なんで私が鬼嫁に!?

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4:匿名の魔王:2019/04/19(金) 12:54

「森を無碍にするでない。森を荒らした末には、森に棲む青鬼の怒りに触れる……」
「うるせぇ! 長だか村長だかか知んねぇがぁよぉ、そんなもん迷信だってぇの!」

王井村を囲うようにして聳え立つ森の奥深く、斧を振り上げる大工と老人が口論していた。
早朝の霞がかった中で互いの顔も明確には見えないが、大工の不機嫌そうな声色から苛立ちが伺える。

木が覆い茂る森の中、この一帯だけ不自然に木がない。
大工と老人がいる場所を中心とした半径30メートル内の杉は、全て切り株と化している。
というのも、近頃人口が増えつつあるため、家の材料や薪として多くの木が切られているからだ。

無精髭が特徴的な中年の大工は、筋肉質な太い腕で次から次へと手際よく太い杉の木を伐採していく。
太く伸びた杉の木は、ぎぃっと悲鳴にも似た音を立てながらあっけなく横たわった。
それを眺める村長の顔が険しい。

「そんなに大きな杉の木を、何本倒す気だ? もう、十分であろうに……」

──バサリ。
数秒言葉を交わす間にも、また一本と木が死んでいく。
大工は斧に付着したおがくずを手で払いながら怒鳴る。

「さっきからうるせぇぞ、じいさんよぉ。森にゃこんな腐るほどあんだぁ、一、二本切ったって変わりゃしねーよ」
「だが森の青鬼の呪いが……」

かすれた細い声に反して図太く食い下がる老爺に、中年の男は怒りを含んだため息を零した。

「そんな迷信あてにして……邪魔すんな! ほら帰った帰った」
「やれやれ……」

これ以上の制止は無駄だと諦めたのか、村長は古びた黒い木杖をつきながら背を向けた。
大工はもう一度斧を持ち直し、おおきく振りかぶったその刹那に──。


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