「じゃあね、はるなちゃん!」
「うん、バイバイ!」
私は家の玄関の前で、友達に手を振って別れた。
……どうにかやりきった。
今日はオーディションが終わって三日後。まだ結果の連絡はきていない。
オーディションの結果が気になりすぎて全く授業が頭にはいらなかったけど、友達にはいつもの私でいることは出来た。
……今日こそは、合格発表きてるかな。
私はそんな期待を抱いて、家の中へと入った。
「ただいま!」
私はリビングに入って掃除をしていたお母さんにそう言う。
お母さんは「おかえりなさい」と言って振り向いた。
けれど、いつもと全然雰囲気がちがう。
「……お母さん? どうしたの?」
私は気になってそう尋ねた。
「来たのよ」
すると、お母さんはニヤニヤしながら言う。
……来た? 何が?
「ちょっと待ってなさい」
そう尋ねる前に、お母さんは掃除をしている手を止めて、玄関の方へと歩き出す。
少し時間が経って、お母さんが戻ってきた。
「これ」
お母さんは私に封筒みたいなのを差し出す。
「……もしかして」
「そう、そのもしかしてよ。お母さん、春菜が帰ってくるまで開けるの我慢していたのよ」
ああ、それでお母さんいつもとちがったんだ……
私はそう思いつつ、封筒を開け……ようとした。
「ああ! やっぱり無理っ!」
開けようとした。開けようとしたんだけど……
緊張して手が震えて開けられなかった。
「あら? お母さんが開けてもいいの?」
「だ、だめっ!」
私は封筒に伸ばされたお母さんの手を払う。
お母さんは「酷いなー」とか言ってるけど、気にしない。
「…………」
私は手が震えるのをどうにか耐えながら封筒を開ける。
封筒の中には、畳んである紙がはいっていた。
これを開けたら、合格かどうかがわかるんだ……!
「うぅ……」
そう考えるとさらに緊張して、へんな声が出る。
私は覚悟を決めて、紙を開いた。
そして、恐る恐る結果が書いてある部分をみる。
「……っやったあ!!」
『美咲 春菜
あなたは○月○日に行われたアイドル選考オーディションに合格しました』
紙には、そう書いてあった。
ということは、合格……!
「春菜、おめでとう!」
お母さんも私と同じで紙にくいついている。
私は大喜びのお母さんに、「ありがとう!」と笑顔で言った。
「あ、続きがあるみたいよ」
すると、お母さんが突然紙の下らへんを指さしながらそう言う。
私はお母さんの指さしたところを見た。
『貴方には、スカウトを受けたアイドルとユニットを組んでもらいます。○月○日 日曜日 事務所にて顔合わせを行います』
……えっ!?