった3日前ほど、気象庁から日本列島梅雨明けが発表された。
それを待ちわびていたかのように、次の日からミンミン蝉が鳴くようになったのだ。
あれほど雨が降って、心地よい風が吹くことだってあったのに、つい3日前までのことはなんだったのだろうか。

暑い。

私の脳内には、そのふた文字がぐるぐると廻っていた。

こんなに暑く、蝉は大合唱をし、しかも席が窓側というトリプル攻撃で、私は授業に全く身が入らない。
それはきっと、みんなもそう。
だったらクーラーでもつければ良いという話なのだが、ここはど田舎。
クーラーごときに金が使えるか!
で却下されてしまうのだ。

幸いにも教室の後ろの壁に一台の小さな扇風機がついているのだが、密集したこの部屋を涼しくしてくれるほどの
威力はない。
虚しいほど弱い風が少し吹くだけのことである。

言うまでもなく、窓は全開だが、風など一筋も入ってこない。

そんな暑い教室の中、一人涼しい顔をする人がいる。

私たちのクラスの家庭科担当教師、『ヒヤムギ先生』だ。
本名は、葛西( かさい )綾( あや )という。
どんなに暑い日でも颯爽と校内を歩き、年がら年中冷たい麦茶を愛飲していることからヒヤムギ先生と呼ばれて
いる。

そうそう、私の名前は芹澤( せりざわ )ひよりという。
ここ、常盤中学校に通う14歳、中学2年生だ。

隣の奴が、私の肩をポンポンと突いた。
   


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