そういや昨日、こんなことあったっけ…
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「はあー…」
私、暁 紗凪は、公園のベンチで大きな溜息をついた。
「ミャーン」
黒猫が私の隣で寝そべり、日向ぼっこをしている。
この子はメルだ。野良猫で、何故か私に懐いている。メルという名前は私がつけた。「…いいなあ、お前は。悩み事なさそうで。」
のんびりと寝ているメルを見て、思わずそう呟いた。
ーー全く、俺にだって悩み事くらいあるぞ?
そんな声が聞こえてきた。
「え?な、何⁉」
慌てて辺りを見渡しても、ほとんど人はいない。居るとすれば、奥の道で犬の散歩をしているおじいさんくらいだ。
「ああ、幻聴か。疲れてるのかな…?」
「おい!誰が幻聴だ!」
またそんな声が横から聞こえてきた。
「はいはーい、静かにしましょうねゲンチョウサーン…って、え⁉横⁉」
漫画だったら、バッ、とかいう効果音が出そうなくらいの勢いでメルの方を向いた。
「ああ、やっと気づいてくれた!」
そこには、日向ぼっこしていた筈のメルが、きちっと座り、そんな言葉を発していた。
「...ええ⁉」
私は思わず、裏返った声でそんなことを叫んでいた。