村での暮らしが始まると同時に、白淵は農作業の担い手になった。それまでも両親の手伝いという形で携わってはいたものの、この時から借りた土地を父と二人で本格的に耕すようになったのだ。だが育てるのは野菜ではなく米である。この村は地方の役所から、村人全員が米作りをするようにと定められていたからだった。
移住者である白淵たち親子にとって、まず苗を得るところから容易にはいかなかった。村に入ったその日の内に、父子で村中の家に頼んで回ったのだ。しかしほとんどの家から追い返されてしまった。皆口を揃えて、うちには他人に分けてやれるほどの余裕がないと言うのである。日が暮れるまで家々を訪ね、やっといくつかの苗をもらうことができた。
父には畑仕事の経験しかなかった。しばらくの間は、村人達にやり方を尋ねながらひたすら親子で農耕に励んだ。穂が実ると鳥の害に気を付けるように忠告されたが、暁光が吠え立ててそれらを追い払った。立派な犬だと皆が感心して言ったので、白淵は自分のことのように誇らしかった。
そんな甲斐があったのか、その年の白淵父子の家は大収穫であった。村人らも初めてにしてはかなり良いと驚いた程である。あまりの嬉しさに、白淵は暁光と共に飛び跳ねるようにして喜んだ。
山中で畑を耕すより、村での米作りは安定した収穫があって良いと父も笑っていた。二人掛かりで米を数袋に詰め込み、家の中に並べる。もう山での生活のように飢えなくて済むと思ったものだった。
重大な間違いを発見
>>10で、
×「それ程大量の米を納めてしまったら、私共は生活ができません。この村では、本当に毎回七割もの米を出さなくてはならないのでしょうか」
◯「それ程大量の米を納めてしまったら、私共は生活ができません。この村では、本当に毎回六割もの米を出さなくてはならないのでしょうか」
×「これが国からのお達しだ。どうだ、ここにちゃんと七割と書いてあるだろう。ほら、大臣殿の印まである」
◯「これが国からのお達しだ。どうだ、ここにちゃんと六割と書いてあるだろう。ほら、大臣殿の印まである」