色褪せる前に.   

葉っぱ天国 > 小説 > スレ一覧
4:   聖織。   ◆.wmpFy.Zyhxio:2017/06/28(水) 19:39


「見ろよこれ、」

隣の席の榎下( えのもと )朝陽( あさひ )が、笑いを堪えながら家庭科の教科書を指差した。
そこには一つの挿絵があった。

「ひっ…ふっ…何これ…ふふふっ…!」

私は堪らず爆笑しそうになる。
それをぐっと堪えたが、腹筋崩壊レベルだった。

榎下もクスクス笑いだす。

「だろ?に、似すぎだよなこれ…!ふっ!」

だってそこには____、うちの学校の教頭先生みたいに厳つい人が描かれていたから。
教頭先生は昔からジム通いをしていて、筋肉の量が半端ではないのだ。
生徒からは、筋肉マン先生と密かに呼ばれている。

あんまり面白かったものだから、顔がにやけていたらしい。
ヒヤムギ先生に注意された。

「そこ、芹澤さんと榎下君。何笑ってるの、しっかり授業に集中しなさい。」

ヒヤムギ先生の圧倒的な涼しさに、私たちは一瞬で虜にされた。
先ほどまでの笑いなど吹き飛ばされ、背筋はシュッと伸びる。

それ以降、その挿絵を見てもなんとも思わなくなった。
ヒヤムギ先生は何か超能力でも持っているのだろうか。


休み時間、親友の柳瀬( やなせ )玲衣( れい )に聞かれた。

「ひよちゃん、榎下と何笑ってたの?」

ひよちゃんというのは、私のあだ名である。

「え?だって教科書の挿絵の人が筋肉マン先生そっくりだったから。ほんとに似てたよ。思わず
笑っちゃった。」

と言いつつも私は、特に笑っていなかった。ヒヤムギ先生の超能力のおかげだ。

「へぇ、それでかぁ。」

れいちゃんは納得したように頷いた。


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