違う。私は本当に嫌われたい訳じゃない。でも、そう言わないと、何も解決しないから。
「どうして、嫌われたいの?」
黒瀬君は、そんなことを聞いてくる。私だって、できることなら嫌われたくないし仲良くしていたい。だけど、それは、できないから。
私には悠馬がいるし、黒瀬君が私と付き合うと、奏を、悠馬を悲しませちゃうから。だから、悠馬君には私に絶望してもらって、一切の関係を切って、新しい恋に向かって言って欲しいの。具体的には、奏の方へ。
「できれば言いたくなかったんだけど、仕方ない、か……」
突然黒瀬君がそんなことを言った、一体何を秘密にしていたのだろう。
「藤原さん。陰で悪口言われてるの、知ってる?」
「え……」
黒瀬君から発せられた言葉は、私にとって少し予想外だった。あの事を広められる覚悟もしていた。でも、今まで何もなかったから芽依ちゃんの事はブラフかと思った。
でも、でも……陰で広めてた。それは私に、私の心に深く大きく突き刺さった。
陰で言われるくらいなら正面から言われる方が良かった。直接言われた方が気が楽だった……!
「僕は、そんな藤原さんを、見ていられないんだ……っ」
私の耳がその声を聞いた直後、私は温かさに包まれた。……黒瀬君が、抱きしめてきたのだ。
その日は、それで終わった。───そう、締めくくりたかった。
なんと黒瀬君は私を抱きしめたまま校舎の方へ進み、私を壁に押し付けた。さらにその恐怖から縮こまらせている私の足の間に黒瀬君は、彼の足を入れてきた。
私は何をされるのかわからず恐怖に目を潤ませた。
黒瀬君は私の顔の前に自分の顔を持ってくると、段々と近づけてきた。そこまでされれば、分からない訳がない。黒黒瀬君は、私を───
「夢乃っ!」
私がその声を聞いたのは、きつく目を瞑り、感覚的に後数センチほどで接触してしまう程のところまで黒瀬君の顔が近づいた時だった。
───助けて、悠馬ッ──────
誤字です。黒黒瀬君って誰ですかね……?