──そんな夢を見た。
起きたら汗だくで、鼓動が速くて、そして、
泣いていた。
さっきの光景が、まるで体感したかのようにリプレイされる。
涙がとめどなく溢れてくる。
さっきのは、夢。
ただの夢だ。
だって、雨が降る夜に満月なんか出てるわけないじゃない。
だから大丈夫。きっと大丈夫。
そう何度も言い聞かせても、なかなか動悸はおさまらない。
死ぬなんて、嘘だって。
そんな、夢で見たことを真に受ける私がおかしいのだ。
私は昔からそうだ。
なんでも真に受けてしまう。
『あっ、UFOだよ!』
そんな明らかな冗談にも、とっさに反応してしまうのだ。
だから、昔は『冗談の通じない面白くない子』というようなレッテルを貼り付けられてしまい、周りからは煙たがられていた。
でも、幼馴染みである光の、私に対しての明るい無垢な笑顔によって、その隔たりは徐々に消えていった。
そう…さっき、光が夢の中に出てきたのだ。
『ヒナタはもうすぐ──死ぬんだ』
壊れたビデオのように、さっきの光の声と、表情が頭の中で繰り返し再生される。
私に限って、“死ぬ”なんて…
ありえない。
拳を握りしめたが、力が入らない。
起きたばっかりだから、きっと寝ぼけているだけ。
少し震える足で立ち上がり、空色のカーテンを開けた。