チェリーパイにガトーショコラ、シフォンケーキにタルト、アップルパイ
甘い物、美味しい物に満たされたいだけなの
それがいけない事なんて誰も教えてくれなかったじゃない?
朝のホームルームの空き時間まばらに集まる生徒達をちらりと一瞥してから机の上にお菓子を広げる。キャンディーにチョコレートどっちにしようか悩んでると前の席の愛が心配そうに私を見る。
「愛〜、どうしたの?」
リンゴの味のキャンディーを口に放り込みながら尋ねる。
「いや、あんたさ、朝食は?」
まるでコーヒーを飲んだみたいに苦い顔で私のほうを見る愛。
「ご飯?食べてないよ〜、だってさご飯なんて『甘くない』じゃん?」
しかも私の家は朝はパンだ、必ずというほどコーヒーはつくし、私が嫌いな野菜も添えてある。苦い、見てるだけで苦くなる。
「…また、朝からお菓子体壊すよ、心(しん)」
そう言いながら机の上のチョコレートに手を伸ばしてきたのは私の幼なじみだ、
「別にいいでしょ?…甘いもの嫌いなくせに…そのお菓子返して、廉」
雨笠廉、愛と同じくずっと一緒に居る…高校の志望校はお互い言わなかったのにまた、同じ学校、同じクラス…いわいる腐れ縁だ
「…はい、かえ……」
その言葉言い終わる事がなく、彼の視線は教室のドアの方へ向く。そこには校則ギリギリの短さのスカートに、長い髪を明るい茶色に染めた女の子が立っていた。
「廉君〜、今日も一緒に帰ろ〜!」
「あぁ、別にいいよ」
そう言いながらにっこりとした笑顔を浮かべる廉。その表情を見て気に入らない気持ちと口の中で舐めている飴は甘いはずなのに、とてつもなく苦く感じた。ふと、廉の手を見ると先程奪われたチョコレートがある。ガリッと口の中にある飴を噛み砕き彼の手の中にあるチョコレートを奪う。
「痛っ、何すんの…」
ちょっと、強引だっただろうか?別にいい。今の私は甘いものが欲しい、満たされたい。
「おい、聞いてんのかよ?」
苛立たしげにきく彼に私も不機嫌になる。あんたのせいで苦くなったとか意味分からない事が言える筈がない。
「返して貰っただけでしょ?彼女の所行って、これ以上廉と喋りたくない