「奏、もうちょっとで着くからね」
「…………」
車に揺られ窓の外を見ていた少女・桜木奏はとっても憂鬱だった。
理由は今日から白峰学園に転校することになり、今その寮に向かっている最中だからだ。
「また無視?まったくもう…朝日と違ってどうしてあなたはこうなのかしら」
奏の母が呆れたように溜息をつく。朝日とは奏の4つ上の兄のことだ。
そんなことを言っていると、学園の寮についた。
レンガ造りのそこそこキレイな寮だ。
車を止め、トランクに置いてある荷物を取る。
「次会えるのはお盆ね。ま、元気でやんなさい」
奏の母はそれだけ言い残してさっさと帰っていった。
(お母さんは私のこと、本当にどうでもいいんだね)
奏は生気のない目で母の車をずっと見ていた。