宮廷靴磨き 〜シューシャンボーイ〜

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3:にしき:2018/05/03(木) 15:33

 いつも仕事をするとき、親父は言っていた。

 靴はどんな持ち物よりもヒトを表す、と──

 何年も靴と触れ合っていれば、靴一足から様々な情報を読み取ることができる。
 その靴の形状や色、値段、手入れの度合い、革の皺や底の擦り減り具合。
 そこから裕福さや貧困さはもちろん、几帳面さやプライドの高さを垣間見ることもある。
 そして俺は靴を磨くとき、その人の持つ人格を俯瞰するのだ。

 重厚な革靴、鋭いハイヒール、クタクタのブーツ。
 人の性格が十人十色というように、靴も多種多様だ。
 同じ靴を持っていても、時が経てば靴は持ち主の仕様に染まっていき、違いを生み出す。
 靴はただの道具でもなく従順なしもべでもなく、もう一人の自分だ。
 少なくとも俺は、そう信じている。
 
 
 持ち主の脚を支え、大地に触れる靴を癒して労う。
 俺は、この仕事──靴磨きが好きだ。


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