涙目のリオン(?)、重苦しい空気に、未だリオン(?)を信じかねる僕は困っていた。
…しかし、いつまでもこのままでは進歩がない。僕は、"リオン"の隣に座った。
「…リオン、なんだね。大丈夫…なのかな?…ごめん。何かしたいけど、僕じゃ大したことは出来ない。」
一応、"リオン"は信じることにした。「…ずっと、一緒に、居たって、…いうのに。」…嘘とは、思えなかった。
「…やっぱり聞きたいの。リオンの…"能力" がどういうものかも解らないけれど、"打ち破った"って、いうのは…?」
こんなことを聞いて良いのか。もう少し待ってあげたら。いや、かえって気を遣わせる…この思いの、どれが正しいのか。
…そもそも、正しい答なんて僕に見つかるのか。そんな問答を、自分の中で繰り返していた。すると、
「…世の中にはな、"ヒナノ" 。ほんの一握り、"能力"使いが居るんだよ。
だがその"能力"は、何かきっかけがないと開花しない。その開花をさせるのが、オレの役目の1つ。
そしてオマエは、"特別な能力"を使える"選ばれた人間"なんだ。だから、ずっと能力開花の機会を窺ってた。
…しかし、だよ。ずっと猫化していたせいで、"アズサ"の能力が解けにくくなってたらしいな…」
と、ここでリオンは困ったように、自身の猫耳と尻尾を撫でた。
…ううん、成る程とまではいかないが、一応理解はした。
リオンは猫じゃなかった。僕は"能力"を持っている。だからリオンが来ていた。リオンが猫だったのも能力。…ん?
「"アノ人"が帰って来ない、っていうのは…?あと、リオンの"能力"って…?」
リオンは、少しピクリと肩を反応させたが、ゆっくり言った。
「ーあぁ。…………」