謎の物体をつかんだ指先がじんじんと痛む。
きっと軽い火傷を負ってしまったに違いない。
突然の出来事にまだ動悸が治まらなかったが、少年の意識はすでに指先の痛みよりも、今しがた自分が放った物体の方に向けられていた。
無意識に身を起こす。
どの辺りに投げてしまったかな...
少年は怖々と地面を撫でて、あの物体を探し始めた。
あんなもの絶対に今まで無かった。
とは思うものの、事実それは自分の服の中に入っていたのだ。
コンクレンツァではいかなる道具の持ち込みも禁止されている。
だから穴に吸い込まれるまで身一つでいたはずなのである。
どう考えてみても、修道服の中で形作られたものとしか思えなかった。
駄目だ、これ以上なぜあの物体があったのか考えても仕方がない。
それでも思考を続けようとする自らを遮るように、少年は激しく首を横に振った。
「いや...そんなことよりも、あの声は」
不意に彼はそこで言葉を止めた。手に何かが触れたのだ。何か、角ばったものが。
恐る恐るその表面を人差し指でなぞる。
ほんのりと熱を感じた。
これだ。
間違いないという直感があった。
しかし先ほどの物体のような強烈な熱ではない。
まるで人肌に触れているような心地よい温かさである。
>>16訂正
×身を起こす
○顔を上げる