「能面」。
それが私につけられたあだ名だった。アルビニズム__先天性白皮症を患った人間は、皮膚が乳白色であるという。その例に洩れず、私も真っ白な肌を持って生まれた。加えて、白金色の髪と淡紅の瞳孔。そしていつも無表情な私にはその表現が最適だったんだろう。両親が亡くなり、まだ幼い私を引き取った親戚の人たちにも「まったく能面みたいな子だ」とよく言われたのを覚えている。
能面、能面と呼ばれ続け、早16年。私は今、数名の先輩の前で演技を始める。
「………っああああ、もう!!」
あとがき。
典型的な能面系女子が演劇にのめり込むお話です。SSにも満たない散文ですが。多分続く
(>>2の続き)
「………っああああ、もう!!何がアルビノだ、何が能面だっ!!そんなに私は変なのかよっ!!」
いきなり大声を出した私に、ビクッと何人かが肩を揺らした。驚きを滲ませる彼らに、カァァと顔が熱くなるのが分かる。…でも。
「わ…私だって好きな人もいるしウザいなあって思う先生もいるっ!!数学も苦手っ!!見た目こそ違えど、あとはみんなとおんなじなんだよぉ!」
じわ。うっすらと視界がぼやける。目の奥が熱くなる。
「私は、先輩方の演技が大好きです!舞台の上で和気藹々と雑談するシーンも、殴り合いで喧嘩するシーンもっ!!っ私はそんなこと絶対出来ないから、先輩に憧れてます!先輩達への愛と憧れなら誰にも負けません!!」
涙でうまく見えない視界の中、なぜかその人だけがくっきりと見えた。私の、一番の憧れの人。その人をしっかり見据えて。
「あなた達と演技をしたくて、その為にこの高校に入学しました!厳しい稽古だって、舞台に立てなくてもくじけず頑張ります!!
〜〜っ……から、だから、ぜひ入部させて下さいっ!!以上ですっ、ありがとうございましたっ!!」