[みんなのアイドル!萌田萌なんだにゃん!]
モニターには、もふもふして萌え萌えした?ネコミミに、愛らしいリボン、男たちが食いつきたくなるよう(俺も食いつきたくなるような)な太ももの露出度が高いガーターベルトを身につけた萌えの塊と形容したくなるような可愛い女の子が映っている。
そして、スピーカーからは大衆を萌えさせること(萌えるかどうかは別として)を目的とした、少し声のトーンが高くて、妙に若々しくて、労りたくなるような可愛い感じの声音が聞こえてくる。
俺は今、青春を謳歌している気がした。つまりは、幸せであるということだ。俺はとても幸せだ。いや、幸せであった。ちなみに、この幸せを邪魔するものは、どんなに怪力を持つ者であっても、どんなに知的な者であっても、どんなに権力を保持している者であっても、全て抗議して、幸福を再び確保してみせる。これがたとえ、鬱陶しく、俺の心に、イライラという感情を抱かせる妹であってもだ。
現在、俺は妹から、俺の行動が公共の福祉に反しているわけでもないのにもかかわらず、俺個人の幸福追求を阻害してきている。つまりは、愚劣な妹は愚劣な騒音を愚劣に放ちながら、俺に対する愚劣な要求をしているのだ。
「お兄ちゃん!今月の1000円っ!1000円っ!」
「…。」
俺は抗議すべきか迷った。だが、いい加減めんどくさい妹に、腹が立ってきたので妹と抗議せずに撃退しようと試みた。そこで、マウスを動かし、キーボードで、文字を打ち込み、とあるサイトへ向かうために検索をかけた、「恐怖の馬60」と。
恐怖の馬60《実際にはないと思います》というサイトは、中学生二年生の女の子からすれば、このサイトを視聴すればちびるレベルに怖い内容を含んだサイトである。というのも、心霊とか、宇宙人とかいうのではなく、狂気を題材にした、精神的にくる映像が意味もなく流されるだけのサイトである。想像して分かりやすいのはよく深層ウェブに転がっている怖い映像とかそういう感じの映像である。
俺は、部屋の照明をリモコンで消して、サイトにアクセスし、映像が流れるのを待機している。無論、妹は、ちょっとなんで無視するの!とか、ねぇ!ぶん殴るよ!とかいろいろ吶喊しているが、俺は、自らのイライラの感情を、これから起こる悲劇に対して期待と待望により抑制できていた。
数分が経過し、ようやく映像が流れ始めた。不協和音、人の叫び声、笑い声、人間が動物か分からない形容をした生き物が動いているだけの映像、目の赤い人形が自分を食べるだけの映像…等、正直、俺も怖かった。妹は、犬のように丸まってベットの上に敷かれた毛布に潜り込んでいた。
撃退成功ということで、俺は萌田萌のサイトへ移ろうとマウスを動かした。