〜続き〜
カチッ カチッ カチッ カチッ…。
時計の針の音が、止まった世界に響き渡る。
ルーアは一番高い所にいるリアドーン二匹を目がけ、剣を構え、大きくジャンプした。
「ハアァァァアッ!!!」
目にも留まらぬ動きで、一気に二頭を斬り付ける。
「っと…。」
降りてくると同時に、最後の一頭を剣で刺す。
どれも時間が止まっているからか、血が出ているにも関わらず、苦しそうな顔をしない。
スタッと見事に着地を決め、剣を背中についてあるホルダーに戻す。
すると、明らかにルーアの声では無い、少し低めの男性の声が聞こえる。
「ロイデルーノヴァ、ダルグーム…ナディグアーバ!」
「へへ…ズマネーヴ、リッセンヴァ。」
「ロウヴェニア…。」
「ナニデゥーム!」
謎の会話のようなものが終わると、再び動けるようになった。
「い、今のなんだったの!?」
「あれか?俺の能力の一つだぜ。時空停止な。」
「凄いね…。」
「まぁな!」
この世界の人間は、皆、能力を持っている。天界人も同じく、能力を持つ。
能力には属性がある。水や炎、強い属性では闇、光などだ。
誰でも全属性は持っているのだが、得意不得意がある。
ちなみに、イナトは全属性得意だ。ルーアは水と炎だ。
「そういや、さっきの声はなんだったの?ルーアの物じゃなさそうだったけど…。」
「あれか?アレは時空神エノールいるだろ?アイツの声だ。」
「え……。」
時空神エノールとは、世界全体の時間を管理している神だ。
「時間止められるこの力は、エノールからもらったんだぜ。」
ルーアは少し自慢げに話す。目に星が浮かびそうなほど、目を輝かせている。
力をもらったと言うことは、過去に何かあったのだろうか…。
「お、そろそろ着くぞ〜。」
見えてきたのは、岩山を切り開いて作ったような二階建ての家だった。
でも、全て岩山に全て埋まっているわけではないようだ。
岩山から飛び出ている所は、木造の家で、その上に二階があった。
「先に降りててくれ。馬車戻してくる。」
「あ、うん!」
馬車から降りると、家から一人の綺麗な顔の小柄な女性が出てきた。
日の光を浴びて、気持ちよさそうに背伸びをすると、イナトに気づく。
「ん?客人?お、ルーも帰ってきたか〜。」
所々焦げている、厚手のエプロンを身に着け、頭には明るいオレンジのバンダナをつけている。
目は赤に近いオレンジで、髪は綺麗な茶髪だ。
馬車をしまい終えたルーアが戻ってくる。
「お、レリー!仕事終ったのか?」
「丁度ね!ルー、この人お客?」
「う…客人でもあるし……た、旅仲間…でも…ある…。」
旅と聞いた瞬間、レリーと呼ばれた女性の優しい顔が変わり、顔に影が落ちた。
「…また旅に出るんか…?前みたいな旅にか…?」
「こ、今度こそは!今度こそは、安全な旅にするから!俺、旅も職業に入るから!」
過去に何か危険な事をしたのだろうか。それともレリーが怖いのだろうか。
ルーアの顔が青ざめる。かなり怖いのだろう。
「お願い!!なんかこいつ、戦闘慣れすらしてないから心配なんだ!お義母さんにも許可とるから!」
お義母さん…結婚でもしているんだな、とイナトは思った。
「……じゃあ、お母さんから許可が下りれば、行って良し!」
「有り難き幸せ!!!」
レリーはさっきの優しそうな顔に戻り、イナトに話しかける。
「夫がごめんなさい!待たせちゃったから、お茶入れます!入って下さい!」
「え…あ…良いですよ!なんか悪いですし…。」
「良いんですよ!ささ、どうぞ!」
半ば強引にイナトはルーアの家に入れられた。
「イナト、行けなかったらホントにすまん…。」
「大丈夫だよ…、奥さんの方が大切だしね!」
次回に続く…(やっと二話後半仕上がったー!!)