僕らは青春を知らない。

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2:ボク。:2018/03/25(日) 11:29

「先生、よろしくお願いします!!」
「え、えーっと……でもね、この部活、どこに需要があるのか…」



___市立蓬艾高校の入学式から約一週間。
俺こと、飯桐傘菅は、職員室で血眼になりながら懇願していた。
目の前の椅子に腰をかけるのは、我が担任である双葉まもる先生。
口元のほくろが色っぽい、艶めかしい黒髪をかきあげるどこか妖艶な女性だ。
なにを懇願しているのかというと、「リア充撲滅部隊」を設立させてくれという事である。自分でも分かっていた。こんなふざけた部が、申請される訳がないと。だが、ほんの一欠片の希望と期待(あと恨み)を双眸に宿していた。



「そこをなんとか!!お願いします、おねが___」
「そろそろチャイム鳴っちゃうから、教室に戻りなさい。その話は、また後で考えてあげる!」
「…………はい。」



先生の笑顔に気圧され、虚しく返事した。憤りを感じながら、おぼつかない足取りで職員室を出る。
いや、考えてみれば普通に無理だよな…。需要ねーよ、つくって何すんだよ、この部活…。俺みたいなちっぽけな奴が立ち向かったって、リア充という名の精神破壊兵器に勝てる訳でもないのに。そう、これは嫉妬と羨望にまみれた薄汚い試みだ。ちくせう。
胸中穏やかではないまま、階段を下ろうとすると、何者かにぶつかる。



「って……」
尻餅をついて、反射的に相手を見上げる。あれ、二人__?

「さっきの話は聞いていた!よく言った、よく言ったぞ飯桐!!我が同盟よ!!」
「その計画、手伝おうか!」
「ぅえ__?」



そこには、頭トゲトゲのいかつい顔したデカイ奴と、金髪碧眼の残念そうなイケメンがいた。思わず呆気にとられて、間抜けな声を漏らした。どうやら、先程の職員室での会話を盗み聞きしていた様だ。
つーか怖ぇよ。階段下ろうとしたら誰かにぶつかって、その誰かがいきなり心の友よ的なことを言い出したら誰だってビビる。



「いや、まず誰…」
「よくぞ聞いてくれた!僕の名前は、鈴茅皐月!僕ってば、こんなにイケメンなのに全くモテない!分からんよね☆」
「名前かわいいなおい。というかモテないのは多分お前が星飛ばしまくってる残念イケメンだからだろうな。」
「俺の名前は錦木鳩麦!女子にモテないのは、このイカつい顔のせいだと思ってる。」
「お前は麦茶なの?モテない理由はその顔以前に、えげつないほどトガってるその頭だと思うけどな。」



こうして、モテない男三人が三つ巴になった。最悪のメンツじゃねーかこれ。
だが、三人集まったらなんたらの知恵みたいな言葉があった気がする。そう、もうやることは歴然として然り。



「「「リア充撲滅しようぜ…!」」」



俺らは、とてつもなく下衆い笑みを浮かべていた。


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