-プロローグ-
正直、耳が聞こえなくてもいいと思ってた。
周りの音なんか、聞こえなくて幸いだとも思った。
ピーッというけたたましい音や、ザワザワという音。
嫌だけど、それだけでも構わないと思ってた。
そんなわたしに。
初めて、聞きたいと思わせてくれた音は。
『おれが、美藍を守る』
『美藍の声、誰のよりも綺麗だ』
コウちゃん、きみの声だったんだよ…。
きみは、わたしを泣かせるようなことばっかり言うね。
わたしは目で読み取っているから、涙でぼやけていたらきみが言ったことが分からないのに。
あぁ、わたしは今こんなにも。
きみの声を聞いてみたい__。