「それって、いつか、目覚めるん、ですか?」
「それは分かりません。何年も眠り続ける方や、そのまま起きることなく息を引き取る方、昏睡状態に陥ってから4〜5年で目覚める方もいます。昏睡状態にも段階があり、一番軽いものから、ややぼんやりとした命識困難、うとうとしている状態、浅い眠りの状態でぼんやりとしている昏豪、呼びかけると目をあけるけど、また眠ってしまう傾眠、つねると目を開けるけど、刺激が加わらないと眠り込んでしまう嗜眠(しみん)、または昏迷、昏眠とも言います。そして一番重度な昏睡です。つねっても無反応のように、刺激を与えても何も反応してくれません。」
看護師さんが説明してくれているが、ほとんど聞いてなかった。
もしこのまま何年も眠り続けるならば?
そのまま起きることなく亡くなっちゃうの?
「治す方法は?」
ゆっくりと目を閉じ首を横に振られるだけだった。
パタパタパタ
「酒井さーん。診察ですよ。って」
「ごめんなさい。ご迷惑かけました。今から行きます。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
特に異常なし、か。
“何か、思い出したくないことが本能的に働いているのかもしれませんね。”
思い出したくないことが分からない。
「玲那!倒れたって何!?体?!大丈夫なの?!」
「お母さん。そんないっぺんに聞かないでよ。答えらんないじゃん。特に異常なかったから大丈夫だよ。」
力なくへらっと笑いながら答えれば、今度は母のほうがへなへなと床に座り込んだ。
「玲那が倒れたって華蓮ちゃんから連絡きたとき、お母さんちょうど仕事で。不在着信とメールが何件も来てたのに…。遅くなってごめんね。」
「大丈夫。そんな早く死にはしないから。一応もう退院できるし。」