(※一応近世ですが途中で近代風になるかもしれません)
第1話:宇宙の山師
時は25世紀。人類は大規模な宇宙進出を開始し、太陽系を出て付近の星系に散らばっていた。
中には銀河系の方々に行って、そこで山を当てるものもいた。一つの星を丸ごと使うわけだから、成功すれば大富豪入りは確実だ。兆単位で儲けたものだって沢山いる。
100年前に星当てとして開催されたものが元になっている。
その反面、太陽系近辺ではなく遠くまで行くので事故率が高く、100周年を迎えた今日でも生還率は60%と低い。また、星というものは低密度で存在しているので、発見することも難しい。
一応、高性能AIが分析や案内をしてくれているので、必ず1人は発見してくるが、最も難易度の高い博打である。
ドイツ出身で今は日本に住んでいるヘルマン・シュミットはこの星当てに応募した。小さい頃から冒険が好きであり、単純でもあった彼にとって死亡率などはどうでもよかった。
彼は会社を辞めて、応募した。登山などで体を鍛えていた他、冒険のための勉強はしていたこともあって、全ての試験をクリアした。
その後、開催国の指示に従って遺書をしたため、生命保険に入った。保険金は全部遺族に入るらしい。
そして、船内での活動や万が一の際の行動などを2年間の研修で学んだ後、火星基地を出発した。
彼は方向の関係から日本人の上村昌三、イタリア人のアメデオ・フェラーリと共に搭乗している。
彼らは、超光速航法を行うため、仮死状態で船内に安置される。船自体も外から見えないようにされている(船体を黒く塗ることで宇宙に出れば知覚できない)。こうして目標の星系まで飛び立つのだ。
ところが、目標の星系に着いた時に宇宙ゴミが船体後部に命中した。AIが惑星の分析をしていたので避けきれなかったのだ。
3人は仮死状態を解かれる。被害拡大を防ぐための機能なのだが、いきなり起こされたので、3人は今の状況を全く理解できない。
上村が慌てて修理を始めたが、航行状況はどんどん悪くなっていく。アメデオは顔を真っ青に染めて、
「危険度4……緊急着陸せねば死んでしまいます!」
と叫んだ。すると後方から上村が、
「降りよう、降りればいつか助かるから」
と観念したように言った。シュミットとしては、死ぬよりも生きる方がマシだ。流石に死ぬしかない冒険はしたくない。
だから、彼のこれに賛同し、3人は宇宙船を地上へと着陸させた。