声が聴こえた。
ノイズがかかっているけれど。
大切な人だった、懐かしい。
そんな曖昧な意識の暗闇。
なぜだか思い出さなければいけないような気がする。
誰の声だ、呼んでいるのは誰だ。
待って、行かないで、逃げないで。
ちゃんと思い出すから。
瞳から一筋の光。
床へと落ちてシミを作る。
ひとつ、またひとつ、だんだん周りが変わって行く。
手を伸ばすけれど立ち上がれないんだ。
怖くて力が入らない。
「きみはだぁれ、」
呟いてみる。
『___________。』
待って、聴こえないよ、ねぇってば。
行かないで、置いて行かないで!
少しの光に希望を乗せて手を伸ばす。
ありったけの力で、足がたとえ動かなくても。
自分が進んでいると錯覚してしまうように。
あと少し。
ほら、もう届く。
掴んだその時目を開けた。
『×××、×××!』
あぁ、君か、君が呼んでくれていたんだね。
『×××、おかえり、』
「ただいま。」
そっと微笑んだ。
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死にかけの子の話。
名前も性別も決まってないような、
定番だね。