俺は、クラスメイトに嫌われている。とは言っても、いじめられているわけではないので安心してほしい。無視をされるだけ。……あれ?それがいじめ?あれ、いじめってなんだっけ。
……まあそれは置いといて!
問題は俺の容姿だ。野暮ったい前髪を鼻の下まで伸ばして、顔を見せず、いつも下を向いている俺。クラスで孤立するのは当たり前だ。そんな容姿の俺と関わりたがる奴は、今のところ一人しか居ない。一人居ただけでも良いほうか。
髪の毛は今のところ切る予定はない。面倒だし、切ったところでクラスメイトの反応が良くなるなんて保証はないよね?それに、前髪で視界が狭いっていうのは結構、気楽なんだよ。
ちなみに、唯一俺に話しかけてきた奴の名前は、河ア 奏佑と言う。奏佑は、小学生のときに転校してきた俺に、たった一人、話しかけてきた。普通は転校生にはもっと話しかけたがるはずなんだけどなぁ。転校した時点でもう上記の容姿だったので、誰も近づこうとしなかったのだ。
だけど、既に煙たがられている俺に、何も取り繕うことなく話しかけて来たのが奏佑だった。
「よっ!俺、河ア 奏佑っていうんだ。よろしくな!」
それからよく話すようになって、今では親友に昇格している。……少なくとも俺はそう思ってるよ?ただ、アイツは超イケメンだし、他の友人も多い。正直、俺の親友にはもったいないくらいだ。
……だが、奏佑がいても、クラスメイトたちの反応は変わらない。……いや、奏佑がいるからこそ、無視されるだけで済んでいるのかもしれないな。
俺も、変わりたいとは思ってるんだ。視界が狭くて落ち着くって考えも、所詮は現実から目を逸らしているだけでしょ?
……決心がつかないだけ。
え?弱虫だって?……喧しいわ!知ってる!
そんな俺、水瀬 透羽に転機が訪れたのは、中学三年の三学期のことだった______。