〜1〜
「渓一、明日妹が来るからね。」
「ん、分かってるから。」
俺は神崎渓一。青葉私立の中等部の一年生。母さんは心優しい人だから知らない人に手を差し伸べたりする。___養子まではいかなかったけど…
ー翌朝ー
今日は土曜日で家に養子がくることになっている日だった。俺の家族は三人家族だ。父さんと母さん、そして俺。その中に養子が入るのだから四人家族になる。
「ただいま。渓一、リビングに来なさい。」
「今行く。」
そう言い、俺は母さん達がいるリビングに向かった。
「いい、渓一。あの子には元の家族のことを話さないで、それと貴方と同い年だから仲良くしてね。」
父さんが連れて来たのは______
「朔羅…。」
俺が想いを馳せていた朔羅だった。小3からの付き合いでずっと一緒にいた朔羅だった。
「渓………。」
小さな声でそう言った。
「何で?」
俺が父さんの方をみると…
「渓一、こっちに来い。」
父さんに手招きをされ、行くと小さな声で説明してくれた。
交通事故で頭を強く撃って記憶が失くなり、その前からお母さんが酒をのんで暴力を受けたり、お父さんは彼女を馬鹿にしたりとストレスを溜め込んでいたらしい。
「宏子が言ったことを守れよ。」
「わかった。」
俺が朔羅の方に体を向ける途中で父さんが何かを言った。
『朔羅はお前以外を忘れていたらしいぜ。』
「なんか言った?」
「いいや、お前も挨拶して来い。」
そう父さんに言われ、朔羅と向き合った。
「貴方が渓一ですか?」
「ああ、俺が渓一だ。よろしく、朔羅。」
すると、静かに朔羅が涙を流した。おどおどしていると母さんが部屋に連れて行った。
これが朔羅が俺の家族になったはじめの出来事だった。