不安という気持ちもあったが、[どういう人達なんだろう]という気持ちも湧いてきた。
「どんな人達なのかしら…こっそり見に行こっと」
奏は起き上がり部屋を出た。
1階の柱に隠れ、寮生が帰ってくるのを待った。
しばらくすると、2人の女子が入ってきた。
「もーまじだるーい。どーせ授業しないんだから教室行く意味なくね!?ずっと寮にいたいよー」
「ほんとそれ。男子はうるさいし…」
「てゆーかアイツさぁ……」
どうやら愚痴を言い合っているようだ。
愚痴のレベルが小学生のようで、吹き出しそうになる。
「栞さん、雅さん、なんですかその言葉遣いは」
「ゆ、百合子様…」
もう1人出てきた。2人の反応からして恐らくこの2人のボス的存在だろう。
「まったく…わたくし達は良家の子女なのですよ?回りに影響されてはいけません。そのように下品な言葉遣いはおやめなさい」
「申し訳ありません百合子様…」
「ですが辛くて辛くて…もう家に帰りたい…」
栞と呼ばれる女子は目に涙をいっぱ溜めて百合子を見た。
それを見た百合子は目を瞑り、
「栞さん、あと2年です。2年耐えれば解放されるのです。わたくし達は他の者共とは違います。気を強くお持ちなさい」
「……………はい!お心遣い感謝します、百合子様!!」
栞が笑顔で返事をした。
それを聞いた百合子と呼ばれる人物は少し微笑み、寮の奥へ去っていった。
「アイツまじうぜー。こっちがちょっと下手に出たら調子乗りやがって」
「『下品な言葉遣いは、おやめなさぁ〜い』」
雅と呼ばれる少女が百合子の物真似をする。明らかにバカにしている。
「ぷくく、似てる〜。なんなのあいつのしゃべり方」
「エセお嬢様って感じ。ていうか盗み聞きとかきもくなーい?」
2人は百合子の悪口を言いながら寮の奥へ去っていった。
(うわぁ…今の見ると普通に頭悪い女子高生って感じ…)
奏は白峰学園の生徒はこんなのかと、少しびっくりした。
(もっとヤバそうな人達だと思ったのに…)
続々と帰ってくる寮生は、普通の子達だった。
(ま、問題児って言っても、所詮高校生だもんね…)
奏は寮生を見るのに飽きたので、見つからないよう、ひっそりと部屋へ戻った。