「面白い女だ。俺の妾になる気はあるか?」
美しい、しかしどこか冷たい声が
広い部屋に響く。
私の両親が事故にあった時、
彼は一緒に病院まで走ってくれた。
友達ができなくて悩んでいた私を、
皆の輪の中に引き入れてくれた。
苦手な数学を教えてくれた。
上手じゃないお弁当も完食して
『美味しかった!」って、笑顔で言ってくれた。
あの時も、この時も、いつもいつも
私を支えて守って勇気づけて......
何も出来ない、頼ってるだけだった私を
あなたは選んでくれた。
.......だから。
目の前で不敵に微笑む『王子』に向かって
私は笑顔で言った。
「ごめんなさい。
私には、最愛の人がいるんです。」
芹沢千尋、高校一年生。
乙女ゲームのヒロインですが、元いた世界の
彼氏だけを愛します。