第二話 初のバトル
村の中心辺りまで行くと、少し大きい家があった。
「ここが俺のダチの店だ。」
遠くからでは分からなかったが、近くに来ると防具・武器の店と分かった。
看板が壁に下がり、ドアの横には、剣や防具が入った箱が綺麗に並んでいた。
ルーアはドアを開けて、声を出す。
「おーい!ディズボー!サーヴィー!こいつに装備物売ってくれ〜!」
カウンターの奥から二人の男女が出てくる。
「なんだよ〜朝っぱらからうるせーなぁ〜。」
「しっかり営業しております。声を出さなくてもちゃんと来ますよ。」
透けた布を顔に当てている女性は少し迷惑そうに話す。
「すまんすまん。で、こいつに武器と防具買わしてくれや。」
「分かりました。ディズボ、7.5サイズのプラチナ防具を。」
「扱き使うなや…まぁ持ってくるけどな。」
少し待っていると、少し大きめの箱と刃が長めの剣が運ばれてきた。
「ほぉ…レインキータか。上物じゃねぇか!」
ルーアは剣をまじまじと見つめると、驚いた表情をする。
「レインキータ?」
イナトはこの世界の装備をよく理解せずに旅に出た。
だから装備物に関しては何も分かっていない。
するとディズボは言う。
「知らねェのかよ。レインキータはプラチナの次にレアな物だぞ。」
「そんなに価値があるんですか…。」
プラチナは世界で一番価値のある物。それの次に価値がある物を、あんなにさらっと出されたら、価値観が鈍りそうだ。
「全部で109000G(ゴールド)になります。」
Gは天界でも下界でも使われる通貨の単位の事だ。
「た、高い…。でもギリギリ払えるかな…?」
イナトの持ち金の三分の二が減る高さだった。
困っていると、ルーアが張り切った顔で言う。
「俺が半分払ってやる。金なさそうだしな。」
「ありがとう。」
イナトは思った。
『これ遠回しに馬鹿にされたな…。』
「毎度ありぃ」
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。」
会計を終えて、早速防具を装備する。
「おぉ〜似合ってるな。」
「そうかな…。」
装備したのは、肩当てに腰辺りまでの鎧、太ももの横部分だけ開いた丈夫な布
だ。数は少ないが、これが普通らしい。
「イナト、そういやさっき森に迷い込んだとか言ってたけどよ、なんかしてんのか?」
馬車に乗りながらルーアは聞く。目は乗れと言わんばかりに、後の方を見る。
イナトも馬車の席に座ると、馬車が動いた。
「実は旅しててね。歩いてたらいつの間にか、あそこに居たんだ。」
「ほぉ〜。旅な…。なぁ、俺もついて行って良いか?」
ルーアは目をキラキラさせて言う。
旅の経験者なのだろうか。
「良いよ。明日出ようと思うんだ。でも宿どうしよう…。」
「俺んち、泊まって行けよ。そこで準備も整えっからよ。」
すると空の方から何かが急降下してきた。深い緑色の龍のような生き物だ。
「グォルアァァァァァ!!!」
「リアドーンの群れ!?ちょ、イナト、戦うぞ!」
再び空を見ると、六匹くらいの群れがあった。
そう。あれがノヴラードの一種、リアドーン。
通常のノヴラードよりも凶暴なことで知られている。
ルーアは器用に馬車の手すりのような所に馬のロープを巻く。
「戦う!?僕戦い方分かんないよ!」
「はぁ!?ンなもん関係ねぇ!取りあえず剣に力貯めてみろ!」
言われるがまま、剣に集中し、力を貯めてみる。
すると、剣が若干白く光り出した。
「うし、貯めるのはできたな。そしたらリアドーンが近づいてきたら、思いっきり剣を振れ!」
「わ、分かった!」
ちょうどリアドーン三匹も目の前に来た。
そこでイナトは思いっきり、剣を振ってみる。
すると剣から赤い波のような物が放たれた。
「ギャオォォオン…。」
斬った瞬間、同時に三体のリアドーンは倒れた。
「す、スゲェ…一気に半分も倒しやがった…」
「ルーア!左!!」
「うぉ!?」
ルーアの左側から、一匹攻撃をしてくる。
するとルーアは右目を赤紫に光らせ、手に光で時計のような物を作り上げる。
「ルノヴィリア…ラオノース……!!!」
謎の呪文を唱えた途端、ルーア以外の時間が止まった。
時間が止まる前に見た彼の顔は、イナトの印象の彼とはまるで、別人だった。
To be continued (次回に続く〜)