〜2〜
「泣き疲れて寝ちゃったわ。安心したのかもね。」
安心か…
「記憶は戻らないのか?」
「戻らない可能性が高いわね。まあ、思い出させない方が彼女にとって幸せかもね。」
母さんはそう言った。正直、思い出して欲しい。俺の思い出だけでもいいからなんて都合がよすぎるか…
母さん達と話し合ったあと俺は部屋に戻った。朔羅の部屋は隣だけど____
「これから一緒なんて…心臓持たない…。」
一人部屋でそう呟いた。
ー月曜日ー
母さん達は色々と朔羅の手続きをして俺の学校に通えるようになった。編入テストがあるけど…
「あのさ、ちょっと離れてくれない?朔羅。」
「怖いから嫌です。」
可愛いけどここ学校だからしかも理事長の前だから…
コホンッと咳払いをしてから話を始めた。
「えっと、神崎朔羅さん。今からテストを受けてもらいます。テストが良ければ渓一さんと同じクラスになれますよ。」
「はい、分かりました。」
「じゃあ、隣の部屋でテストをして下さい。」
そう理事長がいい、朔羅が隣の部屋に入っていった。
「で、神崎君。彼女の事情は口外しないようにと陽一に言われているからそこのところは守るように。」
「はい。」
青葉私立の理事長は俺の父さんと親友同士で仲がいいし俺も息子のように扱ってくれる。
「理事長さん、終わりました。」
「え?まだ30分前半ですよ。もういいんですか?」
「はい。」
理事長兼青葉さんは朔羅の解答を採点する為机に座った。
…数十分後…
「朔羅さん……」
真剣の顔をして朔羅と俺に向き合った。
「おめでとうございます。渓一さんと同じクラスです。」
朔羅は嬉しそうに笑った。このとき見せた笑顔は今まで見た中で一番綺麗だった。