暖かい春風が吹き、周りは村人の笑い声に包まれている。怒声は一切聞こえてこないし、事件らしい事件も全く起きない。それがあたしの住むアラダ村。一言で表すなら、“超平和”だ。……こんなの、こんなのさ……
「つまんない!」
天井に向かって、一人そう叫ぶ。
変化のない毎日。平和な方がいいって大人は言うけど、それじゃ面白みの欠片も無い。あたしはつまんないのは嫌い。ここまでつまんないと、人生何もしないで過ごしている気分。現に今も、何も無さすぎてベッドの上でぼーっとしてるだけだし。……いっそのことさ、
「抜け出してみたり、なんて」
つまんないものに囚われる人生、無駄すぎて笑えてくる。……いいよね、あたしの人生なんだもん。人様に迷惑かけないなら、自分の生き方くらいは好きにしてもいいよね。
抜け出してから一瞬で死んじゃうのもアリ、めんどくさい事に巻き込まれたりするのもアリ、誰かに捕まって牢屋に入れられるのもアリ。とにかく、変化が欲しい。……そう思ったら、早速行動に移さないと。
カーテンを開けて、それから窓も開けた。荷物? そんなの要らない。ノープランの方が楽しいし。さ、窓から身を乗り出して……ゴーアウト!
「―――グッドバイ、アラダ村」