第1章「死にたい理由、生きる意味」
ピピピピッ…ピピピピッ––––––––
目覚まし時計の音で浅井 美玲(あさい みれい)は目を覚ます。
重い瞼をこじ開け、気怠い体で洗面所へと向かう。
静かなアパートの一室に、足音だけが木霊する。
洗面所で顔を洗いキッチンに行くと、母からの置き手紙があった。
何度も使い回されたようなクシャクシャの紙には、丸字で
「今日も帰りが遅くなる」
とだけ書かれている。その上には
いかにも「これで飯を買え」とでも言うように千円札と500円玉が置いてあった。
私はそれを手に取り自室へ戻る。
部屋に入ると勉強机の上にある真っ白い貯金箱の中に千円札だけ入れる。
500円玉は財布の中に入れ、鞄に入れた。
ふと時計を見ると6時を回っていた。
急いで制服を着て髪を梳かす。肩にかからない程度のボブが私のお気に入りだ。
最後に鞄の中をもう一度確認してから靴を履き家を出る。
ガチャリと鍵を閉めると鞄に鍵を入れ部屋から離れていった。
鉄製の錆びた階段を駆け下り、駅への道を駆けて行く。
6時24分発の電車に乗り。そのまま1時間ほど電車に揺られた所に、
私の通う学校はあった。駅から20分ほど歩き、学校に着く。
「1-A」と書かれた下駄箱の1番に靴を入れ、上履きを履く。
既に部活できている人が数名いる事を確認した後私は階段を上がった。
四階まで上がるとすぐ目の前に教室がある。
ガラリと教室の扉を開けると、ポツンと鞄の置かれた机がいくつかあるだけで
それ以外は何もない。
吹奏楽部のチューニングの音が静寂を掻き消し、賑やかに感じさせてくれる。
外からは運動部の声が聞こえてくる。
時刻は8時を回り、そろそろ多くの生徒が登校する時間だった。
ジャージに着替え、1時間目の用意をするとドアが
ガラガラと開く
「お、みれちゃんじゃん!おっはー」
そう明るい声と輝かしい笑顔を見せる彼女は、クラスのムードメーカー
加藤 鈴(かとう すず)だった。私はたまに話す程度という、
タメ語か敬語かを悩む曖昧な距離感だった。時間が過ぎる前に、と笑顔で
「おはよう」
と返した。すると彼女はニカッと無邪気な笑顔を浮かべ
自分の席に着く。その時は既に廊下がガヤガヤと騒がしくなっていた。
次々とクラスメイトたちが揃って行き、8時半になっても空席だったのは