プロローグ
⎯⎯⎯ みんなの相談とかさ、乗ってみたいよね!
放課後、私の友達、赤屋欟が言った言葉を思い出した。
欟は人が良すぎるんだよ。真面目だし、成績優秀の優等生だし。
だからって、私まで巻き込まないで欲しい。私は人のことなんて、考えてる暇ないから。
そう思ったから、もう思い出さないようにしていた。
結局返事もしていないし、欟に変に思われただけかもしれないけど。
その時、お母さんが帰ってきた。予定より1時間遅れていた。
「ただいま〜!」
「お帰り、遅い」
「由ちゃんごめんねー」
私の両親は、ほのぼの夫婦だ。でも、私は逆だからいつも二人に振り回されている。
ルールとかも緩くて、私は大体時間を過ぎて帰ってくる。
それでも怒らないんだよね。むしろ怖いくらい。
「あのね、由ちゃん。転校することになったんだよ」
「え……」
転校なんて初めてだ。新しい学校でやっていく自信はいつでもあったが、欟と離れるのはやっぱり寂しい。
でも、仕事の関係だろう。先月、お父さんが転勤すると言っていたのを思い出した。
私とお母さんを連れていくとは言わずに。
仕方ないし、いいかな。
「大丈夫、だよね」
「うん!全然!」
「良かった〜!青森だから、お母さん楽しみだな〜」
青森なんだ。ここは東京。だから、この賑やかさともお別れかな。
でも、私なら行ける。そう心に誓った。