「月のバイオリン」

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2:Luna:2019/10/25(金) 17:10

※この小説の続きです。上の小説と共にこの続きも一緒に読んで下さい。

レモンの爽やかさが、丁寧にローストされた鶏肉とよく合って美味しかった。
..僕の名前は、ヒルクライム・アンサンブルズ。学校の先生や生徒のみんなからはよく「ヒルク」と呼ばれる。
僕の将来の夢は、観客のみんなが聞き惚れるようなバイオリニストになる事。何故かと言うと、僕の
ひいお爺さんがかつて、有名なバイオリニストだったからだ。今は寿命で亡くなっていないが、お母さん達と
初めてひいお爺さんのコンサートで聴いた時は、バイオリンの音色が僕の心に響いて、すごく感動した。
その事がきっかけで、僕はバイオリニストを目指すようになった。僕はピアノは上手く弾ける方だが
バイオリンは上手く弾けない。その事に悩んでいた時、ひいお爺さんは僕にこう言ってくれた。
「今は上手く弾けなくとも、何度も練習を重ねれば、お前さんもそのうち上手くなる。いいか? わしの様な
プロは、決して練習を外したりなどしていない。むしろプロにとって、練習は外せない物で、プロにとって
一番必要な物と言っても過言ではない。練習している途中には、ちょっとした困難がある。でもそれを
諦めないからこそ、プロは誰にでもなれる物だ。だからお前さんも、わしみたいなバイオリニストに
なりたければ、練習を繰り返し重ねる事だ。」
ひいお爺さんのその言葉を信じて、僕はバイオリンの練習をするようになった。ひいお爺さんは
亡くなる前に、僕にバイオリンを譲ってくれた。少しホコリがかかっていたが、それはひいお爺さんが
色々な場所で観客に聴かせていた、使い古したバイオリンだった。僕は今でもそのバイオリンを大事にして
弾いている。ある時、僕がバイオリンを弾くようになってから、お爺さんが僕に、贈り物をしてくれた。
贈り物を開けてみると..そこには、濃い紫色のバイオリンがあった。バイオリンの端には、月の形をした
金の飾りが付いていた。その贈り物には、お爺さんからの手紙も入っていた。

愛しの孫 ヒルクへ

元気にしておるか? 最近お前さんがひいお爺さんに憧れて
バイオリンを弾いていると聞いたから、わしがお前さんの為に
新しいバイオリンを買ったぞ。そのバイオリン、よく見ると
端に月の形をした金の飾りがあるじゃろう?
実はそのバイオリンは特別でな..満月の綺麗な夜にその
バイオリンを弾くと、その金の月の飾りが光って
お前さんが会いたいと思っている人物に会えるらしい。
もしお前さんが会いたいと思っている人がいるなら
ひいお爺さんがくれたバイオリンを一生懸命練習して
そのバイオリンを弾きなさい。今度上手く
弾けるようになったら、わしと婆さんにも
聴かせてくれ。それじゃ..元気でな。

僕は考えた。..僕は一体誰に会いたいんだろう..今まで僕に愛を注いで育ててくれた、お父さんとお母さん..?
それとも..僕に素敵なバイオリンを譲ってこの世を去った、バイオリニストの、ひいお爺さん..?
でも僕は、まだバイオリンを完璧に弾けるという訳ではない。だから、練習をして、だんだん弾くのが
上手くなってきたら..お爺さんのくれた、このバイオリンを弾こう。..満月の綺麗な夜に。

その事を考えながらも、僕は服を着替えて、カバンを背負って、そして..ひいお爺さんがくれたバイオリンを
持って、学校に向かった。
「それじゃ..行ってきます。」
「いってらっしゃいませ、お坊ちゃま。」


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