色褪せる前に.   

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6:  聖織。  ◆ESlA:2017/07/01(土) 12:17


そんな平凡でいつもと変わらない今日も、部活の時間になった。

「ひーよーちゃん!部活行こ!」

れいちゃんが私を呼ぶ。

「うんっ!」

私は答えながられいちゃんに駆け寄った。
榎下も近づいてきた。

「俺も行こー。」

全く、どれだけれいちゃんのことが好きなんだろうか。

私たち____私と榎下とれいちゃん____は、陸上部。
れいちゃんは中学になって初めて同じクラスになって、仲良くなった。

榎下とは小学校6年間ずっと同じクラスで、割と仲の良い男子だ。
委員会やクラブも結構同じになっていた。

れいちゃんは、私たちとは違う小学校だ。
でも、すぐに打ち解けた。

前々から、陸上大会とかで顔を合わせたこともあった。

更衣室で体操服に着替え、運動場に出る。
相変わらず真夏の日差しが照りつけ、蝉もミンミン鳴いている。

9月の大会で、先輩の3年生は引退となる。
私はその大会で、女子200メートルをやる予定だ。
榎下は80メートルハードル、れいちゃんは女子100メートルだ。

「今日はまず100メートル一本走るぞー!」

顧問の古谷( ふるたに )絢斗( けんと )先生は、鼻ビックと違ってイケメンで若い先生だ。
元気が良くて、生徒からも人気である。

いよいよ私の番が来た。

「位置について、よーいスタート!」

絢斗先生の声で勢いよく地面を蹴った____はずだった。
私の足は運動場のロープに引っかかり、そのまま転んだ。

「っ!」

痛みを堪えながら、なんとか走りきった。

「大丈夫か、ひより。」

既に走り終えて、汗だらけの榎下が私を見つめる。
その目は真剣で、私は恥ずかしくなった。
榎下の目の中に、私が写っている。

「うん。多分大丈夫。」

そう言いながらも痛みは強かった。
擦り傷とか、目立った外傷はない。けれど、じんじんと痛みが押し寄せてくる。

「ひより、お前保健室行ってこい。」

絢斗先生が私を見た。

「はい。」

重たい足を引きずって、私は保健室へ向かった。
そのあと、どうやらよくないらしくて病院に連れていかれた。

結果は捻挫。全治1ヶ月。重度の捻挫だという。
これでは大会に出れるか曖昧だ。どうしよう。

翌日から私は、車で送迎されることになった。

「ひより、どうだった?」

開口一番、榎下が言った。

「捻挫だって。全治1ヶ月。」

「え⁉ひよちゃん大丈夫⁉」

榎下よりもれいちゃんが早く反応する。

「うん、大会出れるかわかんないけど、頑張って治す!」

れいちゃんは頷いた。

「頑張って!」

そう言って自分の席に戻っていった。

「無理すんなよ。」

榎下が寂しげに呟いた。


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