とりあえず、奏佑のところに女性を案内し、奏佑と女性を対面させる。
「え?えっと……透羽?この人は……?」
奏佑が遠慮がちに女性をチラッと見て、こっそりと俺に問いかけてくる。
「この人は、俺をアイドルにしたいって言ってる、えーっと……」
「自己紹介が遅れたわね。私は、TOGASHI芸能事務所に勤めている、宮坂香織といいます」
……!
TOGASHI芸能事務所だって!?すごく有名な事務所じゃないか。過去に何回か、アイドルグループがアジア進出を果たしている、超大手芸能事務所だ。最近では、そういう話は聞かないけど……。
「TOGASHI ……」
奏佑はポカンとした顔をして、口を開いてしまっている。……うん、こういう顔でも充分イケメンだ。
それに対して宮坂さんは、奏佑を真剣な表情でじっと見つめる。
「……貴方もアイドルの見た限りでは、素質を持っているわね。今日だけで、二人もアイドルの卵を見つけるとは思ってなかったわ。やっぱり貴方たちはアイドルになるべきよ!」
うんうん。やっぱり奏佑はスカウトされるよな〜。今までなんでされてなかったんだろ?
でも、俺は……。
「だから、勝手に決めつけないでください!」
「まあまあ、アイドルの仕事は、貴方たちにも良い経験になるはずよ。それに、この私が言ってるんだから、間違いないわ」
「なんでそんなに自信持って言えるんですか……」
「あら?さっき、言わなかったかしら。私はこれまでに、たくさんのアイドルをスカウトしてきたのよ。中にはアジア進出を決めたCrescentもいるの」
え、宮坂さんって、一体何歳なんだろう。Crescentをスカウトしたって……。少なくとも四十路は、いってるってことだよな。俺、今の今までずっと二十代くらいだと思ってた。
Crescentっていうのは、今から約二十年前にデビューした、三人組アイドルグループのことだ。過去にアジア進出を成し遂げたグループで、今は解散している。他にも、様々な伝説を残しているらしい。
そんなすごいグループをスカウトしていたなんて……。